最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? 作:暇です
9月。夏は過ぎたものの、まだ蒸し暑い日もある季節だ。けれど、今日はちょうど肌寒いくらいの気温であった。
天気予報を見ても雨が降る様子はない。
いつのまにか散歩が習慣になっていたので、今日も散歩に行こうと準備をする。
いつまで経っても散歩中変な音が鳴り止まないので、最初の方は鬱陶しく思っていたが、慣れというものは怖いものである。最近は気に止めることすらなくなってしまった。
ちょうど出かけようとした瞬間ーー
「お久しぶりです。斎藤武様」
急にリビングの中に、僕と同じ高校生ほどの子が現れた。その子は、その風貌に比べて妙に大人びた雰囲気と冷たい目をしていた。
驚き、思わず目を見開いてしまう。
え? なんで人がいるの? 鍵は閉まってたよね。いくらこの学校の生徒といえども寮に入ってくることは不可能な筈なんだけど……
勿論そんなものは能力の使用を度外視したものである。この学校の生徒の大半は能力を使えば寮のセキュリティを突破するのは容易いだろう。
その上、今斎藤武「様」って言ったよね。お久しぶりです、とも。
僕はこの子とは一切面識がない筈なのに……
この子の目的がわからない。僕の個人情報はどうとでも知ることができるだろうが、直接この部屋に来る理由は?
「えっと……、どちら様ですか?」
「ああ、ご挨拶を忘れていました。私は福井 アリア、貴方様の忠実なしもべで御座います。微力ながら、貴方様の野望を叶えるために、力をお貸し致します」
かなりやばい奴だった。思わず顔が青ざめてしまう。福井さんということは分かった、この学校の生徒ではあるのだろう。
そして野望ってなに? 僕は何も企んでないけど。
それに「しもべ」ってなんだ。
そんなものを作った覚えは一切ない。僕の流れている噂に騙された頭のおかしい狂信者だろうか。
となると、僕がただの無能と知られればやばいかもしれない。
何にせよ怖い、お帰りいただかないと。
「えっと、とりあえずは帰ってもらえるかな」
「了解いたしました。申し付けたいことがあればすぐに仰ってください。」
そう言って、彼女はフッと消えていった。
あ、素直に帰ってくれるのね。
$ $ $ $ $
それから翌日、ポストを見てみると手紙が入っていた。
恐る恐る手紙を開けてみると、やはり福井さんからのものだった。手紙の中には、彼女の電話番号や個人情報が載っていた。
これ見せて大丈夫なものなのか?
そして何より気になったのは冒頭の部分だ。
『災討 武様へ』
誰だよ。災討なんて人知らねーよ。
確かに読みはさいとうって読めるけど。そんな禍々しい名前じゃないわ。
……ちょっと待てよ。これ、やらかしたんじゃね?