Fate/spring blade (仮名) 《Fate×SAO》   作:クロス・アラベル

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セルカ登場です。
prologueはまだ続きます。


prologue ②

 

 

 

 

「____ター、マスター」

「____ん」

誰か自分を呼ぶ声を聞いてアリスは目を覚ました。

まぶたを開けると、そこには自分と瓜二つの顔の自分がいた。

「……あれ、天井に鏡をつけてたかしら」

「…いえ、鏡ではありません。キャスターですよ、マスター」

「…………あ、あれ?」

 

キャスターに言われてがばっと身体を起こす。

キョロキョロと辺りを見回すと、そこは自室。そして、アリスはその部屋のベッドにいた。

キャスターはベッドの横についている。武装は全て解除しているようだ。鎧も着込んでいない。青い修道服のようなものを着ている。

 

「…えっと……キャスター。私、昨日あれから何したっけ…?」

「召喚してから、ということですか?マスターが疲れているようだったので休むように私が言ったのです。マスターもかなり疲弊していたようで二つ返事でこの部屋に。明日の7時に起こして欲しいと私に頼んでから眠られましたが…」

「あー……思い出してきた」

 

昨日。

いや、日付は変わっていたのでそうは言わないかもしれないが____彼女は昨日、キャスターの召喚でかなりの魔力、体力、気力…を使ってしまい、疲れて眠気に襲われた。キャスターに早めに休んだ方がいい、と言われて直ぐにベッドに入ったのだ。

つまり_____

 

「……不味、シャワー浴びなきゃ」

アリスはベッドから離れて着替えを用意する。

「ありがとね、キャスター。あなたもシャワー浴びる?」

「いえ、私は大丈夫です」

「そう…分かった。じゃあちょっとシャワー浴びてくるね」

「はい」

そう言って、アリスは自室を出て階段を降りていった。

 

 

 

 

「おはよう、姉様!」

「あ、おはよう。セルカ」

シャワーを浴びて着替え、リビングに行くとアリスの妹であるセルカが丁度階段を降りて、リビングに入ってきたところであった。

「今から朝ごはん作るから、ちょっと待ってて、セルカ」

「じゃあ私も手伝うね」

「ありがとう」

アリスと共にキッチンに立つセルカ。

 

本来ならば朝食は母であるサディナ・ツーベルクが作っている。しかし現在、ツーベルク宅では2人しか住んでいない。

両親は当然存命しているがこの春から聖杯戦争に参加するということもあって、やはり家族に迷惑はかけられないと聖杯戦争が終わるまでの間、この街から避難する事をアリス自身が頼み込んだ。両親は当然断固として拒否したが、アリスの激しい主張に根負けする形で1ヶ月の間、家を空けることを選んだ。

実際、彼女の父であるガスフト・ツーベルクの務める会社からも一時的な異動____地方の子会社への出張を元より頼まれており、確かに丁度いいか、とガスフトが渋々受け入れたのが、契機だった。

そして現在、ツーベルク夫婦はとある地方の子会社への赴任の為、家を開けている。

 

今年の春から2人は、二人暮しとなった。と言ってはいるが、2人とも料理は得意なので別段困った事はなく、他の家事も普通にこなせる。まるで____

 

 

「……なんだか、私達がルームシェアしてるみたいね、姉様」

「そうね…こうやって2人でキッチンに立つのも新鮮だわ」

朝食は至って普通、又はかなり豪華。

食パンを焼いて、ベーコンエッグを上に乗せる。サラダもつけて、結構オシャレな洋風ブレックファースト。

 

「姉様、どうして3人分用意してるの?」

「どうしてって……あ、そういえば、言ってなかったわね」

さらに用意された3人分の朝食に首を傾げるセルカ。

確かにそうだ。セルカからすれば1ヶ月だけの二人暮しが始まるというのに3人分の朝食が用意されているなど全く考えるわけが無い。直後セルカは思い出したように人差し指を上に指して言った。

「あ、もしかして……したの?昨日の夜に!」

「__ええ」

「成功!?」

「勿論、大成功よ。さて、そろそろ呼びましょうか」

目を輝かせるセルカ、それをドヤ顔で返しながら二階にいる《彼女》を呼ぶ。

 

「キャスター、降りてきていいわよ。朝ご飯よ!」

 

『_____はい、分かりました。しかし…いいのですか?妹に私のことを明かしても…』

「大丈夫よ、セルカも魔術師なの。別に誰かにバラす、なんてこともしないわ。安心して」

そう、セルカ・ツーベルクもまた、魔術師だった。

 

ツーベルク家は魔術師の家系だ。と言っても歴史は浅く、アリスで六代目となる。それに、他の魔術師の家系と比べて全く姿勢が違う。

というのは、大体の魔術は一子相伝。1人にのみ、その家系の魔術を伝授する。しかし、ツーベルク家はそのルールに囚われず、例え兄弟や姉妹が生まれようと等しく魔術を伝授する。

他の魔術師達からすればあまりいい風には見られないだろうが、これがツーベルク流。故に2人とも魔術師だ。腕に関してはアリスは今までの代の中でも逸材、セルカもアリスに負けず劣らず。

密かにセルカが持つ目標は、(アリス)を超えること。かなり難しそうではあるが。

 

二階から降りてくるキャスター。その姿を見て、セルカは驚いた。当たり前だ。自分の姉そっくりの女性が目の前にいるのだから。

 

「え……えっ!?」

「こんにちは、セルカ。私が彼女のサーヴァント____キャスターです」

「えっと……ごめんなさい、セルカ。驚いたでしょう?私も昨日は驚いたわ…あはは…」

「私の事は、クラス名で呼んでください。キャスター、と」

「_______わ、分かった……ん、分かりました…?」

「敬語でなくてもいいですよ、セルカ。私はサーヴァントとはいえ、使い魔の一種ですから」

「……うん、よろしくね。キャスターさん!」

笑顔で握手を交わす二人。それを見たアリスはこれならば、家にキャスターがいても問題は無いな、と確信したのだった。

 

 

 

 

 

 

「本当に、今日が日曜日で助かったわ…じゃ、ササッと課題を終わらせなきゃね」

三人で朝食をとった後、アリスは家の掃除を終わらせて高校の課題を終わらせることにした。

アリスは魔術師だが、同時に学生でもある。アリスの家から徒歩二十分弱の公立礫ヶ原(れきがはら)高校、彼女はそこの2年生だ。

成績もよく、運動能力も人並み以上にある。運動能力に関しては、彼女の幼馴染が原因とも言えるが_____

 

現在、セルカは友達と遊びに行っている。彼女は中学三年生でもう受験勉強真っ只中だが、今日は息抜きをしているらしい。根を詰めすぎると帰って良くないことはアリス自身も知っているので止めはしなかった。夕方には帰ってくると言う。

それに彼女にとってこれは好都合だった。何せ、キャスターとこれからについて話し合おうと思っていた。さすがにそこにセルカがいるのは良くない。アリスはセルカに聖杯戦争に関する戦略は一切伝えないと言ってある。キャスターの事を誰にも言わないこと以外は何も言っていない。

 

「____絶対、勝ってみせる」

これから起こるであろう死闘を想像し、自分の隣にキャスターがいる。そんな光景を幻視して、アリスは意気込みを独りごちた。

 

 

 

 

 

 

ツーベルク家の中庭、そこに植えられていた金木犀の木を目の前に目をつぶり、独りごちる。

 

「_____必ず、守ってみせましょう。アリス・ツーベルク、本当の私を。悔いが残らぬよう、全力で戦います」

 

キャスターもまた、同じ事を考えていたのだった。

 


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