Fate/spring blade (仮名) 《Fate×SAO》 作:クロス・アラベル
ファイッ
♦
「______距離は?」
「_____後、180メートル先です」
住宅地の空。
家の屋根を足場にして跳び続けるキャスター。
魔力の反応はキャスターから離れようとしているが、キャスターが確実に距離を詰めていた。
「_____キャスター、追いつけるわね?」
「ええ、必ず」
「じゃあ_______ここで仕留めるわよ。この事件に終止符を打つ__!」
その命令に、キャスターは言葉ではなく更なる加速で答えた。
『 _______ 』
奔る影。
真っ黒のボロボロなマント____いや、ポンチョに近い布切れを羽織ったその影は人間ではありえない速度で家の屋根から屋根へと跳んでいる。
そして、次の家の屋根へと跳んだ____直後。
「____はァァァッッ!!」
『_________っ!?』
裂帛。
斬撃が繰り出された。
それを黒ポンチョの影が右手に持っていた得物で防ぐが、斬撃を受け止めきれずにあらぬ方向へと吹き飛ばされた。
道路にたたきつけられるが、体勢をたて直して、再び跳ぶ。
『_____チッ』
舌打ちをし、進路を変える影。
そこは_____広い、グラウンドだった。
「_____鬼ごっこは終わりですか」
学校のグラウンドに着地したキャスターはアリスを降ろし、左腰の剣の柄を握る。
10メートル先でキャスターと対峙する黒い影。
『_____どうせ追いつかれるしな』
キャスターの言葉に答える影。
月明かりに照らされてその姿が浮かび上がる。
「___サーヴァント」
アリスが息を呑む。
これから始まるのはサーヴァント対サーヴァントの人外の戦い______殺し合い。
「____アサシン、で間違いないですね」
「ああ、そうだ。俺がアサシンのサーヴァント______」
「ならば、あなたが連続殺人事件の犯人ということで間違いありませんね?」
「アタリだ、俺は《
「____そうですか、ならば辞めるつもりは無いと?」
「当たり前だろ。俺から殺しをとったら____何も無くなっちまうぜ?」
「…反英雄に類される英霊ですか」
『反英雄』
読んで字のごとく、英雄の反対、度し難い殺戮者を意味する。
存在そのものが悪とされるものでありながら、その悪行が人間全体にとって善行となるもの。
しかし、聖杯戦争において、
召喚されるのは通常の英雄であり、キャスターのような人々を護るために戦うような英霊しか召喚されないハズだった。
ならばなぜ?
アリスは訝しむ。
なぜ反英雄が召喚されているのか。
彼にとって殺戮は、彼の『趣味』だと言う。
ならば____キャスターは放っておく事など出来なかった。
「_____言っとくが、まだ殺し足りねぇんだ。だからよ……邪魔すんなよ?」
「しないと思いますか?」
「ああ____思わねぇな」
最後に交わした言葉の直後、アリスがキャスターに声をかける。
「キャスター、思いっきりやってちょうだい。私が許可するわ______ここで倒して!!」
「______承知しました、マスター」
抜剣するキャスター。
黄金の剣。
月明かりに照らされて、金色に輝く。
彼女の鎧と同色のそれは____確かに英霊の持つ宝具として相応しいものだった。
対してアサシンが右手に持ったのは____中華包丁のような刃物。
月夜で鈍く光る。
まるで光が吸い込まれていくような。
両者動かず。
しかして_____
叩きつけられる黄金の剣。
それを防ぐ中華包丁。
しかし、
「ぐッ_____!?」
力の差は歴然だった。
たった一撃。それでアサシンは後方へ吹き飛ばされた。
急いで体勢を建て直したアサシンに_______第二撃が彼を襲う。
紙一重で避け、後ろへ飛びずさる。
アサシンは悟った。
「___チッ!(こいつ______キャスターの癖して力強過ぎるだろう!?)」
キャスターらしくない、完全な近接タイプ。
凄まじいパワー。
スピードもさることながら、その一撃の重さは桁違いだった。
キャスターとは魔術に秀でたクラス。総じて接近戦に弱いのがセオリーだったが、彼女にはそのセオリーは通用しない。
アサシンは知る由もないが、キャスターは元よりセイバーとして召喚されるハズだったサーヴァント。
接近戦に強いのは当たり前。
ぶっちゃければ______接近戦こそ、彼女の本領発揮が出来る舞台。
故に____アサシンは真っ向勝負からヒットアンドアウェイ戦法へとスタイルを変えた。
「シッ!!」
「____っ!!」
