SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集   作:大野 紫咲

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イサクさんのお誕生日に、ブンスコでイサクさんとキャラクター交代したら降って来たネタです。
誕生日だけどイサクさんがヨハネさんとムラサキの惚気に当てられてるだけのお話でした!ごめん!

個人的な解釈だけど、ストーリー終わった後だったら、イサクとヨハネって暑苦しい者同士めちゃくちゃいい友達になってると私思うんですよね…(^p^)
だからオレンジ本編でもこの二人を書くことが割と多いんですけど、二人の絡みがとても好きです。
ブンスコでは退場が早かったイサクさんなので、二次創作ではいっぱい活躍させたいな←


その手を離せないのは

「おーい、イサクさんいる?」

 

 その日。SOATトレーニング室の傍にある更衣室で、汗を拭きがてら休憩していたヨハネとイサクの元へ、ノックしながら訪ねて来た者がいた。

 他に隊員もいなかったので返事をして招き入れると、袴と着物姿のムラサキが顔を出す。元々は民間人なのだが、特殊な事情故に今は一時的にSOATの隊員として仲間に加わっていて、イサク達ともつるむ仲だ。

 

「お、丁度いいところに」

「よう、どうした? ヨハネとの訓練はさっき終わったんだろ?」

「うん。さっき他課の人に聞いて思い出したんだけど、イサクさん今日誕生日でしょ?

せっかくだから、私とペア組んで練習しない? 今ちょうど時間あるし」

 

 更衣室に入ってきたムラサキは、ぶらぶらとヨハネの両手を振って手遊びしながら、ベンチの前でぱたぱたとブーツの足を踏み鳴らしてイサクの方を見る。

 突拍子もない提案に、イサクは苦笑しつつも楽しそうな笑い声を上げた。 

 

「オレの誕生日とペアワークとの繋がりが全然見えねーけど、いいぜ。面白そうだ!」

「いや、たまには他の人と組んで感覚を擦り合わせるのも大事かなって思ってさ。

想定外の大事件があった時は、相手が誰だろうと傍にいたらパッと連携取れなきゃいけないしね」

「そりゃそうだな。よーし! いっちょやってやるか!」

「まあ、今訓練上がりだと思うから、クールダウンとして軽く付き合ってくれるくらいでいいよ。

あ、そうだ、ヨハネさんはここで見てくよね? さすがに私とやってイサクさんとやって、三連続で戦闘は厳しいでしょ?」

「あ、ああ……そうだね」

 

 基本、ムラサキはヨハネの部下兼パートナーとして、外回りの仕事中は傍で働いている。仕事でもプライベートでも仲のいい二人は、もちろん訓練でも一緒のことが多い。

 四六時中職場でべったり一緒な訳ではないが、共に出動する任務や訓練の時は、片時も傍を離れずにいる。ぴったりと息の合った、相手の意表を突く攻撃技は、SOAT内でもちょっとした名物だ。なのでムラサキのパートナーは基本的にはヨハネ一択ということになるのだが、だからといって他の人間と組まないということではない。

 それを互いに分かっていたからこそ、ムラサキもペアチェンジを提案したし、ヨハネもあっさりと頷いたのだが……

 

「じゃーオレ、飲み物買い足したいから先に自販機行くな。ちょうど水切らしちまって」

「あ、じゃあ私も。トレーニング終わったら喉乾くから、先に買っときたいんだよね」

 

 イサクが更衣室の入り口へ歩き始めたのについて、ムラサキも出ようとしたその時だった。

 ぐいっ、と何かを引っ張られる気配を感じて、ムラサキは立ち止まった。

 

「……?」

 

 ベンチに座っていたヨハネが、不意にムラサキの着物の袖を掴んだのだ。

 ぎゅっと握りしめた手に、一瞬自分でも驚いたような表情をして、けれど決して離さないヨハネのことを見て、ムラサキは不思議そうに体ごと振り返った。

 

***

 

 どうしたんだろ。

 普段は、私が適当に座ったり畳んだりした時さえ、着物に皺がつくって煩いヨハネさんが、こんなに無造作に袖を掴んで引っ張るなんて。何かよっぽどの事態かと、引き止められたことに加えて二重の意味で、私はびっくりしてしまった。

 

「ヨハネさん? どうかした?」

「あ、いや。その……」

 

