SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集 作:大野 紫咲
セブンスコードに招待された青雨と、一緒にお酒を酌み交わす唯人。
一方、直生は夜羽や恵李朱と一緒に、セブンスコード内のハロウィンイベントに参加していたが……?
※短編集のフォルダに放り込んでいるのですが、時系列的には『オレンジの片割れ』本編の完結後を想定しています
(オレンジの事を全く知らない方でも何となく読める短編なので、わからない方は気にしなくていいです)
※一次創作とのクロスオーバーなので、『オレンジの片割れ』ではカタカナ表記しているキャラ名を漢字にしています
「いい、月だな」
「ああ、そうだな」
のんびりと、二人は夜空を見上げて杯を交わしている。日本風の料亭に、徳利とお猪口。貸切の部屋は畳の敷かれた純和風の様相だ。そこに赤い長髪の獣耳の男と、短めの柔らかな黒髪をした少年が、机の料理を挟んで並んで向き合っていた。
黄色く丸々と太った月は本物の夜空に見えるが、実はそうではない。大都会の街中では肉眼で観測出来ないであろう星々が明るく瞬き、地球を押し潰しそうなほど大きな月が黄色くその光を放っている時点で、空に投影された映像だとわかる。
「人間の作った空というのは、このようなものか」
「遠い世界の神には、お気に召さなかったか? あなたは、人間の事が嫌いらしいと夜翰に聞いている」
「人間の全てが理解できる訳ではないが、自分達が見たいと思う幻を作り出すのも、また人間らしさだ。現に俺の相棒も、そんな職業に就いて人を楽しませる事で、人の心に希望を灯している」
そう、どこか誇らしげに言って赤い狐耳を揺らした男――青雨は、尻尾を一振りして自らの杯を向かいの男のそれにぶつけた。少年、と呼べるほどに見目が年若いその男――
「セブンスコードの神と呼ばれる僕が、まさか本物の神に会える日が来るとは思わなかった。こんな場所まで来てくれて感謝する」
「お前達の言う、なんとかという技術の事はよくわからんがな。ここも、誰かの作りし夢の場所のようなもの。多少狭苦しくは感じるが、入り込むくらいであればどうという事はない」
秋の夜長や中秋の名月にちなんで、唯人は異世界で暮らしている友人の夜翰に直生、夜羽や恵李朱達、そしてそのまた友人である青雨を、バーチャル空間に作られた超大型エンターテイメントシティ・セブンスコードに招待していた。
唯人はセブンスコードのいわゆる管理者に当たる人間であり、ここはネット上のVR空間なので、遥か未来の技術を使ってこの世界にログインさえできれば、この世界に友人を招待して共に遊んだり暮らしたりする事は可能だ。たとえそれが、人の姿を取った神と呼ばれる存在であろうとも。
軽く首を傾げ、青雨の和装に合わせて浴衣を着流した唯人は、青雨が手土産にと持ってきた日本酒を口に運びながら言った。
「未だに僕も、あなたの神経接続がどういったデータ配列でこの世界に変換されているのか、よく分からないんだがな……。それにしても、バーチャル空間としては世界的にも有数と言われる程に敷地や容量は拡大したつもりだったんだが、それでもやはり神にとっては狭く感じるものなのか」
「俺の感覚的なものだ。お前達の技術やもてなしが不足しているという話ではない。気にしなくていい」
律儀に青雨がそう言ったところで、暗い夜空にどおんと花火が上がる。月にも負けない眩さと華やかさに、二人は揃ってのんびりと表情を和らげた。
「月の次は花火か」
「今日は花火大会は予定されていなかったはずなんだが……どこかの誰かが、夏の最後の思い出に上げたいとでも言い出したのかもしれない」
「風流だな」
刺身や鍋など、高級ながらも品のある和食を挟み、二人の料亭での会食は和やかに過ぎていったのだった。
***
そして一方、こちらは懐石料理での静けさなど欠片も感じられない、同街中のイベントエリアである。
「ちょっっっおいいい! 攻撃手段に花火使ってくるなんて聞いてねーけど!?」
