Fate/spring blade (仮名) 《Fate×SAO》 作:クロス・アラベル
「______ッ!?」
胸の痛みを感じて意識が覚醒した。
「___いっつ…!!」
痛い。
そりゃそうだ。心臓にナイフか何かを一刺しだ。悲鳴をあげなかっただけ褒めるべきだろう。
咄嗟に左胸を押さえ込んで気づいた。
「……あれ?」
何も無い。
ナイフで刺されて、ぽっかり穴が空いていると思っていた左胸は、傷一つない。
「……っ?」
痛みは残るが、全く問題にならない。確かに左胸に違和感はあるが……
「……」
廊下は血だらけになって____いない。血の跡はなくなっている。
「………夢、じゃないよな」
何も無かったかのようなその現状に、思わず夢かと疑ってしまう。
だが、夢じゃない。
あの恐怖は。
あの殺意は。
あの痛みは。
間違いなく本物だ。
「……誰か、いた気がするんだけどな」
そう、俺が倒れて意識が消える寸前。誰かが来た気がした。
あまり覚えていないが、もしかすると、その時に来てくれた誰かが助けてくれたのだろうか。
「……うわっ、もう10時かよ…早く、帰らないと」
スグに携帯を取ってきて欲しいと言われて来たのに、あれから3時間近く寝ていたらしい。
そういえば、カバンをアイツに追われる時に落っことした気がする。そこにスグと俺の携帯が入っているはずだ。
「…取りに行こう」
とりあえず、家に帰って落ち着いて考えないと。
カバンを拾ってスグに少し遅くなると電話をかけた。滅茶苦茶怪しまれたが、何とか言い訳に成功した。
内容としては、剣道場の鍵が開いてなかった(本当)ので先生に連絡し、開けてもらった(嘘)のでかなり時間がかかったというものだ。
スグは途端に凄い焦ってたが、俺が謝っておいたし、そんなに怒ってなかった、と言っておいたので、まぁ……大丈夫だろう。
その後、帰路に着いたのだが、
「……不味、ふらっとしてきた…」
体も頭も悲鳴をあげているのか、いよいよ倒れそうになる。
「ちょっと休憩」
途中にあった公園のベンチに座り込んだ。
「…ふぅ」
まだ身体中の神経が逆だっている。
敏感になっている。
一体なんだったんだ。
黒い男と、金色の女騎士。
あれは人間じゃない。
人間の形をしたナニカだ。
あんなものが何故ウチの学校のグラウンドで殺し合いをしていたのか。
「くそっ……何なんだよ、これ」
状況が掴めない。
頭を悩ませる。
「…考えたって分かるわけないか」
そう言ってため息を着いた。
その時。
「_______!!」
悪寒がした。
あの時と同じ。
例えられないような、恐怖を感じる。
「……」
思わず息を呑む。
体の動きが散漫になる。
周りを見渡しても、誰もいない。
こんな夜に、公園に来る奴なんてそういない。
気配はない。
しかして、殺意は感じられる。
周りにはいないのに、感じられるモノ。
まさか。
そんな訳ない。
またアイツが来たとでも言うのか。
「_____ッ!!」
そして、俺は咄嗟に。
前へと飛び込んだ。
その直後。俺の座っていたベンチが真っ二つになった。
「なっ___!?」
倒れ込んで、後ろへ飛びずさる。
そこには____
「なんだ、お前生きてたのか」
さっきのヤツがいた。
黒い外套に大きな中華包丁。
顔は見えない。
「…死んだと思ったんだがな。確実に心臓に突き刺した。生きていられるはずがない。だって言うのに生き延びる、か」
感情のない声が公園に落ちる。
「…俺が殺し損ねたってのも、久方振りだ。アイツ以来だな」
男は一転、楽しそうに中華包丁を指先で器用に回す。
「……まぁ、ただの人間にしては上手いことやったな。褒めてやる」
「だからその褒美として___」
「_____こっちで殺してやろう」
そう言って___
中華包丁を音もなく振り下ろす。
俺は右に避ける。
