Fate/Grand Order operation Ark 作:山川山
やっと主人公君を(本当にちょっとだけ)出せた。
「──香、───つ香、立香」
「う、ん」
声が聞こえる。この声は…。
「アーク?」
「そうだ。私だ」
目を開けるとあの黒い空間だった。だが、黒い空間はガラスが割れるように少しずつ崩れていっている。そして、倒れている私の上半身を支えながらアークが私のことを見ていた。
「立香。時間がない。手短に伝える」
「う、うん。何?」
聞きたいことは私もあったけど何か深刻な雰囲気を感じて、アークに発言を譲る。
「すまない。私を許してくれ」
「───輩、先輩!」
「ハッ!」
目が覚めた。今のは、夢?
「よかった…。ひどくうなされていたので何か精神干渉を受けているのかと」
「ううん。大丈夫」
今の夢はきっとこの前のカルデアであったことと同じやつだ。なんで今、それが起こったのかはわからないけど、アークの無事が知れただけでも良しとしよう。
『起きたかい、立香ちゃん?早速だけど、リヨンに出発しようと思う。何か不調はないかい?』
「うん、ばっちりだよ。じゃ、行こう!」
リヨンに向けての道のり、その途中で街を見つけてマリーが情報収集をしてくれた。なんでも、この街にはリヨンから逃げてきた人達が大勢いるらしく、そのおかげで驚くほどスムーズに情報が集まったらしい。集まった情報を整理すると、リヨンにオルレアンに近い街の住民が突然やってきて、避難をするように呼び掛け、それにしたがってこの街に避難してきたこと。そして、これが一番重要な情報でリヨンには2人の守り神がいたということがわかった。
「1人は大きな剣を持った騎士さまで、もう1人は不気味な仮面を被った紳士だそうです」
「なるほど。そのどちらかがマルタ様の言っていたサーヴァントかもしれませんね」
「ええ。そして、住民の方達は一緒に避難をしようとさそったらしいのだけど、彼らは断った。きっと、住民達が少しでも逃げれるように囮になったのだと思うわ。後で合流するとも言っていたようだけど、今この街にいないということはつまり…」
「そこは聖女マルタのことを信じるしかありませんね」
マリーが集めてくれた情報の中には、ジル・ド・レェ元帥がリヨンを取り戻すために兵を纏めたという情報もあったけど、合流は難しそうだ。なにせ、敵は"ジャンヌ・ダルク"なのだから。悲しいけれど、合流しようとしたところで混乱を招くだけだ。
「ともかく、リヨンに行きましょう?もし、怪物にリヨンが占拠されているならば、フツーの兵士さんに倒せるとは思えないし……」
「……そうですね。もしそうならば私達だけで倒しましょう」
「大丈夫。私達なら絶対勝てる」
なんとなく暗い雰囲気を感じたから、自分を奮い立たせる意味でも声を発する。うん、少なくとも私はやれそうな気がしてきた。
「立香さん……。そうですね、この程度軽いものです」
「ええ、指揮官はそうでなくっちゃ!えーい、ご褒美です!」
「なっ!?」
はえ?今、何?マリー、唇に…え?
「どう、よかった?」
「……………」
「先輩、気をしっかり持ってくださいっ。……もう!」
あわわ…あわわわわわわ。
正直そこからの会話は頭に入ってこなかった。マリーがみんなしないの?とか、ジャンヌがしないとか言っていたような気がしたけど、動揺で何がなんだかわからなかった。私が正常な判断力を取り戻すには、しばらく時間がかかった。
──────
「あはは…、ごめんみんな…」
「いやいや、マリーにベーゼされた内の何人かはそういう反応をしていたからね。いたって正常な反応だよ、それは」
「ええっと、それでは、そろそろリヨンに向けて再出発しましょうか」
マシュがそう言うとみんなうなずいた後、リヨンに向けて出発した。そして、リヨンについたのだが…。
「思ったよりも壊れていませんね」
「はい。壊れていることには壊れているのですが、それも局所的というか…。少なくとも、ラ・シャリテよりは被害は少ないことはたしかです」
ジャンヌとマシュがリヨンについての意見を述べる。2人の言う通り、ラ・シャリテは見渡す限りどこかしら壊れているか、完全に崩れきっている建物しかなかったが、ここには無傷な建物もいくつかある。
「ねえ、ドクター。何か反応はある?」
『ちょっと待って。…なんだこれ!?巨大な…いや、多数の魔力反応!これは、何かに群がっているのか?』
「もしかしてサーヴァントに!?」
大変だ。もし、サーヴァントが襲われているなら助けに行かないと!
