Fate/Grand Order operation Ark   作:山川山

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第5話 決戦/伸ばせたこの腕

『あっ!起きたんだね、立香ちゃん、マシュ!ちょっと待っててね。今もう一度検査をして…うん!大丈夫そうだ。まだ眠かったり、体がだるかったりしたらもっと休んでても大丈夫だからね』

「ううん、大丈夫。起きるよ、ドクター」

「問題ありません。起床します。ドクター」

 

カーテンの向こうからドクターとそれに返答する立香とマシュの声が聞こえて来た。ドクターの言葉を聞く限り2人とも問題ないみたいだな。返事もしっかりしていたし。

 

「おはよう。皆」

「おはようございます。皆さん」

「おはよう。休息は十分か?」

 

立香とマシュの挨拶に返答をする。今、朝なのか夜なのかはわからないが、まあ起きたならおはようで大丈夫か。こういうのは、挨拶をすることが大事だってよく言うしな。キャスニキと所長もそれに続く。

 

「おう、おはようさん。いい宝具だったぜ。お前さん達は間違いなく、一線級のサーヴァントとマスターだ」

「ええ、おはよう。ところでマシュ?貴方、宝具を使用したわけだけど、その宝具と英霊の真名はわかったの?」

 

所長がマシュに問いかける。

 

「いいえ、あのときは無我夢中でとにかくなんでもいいから護る力をと思ったら宝具が展開されていて…」

「そう…真名はわからなかったのね…。でも宝具を使用できただけでも大きな進歩だわ。それと、藤丸。よくマシュを支えられたわね。よくやったわ」

「い、いえ!あれは、信頼に応えようと思ったというか、体が勝手に動いたというか、その……」

「いいえ、十分な成果よ。それじゃ、マシュ。その宝具に名前をつけましょう。仮初でも名前が無いよりはいいわ。じゃあ、そうね…『ロード・カルデアス』なんてどう?カルデアはマシュにも意味がある言葉だしなかなかいいんじゃないかしら?」

 

そう言って所長は俺をみる。なんで俺?

 

「いい名前だと思うが、それを聞くのは私に対してではない。マシュ・キリエライトに対してだ」

「うぇ!?あ、ええ、そうね。ふふっ、いい名前…。コ、コホン、どうかしら、マシュ?」

「はい!ありがとうございます!」

『うんうん。マシュにぴったりな名前だ』

「ねぇ、アーク。ちょっといい?」

 

いつの間にか横にいた立香に話しかけられる。なんかあったのか?

 

「どうかしたか?マスター」

「さっき私とマシュが倒れそうになって支えてくれたときにさ、アーク、私達の事名前で呼んだでしょ?ああ、名前ってフルネームじゃなくてファーストネームの事ね」

 

あー、あれか。いつもは、人の名前を呼ぶときは、アークの謎翻訳機能のせいで自分から進んでマスターと呼んでいる立香やキャスターと呼んでいるクー・フーリン以外は、全員フルネームになってしまうのだが、あのときは、立香の名前もマシュの名前もフルネームにならなかった。その後、すぐ元に戻ったけど…。もしかして名前呼びが嫌だったとかか?

 

「それでね。これからは名前呼びをして欲しいなって思ってるんだけど」

「何?」

 

あれ?嫌がってない?

 

「嫌だったら別にいいんだけど…」

「いや、問題ない。了解した。マスt…、立香」

 

一瞬マスターと言いかけたがしっかりと名前で呼ぶ。意識すればなんとかなりそうだ。

 

「先輩?アークさん?何かありましたか?」

「いいや、なんでもない。ただ立香のことを立香と呼ぶように言われただけだ」

「そうですか。では、わたしのこともマシュと呼んでください」

『じゃあ、僕の事もドクターかロマンって呼んでくれるかい?』

「わ、私もオルガって呼んでいいわよ?」

 

うおお!?皆いきなりどうしたんだ!?