スパッと、頬に掠る。
「っ!!」
その後に来る、斬撃、それを死ぬ気で避ける。
「ははッ!!なんだ、避けてばかりじゃつまらねぇじゃねぇか!」
そう言った直後、身体が飛んだ。
「____が、ぁ!?」
視界はぐるぐると周り、衝撃と共に逆さになる。
蹴りを、入れられた。
見えなかった。それが斬撃だったら____そう考えるとぞっとする。
「っ!?」
すぐに転がりながら起き上がる。
ガガガガッ
そんな音をたてて6本のナイフが地面に突き刺さる。
あのまま倒れていればハリネズミになっているところだった。
「っ?」
その時、何かが足に引っかかる。
そこにあったのは、金属バットだった。
ここの公園で遊んだ子供が置いていったものだろう。今は、緊急事態だ。これを拝借しよう。
「これなら____っ!!」
両手で持って構える。
俺だって、小さい頃は一応剣道をやってたんだ。随分前に止めたが____それでも何も無いよりは_____
「……いいねぇ。楽しませろよ…?」
マシだと_____そう、思っていた。
次の瞬間、斬撃の嵐が始まった。
「~~~っ!?」
多分、男は手加減していた。
その気になれば俺は一瞬で殺されていたハズだ。
なのに、俺はかすり傷を追うだけで、致命傷は受けなかった。
______遊ばれてたとしか、言いようがない。
「ほらよ」
「ぁ______っ!?」
が、それも本の数秒。
俺の持っていた金属バットは、中華包丁によって、先端を斬られてしまった。
そして、また蹴りをくらって吹き飛んだ。
「ぐ、ぁ_____」
意識がトビそうになった。
公園の遊具に叩きつけられて、一瞬視界が真っ白になる。
「……なんだ、あれを食らって生きてるから何かあるのかと思ってたが____拍子抜けだな」
「_____ 」
無茶を言うな。
バケモノのお前に言われたくない。
俺は一般男子高校生なんだよ___!!
遂に、追い詰められた。
後ろに下がろうにも振り返ればもう道はない。公衆トイレか何かの壁に背中を合わせる。
「……まぁいい。じゃあ_____今度は最っ高にクールに殺してやる」
もう奴に躊躇はない。
いや、もう最初から無かったのか。
俺は、殺されるのか。
_____1度、助けられたのに?
誰かは分からない。けど、死にかけていた俺を、多分必死に助けてくれた。
ならば。
礼も言えずに。
また死ぬのか?
____死ねるか。
助けられたんだ。なら、それなりに恩返しをしなきゃ行けないだろ。
それに____
家には、スグが待ってる。
それに学校には友達がいるんだ。
ただ2人の、幼なじみが。
死んでたまるか。
まだ死ねないんだよ。
諦めきれる訳、ない__!
右手の甲が熱を帯びる。
「____お前みたいな、ヤツに____」
「殺されて、たまるか_____っ!!」
その時、目の前が真っ白に染まった。
「なっ_____7人目のサーヴァントか___!?」
その中で、男の驚愕の声と___
鋭い金属音が鳴り響いた。
「……?」
視界は真っ黒に戻る。
恐る恐る目を開けると、そこには_____
「_______ 」
1人の少女が佇んでいた。
甘栗色の長い髪、白とピンクを基調としたドレスと、それを控えめに守るように添えられた鎧。
そして、右手に携えるは
「_____ぁ」
思わず、呼吸する事を忘れてしまった。
そして、彼女は振り返ってこちらを見た。
髪と同じ色の瞳。
俺と同じか、俺より背の低そうな少女は俺を見て言った。
「____サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上しました」
「___ぇ…?」
凛とした声。
本当に少女そのもの。
「貴方が、私のマスターですね?」
それは____俺にとっての運命。
まだ見ぬ世界へと、足を踏み入れた瞬間だった。