SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集   作:大野 紫咲

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【オレンジの片割れ】第一部・三章1節の後にあたるお話です。
ムラサキ達と別れたリアとヒバリちゃんの、ちょっとした小話。


ふわふわの胴上げ

 人通りの多い広い街路を、リアはヒバリと一緒に歩いていた。

 ヨハネ達がこれからSOATへ向かうので、保護者として後を引き継いだリアが、外出許可の残りの時間帯を、一緒に過ごすことになったのだ。

 手は繋いでいるが、基本的にはヒバリの好きな場所に行かせようと、リアは隣にいる少し緊張気味の姿をにっこり振り返る。

 

「ヒバリさん。どこか行きたいところはありませんか?」

「いきたい……とこ……?」

「はい。今はヒバリさんの外出時間ですから、どこでも好きなところに寄っていいですよ。シェルターまでの道は私がわかりますから、大丈夫です」

 

 都市のワープ機能も復旧したし、多少離れたところへ出歩いても問題はない。

 あまり遠くまで出かけたことはないのか、ヒバリは中心街の風景を見ながら、んー、と首を傾げて考えていた。

 と、その時だ。ヒバリの肩に乗っていた青い鳥――ことりが、何かを察知したように顔を上げると、ぱさぱさとそちらへ飛び立った。

 

「ぴっ」

「あ」

 

 突然、どうしたのだろう。顔を見合わせてリアとヒバリが追い掛けると、ことりは二人が追い付くのを待つかのように、ゆらゆら揺れる木の枝に止まっていたかと思うと、また芝生の方へ飛んで行った。どうやら、公園の中に用があるようだ。

 

「ここ、まえも、むっちゃんと、きた」

 

 人型をした石像の前で、ヒバリがきょろきょろと辺りを見回す。

 広々とした芝生はかなりの広さで、遠くに見える噴水や遊具など、子供が遊べそうな場所も揃っている。キャッチボールやサッカーに興じている人達もいた。

 天気もよく、日差しもあたたかで、まさに絶好のお散歩日和だ。平和な風景に思わずリアは頬を綻ばせたが、ことりの用事はそっちではないらしい。小さな生垣の上で一声鳴いたかと思うと、その後ろにがさがさと身を隠す。

 何だろうと二人で生垣の後ろを覗き込んだリアとヒバリは、あっと声を上げた。

 

「わあ……鳩さんの群れですね」

「すごい、はとさん、いっぱい」

 

 一見こんもりした背の低い木々に隠れて見えづらいが、その内側には小さな東屋と泉のような場所があり、集まった鳩たちがのんびりと水を飲んだり、餌をつついたりしていた。時々ここへ来る人がいるのだろう、地面には穀物のような粒が残っていて、絶賛食事の真っ最中だ。

 黒に白、ちょっと他には見ない色なども混じって、様々な種類の鳩がいる。

 

「あそこ、ことり、いる」

 

 驚かせないように、しゃがんで近づいたヒバリに倣って、リアも背を屈める。

 一羽だけ異様に浮いた派手目の青い毛にも関わらず、すんなりと鳩の群れに混じったことりは、群れの傍にいた大きな鳩にぴぃぴぃ鳴き掛けていた。真ん丸のフォルムが特徴的な、土鳩らしきグレーの鳩だ。威風堂々として、いかにも群れを束ねるリーダーらしき風格を醸し出している。

 ことりに気付いた丸い鳩は、驚いたように体を上下させると、嘴をちょっと噛んで挨拶をする。それから何か話をするように、身振りも交えてことりと鳴き交わしていた。

 

「くぅ。くぅくぅ」

「ぴー」

「なかよし、だね」

「お友達ですかねぇ」

 

 傍にちまっとしゃがんで観察しているヒバリ達に気が付いたのか、丸い鳩を中心にして、鳩たちがこっちに寄って来た。興味津々な様子で、ヒバリ達のことを見上げている。

 あまり近くで鳩を見た事がなかったヒバリは、ぺたんと尻餅をついて、首を傾げて見上げてくるふわふわの鳩に驚いていた。

 