 

「おっ、モテモテじゃねえか。俺にも何かいいあだ名でもつけてくれよ」

 

え?それは…

 

「キャスターのアニキでキャスニキはどうだ?」

「………冗談だろ?」

「大真面目だが?」

「…今まで通りキャスターで頼む」

 

まあ、そんなこんながありまして、ついでにキャスターが立香と仮契約した後、俺達は学校跡を出発した。今は、キャスニキの案内のもと山の中を歩いている。一応、道みたいのがあるから、道なき道をと言った感じではない。

 

「ここからは、完全に相手の領域だ。いつ、どこから攻撃がきてもおかしくねえ。気を付けろ」

 

キャスニキの警告に全員が気を引き締める。しばらく進むとやや開けた場所に出てキャスニキが訝しそうに呟いた。

 

「妙だな。いつもここいらまでくれば否が応でもバーサーカーの気配がするってのに何も感じねえ。どうなってやがんだ?」

 

それが言い終わるか否かで感知系の機能が高速で接近してくる飛来物を捉えた。狙いは…

 

「伏せろ!立香!」

 

太刀を抜刀し、飛来した矢を上空へ弾き飛ばす。よかった。爆発すると思ったけどしなかった。

 

「チッ、信奉者のお出ましか」

「信奉者になったつもりはないがね。だが、いまは気分がいい。聞かなかったことにしよう」

 

声の方を見ると浅黒い肌で白髪の弓を持った人物が立っている。

 

「言いてえ事いろいろはあるが、アーチャー、なんでてめえがここに居る!?ここにはバーサーカーが居たはずだろうが!」

「ああ、バーサーカーはここに居たさ。私が吸収したがな」

「なっ!?」

 

サーヴァントがサーヴァントを吸収!?カルデアにあるっていう霊基変換用の設備もなしで!?

 

「そのときほど泥による黒化を受けてよかったと思ったときはない。本来であればサーヴァントを吸収などそう簡単に出来ないし出来たところでただの魔力補給がせいぜいだ。だが、泥に汚染された者同士は別だ。泥という点で私達は同位体であり、ある程度互いが互いを受け入れることができる。ククッ、私らしくないが戦いたくてうずうずしているよ。」

「マジでらしくねえな。バーサーカーから狂化でも貰ったんじゃねえか?」

「かもしれん。だが、それでもやることはわかっているつもりだ。貴様らをここから先へは行かせはせん。特に、お前はな」

 

そう言ってアーチャーは俺を指差す。確かに俺はイレギュラー中のイレギュラーな存在だが、そんなに警戒するほどか?だが、これを利用しない手は無い。

 

「どうやら、あのアーチャーは私をご指名のようだ。私を置いて先に行け」

「大丈夫なのかよ?言っちゃあなんだが嬢ちゃんはサーヴァントとのパスが薄い。近くにいないとすぐにガス欠だぞ?」

「先程の模擬戦で私は宝具の消費を抑えているスキルがあると言ったが、あれは私の持つ単独で行動できるスキルの応用だ。立香と離れていても十分に戦闘を行える」

 

本当便利だよこのスキル。なんで俺が持ってるかは知らないけど。

 

「…行こう。キャスター」

「いいのか?加勢しなくてよ?」

「大丈夫だよ。アークなら勝てるって、私、信じているから」

「そうか。んじゃ、いくぜ。ついてきな!」

 

キャスターの声で立香達が走り出す。アーチャーはそれを止めようとはしなかった。

 

「私が言うのもおかしいが、止めなくてよかったのか?」

「それをすれば、すぐに攻撃を仕掛けてきただろう?」

「それは、どうだろうか」

 

そりゃあ、もちろん仕留めにいきますよ。敵が他のことに気を取られているだなんてまたとないチャンスだからね!…何かブーメランが飛んできそうだ。

 

アークドライバー

 

腰にアークドライバーを着けて、上部のアークリローダーを押す。

 

「変身」

 

アークライズ  オール・ゼロ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エクスカリバー!?」

 

アークと別れた後、キャスターからこれから戦うセイバーの情報を聞いていたときに所長が声を上げた。エクスカリバー、私でも聞いたことのある世界一有名な聖剣。つまりセイバーは…

 

「あの有名な騎士王。アーサー・ペンドラゴンだ。」

 

どっと緊張感が増す。私達はあの騎士王と戦って勝てるだろうか?いや、やるしかないのだ。必ず勝ってみせる。

 

「会ったらびっくりすると思うぜ。なんてったって…っとそうこう言ってる間についたぜ。ここだ」

 

さっき入ったこの洞窟の一番奥と思われる場所、そこには異様な光景が待ち受けていた。

 

「これが…大聖杯。こんな超抜級の魔術炉心が、なんでこんな極東の島国に…」

 

所長の驚き具合をみる限り、見た目だけじゃなくて魔術的にもすごいものらしい。

 

『資料によると、制作は…』

「おっと、お喋りはそこまでだ。奴さんに気づかれた」

 

キャスターの視線の方向をみると黒い鎧に身を包んだ女性が立っていた。え?女性?男性じゃなくて?