 うまく言えない。

 そう伝えたそうな気まずげな表情で、トレーニングウェアのまま、ヨハネさんは俯いた顔を上げた。

 表情が揺れたのは私が振り返った時だけで、あとはじっと微動だにしない。

 彼の方が座っているから、いつもとは身長が逆転していて、私に見下ろされたままの格好で、露草色の瞳が不安そうに揺れている。

 不思議そうに戸口で私たちを待っているイサクさんと、ヨハネさんとを見比べる。なんでこの状況で私はヨハネさんに引き止められているんだろうと考えて、真っ先に思い浮かんだのは、一時的にでもペアを解消されて、寂しがっているとか嫉妬してるとか独占したがっているとか、そういう思い上がりも甚だしい理由だった。

 いやでも、妥当に考えてそれしか思いつかないんだけど。私にいわゆる「恋心に鈍感な主人公」という属性はないので、そりゃもう隙あらばバリバリにフラグは立てるし、いくらでも妄想するし決めつけるし都合のいい方に考える。

 ここはイサクさんよろしく声真似で「あれぇ〜? ひょっとしてヨハネさんさびすぃ〜のぉ〜?」とか声掛けるべきかと思ったけど(ちなみにこれはイサクさんじゃなく中の人ネタなので、イサクさんは別に関係ない)、なんかそんな風に茶化すのも憚られるほどヨハネさんが痛々しい目をしていたので、私は言葉を飲み込んでしまった。

 

(ほんのちょっと、ペアを交代するだけなのに……)

 

 いつも傍にいるのが当然だというような顔をして隣を歩いているから、それで不安になるような人ではないと思った。いや、実際私の前どころか、仲間を前にしてもそんな私情ひとつで分かりやすい態度を見せつけるような人ではないし、むしろそういうの嫌ってて、からかわれたところで「そんな事ないからッ!」と条件反射で否定するに決まってる。

 だから今だって、問えば否定するだろう。

 意外だなと言われたり、寂しいのかと聞かれたら、ただなんとなく行かせたくなかったのだと、自分の気持ちを押し込めて見ないふりをして、なあなあのまま何事もなかったかのように手を離す。周りにも、なんだ勘違いだったのかと思わせる。そういうことができてしまう人に、違いないと思った。

 ヨハネさんは、器用だから。

 でもね。本当は分かりやすいぐらい、瞳に書いてある。

 行かないでくれ、一人にしないでくれ、と。

 本人がいくら誤魔化したくても、泣きそうなぐらい必死に訴える、その瞳に一瞬たりとも感情が過ってしまったら、私は無視できない。

 あなたが、好きだもの。

 

「うわっ、ちょッ、何して……ッ!」

「だ〜いじょうぶ。一曲だけ攻略が終わったら、すぐ戻って来るよ。

別にペア解散するわけじゃあるまいし、誰と組もうと、私がヨハネさんのパートナーである事実は変わりないんだからさ。どこにも行かないから、心配しないで」

「何当たり前のこと言ってんのさッ! いいからさっさと行きなよ!」

 

 ぎゅっと抱き着いて頭を撫でると、固まっていたヨハネさんに速攻引き剥がされる。

 ちぇっ。いつも私の方が背が低いから、いいチャンスだと思ったのに。

 怒られながらも、それ以上深入りすることはせず、私はさっさと手を振って背を向けた。

 怒られたけど、これが正しいはずだ。寂しいとかどうとかいう感情論じゃなくて、「私は帰って来る」という事実さえ確認できれば、彼にはきっと十分なのだ。

 

「さて。いくらなんでも、これだけじゃ誕生日祝うには申し訳ないよね。

トレーニング終わったら、ケーキでも買いに行きますかね〜」

「いや……甘いモンならたった今食ったばかりだからさ、気にすんなよ……」

「え、そなの? いつの間に」

「てか、糖分過剰すぎて吐きそう……」

「えっ、大丈夫!?」

 

 なぜか具合の悪そうなイサクさんを慌てて追い掛けると、呆れたような苦笑いで、なんでもないと自販機の水を投げられた。

 キャッチして首を傾げながらも、それからしばらく、私は珍しい相手とのトレーニングに打ち込んだのだった。

 

***

 

「お疲れ」

「おう。そっちこそ、評定サンキュな」

 

 着替えて更衣室を出、執務室に戻ってからコーヒーを手渡してきたイサクに、ボクは気にするなとかぶりを振りながら、熱々のそれを受け取った。

 ムラサキとイサクが組んでトレーナーと闘っている間、ボクは暇なので、審判と一緒に戦闘レポートを務めた。戦績が記されたレポート用紙を渡し、隣の席で一緒に見ながら紙を捲っていると、イサクが不意にくっくと笑い出す。

 

