最強の能力者? なにそれおいしいの? 僕は無能力者ですけど? 作:暇です
いつも読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。
ということで今日はちょっと多めです。
ここ、東京では半年に一回大規模なオークションが開かれる。そんじょそこらのものとは、取引の額も人数も品物も格が違う。名前は決まっていないのだが、東京オークションだのビックオークションと呼ばれている。
オークションと聞けば、ダイヤや金塊、名画などが競りにかけられるのをイメージするかもしれないがこのオークションでは全く違う。
別に禁止されているわけではないのだが、競りにかけられるのはほとんど超能力社会になってから出てくるようになった、未知の鉱物や不思議な力を持った武器、一つ先の時代をいく技術が使われた装置などだ。
基本的にそういう代物が買えるのはここぐらいだ。だからこそ皆こぞってオークションに参加する。
だが、やはり相応の品物には相応の値段がつくものであり、値段も桁が違う。億なんでザラで、噂では兆まで行ったとか。
だが、オークションには誰でも参加できるというわけではない。参加券が必要だが、異常なくらい高額だ。もしくは、強力なパイプを持っているなら関係者から貰うこともできる。
要は金持ちか実力や実績がある奴しか来るなというわけだ。そりゃあそのくらい出来ないと品物を競り落とすなんて不可能だから、当然ではある。
つまり実力も金も無い僕には一切関係ないということだ。
ーーなんて思っていましたよ。あの時までは。
確かに僕は実力も金もない、けど無駄に積み上がった実績だけはあるのを忘れていた。ついでに強力なパイプもある。Sランク能力者二人と学園長とか極太パイプにも程があるわ。
何なら直接運営側からチケットが来たんだけど……ついでに学園長から既にもらっちゃったせいで2枚になってしまった。
どうするべきか……行ってもどうせ何も買えないだろうし誰かに譲るべきか? いやこんな事は人生で2度と無いし、言ってみた方がいい経験になるかもしれない。
というか僕には譲るような相手がいないし、そもそも無理だ。
よし、行こう。もうこの際誰でもいいから一人誘おう。
「知人全員当たれば一人ぐらい、何とかなるか」
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「何でこういう時に限って誰もいないんだよ!」
いくら何でも全員はないだろ。神様が僕をいじめてくる……
もう当てはないしどうするか……
「何かお困りですか? 武様」
「うおっ!」
何で急に現れたんだこの子は。というか誰だっけ? ……確か福井アリアさんかな? 文化祭から一度も会ったないからど忘れしていた。
それよりも、いつまで武様って呼んでくるんだろう? その度に白い目で見られるの困るんだけど……
もうこの際、この子でいいか。
「えっと、10月○日開催のオークションに行く予定なんだけど、一緒に来「ご一緒させていただきます」……即答すぎない?」
びっくりするぐらいの反射神経だ。そんなに食い気味で答えなくても。
「もちろんです。貴方の野望の一端についていけるなど、これほど名誉な事はありません」
だから野望って何だよ。そう思いつつも口には出さない、言っても無駄だと知っているからだ。
「後、オークションって言っても僕は何か買うつもりはないし、特別買いたいものがある時以外はお金は持ってこなくて大丈夫だよ」
「了解しました。そういえば武様、事前に登録せずとも当日に物品を持って行き、競りにかけられる場所もあるそうです。値段がややつきにくいなど多少のデメリットはありますが、何かしら品物を持って行くのもいいかもしれません」
「へえ、そんなのあるんだ。知らなかったよ、だったら何か持って行ってもいいかな」
「では、私はこれで」
「うん。じゃあ○日の✖️時に△△に集合ね」
彼女は僕の言葉を聞いて頷いた後、この場から消えた。
毎回どうやって消えてるんだろ、転移系の能力なのかな?
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「やっちゃったなあ……」
浮いている、明らかに浮いている。
別に僕もそこまで変な格好ではない。僕が来ている装備は外見は一見普通の服と変わらないレベルのものだ。だけど周りの格好がすごすぎる。全身を金やダイヤで覆っている人かめちゃくちゃイケメンな男の人や美女しかいない。
後ろを振り向き、僕から1メートルほど離れてついてきている福井さんを見てみるが、彼女も私服ではあるのだがいかんせんスタイルと顔がいいせいで何も違和感がない。
彼女が今出しているツンケンとした雰囲気もまるで威圧感のように感じ、拍車をかけている。
いくらか好奇や嘲笑するような視線に晒されるが、もうその程度では動じない、耐性がついているのだ。5分ほど歩きようやく目的地に着く。
当日出品限定のオークション会場だ。
流石に何もせず帰るのもアレかと思い、家から物を持ってきて出品することに決めた。
けれど、本場のオークションよりはかなり緩いのだが、出品するには品物の審査がある。一定の水準を変えないと出品できないのだ。
では一般(?)男子高校生の部屋にそんな物があるかといえばもちろんない。だからぶっちゃけこの出品は記念だ。どうせ審査で落とされるだろうが何か思い出としてやって、当たって砕けようという話だ。
「福井さんは何か出品しないの?」
まあ出品はできないだろうけど。
「いえ、今回はしません。家に1、2千万するものはありますが、武様が出すものと比べて見劣りしてしまいますし、ある必要もありませんから」
……なんか別世界の話が聞こえてきたな。まあ、気のせいだろう。
そうして出品するための手続きをする受付に向かって行く。そこで僕はあることに気がついた。
「皆めちゃくちゃ厳重に保管してる……」
皆、箱だけでも高いんじゃないかと思えるようなものに入れたりして、付き人に運ばせている。それは審査する側も同様だ。徹底的に消毒し、手袋をして慎重な手つきでじっくりと品物を吟味する。
僕? ビニール袋だけど? 何か悪い?
