最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど?   作:暇です

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今回は長め


面倒事 (表)

 熱い日差しが僕のことを照りつける。僕の額をつたい汗が地面に落ちるが、それすらもすぐに日光が乾かしてしまう。

 

 周りを見渡しても人は一切見当たらず、ちょうどカフェの中で涼んでいる人が見える。

 

 散歩でもするかと外に出てみた僕だがここまで熱いとは考えていなかった。もう今日は家に帰るかなんて思い、ベンチから立ち上がった。すると、右の方に一つの人影が見えた。そして左にももう一つの人影が見えた。

 

 よく目を凝らしてみると鈴さんと凛さんだった。すごい偶然だなと思いつつ僕のそばに来た二人に話しかける。

 

「おはようございます、凛さんと鈴さん」

 

 二人を見ると汗をかいておらず、少し前まで涼しい所にいたことが伺える。

こんな猛暑の中でも二人の美しさは衰えることなく輝いて見える。

 

「ええ、おはようございます武さん。……と凛」

 

「おはようございます武さん。……と姉さん」

 

 二人は互いに挨拶したがどうもぎこちなく見える。表情もどこか微妙だ。姉妹仲があまり良くないのだろうか?

 

「それで武さんと凛はどんな関係で?」

 

 不意にそんなことを聞かれた。

 そう改めて言われると難しいな…まぁ普通に友達ってとこでいいかな。

 

「友達ですよ」

 

「へぇ、そう。友達ですか…」

 

 何やら深みのある言い方をする鈴さん。妹に悪い虫でもつかないように警戒しているのか? 鈴さんの顔を見ても薄い笑みを浮かべているだけで判断することは出来なかった。

 

「そっちこそ、姉さんと武さんはどんな関係なんですか?」

 

「いや、友達だけど…」

 

「そうですか。友達ですか…」

 

 こちらも含みがある言い方をする凛さん。同じように警戒しているのだろうか。

 それよりも暑い中じっとしていたせいでさらに汗が流れ出す。袖で拭ってもさらに汗がじわっと出てくる。

 

「じゃあ僕はここら辺で…」

 

 そう切り出してここを去ることにする。何やら二人は互いに見つめ合って動いていない。

 

 家のドアを開けるとカイロのように熱を発している体を冷たい空気が包み込む。プールにでも入ったような感覚を感じ、思わず体の力が抜けてしまう。

 

 テレビをつけるとテロ組織の活動が活発になっていることが報道されていた。

 

「物騒な世の中だなぁ」

 

 僕がこの前巻き込まれたテロ組織と同じものなのかな? 頭の中にそんな疑問が浮かんだが、報道されているニュースでは『ダークリオン』と言う名前は上がっていなかった。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 今日はいつもと比べて多少マシな気温だ。汗ばみはするが耐えれないほどではない。

 すると曲がり角から少女が飛び出してきた。

 

「大丈夫?」

 

 咄嗟に避けることができず、曲がり角から飛び出してきた少女とぶつかってしまった。背丈は中学生ぐらいで、夏なのに全身をローブで覆うような格好をしている。僕から距離をとりながら小さく体を丸めながら僕のことを見ている。怯えられているみたいだ。

 

「だ、大丈夫。」

 

「そう。なら良かった」

 

 うーんなんかおかしいな。ここまで怯えられるか普通? まあ何かしら事情があるんだろうけど… 関わらないでいいかな。

 

 そうして歩き出そうとしたら足元にバナナの皮があった。

 漫画のように思いっきり転び、体が宙に浮いた。

 地面と垂直になりながら少女を手で押してしまう。押されて後ろにのけぞり転びそうなる少女が見えた。

 

 次の瞬間ーー

 

 ドンッ

 

 銃声のような音ともに体の胸のあたりが急に熱くなった。

 そのまま地面に落下する。心臓の音がうるさい。体が生暖かい液体に浸かり、意識がぼやけていく。少女が何か言って僕の体を揺さぶっている…

 

「………し…いで」

 

そこで僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 目を開け、だるい体を無理矢理おこす。辺りを見回すと僕は近くのベンチの上にいた。

 

 僕はどうしてたんだっけ…… 

 

そうだ! 確か少女とぶつかって、その後転んだら撃ち抜かれて気絶して、そこからの記憶はないな。

 

 まだドクドク心臓の鼓動がなっている。体も熱を帯びていた。

 

 胸のところを確認しても怪我どころか跡すらもない。あの子が治療してくれたのか…? 結構重症だったと思うけど……?

 

 十中八九能力によるものなんだろうけど、だとしたらかなりの高ランクなのかな? まあなんにせよ助けてくれたのは事実か。

 

 でもあの弾丸はあの子を狙ったものだったような… 僕があの子を押してなければあの子に当たってたと思うんだけどなあ。

 

 なんかまた面倒ごとの匂いがするな……

 

 急に地面に影がさす。僕が影を疑問に思うのとほぼ同時に上から「何か」が落ちて来た。

 

 ドオン!

 

 ものすごい衝撃とともに砂煙が辺りに立ち込める地面のコンクリートはひび割れ、その衝撃の強さを物語る。

 

 上を見ると人間ではない怪物とでも呼ぶべき「何か」がいた。

 顔は溶けたように限界をとどめておらず。腕からは鋭利なツノのようなものが生え、3つの目がこちらを覗き込むように見つめている。足や腕は図体に応じた以上の大きさ、太さを持っていた。

 

(なんか今日色々ありすぎじゃない?)

 

 僕は半ば現実逃避していた。足がすくんで動かない。「何か」がツノがついた腕を振り上げる。

 

 頭をフル回転させる。盾? だめだ、流石にあれは防げない上に投げても効かないだろう。

 なら飛行機能? 今からじゃ間に合わないし制御すらできない状況じゃ意味がない。 

 

 なら? なら?

 

 半分ヤケクソで相手の腹に向かって拳を繰り出す、やけくそながら全力の力を込めたパンチだ。しかし通用するわけがないと思った瞬間。

 

 ドン!

 

 拳は体を貫通し大きな穴が空く。振り上げられた腕は止まり、体がいくらかピクピクと細かく痙攣した後ーー

 

 ズウン…

 

 そのまま後ろに倒れて動かなくなった。どうやら倒したらしい。

 もはやツッコミどころしかないがもはや思考をすることをやめ何も考えずその場を後にした。

 

 

$ $ $ $ $

 

 

 その様子は監視カメラに映っていたので学園長から事情聴取を受けた。具体的にはあの生物の様子や強さ、力についてだ。

 

 後から詳しく聞くとあの生物は対能力者用生物兵器だったらしく、ニュースでも報道されていた。あの後超能力者協会に引き取られたらしい。僕個人を狙ったのかテロ行為なのかは分からなかなった。

 

 僕のおかげで被害が出なかったと言われたが、恐らくあれは僕の力ではないので否定しておいた。機密情報という観点でも報道されることはないと謝られたがぶっちゃけ僕はその方が好都合だ。

 

今日は騒がしい1日だったなあ……

 

 

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