最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? 作:暇です
side~毒能力者~
物陰に隠れながら、今回のターゲットの斉藤武に視線を向ける。どうやら尾行はバレていないようだ。
もうすでに仕掛けは終わっているのでここにいる必要はなく、さっさと逃げるべきなのかもしれないが、何かしらの体制があり殺しそこねる可能性もある。そのときにとどめを刺すため、観察する必要がある。
仕掛けとは能力によるものである。私が持っている能力は発動するまでが異常に面倒くさいが、一度発動すればほぼ死を免れることはできない代物だ。
まず能力で作り出した毒を相手に摂取させる。その毒自体は大したものではなくほぼ殺傷性はない。しかし、それから二十四時間以内に相手に触れることにより、毒を進化させることができる。
進化した毒は、ちょうど一時間後に相手を死に至らしめる。それまではなんの予兆もないため、事前に察知するのも不可能に近く、並大抵の治療では解毒することはできない。
噂に比べて斉藤武のセキュリティはガバガバだった。いともかんたんに水筒に毒を入れることもできたし、目の前でモノを落とすと、何も警戒することもなく落としたものを拾ってきた。そのときに相手に触れることもできた。
「そろそろ一時間だが・・・・・・」
もう一度、斉藤武を見ると何者かの少女と話しているのが見えた。多少話している様子だったが、特に他に何かをする様子もなく別れたので特に気にすることもないか。
それからしばらくして、異変に気がついた。一時間経ったのにも関わらず一切斉藤武に変化がないのだ。いくら耐性があったとしても、何かしらの反応は見せるはずだ。
「バカな・・・・・・」
確実にあの水筒を飲んだはずで、しっかりとこの手で触れた。絶対にだ。解毒したのか? どのタイミングで? そもそも気づいていたのなら水筒を飲んだりしないだろう。治癒系の能力まで持っているのか・・・・・・。
不明なことが多すぎる。これ以上の攻撃は無理だ。
実際はあの一件から警戒していた平野が、異変にすぐさま気づき何も言わず解毒したというのが事の真相だ。
しかし、そこで誰も予測しなかった出来事が起こる。
平野は戦闘向きの能力ではないが、傷を負ってない相手に対して過剰な回復を、悪意をもってすることにより相手を攻撃することができる。
悪意を持って与えられたエネルギーは心体を破壊する。では、悪意を持っていなかったら?
平野は少し武が自分のせいで死にかけたこともあり、武の怪我について過敏になっている。そのせいで今回も、武に対して毒を治癒するには過剰な回復をしてしまったのだ。
この場合の善意から与えられたエネルギーは、武に有り余る力を与えた。武が能力を持っていた場合は能力が強化されただろうが、武は無能力者だ。
なので、そのまま身体能力が格段に跳ね上がったというわけだ。
これが勘違いをさらに強固にしていくことになる。
side〜熱血野郎〜
俺は今、バトルロワイヤルに参加している。しかしバトルロワイヤルとは名ばかりで、今はこの場にいる全員が協力して斎藤武を倒そうとしていた。
まあこの場には最高でもBランク能力者までしかいない。先にSランク能力者に匹敵する力を持つ(と思われる)斎藤武を団結して倒さなければ、優勝することはほぼ不可能だろう。
とは言っても、この状況はいくらなんでも卑怯なのではないかと少し罪悪感を感じる。
それにしても奴は応戦することもなくただ逃げるばかりだ。何かおかしいような……、しかし攻撃は神がかった動きで全て避けている。まるで未来を予測しているような動きだ。
こちらも色々と手は打っているのだが、全て事前に抑えられている。
しかししばらく経つと、ついに斎藤武を袋小路に追い込むことに成功した。道は一本しかなく、前は行き止まり、後ろは俺らが塞いでいる。
みんなが一斉に攻撃しようとして、一足先に一人の能力者が岩を斎藤武に向かって放った。その瞬間ーー
ドゴオ!
なにが起こったのかすら分からなかった。確かなことは俺たちは全員地に伏せ、斎藤武ただ一人が立っているといくことだ。
(まさか! 俺たちを誘導していたのか!)
能力はあり得ないほどの威力を持ち、頭まで回る。
別に勝てるとは思ってはいなかった。でも、せめて一矢報いることぐらいはできると思ってたんだがな、こんなの、勝てるわけないだろ……
色々忙しくて更新が遅れました。