名バ列伝『グレートエスケープ』【完結】   作:伊良部ビガロ

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お待たせしました。
みんな、「ウマ娘パートも面白い」「私はちゃんと読んでいた」などなど、応援コメントありがとな!
そこでみんなへ感謝を込めて歌います。
では聞いてください。

「私も読み返すとき、競走馬パートしか読んでいませんでした」



というわけでゲーム実装回です。
連載中に公開していた情報と乖離がありますが、色々変わったということで。


名バ列伝 その6

 冬の北海道は流石に大変だ。また、春は馬産の時期で牧場は慌ただしいとも聞いた。

 来年の夏に行くことを決めて、私は短期バイトを繰り返して当面の生活費を稼いだ。

 貯金を使えば一年程度、楽に生活できるだけの蓄えがあるとはいえ、やはり仕事をしないと暇な時間が出てくる。

 その間に競馬にもハマり、試しに買った馬券が凄まじい配当を叩き出すこともあったりして、あっという間に夏が来た。

 目的地は当然、グレートエスケープの生まれ故郷である懇備弐牧場。場所は浦河町なので、飛行機で北海道に行ったらレンタカーで向かう予定だ。

 ついでに、インターネット仲間のダラカニさんもグレートエスケープのお墓参りに行く予定があるそうで、それに合わせてオフ会もすることになった。

 飛行機を待つ間に、ツイッターを開く。

 ちょうど、明日からのガチャ更新予告ツイートがあるはずだと思い、公式アカウントのページを開いた私は目を疑った。

 

「グ……グレート……エスケープ……だと……!?」

 

 スレではアニバーサリーのときにガチャ実装濃厚とされていたグレートエスケープが、何故かこのタイミングで実装された。

 馬鹿な、そんなことがあるのか。

 いや、あるに決まっているが……それにしても何故かと考えて、直ぐに思い当たった。

 グレートエスケープの命日――もうすぐその日だ。今回も、命日に近い日にお墓参りに訪れる予定だ。

 

「それでグレートエスケープかぁ……」

 

 ツイッターやまとめサイトの反応も概ね同じ反応が多かった。

 スレでは

 

「ついに……来たか……」

「やめてくれチャイゲ。その実装は財布に効く。やめてくれ」

「頑張れオタク頑張れ! 俺は今まで頑張ってきた! そして今回も! これからも! 俺は決してガチャで折れない!」

「これはタマモのためのガチャ石だからスルーだな」

「減っとるで」

 

 等々、悲喜こもごもといった有様だった。

 ついでに、絵師がパロディで書いたイラストも次々乗せられている。

 

「スペェ! お前は私にとっての新たな光だ!」

「なぜこんなにも親和性が高いのか」

「サポカイベがわりとそれに近いからじゃないですかね……」

「スペェ!→言った

 お前は私にとっての新たな光だ!→それに近い内容は言った」

「つまり……どういうことだってばよ?」

「幻術か……? 幻術なのか……? また幻術か……?」

「許さん……幻術だと……絶対に許さんぞ……メジロマックイーン……!」

「なんでですの!!?」

 

 ツイッターやスレは早くもお祭り状態だ。

 

「夢女ステークス1番人気来ちゃう?」

「シリウスシンボリが強くない?」

「そこまで露骨に夢女ステークスの強みは出ていなかったけど節々から雰囲気出てるよな……」

「女トレーナーが重馬場になってしまう……なる……なったわ……」

「ルール破り常習犯(原作で脱走とか悪さをよくしていた)、後輩の面倒見がいい(種牡馬として好成績、厩舎でも歯向かわない相手には優しい)、遊びを色々と教えてくれる……完全にちょっぴりキケンな先輩枠で私の性癖には合っていますね!」

「何が横紙破りか……! スペちゃんの先輩に相応しくありません」

「グラスが負け惜しみ言ってマース!」

「エル。」

「私の方が速いですよ……?」

「必ずしもそうとは言いきれないのがこいつのやばさ」

「は? 速さはスズカの方が上だろ」

「お? グレートエスケープは秋天もレコードなんだが?」

「なんだとこの野郎スズカが怪我しなきゃ2着だったろうが」

「そんなもんあとからなんとでも言えるわ」

「でもディープインパクトの方が強いんだよね」

「凱旋門賞勝ってから出直せ」

「三冠とれねーくせになんだよこのハゲ」

「誰がピカピカ千直番長だコラァッ!」

 

 スレの流れが怪しくなってきたので私はタブを閉じた。

 強さ議論は他人に任せるとして、グレートエスケープ実装には心が躍った。

 ついで、ツイートが追加でされた。

 

『週間パンクジャンプ、略してパンジャンにてウマ娘完全新作コミック連載開始!!