「……どうした」

「いやぁ。さっき更衣室で……オレ、お前のあんな顔初めて見たなぁと思って」

「……忘れろ」

「別に笑い者にしようってんじゃなくて。なんか、いいなぁと思ったんだよ」

 

 めちゃくちゃ不本意だったが、茶化す雰囲気ではなさそうだったので、ボクはしぶしぶイサクの無駄話に付き合うことにする。

 

「別に、あんたとムラサキを組ませるのが嫌だったとか、そういうわけじゃない。

実際、他の人間と組んだ時にしか学べないことは色々あるし、貴重なデータも取れたから、イサクには感謝してる」

「それは分かってっけどさ。別にお前、そんな敵意剥き出しな顔はしてなかっただろ。だったら何だ? 一人で置いてかれそうになって寂しかったとか、盗られそうで不安になったとかか?」

「そんな赤ん坊みたいなことボクが考えるわけないだろ。うまく言えないけど……」

 

 話に付き合うとはいえ、何度言おうとしても、言葉に詰まる。

 イサクとムラサキが、ボクを仲間はずれにするような人じゃないことはよくわかってる。

 ムラサキが、ボクを一人にするような人じゃないことも。自分が寂しがりみたいで、認めるのは癪だけど……正直、そこには安心してる。

 だからこそ、ふと顔を上げて後ろ姿を見た瞬間に、何の前触れもなく怖くなった。

 人は、何かのきっかけで簡単にいなくなる。

 当たり前のように傍にあった手が離れた瞬間、いつもボクが後ろに守っていた小柄な背が遠ざかった瞬間、なぜかもう二度と——隣から、いなくなるんじゃないかって気がして。

 気がついたら、服を掴んでいた。理由なんて、説明できなかった。

 

「自分でもバカバカしいと思うんだよね」

 

 ただ思ったことを言っただけだけど、何故かイサクは呆れたような顔をして、ぼーっとボクのことを眺めていた。

 

「お前、なんていうか……意外と心配性っていうか、ロマンチストってーか……見た目によらず大袈裟だよな」

「悪いかよ」

「悪くはねえよ。前は見た目で誤解してたけど、お前って奴は仕事に対しても、相手を想うってことに対しても、真摯なヤツなんだなと思ってさ」

 

 なんかクソまじめなところユイトに似てるよな、と言われて思わず顔を顰めた。

 なんでボクがあんな奴と似てなきゃいけないんだ。

 

「真摯なんて言葉、一番ボクとは縁がないと思ってたけど」

「いいから受け止めとけって。褒められてイヤな奴はいないだろ」

「真摯……ねぇ」

「ま、とにかく気になってたんだよ。お前はまっすぐで……オレと違って器用だからさ。たまには隙とか気が抜ける瞬間とかねーと、潰れちまうんじゃないかって思ったけど。

けどまあ、あんなん見せつけられちゃあな。分かり合ってんだな、お前ら」

「……あんな、って?」

「わかんねーならいい、いい。同僚がいいパートナーに恵まれてる現場を見られて、オレには最高の誕生日プレゼントだよ」

 

 オーバーに目元を腕で覆っておいおい泣く仕草をしながら、イサクが空のカップを返却しに行く。

 なんなんだ、一体。

 思わず眉を顰めてしまったけど、自分の誕生日だっていうのに演習相手にコーヒーを奢るのを忘れない気配りの塊みたいな友人(ダチ)には、あとで夕飯かデザートの一つぐらい贈らないと不義理かな、と思いながら、ボクはさっさと定時で仕事を仕上げるべく、キーボードを叩き始めた。




※今更ながら考えたSOATの更衣室の設定ですが、MTF(男性として生まれたが女性へアイデンティティを変えたい人)やFTM(女性として生まれたが男性へアイデンティティを変えたい人)、その他の性別やノンバイナリー・無性の人にも考慮して、男女の他に多目的の更衣室みたいのがあったりします。誰でも使えて、中はそもそも個別のロッカーみたいに着替える区画が分かれているので、個室を開けない限りは互いの体を見たり鉢合わせたりする心配もなく安心。トイレにも同じことが言えそうです。

弊二次創作のセブンスコード全体に関しては、リアルのお偉いさんも関わって来るのでユイトの一存だけでは運営できないのと、未だに社会の価値観が変わってないところもあり、地域によってそのへんの設備はまちまち。
ユイトが上に立ってからは、せめてSOATの中からだけでもそのへんの意識を率先して改革しようということで、SOAT内は完全にジェンダーに配慮した仕様になっているようです。
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