「うーん、ボクの魔法が無制限で使えたらボッコボコにするのに」
「え、恵李朱、役者の人たちやロボットをボコボコにしちゃダメだよ……ひいぃっ、お化けえええ」
「つーか九月なのにもうハロウィンのイベントって早過ぎないか!? ゾンビ湧きすぎだろっ」
「割とふつーだよ直生くん、今からやったって一ヶ月しか、遊園地はハロウィンで儲け出せないんだから」
淡々と身も蓋もない事を言いながらも、恵李朱は楽しそうに直生の手を引っ張って、爆風の吹き荒れるビル街を駆け抜けていた。今にも腰が抜けそうで半泣きになっている夜羽を抱えながら、直生は逃げ惑う人々の波に乗るのが精一杯である。また背後で、ヘリか何かが墜落する音がした。もちろん遊び目的で作られたエリアなので、爆発時の破片が当たったり煙に巻かれたりしても人体に害はないが、どの演出も思わずこちらの身が竦んでしまうほどの迫力だった。役者と演技を生業としている直生でさえ、本当の非常事態なのではないかと慌ててしまうレベルだ。
「おい、あそこにまだ感染者の生き残りがいるぞ!」
「この街から一人たりとも出すなっ! 我々特殊部隊の名に掛けて、例のウイルスに触れた者はすべて排除するのだ!」
「だからああ、オレらはゾンビじゃねえって!」
最初はゾンビを退治するイベントだったはずが、紆余曲折あり、途中から話の通じない警官側にゲストが追われる形となっている。特殊部隊が使用してくる銃や光線に殺傷力はないものの、ダメージ量は蓄積されているらしく、一定数に達するとゲームオーバーとして退場させられてしまうため、イベント参加者の数は当初の半分以下にまで減ってしまっていた。
叫び散らしながら逃げていた直生が、夜羽達と共にゴミ箱の影に隠れながら悪態を突く。
「なーにが特殊部隊だよ。街の治安維持が目的だとか言いながら、こんなん口封じの大量虐殺と変わんねーじゃねえか。情報が漏れたら混乱するとか言って、どうせ国にとって都合の悪い事実を隠したいだけ……」
「おい、あそこから何か我々の悪口が聞こえたぞ!」
「花火弾用意! 始末しろ! 秘密を知った者は誰一人として逃すな!」
「げっ!」
自分達のいる場所を、大きな音を立てて爆発する花火と共に明るく照らされ、直生達は泡を食って逃げ出す。建物の上層階にあるレストランでイベントを鑑賞していた客達が、四方八方に反射する花火のプリズムのような輝きに歓声を上げたが、絶賛逃亡者である直生達に、もちろんそれを味わっている余裕などないのだった。
***
「何やら、殊更に賑やかだな」
「季節のイベントについては、榊を始めとする僕の同僚や部下達に一任していてな。こうしてここまで歓声が届くと、仲間の企画したイベントが成功しているようで嬉しくなる」
「唯人は、自分で考えたりしないのか」
「僕か。そうだな、僕もよく会議には参加させてもらう。実際の現場を動かしてくれるのは彼らだから、あまり大きな事を言ったり変更を加えたりは出来ないが、それでも随所にアイディアを採用してくれているみたいだ」
そう言って唯人が指を鳴らすと、部屋の明かりを落とした仲居が、木の皿に乗せた大量の白い団子を運んできた。
「たとえば、この月見団子だ。遠い昔にあったらしいという風習を元に作った。レストランの期間限定のメニューに加えてもらったら、物珍しさから注文する客が多く、評判がいいらしい」
「ほう。食べやすい適度な大きさで、弾力もある。これは月見酒にもよく合うな」
「月見酒? 月を見ながら団子を食うとは聞いた事があるが、酒を飲むのは初めて聞いたな」
平坦な瞳を瞬かせる唯人に向かって、青雨は暗がりの中で月明かりに照らされた顔を微笑ませながら言った。
「唯人にいい事を教えてやろう。月見酒というのは月を眺めながら酒と共にその美しさを嗜む事だが、その起源は秋の収穫を寿ぐ祭りに遡る。だから、収穫物である米を使って作られた酒や団子を月と共に楽しむ行いも、理に適っている」
「なるほど。それで青雨はこの、純米大吟醸、という酒を持って来たのか」