「わあ」

「大丈夫です、怖くないですよ」

 

 とはいえ、リアも触れられるほど近くに鳩がやって来たことはないので、鳩たちの人慣れ具合にはちょっと驚いていた。ことりはというと、自分より一回り大きなさっきの丸い鳩に毛づくろいをされながら、ヒバリと鳩を見比べて、何か説明するように鳴き声を上げていた。

 

「ぴっ、ぴっ」

「くぅ」

「うーんと、これは……?」

 

 職業病のようなもので、興味を刺激されるとうっかり鼻が疼く。嗅覚(オルファクトリー)の植能を発動させて、リアはことりの匂いを辿ってみた。

 

「くんくん……ことりさんから、この鳩さんの匂いがしますね。前にもことりさん、ここの鳩さんたちに会ったことがあるみたいです」

「そう、なの?」

「はい。微かにですが、思い出からエレメントの香りもしますから……もしかしたら、危ないところを鳩さんたちに助けてもらったんじゃないでしょうか」

「そっかぁ」

 

 納得したように頷いたヒバリは、ことりの傍にいた丸い鳩の傍に膝をつくと、お礼を言った。

 

「じゃ、おれい、いわなきゃ。はとさん。ことり、たすけて、くれて、ありがとう。

ヒバリ、も、ことりの、ともだち。だから、ヒバリ、からも、ありがと、いうね」

 

 鳩に話し掛けたヒバリの口から、すんなりと言葉が出て来たことにも、リアは驚く。

 気にするな、といった様子で体を震わせた丸い鳩は、ぴょんっと飛び上がると、ヒバリの膝の上にその体を収めた。

 

「わっ。なでても、いいの?」

「ぽっぽぅ」

「ふわふわ。きもちいいね」

 

 ヒバリに撫でられて、鳩も嬉しそうに目を細めている。それを羨ましがったのか、他の鳩もヒバリの傍に来て次々と体をその傍に埋めていた。半分ヒバリが鳩に埋まっているような状況だ。

 

「ま、まってね。じゅんばん……」

 

 頭にことりも乗っけながら、ヒバリが目を白黒させていると、丸い鳩の合図で周りの鳩たちが一斉に羽根をばたばたさせた。ぶわっ、と局所的に強い風が起こり、なんとヒバリの体がふわりと、1メートルくらい浮き上がる。

 

「わっ、わぁ」

 

 よもやそのまま飛んで行ってしまうのではないかとリアは慌てたが、鳩たちが起こした不思議な風の渦の中へ、ヒバリの体はふわっと戻って来た。そんなヒバリとことりを胴上げするように、鳩たちは何度も風を起こして、一人と一匹を舞い上げている。

 

「ふっ、ふふっ。あははっ」

 

 リアの前で緊張気味だった表情が嘘のように、ヒバリは笑っていた。それを感じ取ったように、ことりも翼を広げ、上空を舞いながら楽しそうに歌っている。

 ヒバリは、リアルの世界でとある事情によって心の傷を受け、それが原因で心を閉ざしてしまったため、セブンスコードで感情を動かす訓練と療養を兼ねているのだと、リアは聞いていた。こうした触れ合いが、ヒバリの心にも思わぬ変化をもたらしているのかもしれない、と嬉しい気持ちになる。

 地面に降り立ったヒバリは、興奮気味に血色が良くなった顔を、リアへと向けた。

 

「ヒバリ、もう、はとさん、と、ともだち?」

「きっとそうですよ! 次は、何か一緒に食べられるおやつも、持って来ましょうね」

「……リア、も、きて、くれる?」

「はいっ。私はいつでもご一緒しますよ」

 

 自分にまでにこにこと話し掛けてくれたヒバリに答えると、ヒバリははにかんで俯いていた。

 何の変哲もない公園にこんな場所があるのは意外だったけれど、今日ここへ来られてよかったと思う。リアはぽかぽかした日差しの中で、ヒバリの気が済むまで、鳩たちと遊ぶ様子を見守り続けていた。

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