 

「凄まじい魔力放出です。あれが…、本当にアーサー王なのですか?」

『ああ、何か変質してしまっているけど彼女がアーサー王だ。伝説では男とされているが、キャメロットでは男装をしていたんだろう。ほら、男子でないと王になれないからね。おそらくマーリンの入れ知恵だろう。伝説にも書かれているけど、本当に趣味が悪いな』

「あ、本当です。女性だったんですね。つい、男性だとばかり思ってました。」

「気を付けろよ、見た目は華奢だが魔力放出でぶっ飛んでくるバケモンだ。一撃一撃が馬鹿みてぇに重い。一瞬でも気を抜いたら、体が半分吹き飛ぶぞ」

「ロケットの擬人化のようなものですね。理解しました。」

 

ドクターの言葉を聞いて納得して、キャスターの言葉で気を引き締める。そして沈黙していたセイバーが口を開いた。

 

「ほう、面白いサーヴァントがいるな」

「なっ!?てめえ、しゃべれたのか!?」

「何を語っても、監視されている。故に案山子に徹していただけだ。だが、その宝具を持っているならば口を開くに値する。構えるといい、名も知れぬ娘。その守りが本物かこの剣で試してやろう!」

 

そう言うとセイバーはマシュに向って飛んでくる。マシュもなんとか受け止められたけど、キャスターからの情報が無かったら危なかったかもしれない。

 

「ッ!!!」

「フッ、流石にこの程度は防ぐか」

「おいおい、こっちを忘れてもらっちゃあ困るぜ!」

 

マシュの盾とセイバーの剣の競り合いにキャスターが炎を纏った杖を振り回して乱入する。

 

「キャスターが殴り掛かるとは…。いや、心当たりはあるが、悪手ではないか?」

「へっ!ルーンを放ったところでお得意の対魔力に防がれるだけだ。それに、俺はこっちの方が性に合ってるんだよ!」

 

セイバーとキャスターが戦っている間にマシュも体制を整え終わっていた。

 

「マシュ、行ける?」

「はい。もちろんです…!先輩!」

 

マシュがセイバーとの戦闘に復帰する。キャスターとのコンビネーションも十分で、マシュが防御、キャスターが攻撃を行いセイバーに対して優勢な()()()()()()

 

「ふっ!」

「うぐっ…!」

「ぬお!?」

 

セイバーの対応力もそうだが、何よりあの剣に纏わせている黒いビームのようなものの攻撃範囲が広いせいで、2人とも攻めきれないでいる。私の礼装では、あれを突破できるようなサポートは出来そうにない。

 

「クソッ!前より範囲伸びてんじゃねぇの?アレ」

「ですが、あれをなんとかしないと…」

「なんだ?もう手詰まりか?ならばこれで幕を引いてやろう」

 

セイバーの魔力がどんどん高まっていく。これは、キャスターのときと同じ…!

 

「卑王鉄槌、極光は反転する───

「ヤベッ!盾の嬢ちゃん頼む!」

───光を飲め!───

「わかりました!真名、偽装登録。『擬似展開/(ロード・)───

───『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)』!」

───人理の礎(カルデアス)』!」

 

セイバーの宝具とマシュの宝具がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでの攻撃とは比べものにならない、凄まじい魔力の奔流が私の宝具にぶつかる。

 

「エイワズ!」

 

キャスターさんの魔術、防御を意味するルーンで少しだけ楽になるが、本当に少しだけだ。

 

「その程度か!?ならばここで果てるがいい!」

 

アーサー王が宝具の威力をさらに上げる。構えた盾がどんどん押される。このままでは防ぎきれない。もし、この場に立っていたのが私の中の英霊だったならば…

 

「マシュ!」

「先輩!?」

 

なんでここに!?どうやって!?まさか私の宝具から漏れたアーサー王の宝具を避けて…?