「米、米麹、水だけを使って作られた酒だからな。米本来の味や素材の良し悪しがそのまま出る」
バーチャル空間なので本物の酒ではないが、青雨が手土産にしたいと言った酒を元に唯人達がデータを分析し、かなりそれに近い味わいを楽しめるようにはなっている。先ほどから顔を綻ばせている唯人も、かなり気に入っているようだ。
「だとすると、酒を積極的に売り出していく事も多いに考えられそうだな」
「そして、団子だけではなく、秋の食材を使ったきぬかつぎという料理もある。こちらも丸く食べやすく、そして風流だ」
「きぬかつぎ? どんな食べ物だそれは」
聞き慣れない言葉に首を傾げてみせる唯人に、青雨は考えながら、指先で机の上に丸を描いだ。
「そうだな。芋を選べば、丁度、その団子と同じくらいの大きさになるだろう」
「芋を使って作るのか? しかし、じゃがいもやさつまいもでは大きすぎるように思うが」
「作り方はとても簡単だ。頭を落とした里芋を丸ごと二十分ほど蒸して、皮を剥いて塩や味噌だれをかけ、飾り付けるだけでいい」
「なるほど、里芋か。それならば芋を切ったり潰したりする手間も省けるな。コスト削減にもなる」
生きてきた時代が全く違う二人だが、話は上手く噛み合っているらしい。うんうんと頷き合ってから、二人が障子の外を眺めれば、今度は雪玉のようなものが大量にビルの合間で噴き上がっているのが見えた。
「あれも何かのいべんとか」
「そうらしいが……ここから見ると、丁度月見団子のようだな」
「唯人のあいであが、あそこでも採用されているのかもしれない」
「そうだといいんだが」
そう言って、向かい合った二人はまた、のんびりと酒を啜ったのだった。
***
「おい誰だよ戦闘用の月見団子に粘着力付けろなんて言った奴ッ! ブチ殺すぞクソが! つーか食べ物を武器にするなっ! バチ当たりなんだよ炎上しろ!」
「直生くん、叫んでもこのベタベタは取れないんだから落ち着いて」
「ひゃああ、足がくっついて逃げられないよお」
花火に光線銃にと反則級の技を色々と使ってきた特殊部隊であったが、ついに掃討作戦にでも出たのか、逃げ惑う参加者達にカラーボール大のボールを投げ付け始めた。ただのペイントボールかと思えばとんでもない代物で、当たった時に破裂した中身が鼠取りもびっくりの粘着力を有しており、地面に足を取られたり壁に貼り付けられたりした参加者達が、次々と脱落している。
「つーかマジでどこまで逃げりゃいいんだこれ……」
「なっ、直生くん! あそこ、ゴールだよ! 白く光ってるとこ!」
夜羽に促されて直生が顔を上げると、ゴールテープのようなものが建物の間に光っている。顔を見合わせた三人は、投げられる団子の猛攻を交わしながら、猛然と路地の間を走り出した。
「うおおおおお!」
直生よりも先に、夜羽と恵李朱がゴールテープを切る。無我夢中で走り切った後、手を取り合った二人が、ぱあっと輝いた笑顔のまま手を伸ばした。
「おめでとー、直生くん!」
「やったー、脱出成功!」
「おう!」
その手に応えながら、直生も自分の両手を差し出して弾けるような笑顔でゴールを通過する。まさにその時だった。
「えっ?」
ぐにゅりと、ゴムを踏んだような不可思議な感触がある。次の瞬間、直生はゴールの狭間に出来た落とし穴に取り込まれ、セブンスコードにある位相と位相の狭間に落ちていったのだった。
***
酒を飲み交わしていた青雨が、不意にぴくりと赤い耳を片方動かした。
「……すまないが、ここでの支払いはお前に任せてもいいだろうか」
「? どうかしたのか?」
唐突にらしからぬ事を言い始めた青雨に、唯人が首を傾げる。その前で袴の皺を伸ばして立ち上がった青雨は、窓の外に視線を向けたままで、夜風に結んだ赤い長髪を晒した。
「どうも、連れが何か面倒に巻き込まれているらしい」
「直生達か? あいつらなら、三人で遊びに行ったはずだが。しかし、どうして……」
唯人がそう言った瞬間、通信端末が鳴り響く。一瞬で仕事人間の顔に戻った唯人が、和装から隊服へとコスチュームを変え、腕時計型のそれに応答すると、慌てたようなSOAT隊員の無線が飛び込んできた。
