Fate/spring blade (仮名) 《Fate×SAO》 作:クロス・アラベル
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「時間ね。行きましょう、キャスター」
「はい、マスター」
午後11時。
外出する人達も減り、街の建物の光も消え、街灯と月明かりだけが街を照らす中。
アリスとキャスターは街のパトロールに出た。
「どう?サーヴァントらしい気配はある?」
一人、住宅街を歩くアリス。
彼女は、誰もいない筈の隣に小さな声で呼びかける。
『______いえ、少なくとも200メートル圏内にはいません』
虚空から、声が返ってくる。
キャスターの武装姿を一般人に見られる訳にはいかないので、アリスが霊体化を指示した。キャスターも快く承諾してくれた。
二人が街のパトロールをしようとしたのには二つほど理由がある。
一つ目は他のサーヴァントを探し出すため。
聖杯戦争は全七騎のサーヴァントを最後の一騎になるまで覇を競い合う《殺し合い》。要は他のサーヴァントを倒さない限りこの殺し合いは終わらない。
自らの工房で敵の侵攻を待ったり、キャスターの本懐とも呼べる使い魔などを使役して他のマスターを殺す事など、アリスに合わなかった。故に、自ら出向く事を選択した。
二つ目_____これが今回のパトロールの主な目的。それは、この街において連続殺人事件を起こしている誰かを見つける事だ。
一週間前からそれは起こった。この街の中心にしてビルが建ち並ぶ通称《央都》の路地裏で、男の死体が発見された事から始まる。
その死体は身体中に切り傷があり、左胸にはぽっかりとナイフで刺されたかのような穴が空いていた____と、ニュースで報道された。
それは次の日も起こった。次は二人。とあるカップルが殺されていた。
同じように酷い切り傷を身体中に残し、男の足の片方は
警察はこれを《央都連続惨殺事件》とし、調査に乗り出した訳だが____一向に手がかりは掴めず、この日曜日で1週間を迎えた。
犠牲者は今日までで
アリスからすれば、このようなものは看過できない。
それに_____これは、本当にただの連続殺人事件なのか。
否、これは人では不可能だ。
この殺人事件で出てしまった死体の部分欠損のその断面は、チェーンソーのようなもので時間をかけて切断したものではなく、まるで《五○衛門》の如く綺麗に切られていたという。
それに____人の腕を両断するなんて業、普通の人間には不可能である。
確かに、日本では『斬首刑』というものがあったので実際に人の首を斬るという業を仕事にしていた人間がいたが、それは常人を超える卓越した技術があってこそ。
しかし、この現代社会でそんな業を極めている人間はゼロに等しい。
現代の人間には不可能ならば_____その時代の業を極めた人間ならばどうか。しかし、それも叶わない。過去の人間を連れてくる等______そう、
今、聖杯戦争が行われようとしているこの春咲市ではそれが出来る可能性がある。そう、《サーヴァント》だ。
過去、現代、未来____時代や国を問わずありとあらゆる英霊を召喚するこの聖杯戦争においてはブリテンの騎士王や最古の英雄王____果てはとある国の発明王や
という事は、この連続殺人事件の犯人は、サーヴァントである可能性が限りなく高かった。
それ故に、一人のマスターとしてこの事件を放っておく訳にはいかなかった。
「とりあえず、事件現場に行きましょう。魔力の残滓があるかもしれないわ」
『分かりました。どうしますか?央都まで少し距離があります。私が運びますが…』
「…そうね、行き来に時間かけてられないわ。お願い、キャスター」
『分かりました、失礼します』
キャスターは霊体化したままアリスを抱き上げ、地を蹴った。
「……ここにも魔力の残滓がありますね。微量ですが」
央都のとある裏路地で、キャスターは魔力探知を行った。
ここが今朝死体が見つかった場所。10人目の犠牲者が出た所だ。
あれから全ての事件現場に赴いて調べた所、同じ魔力の残滓が確認された。
「じゃあ、決まりね。今回の連続殺人事件の犯人はサーヴァント。なら、これは私達魔術師…そして、マスターの私とサーヴァントたるキャスターの管轄よ。絶対に、止めるわ…!」
「はい。しかし、これで事件現場は全てですから……ここからは粗探しになりますね」
事件現場に残った血痕を見て、激しい怒りとともに宣言するアリス。しかし、キャスターは冷静に淡々と話を進める。
「ええ。けど魔力の残滓は確認出来たなら、それを頼りに探すことは可能よね?」
「…!確かに、可能です。微かなものではありますが、探すこともできます。ただ…」
「ただ?」
アリスの自信に満ちた声とハッキリとした意思を感じる。
アリスの問いかけに答えるキャスターだったが、途中で言い淀む。
「……魔力を追っても、見つけられないことはあります。例えば、相手がサーヴァントの中でも、《気配遮断》スキルを持っていた場合です」
「あ……確か、サーヴァントですら見抜けないんだっけ?」
_____《気配遮断》スキル。
アサシンクラスにつくスキルで、その名の通り自身の気配を消すことが出来る。それ故に、敵マスターへ気付かれずに接近し、暗殺することが可能となる。
しかし、アサシンの欠点としてステータスが全体的に低く、7クラスあるサーヴァントの中でも《最弱》と言われている。サーヴァント戦において有利になりにくいサーヴァント故に《気配遮断》スキルがあるとも言えるのだが___
「はい。高レベルになってくると魔力の残滓すら残りません。しかし____今回のサーヴァントは残滓が残っている。アサシンだとしても、そこまで《気配遮断》スキルの熟練度は高くないようです」
目を細めて魔力の残滓を読み取るキャスター。
「うん、これだけ分かればいいでしょう。今夜は街をもう一度ぐるりと一周して終わりにしましょう。焦っても結果は出ない。それに今の所その残滓と同じ魔力の気配はないんでしょ?」
「はい。確か、その事件は日毎に被害者数や被害者の有無は違いましたよね?」
この街で起きている連続殺人事件は毎日死者が出ている訳では無い。
一昨日は被害がゼロだった。
「ええ。昨日は犠牲者が出たけど、今日は出ない可能性もあるわ。それに、相手側が私達の事に気づいて殺しを急遽取りやめにする可能性もある……パトロールも、中々に捨てたものじゃないなぁ」
『引き続き、パトロールを続けましょう。マスターが良ければ明日も…』
キャスターはそう言って再び霊体化した。
「もちろん。明日は学校だけど、これはこれ、それはそれ。切り替えるわ。じゃあ、行きましょ、キャスター」
『はい、では____』
その後2人は街を1周し、パトロールを終えて家に戻った。
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『______危ねぇ、見つからなくてよかったぜ』
『アレがキャスターか。中々に手こずりそうだな…』
『まぁいい。さて、ショータイムといこうか____』
気配遮断の魔力の残滓に関しては、自分で考えたものです。
Fateルールと違う…
と思う方もいらっしゃると思いますが、ただ妄想を文字に書きあげただけですので、ご容赦をば。