SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集   作:大野 紫咲

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任務帰りのヨハネさんから桜餅をもらったムラサキと、それを一緒に食べるヨハネさんとリアちゃんのお話。
(※夢主の名前はムラサキです)
(※夢主はSOATではありませんが、この時はSOATとちょっとした協力関係にあります)
(※ヨハネさん×夢主の予定ですが、この時は多分まだくっついてません(両片想?))


嘘は言ってない

 

【挿絵表示】

 

 

「何これ」

「桜餅。セブンスコードいちの和菓子屋さんのだって。任務のお礼で貰ったから、あんたにもひとつあげる」

 

 そう言われて、隊服のグローブに載ったピンクの可愛らしい小さな餅と、ヨハネの顔をぱちくりと見比べたムラサキは、その和菓子と同じ桜模様の袖から伸ばした手で、笑いながら受け取った。

 

「ありがと。何もしてないのに、私が貰ってもいーの?」

「隊長である超・太っ腹なボクからのプレゼント。たまには、気分転換もないとね」

「でも私臨時雇いで、正式な職員ですらないよ」

「いいから。ここに居るのはみんな仲間、ってことでいいだろ」

 

 どうやら、よっぽど嬉しいことがあったらしい。他の隊員たちの手に桜餅を押し付けて回るヨハネと入れ替わりに、リアが言った。

 

「それに、ムラサキさんは何もしてなくないですよ。私達がいない間に、事務のお仕事を沢山手伝ってもらいました」

「いや、でも、そんな……元々は、私の植能を調べるためっていうのでもあるんだし。普通の人でも出来ることをやってるだけで、特段すごいことは」

「それでも、いいんですっ。どんな仕事でも、やってくれた人は助かると思います」

 

 珍しい袴姿にちらちらと向けられるSOAT隊員の視線を受けつつ、リアの言葉に照れたように俯いたムラサキが頭のリボンを直していると、バタバタとヨハネが戻って来る。

 

「よっし、これで終わりっと。和菓子っていうと、やっぱりお茶だよね」

「あっ、私今、淹れてきますねっ。この間、いい茶葉が手に入ったんです。折角なので、皆さんと飲んでみたいです」

「ホント? なんかリアちゃんのお茶横取りするみたいで、それは申し訳ない……」

「大丈夫ですよ。沢山あるので。いつも通り、濃いめにしてきます」

「リアちゃん! 今日は杉浦いないし、別に濃いめじゃなくても……行っちゃった。まぁいいか。先に食べる?」

 

 包みを開けている隊員もいたが、ムラサキは問い掛けるヨハネに頭を振って、リアの帰りを待つことにする。湯呑をお盆に載せて戻って来たリアから、お茶を受け取って配るのにムラサキが腰を上げると、すぐ後ろにバケツリレーの要領で立つヨハネがいた。

 

「ん」

「待ってていいのに」

「じっと待ってるの性に合わないんだよ。お茶淹れてもらったの、ボクのお菓子のためみたいなもんだし。そっちのお盆の分、全部配るから頂戴」

 

 隊長職以外の場面でも、何かとマメなヨハネであった。

 三人いれば配るのもあっという間だったので、お茶が冷める前に三人で席に座り、湯気の立つ緑茶を啜りつつ、桜餅を齧る。

 

「わぁ、おいしいです!」

「うん。おいしい。バーチャルの世界なのに、飲食店で『セブンスコードいち』とかあるんだねぇ」

「データでどれだけリアルの味を表現できるか、っていうのが見せ場だから。凝る店は結構凝ってるね。ここのも、桜の香りと餡の風味が絶妙」

 

 三人で口々に感想を言い合いながら桜餅を食べていると、白衣に眼鏡のスタッフが、すぐ傍を通り掛かった。

 ムラサキの顧客兼友人にして、〝自称〟研究者のミソラだった。

 

「あれ? 何みんなして美味しいモン食べてんの?」

「残念でした。ミソラの分はもうないよ」

「別にヨハっちに期待はしてないよ~だ。へえ、桜餅?」

「はい。ヨハネさんが、帰りに買ってくださったんです」

 

 こしあんを口の端に付けたまま、笑顔で答えたリアを、ムラサキが怪訝そうに見やる。

 

「あれ? さっき確か任務のお礼で貰ったって……」

「わー! わー! リアちゃん! それは黙っててって!」

「あ、すみません……つい」

「へえぇ? 優しいとこあるじゃん? ヨハっち! それとも、ガールフレンドにいいとこ見せたくて……かな?」

「なななななっ何っ何の話ッ? っていうか、ガールフレンドとかじゃないしッ! いい加減その話は……!」

 