『いや、数が多すぎて判別がつかない。もう少し近づいてみないと…。とにかく、行ってみよう!このまま真っ直ぐ進めばつくはずだ!』
「了解!行きましょう、先輩、みなさん!」
マシュの言葉に全員が走り出す。ドクターのナビゲートに従って進むと、冬木で見た骸骨…スケルトンに似たエネミーがまるでバーゲンセールの時みたいに密集しているのが見えた。
『竜牙兵だ!それと、あの中心にサーヴァントの反応が!』
「きっとそれが情報にあったサーヴァントの1人でしょう。私達が道を開きます。立香さんとマシュさんはサーヴァントの保護を!」
「わかった!」
「了解です、ジャンヌさん!」
みんなの援護を受けて、竜牙兵を掻き分けるように進む。ちょうど中心につくと、全身から大量の血を流しながらも竜牙兵と戦闘をしている仮面を着けたサーヴァントがそこにはいた。
「マシュ、あの人に加勢して!」
「わかりました!」
サーヴァントに弓兵型の竜牙兵が放った矢をマシュが盾で防ぎ、さらに周囲の竜牙兵を撃破して、紳士の人から遠ざける。
「うっ…ぐぅ…」
「大丈夫ですか!?」
ふらりとサーヴァントがよろめいたと思ったら、そのままたおれてしまった。礼装の回復機能を使ったけれど、まったくと言っていいほど効果がない。
「ドクター!傷が全然治らない!」
『…ダメだ、立香ちゃん。もう、そのサーヴァントの霊核は砕けている。手遅れだ』
「ああ…ああ…そこにいるのは誰か」
眼前に倒れるサーヴァントから話しかけられる。目に血がついていてこちらを視認することができないようだ。
「いや、私の歌はもうじき途絶える。最早、託す他ない。醜き我が身すら助けんとする優しき者よ。我が真名はファントム・オブ・ジ・オペラ。どうか、この仮の命最後の願いを聞いてくれまいか」
「…うん。いいよ、何?」
ファントムからの問いに答える。それが、私達に叶えられることであるならば、出来る限りは頑張ろう。
「ああ…いい、美しい声だ。ならば、美しき声の者よ。どうか、この地に眠る騎士の呪いを解いて欲しい。それが出来ずとも、カルデアのマスターと言う人物に騎士を引き渡して欲しい」
「え?私?」
思わず聞き返してしまった。ファントムも驚きの表情を浮かべている。
「そうか、君が…。ならば、私の務めは終わった。悪くない、私の行いは報われた……」
そう言い残すとファントムは消滅した。
「戦闘、終了しました。ジャンヌさんの方も終わったようです。先輩、ファントムさんのことは…」
「ううん、大丈夫。それより、竜殺しって言ってたよね。ドクター、どこにいるかわかる?」
『ああ。竜牙兵がいなくなったおかげで正常に反応を探れるようになった。近くにある城に微弱だけどサーヴァントの反応があるよ』
情報通りこの街には竜殺しがいるみたいだ。ジャンヌ達と合流してから城に向かうとしよう。
「ドクター、ここ?」
『うん、そこだ。どこかに入れるところはあるかい?』
一旦別れていたジャンヌさん達と合流して、城に出発した。そして、今その城についたのだが城自体が半壊していて瓦礫の山を乗り越えるぐらいしか侵入方法はない。
「わたしが城の内部でサーヴァントを探してきます。先輩はここで待機を」
「うん。気をつけてね、マシュ」
「私も行きましょう。何があるかわかりませんから」
わたしが探索役として立候補すると、ジャンヌさんが協力を申し出てくれた。
「ありがとうございます、ジャンヌさん」
「いえ、このぐらいは。では、行きましょうか」
瓦礫を乗り越え城内に侵入する。脆くなっている壁などが崩れないように廊下を歩いているとふと違和感を感じた。
「…わかりましたか?マシュさん」
「はい。いきなりサーヴァントの気配が濃くなりました」
数歩下がると途端に気配がほぼ無くなり、前進するとまた気配が濃くなる。