一撃加えて離脱、一撃加えて離脱を繰り返すアサシンだったが、キャスターは全く動じず。
投げナイフ等の投擲武器を織り交ぜるも、全て弾かれる。
響き渡る中華包丁と黄金の剣のぶつかり合う金属音。
挙句の果てに_____
「はァァァァッ!!」
「ぐお____!?」
袈裟斬りを食らいかける始末。
スピードだけならばアサシンの方が上。
しかし、反応速度がアサシンの上をいくキャスター。
そして何より____一撃の重さが、スピードの恩恵を叩き潰した。
「はぁッ!!」
「ジャアッ!!」
サーヴァント同士の殺し合いを初めて見たアリスでさえ分かる。
「______勝てる」
負ける要素はない。
逃げられることはあっても、負けることは無いだろう。
「チィッ____!!」
何回目かの投げナイフを投擲しようとしたその時、
「甘いッ___!!」
キャスターの追撃がナイフを叩き落とし、アサシンに向かって一歩踏み込み____
「Oh!?」
「はぁぁぁぁぁッ!!」
その圧倒的なパワーでアサシンを斬り捨てようと剣を振るう。
「Shit!!」
連続の追撃を紙一重で躱し、悔しげに後ろへ飛びずさるアサシン。
キャスターは、あえて追撃をやめたようだ。
「ったくよォ……面倒なヤツにちょっかいかけちまったみたいだな……」
ため息を着くアサシン。
キャスターは冷たい眼でアサシンを睨む。
「___諦めなさい。もうお前に勝ち目はありません。私の剣戟を1度たりとも弾き返せないお前では___」
「勝てねぇって言うんだろ?確かにな。お前の一撃の重さには勝てねぇよ。ゴリラかっての。いや、ゴリラでももっと殺しやすいぜ?」
ニヒルな笑みが黒ポンチョのフードの影からちらりと見える。
「…妄言もそろそろ聞き飽きました。次は____お前の首をはねることで終わりにしましょう」
「はっ、そう急かすなよ!まあ聞いてけ。確かにお前は俺よか強いんだろうな。だけどよ、英霊にはそれぞれ、
キャスターが剣を上段に構える。しかし、事態はアサシンの一言で一変した。
「っ!!マスター、下がりなさい!宝具が来ます……!」
「宝具…!?キャスター!」
《
英霊が必ず一つ持つという、その英雄にとっての最強の一撃であり、その英霊をサーヴァントたらしめる、必殺。
英霊が《英雄》として祭り上げられる要因になった誰にも真似出来ないような技や武器が《宝具》という絶対の一撃や絶対の守りに昇華されたもの。
どんな英霊でも《宝具》を上手く使えれば格上の英霊であろうと倒せる、戦況をひっくり返す
それが宝具だ。
「さァて……ちょいと使うには早いかもしれねぇが、いいぜ。最高のショータイムにしようじゃないか!!」
「……来るか、アサシン!!」
「お望み通りなァ!!」
距離は8m程度。
キャスターが最速で踏み込めばコンマ2秒とかかるまい。
しかし______相手は《宝具》を展開しようとしている。
今なら、宝具を完全に展開する前に叩き斬れるだろう、しかし____何の策もなしに斬りかかるのは愚の骨頂。
アサシンの持つ中華包丁のような凶器がドス黒い何かを帯び始めた。
もう遅い。
ならば、迎撃することに全てを賭けなければならない。
キャスターが中段に剣を構える。
キャスターの宝具は今すぐに展開できるものでは無い。
故に、彼女の剣____その力の一部を解放する準備をする。
「システムコール_____」
式句を唱える。
アサシンのドス黒いナニカは中華包丁を包み込む。
次の瞬間に勝負は決まる。
キャスターか。
アサシンか。
勝敗が決しようとした、その時。
「_____Hey……そこで見てるのは誰だァ…!?」
アサシンが、誰もいないはずの学校の校舎へと視線を向けた。
「_______!!」
直後、アサシンの姿が掻き消える。
「なっ_____」
「______何!?」
驚きを隠せないアリスとキャスター。
校舎には人の気配は無かったハズだった。
校舎の中を駆ける誰かの足音が微かに聞こえた。
「____まさか、校舎にまだ誰か残ってたの!?」
今の時間は7時半過ぎ。
もう既に生徒は下校し終わっているハズ。
「マスター!」
「追って、キャスター!今すぐアサシンを止めるのよ!!」
即座にキャスターが駆けた。
アリスもそれを追った。
聖杯戦争_____元より、魔術は秘匿されなければならない。
一般社会に知られてはならないのだ。
それ故に、魔術___その神秘を見てしまった一般人は、例外なく記憶を消されるか、
記憶を消す魔術を知っている場合は殺さずに済むが、記憶消去の魔術が出来る魔術師は多くない。
