最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? 作:暇です
side〜福井 アリア〜
私、福井アリアはただの人間ではない。
といっても、吸血鬼や幽霊などの人外というわけではない。私にはこの世界とは別の前世の記憶がある。
前世では、強力な力と頭脳を持つ災討 武様の元で、右腕 兼 しもべとして働いた。
武様は強力な力を持ちながらも、無知なただの人を装い、裏社会を確実に支配して行く。その支配はやがて表社会にも及び、後一歩で世界征服というところまで来ることに成功した。
しかし、後一歩のところで裏切りにより力尽きてしまった。そこで私も同じように力尽き、目が覚めるとこの世界に転生していた。
前の世界でも能力があったため、初めは別の世界とは気づかなかった。しかし、次第に矛盾や齟齬が生じていることが分かり、別の世界だと気づかされた。
私が最初にしたことは武様を探すことだった。私がこの世界に転生したということは、武様もこの世界にいる可能性が高いからだ。
ありとあらゆる手段で強大な力を持つものを探したが、見つかることはなかった。よく考えると、武様はもともと力を見せびらかすタイプではない。その上今はより慎重になっていることから、誰にも力を見せていない可能性がある。
それに気づいてからは、とにかく情報を集めながら待ちに徹した。そしてふと斎藤武という名を耳にした、そしてその力も。
別に読みが同じ名前ぐらいならこの日本にもそこそこいるだろう。それに、今は別の世界なのだから名前が変わっているのが普通だ。それだけを根拠とするには乏しい情報だ。
しかし何故か私の中には確信めいたものがあった。ある程度情報を集め、さらに信憑性が高くなったところで直接寮の部屋に行ってみることにした。
「お久しぶりです。斎藤武様」
私の能力は侵入するのには不向きなのでツテを使って部屋に入った。武様は私のことを見てとても驚いた顔をする。
私はこの人が災討武様の生まれ変わりだと確信した。なぜなら雰囲気、反応どれもが武様が装っていた一般人そっくりだったからだ。
「えっと……、どちら様ですか?」
「ああ、ご挨拶を忘れていました。私は福井 アリア、貴方様の忠実なしもべで御座います。微力ながら、貴方様の野望を叶えるために、力をお貸し致します」
おそらく武様は前世の野望ーー世界征服をこの世界でも目論んでいる筈。
そうなるとテロ組織と争い、聖内学園に急に編入したことも納得がいく。
力を隠しながら、ある程度この世界の情報を集め、時が来たら力を隠すのをやめる。
この世界で世界征服の妨げとなるのは主に超能力協会とテロ組織だ。
まず超能力協会の内側に入り込み、力を借りながら世界中に偏在するテロ組織を壊滅させる。それにより信用を得た後、超能力協会を内部から支配して行く。
一石二鳥の完璧な作戦だ。
「えっと、とりあえずは帰ってもらえるかな」
「了解いたしました。申し付けたいことがあればすぐに仰ってください。」
やはりこの反応からも間違いないだろう。
本来こんなことが起きたら応戦するか、通報するかの2択だ。間違っても「とりあえず」「帰ってもらう」などとは言わない
武様は今は力を借りることはない、まだ下準備の最中だということだろう。
とりあえずその時が来るまで力を蓄えておくとしよう。
忠実なしもべ(笑)(狂)の誕生