うるさいうるさい。そうだよ僕はアホだよ。こんなに高レベル駄々は思わなかったんだよ。
さっさと受付に行き、用紙に自分の名前や住所等の情報を書き、招待状と引き換えに入り口でもらった会員証を提示する。
……視線が痛い。僕の格好も手に持っているのものも全部がおかしいため、前の前にいる受付の人にめちゃくちゃ訝しがられている。「お前何してんの?」とでも言っているかのような疑いの視線が突き刺さる。
表情もとても嫌そうだ。
ーーしかし、会員証を見せた瞬間相手の表情は一変した。嫌そうな表情から驚きに満ちた顔に変わる。
「申し訳ございません。すぐにご案内いたします」
何故か焦ったような声だ。え? どこに? そんな僕の疑問が解けるわけもない。僕が戸惑っている間に、すぐさま受付の奥にある豪華な部屋に案内された。
「何だここ……」
扉を開けた瞬間別世界だった。まるで貴族が住むような部屋で、真ん中に机と椅子がポツンと置いてある。何だあれ? 滝か? 何で部屋に滝があるんだよ。
なんかすごーく嫌な予感がする。この状況……
ガチャ
扉が開く。まるで、架空の世界にいる貴族のような身なりをしたおじさんが入って来た。白髭もが生えていて、なんか被っている帽子もそれっぽい。
そしておもむろに僕の前に座り、僕に向かって話し始めた。
「ようこそ斎藤武様。私、このオークションの主催者である金成 望と申します」
へ? 主催者……? なにそれおいしいの?
主催者ってこのオークションのトップってことだよな。やばい人が来ちゃったよ。そして……
「我がオークションに品物を出品して下さるということで。失礼ですが……お品物を拝見させていただけますか」
ほら、やっぱり来たよ。もう詰んだじゃん。
ここで、僕が今日吟味を重ねて持って来た品物を紹介しよう。
エントリーNo.1!
『バトロワ大会の賞品でもらったナイフ!』
基本的に自炊が切って食う、切って炒めて食うの2択である男子高校生の雑な調理に大活躍!
思ったよりも切れ味が良くてリンゴも肉も野菜もスパスパ切れる!
台所に常に常備しているが、いつのまにか僕のポケットに入っている時がある不思議な一品!
鑑定に持っていくとまさかの値段は300円! しょぼい!
続いてお次は……
エントリーNo.2!
『平野さんからもらった石!』
石! 石って何だよ! 僕だってたまには傷つくんだぞ!
何故か2個目をもらって、前のは微妙だから捨てていいよと言われたけどなにが違うのか全くわからない、いじめかな?
ちなみに2個目を貰うまでは何回捨てても戻って来たぜ!
そこら辺に転がってたからノリと勢いで入れておいたぜ!
これで紹介するのは最後だ。
エントリーNo.3!
『小学生の時に拾った本!』
日本語じゃない! 読めない! 何語かすらわからない!
本の表紙には30¥とかいた値札が貼ってある!
見てると頭が痛くなって、頭の中に声が響き始める、怖い!
ちなみに、まだ家に8冊同じような本が残ってるぜ!
その他etc……まあ他はもうちょいマシなのだけど。
はあ、はあ。
こんな品物をトップの前で見せろと言われたせいで、焦ってテンションがおかしくなった。
もうゴリ押しでこの場を去ってやる。
「品物はこれだ。確認してくれ、僕はもう行く」
そう言って机に品物が入ったビニール袋を置く。
「はい? いやそれは……」
そのまま引き留めようとする金成さんを無視して、その場を去る。
ごめんなさい! でも、こうするしかないんだよ。これで品物を目の前で見られて、ドン引きされたら僕の羞恥心がもたない。
どっちにしても、あの品物を見たら怒られるだろうけど。目の前で見られるよりはマシだ。
そして、そのまま受付の所で待っていてくれた福井さんと合流し、オークション自体を後にする。
その日は家に帰ったあと、ずっとベットで今日の出来事を思い出して悶えていた。
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やばい、金欠だ。最近無駄遣いしたせいで、支給された金が尽きそうだ。このままだとやばいけど、だからと言って誰かに借りるのもなあ……
とりあえず聖内学園にある銀行で自分の口座をチェックし、預金額を確認しに行く。
「どんぐらい残ってるかなあ……、1万ぐらい残ってればなんとかなるんだけど」
目を細めながら、ゆっくり手に持っている通帳を開く。
「預金額は……え?」
目を大きく見開く。
「見間違いかな……?」
ゴシゴシ
目を擦り、もう一回通帳を見直す。だが、何度見ても通帳に書いてある数字は変わらない。
「……よし、見なかったことにしよう」
通帳をカバンの中にしまい、銀行を出る。空では太陽が変わらない煌めきを持って、輝いている。
「今日もいい天気だな!」
武くんもついに金欠ですか、大変ですね〜()