最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? 作:暇です
「いやー、良い感じだな」
何故かお偉いさんを怒らせてしまってから数日、僕は久しぶりに上機嫌だった。
何故かって? それは…… ようやく勘違いが解けそうだからだよ!あれから何故か、僕は実は無能力者で、今までに起こしたことは偶然やハッタリで全部嘘だという噂が流れ始めた。そして能力を抜きにしたらなんの力も持っていないということも。
ようやく、ようやく正しい情報が流れ始めたよ。ありがとう、おっさん。
やはり怒らせたとしても、彼は僕を見捨てなかったのだろう。そしてちゃんと勘違いを正そうとしてくれている。
後ついでに、僕を退学にさせようと圧力がかかっていると学園長から聞いた。まあ、どうせ勘違いが解けたら退学になるんだし、いつでも退学ぐらいなってもいいか。
いやー、いつかおっさんに礼を言わないとダメだな。
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あれからさらに数日経った。急転直下、僕には暗雲が立ち込めていた。
全然噂が広まっていかないし、まったく信じられていないのだ。おかしい、前の時は秒で広まってみんな信じ切っていただろう。いきなり冷静さを取り戻すなよ。
その上、僕を退学にするためかけてきた圧力だが、ただでさえ学園長が反対していたのに、Sランク能力者が2人加わり、まったく意味が無くなってしまった。
いつも友達として接しているから忘れていたが、よく考えるとSランク能力者ってエグいくらいの権力持ってるんだった。まだ他の人だったらそいつも潰すみたいに出来ただろうがSランク能力者は無理だ。幹部の数よりSランク能力者の方が少ないんじゃないっけ?
もう……負ける気がしないな ハハッ。
もう僕の周りに勘違いを解いてくれる味方はいないのか。もう信じられるのはおっさんだけだな……、何とか頑張ってほしい。
「やば、そろそろ帰らないと」
こんな教室で物思いにふけってしまった。こんなところを見られたら変な奴だと思われてしまう。
「本当に何とかならないかなあ」
誰もいない静まりかえった廊下を歩きながらポツリと呟く。廊下は夕焼けの赤で染まっていて、何となく神秘的に見える。
ふと、誰かの手が僕の背中に触れていることに気がついた。
「ん? 誰……」
「お休みなさい」
後ろを振り向こうとしたが、そんな声とともに意識が遠くなって行く。眠い……視界がぼやけて、足の力が抜けてくる。
だけれど偶然、装備についていた一つの青いボタンを僕の手が押した。
ビリビリビリビリ!
体に電量が流れる。呻き声を出しながら体を振動して、目は思いっきり見開いてしまう。
数秒の後ようやく電流が止まった。体はまだ痺れている。おかげですっかり目が覚めてしまった。
改めて後ろを振り向くと、驚いた表情をした女の子が立っていた。髪は鮮やかな青色で目がぱっちりとしている。服装も可愛らしいスカートを履いていて、どこからどう見ても何の変哲もない女の子なのだが……人は見た目で判断してはいけないと僕は学んだ。
「ねえ、君ーー」
話しかけようとしたその瞬間、目の前から女の子が瞬時に消えた。え? 転移能力か? いや、違うな。説明はできないけど、転移能力とは何かが違った気がする。
というか、何だったんだ?
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先の一件もあって、何となく心根醜伊について調べてみることにした。
「心根 醜伊……と。お、出てきたかな」
試しに出てきたウェブサイトを開いてみると、『心根醜伊特集!』という記事が載っていた。内容はとにかく心根醜いをべた褒めしている。他のウェブサイトを見てみても、同じような内容ばかりで流石に違和感を感じる。
「ん? 本まで出してるのか」
広告から『心根醜伊の覇道〜いかにして幹部まで至ったのか〜』という本を見つけた。試しにレビューを見てみるとほぼ全部が星5だ。
『 最高の一冊です! 星5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
かなり期待して買ったのですが、
値段に対してクオリティがとても高かったです!
乗り気ではなかった嫁も満足です。
無能力者がどれだけ無価値なのかも伝わってきました。
だまされたと思って買ってみてくだい! 』
『 思わず唸ってしまう作品 星5 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
ダメなこと、すべきことがはっきりとわかりました。
マズい状況から抜け出せそうです
レール通りに生きるのはやめにします。
ハラハラする人生を送りたいです。
ゲーム感覚で楽しんで読める本でした! 』
全てのレビューで絶賛されているな……、値段もそこまでじゃないし、買ってみようかな。
「よし、注文完了。ちょっとだけ楽しみだな」
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「おいしょっと。届いた、届いた。」
注文してから翌日にもう配達されてきてビックリしたが、そこも含めてあの評価なのだろう。
持ち上げてリビングまで運ぼうとするが、
「重っ!」
想像以上の重さに驚いてしまう。だが、何とか運んでリビングまで持って行く。
早速箱を開けて中身を見てみる。すると……
「分厚つっっ!!」
六法全書以上に分厚いんじゃないかと思えるほどだ。片手で持ってると、これだけで筋トレになるんじゃないかと感じた。
試しに1ページ目を開いてみるとおっさんの顔面ドアップが載っていた。さらに読む気が失せる。
「ま、また今度にしようかな」
そう言って、読むのをやめて本をベットに放り投げる。
その瞬間ーー
バリン!
外から飛んできた「何か」によって、窓が割れた。そしてその「何か」は僕の方に飛んでくる。
ドコン!
そして、「何か」はそのまま僕に当たる……
ことはなく、ちょうど開かれていた本の1ページ目ーーおっさんの顔面ドアップに的中した。
「おっさあぁぁぁん!!」
そんな僕の叫びも虚しく、本、もといおっさんの顔面は粉々に砕け散った。
「誰だ! 誰がこんなことを! よくもおっさん(顔面)を!」
誰もいないはずなのだが、どこからか「お前だよ!」というツッコミが聞こえた気がした。
改めてあたりを見渡すと、粉々になった本に、割れた窓ガラス。
「そんなことより、この状況どうしよう? 」
次回 おっさん死す
デュエルスタンバイ!