Fate/Grand Order operation Ark 作:山川山
目覚めると赤い空が見えた。ここは…
「目覚めたか。現実では眠っているが」
上半身を起こすと後ろから声が聞こえた。立ち上がって振り返ると予想通りアークがそこには立っていた。現実では眠っているということはこれは夢か。
「では、始めよう。そこから動くな」
アークがこちらへと手を向けると、俺の体から発生した青い粒子がその手に吸収されて行く。一部赤いのは、俺が悪意に飲まれたせいだろう。
「ふむ?一部悪意が含まれているが…まあ、いいだろう」
「なあ、聞きたい事があるんだ」
「ほう、話せるようになったか。なんだ?」
声を出すと、アークから返事が帰って来た。今回は声が届くようだ。俺は、あの時の声について聞く。
「ダメだったって何がだ?」
「なんのことだ?」
表情はわからないが、はぐらかしているというわけではなさそうだ。どういうことだ?
「質問は終わりか?」
「ああ、もう聞く事はない」
疑問は残るが、仕方ない。今後に期待しよう。
「ならばいい、善意の収集ご苦労。私はこれから善意の解析にかかる。しばらく、会うことはないだろう」
「そうか」
アークの言葉に返事をする。それじゃ、俺は帰るとしようか。…どうやって帰るんだ?これ。
「それでは、さらばだ」
「へ?うおおおおぉおぉお───!?」
アークが指を鳴らすと地面にぽっかり穴が開く。なんで毎回…と言っても2回目だが、こういう心臓に悪いやり方なのだろうか?暗い空間を風を切りながら落ちていく。ある程度落ちると、何か赤い光が見えて来た。スピードが緩やかになって、まるで宇宙空間を漂うような感じになる。泳ぐように動くと方向転換をしてそちらに進む事が可能だ。光に向かって進むと少し透けて見える人工物が見えて来た。
「これは…通信衛星のアークか?」
どこも壊れておらず、一見別物に見えるが、あの赤い光を放つ丸いレンズのようなものは通信衛星アークの特徴だ。そして、その透けたレンズの先、そこには人影が見える。
「立香…!」
俺を召喚したマスター、立香がそこにいた。"悪"や"憎"などの悪意の具現化した文字に囚われ、もがいている。早く助けないとヤバい!立香のいる場所へスピードを速めて進んで行く。
目覚めると黒い空間にいた。ここは…?
「!?」
今私が立っている場所のすぐ前、そこから黒と赤の何かが溢れ出してくる。アークの足元から溢れ出ていたあの大量の文字だ。直感的にあれは危険なモノだと判断してそこから後ずさる。グチャッと何かを踏んだ感覚がして、足に何かが纏わりつく。
「え?あ…」
足に纏わりついていたのは、先程とは別の文字群だ。少しずつ足を登って来る。
「嫌…」
辺りを見渡すと同じように文字が溢れ出している。だんだん集まって私を飲み込もうとしてくる。
「放して!」
首から下が飲み込まれる。頭痛と悲鳴のようなものが聞こえて来て、全身が不快感に包まれる。必死でもがくけど、体はどんどん沈んでいく。
「───!」
顔まで飲み込まれて息ができなくなる。必死に叫んで助けを求めるが声が出ているのかすらわからない。
「!ゲホッ…ゴホッ…」
手首をぐいっと引っ張り上げられる。助けてくれたのはアークだ。
「すまない、立香。こちらの不手際だ」
「ううん…大…丈夫…」
アークが楽な姿勢をとらせてくれる。
「ここは…?」
「私の精神世界…もしくは夢と言い換えてもいいかもいいかもしれない。立香はそれに巻き込まれたようだ」
召喚の後ドクターから話は聞いていた。マスターはサーヴァントの過去や精神世界に夢を介して繋がる事があるって。それじゃ、アークは…
「アークは大丈夫なの…?」
「む?私か?問題ないに決まっている。今気にするべきは立香についてだ」
心の中がこんなことになっていて本当に大丈夫だろうか?アークはしばらく黙っていたが、口を開く。
「外傷はない。悪意による侵蝕もなし。問題なさそうだ」
どうやら私の事を検査してくれていたようだ。検査結果を聞いた途端激しい眠気が襲って来た。
「眠るといい。目が覚めたら、少なくとも体調は良くなっているはずだ」
その言葉にしたがって目を閉じる。私は深い眠りに落ちていった。
「む…」
ベッドの上で目が覚める。立香が眠った後、俺も眠ってしまった。だが、そのおかげでこちらへ帰って来ることが出来たようだ。
「様子を見に行くとするか」
ベッドから立ち上がり、一旦霊体化して寝癖等を整える。部屋を出て、廊下を歩いているとドクターと会った。
「あっ、アーク。立香ちゃんがどこにいるか知ってるかい?」
「おそらく部屋にいるだろう。何かあったか?」
「ああ、特異点の詳細な座標が特定できてね。次のレイシフトの打ち合わせをしようと思って」
「ならば、私から伝えておこう。今から向かうところだ」
「本当かい?じゃあ、お願いするよ」
「ああ」
ドクターと別れて立香の部屋ヘと進む。部屋の前についてその扉を叩いた。
「立香、いるか?」
「アーク?ちょっと待って」
中からドタバタと音が聞こえる。扉が開くといつもの服装の立香が出てきた。
「ごめん。ちょうど着替えてて」
「構わない。いきなり来たこちらが悪かった。それで、体に異常はないか?」
「夢の事?うん、大丈夫」
あちらでは問題なくても、こちらでは何かあるかもしれないと思ったが大丈夫なようだ。
「そうか、ならばいい。それと、ロマンが呼んでいたぞ。次のレイシフトの打ち合わせだそうだ。管制室にいるだろう」
「わかった。よし、行ってくるね。アークもがんばって!」
立香が管制室に向かって走って行く。さて、立香にがんばれって言われたし俺もシミュレーターに行って訓練してくるか。次の特異点に向けてしっかり調整しておかないとな。
次回から特異点突入です。