最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど?   作:暇です

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おい、しっかりしろ! おっさん! (裏)

side〜刺客〜

 

「いたわね……」

 

 そう言って、廊下を歩いている男についていきながら男をじっと見つめる。一見隙だらけであり、どこにでもいる一般人に見える。

 

 今回の依頼は超能力者協会の幹部から依頼されたものだ。正直言って報酬は割りに合わないものではあるが、幹部とのパイプを作れるとなれば、有り余るメリットがあると言っていい。

 

 しかし、何と言っても相手はあの斎藤武だ。依頼主は噂は全部嘘で斎藤武は無能力者などと言っていたが、多少誇張されることはあっても、流石にそれはないだろう。

 

 だが、噂によると斎藤武は殺されかけても、相手を殺そうとしないと言われている。最悪失敗しても、死ぬことはないはずだ。

 

 少し歩くスピードを速め、気配を消しながら斎藤武に近づき、そっと手を相手の背中に当てて、能力を発動する。

 

 すると自分から出たエネルギーが相手の体に入って行く感覚がする。

 

(よし! 成功した!)

 

 もし、耐性や能力等で防御された場合エネルギーが弾かれる感覚がするのだが、今回は違うーーつまり成功したということだ。

 

「ん? 誰……」

 

「お休みなさい」

 

 そう告げたと同時に、相手の目が虚になって行く。そしてそのまま足の力も抜け、眠る瞬間ーー

 

 相手の体が急に痙攣し出した。そして数秒経つと止まり、ゆっくりとこちらを振り向く。もはや相手の顔からは一切の眠気も感じられず、完全に能力が塞がれてしまったことを悟った。

 

 (まずっ!)

 

 やはり一人では無理じゃないか。せめてもう一人攻撃役を用意し、一瞬能力が効いた瞬間を利用して攻撃するとかすればよかっただろうに。

 

 依頼主を恨み始めるが、そんなことをしても状況は変わらない。だが、噂からすると命までは取られないはず。

 

 プチュ

 

 ーーそんな音と共に私の意識は途絶えた。

 

side〜心根 醜伊〜

 

「くそっ!」

 

 叫びながら、机を思いっきり蹴り飛ばす。机は棚へと飛んでいき、音を立てながらぶつかる。

 

「はあ、はあ。落ち着け、そもそもあんな噂が流れていたら、狙われるのは確実。なのに生きているということは、そういう事に対する対策はしているという事だ。」

 

 そう言って、自分を落ち着かせる。なら、次は念入りにやればいい事。もう生捕りなどという贅沢はいわず、金も惜しまないようにしよう。

 

「次だ……! 次で最後だ、斎藤武!」

 

 

side〜呪術師〜

 

 この世には超能力が存在する。これはもう確立された、一切疑いようの無い事実だ。ではこうも考えれないのだろうか、そんな非科学的な超常現象が存在するなら、他にも存在するのではないか、と。

 

 例えばそう、呪術とか……。

 

「眼には眼を、歯には歯を、超常には超常を。相手が能力者って言うんなら、呪術で対抗すればいい話だ」

 

 呪術を使える人間、通常呪術師は能力者と比べて数も少なく、その存在も公になっていない。

 だからこそ、対策を練ることが出来ない。だから呪術師はそこらの能力者と比べれば無類の強さを誇る。

 

 基本的に呪術は暗殺の方法として使われる。まあ、呪術といっても色々あるが、俺が主に使用しているのは呪物を直接相手に打ち込むものだ。この方法のメリットは、相手の近くに呪物を打てば自動で呪物が移動し、相手に当ててくれる事だ。

 これは全ての呪術に共通する事だがそもそも防ぐ対策が出来ず、食らった時の治療法もない。

 

「まあ、そんな簡単に行くとは思っていないが……」

 

 とりあえず案ずるより産むが易しだ。斎藤武をスコープ越しに覗き、銃口を向け標準を合わせる。特に、異常がある様子もなく手に「何か」を持って立っている。

 

 そして引き金を引くーー

 

 のと同時に、斎藤武が手を動かし手に持っていた、「何か」を投げる動作を見せた。

 

 ドコン!