故に、消去法として______殺すしかなくなる。
『死人に口なし』とはよく言ったものだ。
だからこそ、アサシンはきっと目撃者を______
「____はぁっ、はぁっ、はぁっ…!!」
校舎に入り、階段を上る。
_____心の奥底では、理解していた。
もう既に遅いと。
しかし、アリスは理解していても納得はできなかった。
何の罪もない人が理不尽に殺されるなど、あってはならない。あって欲しくなかった。
「キャスター!状況は_____」
3階の廊下の踊り場に、キャスターは立ち尽くしていた。
「マスター!すみません、アサシンを仕留め損ねました____!」
苦しげにこぼれるキャスターの声。
「そのせい、で…」
キャスターの視線の先には_____血溜まりの中、うつ伏せに倒れている、黒髪の少年。
「そんな____」
「申し訳ありません。私がもっと早ければ、まだ間に合ったかも知れないのに__」
「___違う。キャスターは悪くないわ。私が悪いの。放課後だから、人はもう居ないって、そう思い込んでいた私のミスよ」
謝るキャスターに、言葉を重ねるアリス。
「しかし___」
「行って、キャスター。アサシンは多分、マスターの元へ帰って行くハズ。こんなことされて黙っていられるわけないでしょう…!こっちも向こうのマスターの正体くらい割らないと。さぁ早く!!」
悔しげなアリスの声。キャスターは従うことにした。
「マスターはどうするつもりですか?」
「私は……無駄だとは思うけど、助けてみようと思う。私のことはいいから、行って!」
「わかりました、マスター。では_____」
キャスターが霊体化し、アサシンの後を追う。
膝から崩れ落ちるアリス。
「………ごめんなさい」
そう最初に断って、少年の肩に触れる。
血溜まりの中心は、おおよそ彼の胸___心臓付近。
攻撃を受けたのは心臓だ。
仰向けにして、傷の手当をしなければ。
_____この出血の量からして、助かることは無いだろうが。
が、血を流す彼の顔を見て____息が止まった。
「______そん、な」
倒れていた少年。それは_____
「___嘘」
声が震える。
「どうして、あなたが____!!」
「私、どうやってユージオに顔向けすれば良いの_____!」
アサシンに殺されたのは___
彼女の幼馴染の一人、桐ヶ谷 和人だった。
両手で顔を覆い、涙が零れる。
「………まだ」
しかし、泣いている暇はない。
和人の胸に手を置くと、小さくはあるが鼓動している。乱れているが、呼吸音がする。
「まだよ。辛うじて息がある。可能性があるなら____」
アリスは涙をふいて、和人の胸に手をかざし、術式を展開する。
「システム・コール、ジェネレート・ルミナス・エレメント、コンペンセート・ブレスト・アンド・ハート!!」
《神聖術》。
魔術とは違った、別のモノ。
この国だけにおいて、生まれた魔術に代わるものだ。
その神聖術はもう何百年前に廃れてしまったが、ツーベルクはそれを代々受け継いできた。
その治癒の術式によって生まれた白い光が彼の胸の傷に落ち、傷が塞がっていく。
しかし_____傷を塞ぐだけでは彼は助からない。
大量の血液が失われた彼は、出血多量で死んでしまう。故に、べつの術式を唱える。
「システムコール、トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、セルフ・トゥ・レフト____!!」
その中でも、彼女の行っている術式_____天命移動術は治療系神聖術の中でも最高位の術だった。
「_____ぅ、ぁ____っ!!」
《天命移動術》とは、術者又は対象者の天命____生命力を、別の人間に移すもの。この場合、アリスの天命を和人へと移している。
「っ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ_____」
光が引いて、和人の顔色が良くなっていく。
アリスは息を荒くしながら、術式を終了する。
これをやりすぎると、彼女の命に関わる。
「……で、出来た…!良かったぁ……」
アリスが和人の胸に耳を当てると、小さく心臓の鼓動が感じられた。
「…倒さなきゃ。アサシンだけは、絶対に____!!」
彼女は立ち上がる。
アサシンを、倒す為に。
一応、prologueだけは一気に終わらせるつもりです。
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うずうずしながら待ってます(白目)