 あからさまなからかいに、ひとしきり狼狽するヨハネを楽しんでから、ミソラはふと、澄まし顔のムラサキの方を見て不思議そうに首を傾げた。

 

「それにしても、あんたが桜餅食べてるって珍しいねぇ。ムラサキって、桜系の味がするもの苦手じゃなかった? それにぃ、カフェイン多いから濃いお茶も苦手だよねぇ、たしか」

 

 ムラサキの喉が、ごきゅんと変な音を立てる。ヨハネとリアが、それを受けて一斉にムラサキの方を見た。

 

「え、そうなの!?」

「そうなんですか!?」

「前に、あたしにそう言ってたよん。ほら、ムラっちって、他の子と違ってセブンスコードに居ても痛みとか体調不良とか感じちゃうじゃん? カフェインの入った飲料も、摂り過ぎると具合悪くなるんだ~って」

「わわわっ、私、そうとも知らず濃いお茶を……ごめんなさいっ!?」

「ていうか、なんでさっきから黙って無理して食ってるワケ!?」

「いやあの、ごめん二人とも……でも別に無理はしてない……ちょっとミソラ、余計なこと言うから二人が心配するじゃん」

 

 へへん、と何故か得意げな目をしたミソラを、ムラサキが呆れて見上げる。

 

「あたしは、ムラサキ応援部隊として、ムラサキの大事な情報を教えに来ただけなのだっ。じゃね~」

「行っちゃったし……はぁ、ごめん。でも、桜餅おいしいって思ったのはほんとなんだよ」

「え……でも、苦手なんでしょ?」

 

 呆然と、理解不能という顔をするヨハネに、ムラサキは首を振る。

 

「だって、そんな食べれないとか吐くとか言うレベルの話じゃないし。お腹空いてる時に目の前に置いてあったら、躊躇なく食べるでしょ」

「それは、苦手という問題ではないような……」

「ミソラの奴が大袈裟なの。ん~~……菓子類の風味の中では、好みの方ではない……ってだけ?」

 

 自分でも首を傾げるムラサキに、なおもヨハネがげんなりと言う。

 

「でも、だからって『おいしい』はないだろ……」

「いやいや、『私が今まで食べてきたことのある桜餅の中では比較的美味しい』みたいな」

「何その微妙な相対基準!」

「え……あの、ごめん……マジでけなしたつもりも悪気もなかったんだけど、やっぱ傷付く……?」

 

 困ったように微笑んだムラサキが、二人を見て、ハーフアップの頭を傾ける。

 

「だって、私の中じゃ、ヨハネとリアちゃんと一緒に、二人が買って来てくれたり用意してくれたもので、お茶することが一番の目的だから。多少苦手だからって、二人と一緒にいたら苦手だとすら感じないもん。私は、この時間が一番大事。それはほんとう」

 

 包み込むようにお茶を啜るムラサキの前で、顔を見合わせるヨハネとリア。幸せそうな顔のムラサキを見て、なんとも言えない面持ちになる。

 

「ムラサキの気持ちはわかったけど……でも、苦手なものを我慢して食べるほど、ボク達の前で無理しなくていいんだからね」

「ムラサキさんがいいならいいんですけど……やっぱり、我慢はよくないですよ」

「ありがと。我慢ってほどのプレッシャー感じてないから、大丈夫だよ。それに、餡子も和菓子も好きだし。おいしかった」

 

 ことん、とムラサキが湯呑を置く。それに釣られて自分もお茶を飲んだリアは、すっかり忘れていたことを口にした。

 

「あれ? そういえば、お茶って……」

「ああ、これは味が苦手とかじゃなくて、単にカフェインが体質に合わないだけだから、どうにもならないかも……」

 

 ぶふっ、とヨハネがお茶を噴きかける気配がする。何を思ったか、ムラサキはその半襟を合わせた胸元を、慎ましく張った。

 

「だいじょぶ、この後は上がりだから、お腹壊しても気持ち悪くなっても、誰にも迷惑掛けないよ」

「そういう問題じゃないッ!!」

「それは大丈夫じゃないですよ!?」

 

 口々に言う二人。ヨハネがすかさず湯呑を奪い取る。

 

「やっぱり無理してるんじゃん! もう半分くらいなくなってるし! ていうかなんで飲んだの!?」

「なんとなく今日はいけそうな気がしたから!」

「さっきの桜餅といい、君の判断基準一体どうなってるわけッ!?」

「す、すぐに代わりのを……ああっ、でも、お茶がダメなんですよね? どうすれば……」

 

 右往左往するリアを、水で大丈夫だからと必死で止めるムラサキ。

 その隙に有無を言わせずムラサキのお茶を飲み干したヨハネに、当然間接キスを気にしている余裕はなかった。

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