『こっ、こちら、HW地区の警備担当です! ハロウィンイベント体験エリアのゲート付近にて、トラブル発生! 原因不明のバグにより、参加者が一名、バックヤードへの通路に取り込まれたとの事! あそこは整備不良だったゾンビのプログラムも一時廃棄しており、このままだと遭遇の危険が……!』
「なんだと?」
それを聞いて素早く指示を飛ばしていた唯人が、青雨の方へと顔を向ける。何と青雨は上層階にあるこの和室の窓から、今にも一人で飛び降りようとしていたところだったが、その風に靡く髪を見て、唯人は思わず苦笑しながら端末を指差した。
「どうやら、お前の言う“面倒”は僕の目的地とも同じみたいだ」
「なるほど。それならば、共に行くか」
「行くと言っても……流石にバーチャル空間上の僕の殻では、この高さから普通に飛び降りれば耐え切れないと思うのだが」
「いい方法がある」
大きな月を前にそう告げた青雨の冷静な瞳を、唯人は不思議そうに見上げた。
***
「いってえ……どこだ、ここ」
直生が尻を摩りながら辺りを見回すと、その様子は先ほどまでのセブンスコードの賑やかな街とは一線を画していた。灰色の無機質な世界と骨組のようなものが広がり、不気味なうなり声のようなものが聞こえてくる。
そういう演出なのかと一瞬思ったが、だとしたら夜羽や恵李朱達も一緒にいるはずで、自分だけが意図せず巻き込まれたという事は、これは異常事態なのだと察しがついた。
「おいおい、あれで終わりじゃねーのかよ……」
大群になって歩いてくるゾンビの群れを見ながら、直生が顔を引き攣らせて一歩後ずさる。あちらもこちらもゾンビだらけで、丸腰のこちらには大変分が悪い。地下駐車場のようなここは広さだけは十分にあるようだが、それ故に逆に出口の方向もわからず、とっさに身を隠せるような場所も見当たらない。絶体絶命だ。
「ウガアァ!」
歯のところどころ抜けた血みどろの口を開けながら、ゾンビが襲いかかってくる。まるでその鳴き声に触発されたかのように、群れになったゾンビは次から次へと連鎖して、両腕を上げながら直生の方へ倒れ込んできた。
ゾンビが作り物ならばまさか本当のゾンビウイルスはないと思うが、人間とはいえ噛まれて怪我をすれば洒落にはならない。コントロールを失い、狂ったように互いを襲ったり、はたまた直生の方へ突進してくるゾンビ達を交わしながら、直生は咄嗟に通信端末へ指を伸ばした。神である青雨とは念話も可能だが、果たしてバーチャル世界でそれが通用するものか分からなかったので、二度手間になる可能性を危惧してこの世界の通信機器に頼る。
廃車になった車の上を飛びながら逃げていると、程なくして青雨が出た。どうやら、慣れない通信機器のボタンに手間取っていたらしい。
『どうした』
「どうしたじゃねーよこのクソ龍神! お前、どんな時でもオレの事守ってくれるって言ったじゃんか!」
『たしかに、言ったが』
どこかぽややんとしたやり取りに、直生は苛立ちを募らせて通信端末をぶん投げそうになったものの、それでは本当に通信手段が失われてしまうので必死に我慢した。
「こっちはヤバいってのに何してんだお前!」
『お前達と別れてから、約束通り唯人がれすとらんとやらを案内してくれた』
「だーっ呑気に唯人と飯なんか食ってる場合か! ゾンビの大群に囲まれて大変な事になってんだよ! 何とかしろ!」
突然巻き込まれた不運への八つ当たりも含め、直生が怒鳴り散らしながら、這い上がってくるゾンビの頭を拳で粉砕する。体が柔らかい分、意外と肉弾戦が通用するのか、白目を剥いた死体達を回し蹴りとパンチでどうにか蹴散らしていると、通信機からは呆れたような声が聞こえてきた。
『お前、普段あれだけ俺に稽古を付けられていたのだろう。龍神の神子を名乗るなら、その程度自分でどうにかしてみせろ』
「アホかーッ! 元の世界ならともかく、こっちの世界にお前の言う氷気だの剣だの持ち込める訳ねーだろ! 危険物は持ち込み禁止だっつの! そうじゃなくても、人間のオレにバーチャル空間で魔法なんか使えるか!」