 

「あの中を突っ切って来るとか正気か!?しかも、無傷とかどんだけ運いいんだよ!?」

「私、運は良い方だから。それよりも…」

 

先輩が私の盾を支える。あの時と同じだ。

 

「っ…済みません、先輩。わたしがもっと英霊と同調出来ていれば…」

「ううん、大丈夫。マシュはマシュでしょ?マシュのペースで進めばいいよ」

 

先輩の言葉に、ハッとする。そうだ、アークさんも言っていた。わたしはわたしなのだ。決してわたしの中の英霊では無い。だからこそ成長することができると。

 

「先輩。わたしの背中を押してくれますか?」

「うん。もちろん!」

 

先輩が盾から右手を離し、胸の前で握りしめる。

 

「令呪を以て命ずる。マシュ!勝って!」

 

先輩の令呪が赤く光り輝く。それと同時にわたしには力がみなぎる。先輩からの気持ちは受け取った。ならば、今ここで、わたしはわたしの成長の一歩を踏み出す。

 

「はい!シールダー、マシュ・キリエライト。いきます!やああああああ!!!」

 

魔力の奔流に逆らって一歩踏み出す。すると宝具にも変化が起きた。盾から発生する結界の向こう、そこに煉瓦のようなものが積み上がり、壁が形成される。ある程度積み上がった壁は、衝突していたアーサー王の宝具を押し返した。

 

「何っ!?」

 

アーサー王が自分の宝具に飲み込まれる。それが収まると、剣を支えにしてかろうじて立っているアーサー王がみえた。

 

「…手加減をしたつもりはなかったのだがな。結局、私一人では運命が変わろうと、同じ結末を迎えるということか」

「あ?どういう意味だそりゃあ。てめえ何を知ってやがる」

「それは、いずれ知ることになるだろう。グランドオーダー───聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだという事をな」

「おい待て!それはどういうってうおぉお!?」

 

アーサー王が粒子となって霧散した。そして、キャスターさんも粒子となって消えつつある。

 

「ここで強制帰還かよ!?チッ、納得いかねえがしょうがねえ!嬢ちゃん、後は任せたぜ!次呼ぶ事があったらランサーとして喚んでくれ!」

 

キャスターさんが消えた後、その場に残っているのは私達とアーサー王から出てきた結晶だけだった。

 

「セイバー、キャスター…さん、共に消滅を確認しました。これでわたし達の勝利、なのでしょうか?」

『ああ、よくやってくれたマシュ、立香ちゃん!所長もさぞ喜んで…あれ、所長は?』

冠位指定(グランドオーダー)……あのサーヴァントがどうしてその呼称を……?」

「所長、どうかしたんですか?」

 

反応がない所長に先輩が話し掛ける。まだ何かあったのだろうか?

 

「え?ええ、そうね。よくやったわ。藤丸、マシュ。不明な点は多々ありますが、このミッションは終了とします。とりあえずあの水晶を回収しましょう。セイバーが異常を来たしていた理由、そして、冬木の街が特異点になっていた原因はあれみたいだし」

「はい、至急回収───なっ!?」

 

わたしが結晶を回収しようとすると奥から人が歩いて来て結晶を手に取る。あれは…

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適合者。全く見込みのない子供だからと、善意で見逃した私の失敗だよ」

「レフ教授!?」

『レフ教授だって!?彼がそこにいるのかい!?』

 

その場にいる誰もが驚愕する。あの爆発からどうやって生き延び、そしてなぜここに居るのか。

 

「おや?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに私の指示を聞かなかったんだね。まったく、どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気がするな。どうしていつも人間というのは定められた運命からズレたがるんだい?」

 

その言葉を聞いてわたしは確信する。

 

「先輩、下がってください!あの人…いえ、あれはわたし達の知っているレフ教授ではありません!」

「レフ…ああ、レフ。いきていたのね!」

「所長!ダメ!」

 

先輩が所長の腕を掴んで止めるが、所長はレフ教授のもとへ行こうとするのをやめない。

 

「放しなさい!藤丸!ねえレフ、私貴方がいなくなったら、この先どうやってカルデアを守ればいいかわからなかった!」

「所長、おねがいです…!止まってください!あの男は…」

 

そして、所長はついに、先輩を振り払ってレフ教授のもとへ行ってしまった。

 

