Fate/spring blade (仮名) 《Fate×SAO》 作:クロス・アラベル
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もう辺りは暗く、街灯にあかりがつき始めた。
急がないと夕飯が遅くなるかもしれない。
校門を抜けて剣道部道場へ。
40年前から使われている屋根瓦の建物で、そろそろ新しい道場を建てても良いのではないかとも思う。
俺がここに入ることなんてないんだが、時たまスグの様子を見に来ることがある。ので一応面識はあるが…
今は7時。もうみんな帰ってしまっている筈。これなら別に気にする必要は無い。遠慮なく道場へ___
屋根瓦が見えた。
ウチのは古い道場を使い古しているので、それは一目瞭然だった。校舎が数年前に建て直しがあったのもあり、敷地の中のそれは特に目立つ。
「あ」
鍵が閉まっている。当たり前だ。戸締りくらいするだろうに。これで取ってこい、などと無茶をスグは言ったのか。
「うーん…」
玄関からは入れない。なら窓とか開いてないだろうか?
「おっ」
と、試しに窓に手をかけると簡単に開いた。
玄関は戸締りするのに窓を閉めてないなんて、不用心だな。金目の物なんて無いとはいえ、しっかりして欲しいものだ。
スグのスマホはすぐに見つかった。着替えの部屋、そのスグのロッカーの中に入っていた。
「ホント、スマホ忘れるやつなんて今どきいるもんなんだな…」
と零しながらスグのスマホをカバンに入れる。さぁ帰ろうと窓から出ようとした___その時だった。
ギイィィィィィィィィィイン___
そんな金属と金属がぶつかり合う音が学校中に響いた。
「___!?」
まだ校舎に誰かいるんだろうか。けど、何か__異様に大きい音だった。
それは途絶えること無く鳴り響いている。かなり遠くで鳴っているようだが、さっきの大きな音に関しては何か変に耳に残る。なんというか___
「金属と言うより……剣?」
そう、よくゲームで聞く、剣と剣を打ち合う音に酷似していた。
気になってその音の源へ。
それは学校のグラウンドから響いている。
その音は_____現実離れした光景と共に姿を現した。
「はぁッ!!」
「ジャアッ!!」
誰かが、戦っていた。
片方は暗色の___いや、真っ黒なポンチョを着た黒騎士。いや、もっと詳しく言うなら____暗殺者か。
声からして男だ。ソイツは中華包丁のような刃渡り30センチはありそうな凶器を手に打ち合う。
時たま相手の武器の有効範囲外からナイフか何かを投擲し、翻弄しようとしているようだった。
もう片方は_____金色の鎧に身を包んだ騎士だった。長い金髪が目を引く。およそ、女。背は、男より___俺よりも低いかもしれない。
だと言うのに、鎧と同色の両手持ちサイズの剣を軽々振り回す。いや…振り回す、なんて言う表現は間違いだ。完全に使いこなし、相手へ怯むことなく踏み込んでいく。一撃一撃が大地を削り、風を生む。
その正反対の二人の戦士は互角の戦いを____いや、どちらかと言うと、女騎士の方が勝っていた。というより圧倒していた。
「チィ____!!」
再び間合いから離れてナイフを投げようとした暗殺者は
「____甘い!!」
女騎士の追撃に苦しめられる。
「オゥ!?」
「はあああああああああ!!!!」
「Shit!!」
更に畳み掛ける。その猛攻に暗殺者も痺れを切らして思いっきり後ろに飛んだ。
女騎士はそれ以上追撃はしなかった。しそうになっていたが、途中で止めたと言った感じだ。
「ったくよォ……面倒なヤツにちょっかいかけちまったみたいだな……」
「___諦めなさい。もうお前に勝ち目はありません。私の剣戟を1度たりとも弾き返せないお前では___」
「勝てねぇって言うんだろ?確かにな。お前の一撃の重さには勝てねぇよ。ゴリラかっての。いや、ゴリラでももっと殺しやすいぜ?」
「…妄言もそろそろ聞き飽きました。今は____お前の首をはねることで終わりにしましょう」
男の声は全く知らない声だ。だが、女騎士の方には____聞き覚えがある気がする。
「はっ、そう急かすなよ!まあ聞いてけ。確かにお前は俺よか強いんだろうな。だけどよ、英霊にはそれぞれ、
「っ!!マスター、下がりなさい!宝具が来ます……!」
「宝具…!?キャスター!」
よく見ると女騎士の後ろには誰かいる。女騎士に言われて後ろへと下がって行った。
「さァて……ちょいと使うには早いかもしれねぇが、いいぜ。最高のショータイムにしようじゃないか!!」
「……来るか、アサシン!!」
「お望み通りなァ!!」
その直後、暗殺者から____本物の殺意が漏れ出す。そして、絶対的何かが男の凶器に宿っていく。
血のように紅黒い、ナニカ。それは確実に女騎士を殺す可能性を秘めたものだった。
「_____なん、だ…あれ………!?」
絶句する。あんな、人外じみた戦いを_____殺し合いを見る事になるとは。まるでゲームやアニメ___いやそんなものと比べるのは間違いだ。
二人とも、人間ではない。人間があんな動きが出来るわけが無い。男の発する力は、禍々しかった。
しかして、動けない。あんな濃密な殺意がこちらに向けられていないにせよ、発せられれば__動けるはずがなかった。
だが逃げなければ。
あれは、必ず殺す者だ。
あれに見つかってしまえば、俺も、殺される。
何とか俺が後ろに一歩下がったその時____
「_____Hey……そこで見てるのは誰だァ…!?」
暗殺者が、こちらを、見た。
「______ぁ」
こちらを射抜く殺意の視線。
そして、俺は耐えきれず、走り出した。
「_____!!」
「待ちやがれ____!!」
怒号が背中を叩く。
不味い。
アレに追いつかれれば、確実に殺される。
逃げなければ。
逃げなければ。
逃げなければ。
逃げなければ____!!