『人間の作った空間ならば、好き勝手事を起こすにはお前の方が有利だと思うのだが……まあいい。もう、お前のすぐ後ろにいる』
「はっ?」
何の事だ、と言いかけた直生が振り向く間もなく。凄まじい轟音と共に、建物の天井がガラガラと崩れ落ちた。
「おわあああ!?」
突如降り注いだ月の神聖な光と、街から溢れる灯りの眩さに、ゾンビ達が頭を覆って倒れていく。それでもなお立ち上がって襲い来るゾンビの頭上が、今度はあっという間に雲に覆われたかと思うと、もはや洪水と言っていいレベルの大雨が降り注ぎ、呻き声を上げる彼らを次々と地下通路の遥か彼方へと押し流した。
ごぼごぼと、大量の水で溢れかえった地下からは排水溝のような音がする。土煙さえも一瞬で沈めてしまう雨の中で、車の屋根に登った直生がようやく腕で覆いながら顔を上げると、そこには唯人を背に乗せた、神々しい一匹の赤い龍の姿があった。
「間に合ったか」
「相変わらずやる事なす事派手すぎるっつの……」
「ここの遊園地の遊びほど、派手ではない」
「そーかもしんねーけどな! ああもうわかったよ、助けてくれてありがとう!」
律儀に答えただけなのに、半分怒ったようにぎゃーぎゃー怒って礼を言ってくる直生を見て、青雨は龍姿になっても尚褪せない純朴さで、きょとんと大きな頭を傾げている。その様子をどこか面白そうに見ながら笑っていた唯人は、身軽に青雨の体から降りると水没した車の屋根に着地し、直生を助け起こした。
「すまない。原因は追って調査させるが、どうも空間を区切っているゲートの転送システムにエラーがあったらしくてな。ケガはなかったか」
「ああ。しかし、相変わらず助けに来るのが早いな。流石、頼りになる隊長様だぜ。いや、隊長よりうんと偉いんだっけか?」
「階級は関係ない。街の中で悲鳴が聞こえれば、管理者の僕が解決のために尽力するのは当然だ。それに今回は、青雨がいてくれたおかげで早く駆け付ける事ができた」
「俺は、唯人の案内のおかげで慣れぬ土地でも迷わず来る事が出来たのだから、お前のおかげだ」
どういう理屈か、バーチャル空間でも龍の姿に戻る事は出来るらしい。ふわりと浮いたままで、立派な髭を風に流している青雨の姿を、唯人はどこか嬉しそうに見上げた。
「しかし……龍の背に乗るなんて、このセブンスコードが出来てからすら、どこかファンタジーの世界の出来事みたいに思っていた。誕生日にとんだ夢が叶ってしまったな」
「誕生日……えっ、今日なのかよ!? ちょっと待て、今年の唯人の誕生日って満月だっけ!? 中秋の名月ってもう終わってるくないか!?」
「セブンスコードの中では、長く月見ができるように長めに空模様を設定しているからな。こんな目に遭わせておいて言うのも何だが、皆のおかげでいい祝いになった。ありがとう」
「言ってくれりゃ何か用意したのに……忘れてたオレも悪いけどさ。よっし! 今から夜羽と恵李朱とも合流して、改めて遊び倒すか!」
びしょ濡れでそう言った直生に、唯人は珍しく子供のような表情で笑い声を上げる。その様子を、側で沈黙を貫いた青雨は見守りながら嬉しそうに目を細めていた。
そうして、その年のセブンスコードには、SOATの隊員を乗せた赤い龍が満月の夜空を時々飛んでいるという、まことしやかな都市伝説が流れたという。
青雨とユイトさんって何となく似てるよね……
と青雨を一次創作で書き始める前から思っていたので、この二人会わせたらどうなるんだろうというところから書き始めて、気がついたら七千字になってました。
二次創作でずっとユイトさんを書いていたので、青雨の口調って実は私にはすごく書きやすくて。
性格がどことなく天然っぽいのも似てる気がします。
コナンの「世紀末の魔術師」という映画に、毛利のおっちゃんと鈴木会長が二人でのんびり料理食べて酒飲んで月を眺めてるシーンが出てくるんですけど、あれを書きたいなあと思いながらオマージュしました。
雰囲気は完全にあれです笑