「魔術か何かによる隠蔽…。これは特にサーヴァント同士の感知能力に対して影響するようです。きっとこの先にいる竜殺しを隠すために…。とにかく、これで大体の位置がわかりました。先に進みましょう」
ジャンヌさんの言葉に頷いて、さらに奥へと進んでいく。一番強く気配を感じる扉を開けると、そこには床に突き刺した大剣を支えにして立っている白い長髪をもつ男性がいた。
「くっ…!敵襲か…!」
「違います!わたし達は味方です!貴方を傷つけるつもりはありません!」
「それは…、!?」
大剣をこちらに向けて警戒をするサーヴァントと会話をしていると、突然揺れと威圧感が襲ってくる。と同時にドクターから通信が入る。
『マシュ!竜殺しは見つけたかい!?見つけたなら早くそこから脱出してくれ!』
「ドクター!一体何が!?」
『ワイバーンの襲撃だ!ついでにリヨンに向けて3騎のサーヴァント、そしてサーヴァントを超える超極大生命反応が近づいている!』
「そうか…この感覚。だからこそ俺が召喚されたのか」
大剣を持ったサーヴァントが何か知っているような発言をしているが今はそれどころじゃない。
「とにかく今は脱出しましょう、手を貸します!」
「すまない、頼む………!」
来た道を急いで引き返し、城から脱出すると既にその姿は空に見えていた。
「あれが、究極の竜種…」
ワイバーンなんて比較にならない。聖女マルタのタラスクでさえあれと対峙して勝利できるだろか。そして、その背には竜の魔女の姿が見える。
「何を見つけたと思ったら死に損ないのサーヴァント一騎ですか。いいでしょう、諸共消し飛びなさい………!」
竜の魔女が騎乗する竜種が急降下して来る。このままだとまずい!
「わ、わたしが防ぎます!」
「そんな!無茶だよ、マシュ!」
先輩の言うことはもっともだ。だが、無茶であってもやらなければここで終わりだ。
「マシュさん、ここは一緒に………!」
「は、はい!」
「焼き尽くしなさい!ファヴニール!!」
「宝具開帳!『
「仮想宝具展開!『
わたし達の宝具へと太陽がごとき炎が叩き付けられる。
「う、ぐぅぅぅぅぅ…!!」
「もう……耐えられない…!」
一瞬だ。片や弱体化、片や不完全とはいえ2人分の宝具が一瞬で崩されようとしている。こんな…どうすれば…!
「待たせてすまない。だが、おかげで必要なだけの魔力がたまった」
炎が守りを突破しようとした時、急に攻撃が止んだ。前を見ると狼狽えている竜の姿が見えた。
「久しぶりだな。
救出したサーヴァントの構える大剣から空へと火柱が立ち上る。
「ファヴニールが怯えて……、あのサーヴァント、まさか!?」
「蒼天の空に聞け!我が真名はジークフリート!汝をかつて打ち倒した者なり!宝具開放……!撃ち落とす!『
「
ファヴニールが空へと急上昇してサーヴァント…ジークフリートさんの放った宝具バルムンクを回避する。すぐまた襲ってくるかとも思ったが警戒しているのか上空で待機している。
「……はぁ、はぁ、はぁ、限界か…。戻ってこないうちに逃げてくれ……」
無理に宝具を放ったせいか、ジークフリートさんは城で見つけた時以上に疲弊している。
「大丈夫ですか?走れますか?」
「すまない…。少し厳しい…」
「わたしが馬車で運びましょう。アマデウス、前みたいに妨害出来る?」
「ごめんよ、マリア。ここまで魔力を乱されると、効果はないことはないだろうが、それも微々たるものだろう。いやー、流石最上級の竜種といったところかな」
「それは、仕方ないわね。皆さん、馬車を護衛していただいても?」
「もちろんです。さあ、今のうちに撤退しましょう!」
マリーさんの馬車を囲うようにして、わたし達はリヨンからの撤退を開始した。
ファントムのセリフを考えるだけでまじで一週間かかりました。これでよかったのか今でもわからない。精神汚染ってヤベーイ。
次回は撤退戦から始まります。
多分、次回が終わったら主人公が本格的に出てくると思います。