必死に逃げる。
死ぬ気で走る。
ただ逃げるだけでは追いつかれる。どこか、隠れる場所があれば、可能性は、あるかもしれない。
校舎へと入った。階段を登り、三階__最上階へ。
息が切れる。ああもう、こんな時に俺の体力の無さを呪う。人並みには体力があったつもりが、最近運動していないせいか、想像以上に持たなかった。
「___はぁ____はぁ____はぁ____はぁ____!!」
というより純粋な体力ならまだしも、あの殺意を感じてしまえば自然に体が縮こまるのは確実だろう。体が怯え、足が震えそうになりながら走り続ける。
そして、廊下の半ばで立ち止まる。
「___はぁ、はぁ………ここまで、来れば、さすがに____」
何故かは分からないが奴がおってくる気配がない。あの殺意も感じない。
俺を追うのを諦めたのか、それとも、さっきの殺し合いの続きを始めたのか。
肩で息をしながら安心しきって後ろを振り向く。誰もいない。
「……なんだったんだ…アレ」
今冷静に考えると、ゾッとする。よくもまぁあんな化け物から逃げきれたと思う。
まだ身体が震えている。
「__逃げるなんて男らしくもないな、はは…」
もちろん、あの状況で逃げる以外の選択肢はなかった。あのままだったらあのデカい中華包丁に刻まれて終わりだ。
「……逃げ切れ、た_____?」
待て。
逃げきれた?
本当に?
あのバケモノから?
あんな、人間離れした奴から____本当に逃げきれたのだろうか。
けど、夜の廊下は静かだ。誰の気配もない。
ない___筈なのに。
「______ 」
何故だか、寒気がする。汗が止まらない。
誰もいないと頭では分かっていても、生き物としての本能が叫んでいる。
_______まだ終わりではない、と。
「HeyHey……もう
「____ぁ」
奴は。
俺の後ろにいた。
知覚できなかった。
咄嗟のことで反応できない。
「まぁ、ルールだからな。見ちまったんだからよ。死んでもらうぜ、リトルボーイ」
そんな捨て台詞を聞いた瞬間。
何か、鋭いものが俺の左胸____心臓に突き刺さった。
直後、視界がぐにゃりと歪んでいった。
どさり、と何かが落ちる音。
いや、多分これは俺が倒れた音だろう。
「……なんか、やっぱりクールじゃねぇな。もっと派手に血飛沫を上げさせるべきだったか?いや、ただの子供にそんなことをする必要はねぇか。俺にとっちゃアイツを殺せればそれで充分なんだ。だが、今になっちゃ不可能だ。殺されたのは俺なんだからな。だからこそオレは聖杯を_____」
そんな、訳の分からないことを呟いて、男の声は遠のいていく。
世界が反転する。
視界は真っ黒に染まり、身体中の感覚が消えていく。
指1本動かない。
「___ごっ____が、ぁ_______」
ビシャリと、血を吐いた。
息が出来ない。
漠然と。
ああ、ここで死ぬんだと。
そう感じた。
「____遅かったか__!!」
金属音とともに、誰かが走ってくる。
「キャスター!状況は_____」
もうひとつの足音。
もう、視界は暗く、何も見えない。
「見ての、通りです。マスター」
「そんな____」
「申し訳ない。私がもっと早ければ、まだ間に合ったかも知れないのに__」
「___違う。キャスターは悪くないわ。私が悪いの。放課後だから、人はもう居ないって、そう思い込んでいた私のミスよ」
「しかし___」
「行って、キャスター。アサシンは多分、マスターの元へ帰って行くハズ。こんなことされて黙っていられるわけないでしょう…!こっちも向こうのマスターの正体くらい割らないと。さぁ早く!!」
「マスターはどうするつもりですか?」
「私は……無駄だとは思うけど、助けてみようと思う。私のことはいいから、行って!」
「わかりました、マスター。では_____」
「………ごめんなさい」
誰かと誰かの会話。そして、1人がいなくなって、もう1人がうつ伏せになった俺を仰向けにしようとして___
「______そん、な」
止まる。
「___嘘」
「どうして、あなたが____!!」
「私……どうやってユージオに顔向けすれば良いの……!」
「………まだ」
「まだよ。辛うじて息がある。可能性があるなら____」
「システムコール、トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、セルフ・トゥ・レフト____!!」
「_____ぅ、ぁ____っ!!」
「っ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ_____」
「後は__ システム・コール。ジェネレート・ルミナス・エレメント、コンペンセート・ブレスト・アンド・ハート!!」
「……で、出来た…!良かったぁ……」
「…倒さなきゃ。アサシンだけは、絶対に____!!」
最後に聞こえたその声は決意に満ち____そして、苦しそうに聞こえた。
その声は____酷く、