「やあ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったそうだね」

「ええ、ええそうなのレフ!管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアにも帰れないし、予想外のことばかりで頭がおかしくなりそうだった!あっでもいい事もあったのよ!しかも、それに加えて貴方が来てくれた!貴方がいればなんとかなるわ。今までだってそうだった。今回だって私を助けてくれるでしょう?」

「ああ。もちろんだとも。本当に予想外の事ばかりで頭にくる。その中でも特に予想外なのは君だよ、オルガ。爆弾は君の足元に設置したのにまさか生きているだなんて」

 

爆弾を足元にだなんて例え高位の魔術師でも準備が無ければ死に至る。そうであるならば何故所長は?いやそれよりもレフ教授が爆弾を仕掛けた?様々な疑問がわたしの中で浮かんでは沈む。

 

「レ、レフ?あの、それ、どういう、意味?」

「いや、生きている、というのは違うな。君はもう肉体的には死んでいる。トリスメギストスはご丁寧にも、残留思念になった君をこの土地に転移させてしまったんだ。ほら。君は生前、レイシフトの適性がなかっただろう?肉体があったままでは転移できない。わかるかな。君は死んで初めてあれほど切望した適性を手に入れたんだ。だからカルデアにも戻れない。だって戻った時点で、君の意識は消滅するんだから」

 

消…滅…。ここまで一緒に戦って来た所長が消滅だなんて…。

 

「え……え?わたしが…消滅?カルデアに、戻れない?」

「そうだとも。だがそれではあまりにも哀れだ。生涯をカルデアに捧げた君のために、今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう」

 

レフ教授が結晶を掲げる。すると、レフ教授の後ろの空間に丸い穴があく。あれは…カルデアス…?

 

「な……なによあれ?カルデアスが真っ赤になってる…?嘘、よね…?あれ、ただの虚像でしょう、レフ?」

「本物だよ。君のために空間を繋げてあげたんだ。聖杯があればこんな事もできるからね。さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前達の愚行の末路だ。人類の生存を示す青色は一片もない。あるのは燃え盛る赤色だけ。あれが今回のミッションの結果だよ。良かったねぇマリー?今回もまた、君のいたらなさが悲劇を呼び起こしたワケだ!」

「ふ、ふざけないで!私の責任じゃない、私は失敗してない、私は死んでなんかない!アンタ、どこの誰なのよ!?私のカルデアスに何をしたのよぉ……!」

「あれは、君の、ではない。まったく、最後まで耳障りな小娘だったなぁ、君は」

 

レフ教授が指を鳴らすと所長の体がふわりと宙に浮く。

 

「な、体が、宙に……何かに引っ張られて……!」

「言っただろう、そこはカルデアに繋がっていると。このまま殺すのは簡単だが、それでは芸がない。君の宝物とやらに触れるといい。なに私からの慈悲だと思ってくれたまえ」

 

所長がゆっくりと飛んで行く先そこにあるのは…

 

「ちょ、なに言ってるの、レフ?私の宝物って…カルデアスの、こと?やめて、お願い。だって、カルデアスよ?高密度の情報体よ?次元が異なる領域なのよ?」

「ああ、ブラックホールと何も変わらない。それとも太陽か。まあ、どちらにせよ人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。生きながら無限の死を味わいたまえ」

「いや…いや、いや、助けて、誰か助けて!わたし、まだ死にたくない!だってまだ褒められてない…!()()()1()()にしか認めてもらってない!」

「所長!」

「先輩!だめです…!」

 

今行っても、わたし達には所長を救えない。せめて先輩だけでもと駆け出しそうな先輩を止める。その間にも所長はカルデアスに近づいて行く。

 

「お願い!」

 

ああ…

 

「誰か!」

 

もう…

 

「助けてぇぇぇーーー!!」

 

だめ─────

 

「もちろんだ。恩人ヘの礼を、言葉だけで済ませる私じゃない」

 

背後から黒い塊が所長のもとへ跳んでいく。今にもカルデアスに触れそうだった所長を受け止めるために、それは両足でカルデアスに立っているが、なぜか分解されずにいる。あれは…

 

「アーク!」

「アークさん!」

 

わたし達カルデアが、この特異点で最初に出会った仲間。アークさんがそこには立っていた。

 

「なんとか、間に合ったか」




評価・感想の方もよろしくおねがいします。
影弓との戦闘は次回書きます。
そして、先に言うと影弓はバーサーカーを吸収したことによってかなり強化されています。
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