 

「防がれたか……!」

 

 発射された呪物は斎藤武が投げた「何か」に阻まれた。

 もしかしたら、彼はその「何か」の正体を知らない方が幸せだったのかもしれない。

 

 仮に何かで防いだとしても、呪いを憑けるまで呪物は止まらないはずである。しかし、もうその呪物は動く気配を見せなかった。

 

「どういう事だ……?」

 

 斎藤武が防ぐために使用した「何か」、動かない呪物、スコープ越しに一瞬だけ見えたもの。

 

 ピースが繋がった。彼の背中を冷や汗がつたう。

 

 恐らく、あいつが防ぐために投げた「何か」は本だ。そして、スコープ越しに絵か写真のようなものが見えた。恐らく、それは斎藤武が投げた本に載っていたものであろう。ということは、本はページが開かれた状態で投げられた可能性が高い。

 

 では何故、本を選んだのか。偶然手に持っていたから? まあ、納得できなくはない、読んでいる最中だったからページも開いている状態であった。では何故、呪物は動かない?

 

 呪物が動かなくなる可能性はただ一つ、呪いを完了したのだ。誰に対して? ……本に載っていた人物に対して。

 別に、呪いというものは直接ではなくても効果を発揮する。というか、本来はそっちの方が主流だ。直接弾が当たったため、斎藤武よりも優先されたのだろう。

 

 恐らく、その人物に対して呪いを押し付けたのだろう。じゃあ誰に?決まっている。自分を殺そうとした人物、要は依頼主だ。

 幸い、俺の呪物の威力は低めだ。当たったのも髪や爪じゃなく写真だ。死にはしないだろうが……

 

「これは、報告しないといけないのか」

 

 十中八九怒りを買うだろう。しかし、このこと伝えないのはあまりに不義理というものだ。そのことだけ伝えて行方をくらました方が良さそうだが。

 

side〜心根 醜伊〜

 

「ゴホッ、ゴホッ! く、くそ……斎藤武め!」

 

 そう叫んだ反動でまた頭が痛くなる。私は今風邪、といってもかなり重い症状のものを患ってあり、自宅で療養していた。ようやく、マシになってきたが、一時期は死を覚悟したほどだ。

 

 くそ、これも全部斎藤武のせいだ。大体あいつも、失敗するどころか利用されて私に呪いをかけるとは。

 

 コンコン

 

 ドアをノックした音が聞こえた。誰か来たのか?

 

「入れ」

 

「失礼いたします」

 

 そう言って私の世話係が入ってきた。もちろん年齢は20代の美女だ。

 

「心根様、お手紙でございます」

 

「はあ?」

 

 私が今風邪をひいているんだぞ? それなのに手紙? 何かそこまで重要なものなのだろうか。

 

「では失礼します」

 

 ドアを閉めて世話係が出て行く。今、部屋には私一人だけ。読んでも盗み見されることはないだろう。

 

「何だ……?」

 すぐに手紙を開き読み始める。

 そこにはーー

 

『心根醜伊様へ

 

 いかがお過ごしでしょうか。

 まあ、少なくともご健康ではいらっしゃらないと思います。

 どうも、最近は風邪をこじらせる人が多いようです。

そんなことは分かっていらっしゃるとは思いますが。

 なぜか周りの人達が協力してくれ、手紙を送ることが出来ました。

 気持ちを強く持ち、どうかゆっくり休んでください 斎藤武より』

 

 正直言ってお前のせいだよとは言いたくなったが、書いてる内容自体は悪いものではない。

 ……ある一点を除けばだが。

 

「今どんな気持ちだと……! ふざけるな、ふざけるなよおぉ! 斎藤武うぅ!」

 

 屋敷を怒号が包む。その声には怒り、悔しさ、みじめさ、あらゆる感情がこもっていた。

 

 

 




 まさかのおっさん生存。
 何でこの縦読みは気づいたんだ。
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