SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集 作:大野 紫咲
(※夢主の名前はムラサキです)
(※同じ布団で寝るほど仲がいいので、多分くっついてる時だと思います)
それは、ある夜の夜伽話に、ヨハネがSOATの隊員であった頃の武勇伝を話していた時のことだ。
今ではもう隊長だが、それはもっと前の話――ヨハネが、初めてSOATに入隊してコルニアを貸与された時にまで遡る。
ミカとつるんで捻くれたまま、SOATでの仕事に誠意を持てずにいたヨハネを更生させるきっかけになったという、元SOAT隊員・ナラハシの話を、もう何度目か聞いたムラサキは、苦笑しながらベッドサイドの灯りの下で頷いていた。
「そこまでボカスカ拳骨で殴ってくる人のどこらへんが、そんなにヨハネさんの正義感を呼び覚ましたのか、私は何度話を聞いてもイマイチわかんないんだけど……」
「わかってないなぁ。何度突っぱねられても、分かるまで相手に語り掛けるあの姿勢! 拒否されても情熱を持って諦めずに説得する粘り強さ……ナラハシくんは、ボクみたいな偏屈者の心さえ動かしたんだ。まさに、正義感の鑑だよ」
「……ふぅん?」
思い出話を聞いていたムラサキは、何気なくそう呟くと、おもむろに暗がりの中でごそごそと寝返りを打ち、ヨハネに背を向ける。
「……あれ? ムラサキ?」
しばらく夢見る瞳で語り続けていたヨハネは、唐突な会話の断絶に置いてきぼりを食らってムラサキを振り返った。布団を被ったままの肩は、壁と反対を向いて動かないままだ。
暫し考えてから、ヨハネも同じ方向を向いて身を横たえる。
「……サキ?」
「まあ、ヨハネの心を動かして、こんなに時間が経っても狂いなく羨望の眼差しで見つめ続けられるくらいだから、相当すごいんだろうな〜って。私は会ったことないけど」
「……あんた、ひょっとしてちょっと妬いてる?」
「ううん、ソンナコトナイヨ」
「妬いてるね?」
「いやいや、よもやよもやですよ」
「ちょっと、他のアニメの台詞で誤魔化そうとしないでよ」
思わず苦笑したヨハネの目の前で、後ろを向いたままのムラサキの肩口からは、努めて冷静な声が聞こえてくる。
「いやほんと、別にそんな。まさかそんなことぐらいでねえ? 人の過去は過去だし、そんなことぐらいで妬くとか、絶対に重い女だと思われるから、私は気にしてないよ」
「それ、もう自分で言ってるじゃん……」
呆れるように言ってから噴き出した後、ヨハネが顔を覗き込むと、ムラサキは見事にぶすくれていたので、その表情にますます笑ってしまった。
「むぅ……」
「あっはは……何? あんたでも、子供みたいにそんな焼き餅焼くことあるんだ」
「どうせ私は子供ですよう。子供な上にクソほど愛情が重い女なんだから仕方ないじゃん。自分でも気持ち悪いほど重いから、これでもボロ出さないように頑張ってんのに」
「バレバレだって……ああ、笑った」
お腹を抱えていたヨハネは、後ろを向いたままのムラサキの背に両腕を伸ばすと、体を抱きながらその長い髪を指先で梳く。艶やかな茶色の手に、黒髪が蜜のように絡みついた。
「そんな顔しないでよ。ナラハシくんとは、別にそういう仲じゃないんだから」
「恋人かどうかを気にしてるわけじゃないもん……」
「ほんとにあんたって、普段涼しい顔してるくせに嫉妬深いなぁ。ミライ隊長みたいだ」
「あんまり生意気言うと、ミライさんに言い付けてコールブラダーで石にしちゃうからね」
「どっちかっていうと、あれマシンガンだけど……。ふーん? そんなことしたって、ボクは動けないし喋れなくなるだけだよ」
「……ガラスの棺に鍵掛けて、永遠にコレクションしてやる」
「怖っ。リアルでそういうこと言う人初めて見たんだけど」
もちろん、そんなことを言っても本気ではないことはわかったまま、ヨハネが小さく肩口を震わせると、振り向いたムラサキがぼすっと胸の中に顔を埋めてきた。
「やだ。もうこんなクソ重な女絶対やだ。私は束縛も嫉妬もしたくないのに。自分で自分がキライ。結局隠せなくて、こういう乙女ちっくな発想で悩んでる頭のめでたい自分もキライ。気持ち悪くて吐き気がしそう〜。おええ」
「そこまで言わなくても。ボクは、嫌いじゃないよ?」
「いや、ヤでしょ、普通に考えて。そんな、自分に影響を与えた恩人全部に牙剥き出しの女……。嫉妬なんて、その人にさえ見えなければ、ないことになるのに」
だから隠そうとするのだろうか、と、ヨハネは嘆息するムラサキを前に考える。
けれど、正直にそう打ち明けられることに、息苦しさは感じない。嫉妬に苦しむ自分を自覚して抱えた上で、尚も相手を受け入れようとする、包容力のせいだろうか。
心が狭い、と連呼して転がり回る彼女を、ヨハネ自身は特段狭量だとも優しくないとも、思ったことはないのだけれど。
そう苦笑して、ジタバタ転がる彼女を捕まえた。
「むぎゃ」
「キミの心より、こっちのベッドの方がよっぽど狭いから。ホコリが立つだろ。わかったらじっとして、目を閉じて」
大人しくなった彼女が、眠る前にとランプの紐に手を伸ばすより先に、灯りを消した。
ほんの少しの感謝とご褒美に、瞼へ口付けを降らせた自分の表情が、見えないことを祈りながら。