 タイトルは【THE GREATEST RUN】

 主人公はグレートエスケープ!』

「な、なんだって……!?」

 

 新作漫画連載開始だと。

 普通、ぱかちゅーぶとか特番を組んで発表するようなものじゃないのだろうか。

 再びスレやツイッターを見ると、やはり反応は祭りを通り越して狂乱の様相を呈していた。

 

「待ってくれたまえ! いきなり言葉の洪水をワッと一気に浴びせかけるのは!」

「クソッ、寝る前だってのに重大なものを見せやがって!」

「寝るの速すぎだろまだ昼やぞ」

「うおおお嬉しい……! アニメ1期ではグレートエスケープ出なかったし、漫画版とはいえ時系列的に1期の別世界線みたいな感じでやってくれるだろうしな」

「今週の競馬はグレートエスケープ産駒買うしかねえな!」

「いるのか?」

「今年5歳世代がラストクロップだからそれなりには」

「それにしてもすげータイトルだ」

「それだけの馬だったからなぁ……最強馬論争は未だに終わらないけど、時代を切り開いたって意味ならやっぱりこの馬になるのかな」

「勝ったり負けたりすることが好まれたし、最強馬以上に人気馬だった……オグリとかゴルシとかそんな感じの」

 

 連載決定イラストにはグレートエスケープの他、ウマ娘ではない美女二人が描かれている。

 

「トレーナーの人かな」

「二人いるのか……?」

「これは梶田騎手と滝騎手の二人が主戦級騎手だったから、トレーナーも二人とか?」

「やだ、三角関係……!」

 

 続々と溢れてくる情報に興奮冷めやらぬ中、飛行機への搭乗が始まった。

 ここから北海道まで飛んだあとは新千歳空港からレンタカーで札幌まで移動し、休む。

 明日、札幌で観光したら明後日に浦河町の懇備弐牧場へ向かい、『ダラカニ』さんと牧場見学かつグレートエスケープのお墓参りをする予定だ。

 

「明日は観光じゃなくてグレートエスケープのガチャやることになりそうだな……旅行費使ってガチャか……まぁ天井まで回せばいいか」

 

 ひとまず、飛行機に乗ってから考えに耽るのだった。

 

 ×××

 

 翌日の昼過ぎ、早速攻略サイトがグレートエスケープの性能などを明らかにした。

 シナリオに対する反応はまだだが、それも直ぐに出るだろう。

 私は札幌の寿司屋でスマホを操作し、アプリを起動した。

 

「先にガチャを回そう」

 

 貯めておいた育成ガチャチケットを使用。

 

「お」

 

 激熱!と書かれたセンスを広げた理事長の姿が現れる。まさか、と思うより速く、演出が始まった。

 

「――遥か遠く、栄光の彼方。どんな嵐も切り裂いて、私は辿り着いてみせる」

 

NEW!【ネヴァー・セイ・インポッシブル】グレートエスケープ ☆☆☆ 

 

 あらやだいきなり引けちゃった……!

 固有スキルの演出も凝っていてかっこいい。やはりチャイゲームス、気合いが入っている。

 肝心の性能だがどうだろうか。

 アオハル杯である程度予測はできるものだが。

 

 

 

〇攻略サイト

 グレートエスケープの評価

 

 育成難易度:難しい

 ステ補正:根性20% スタミナ10%

 初期レア:星3

 名称:ネヴァー・セイ・インポッシブル

 固有二つ名:偉大なる逃亡者

【評価】

・終盤で前の方にいると加速する固有スキル

・覚醒スキルにチャンミでは逃げタイプに必須級の地固め持ち

・育成難易度はやや高め

 →後半のレース目標はイベントの選択肢で難易度とレースが変化

 

【初期適性】

 芝:A ダ:C

 短:G マ:D 中:A 長:A

 逃:A 先:A 差:B 追:C

 

【固有二つ名の獲得方法】

 日本ダービー、ジャパンカップ(クラシック級)、ジャパンカップ(シニア級)を勝利し、基礎能力[根性]が1200以上、ファン数が480000人以上になる

 

【固有スキル】

「グレート・アンビシャス」

 レースで出遅れるかつ最終コーナーで我慢している状態か、レース終盤に先頭にいる状態で後ろに迫られると、栄光を目指してすごく加速する。

 

【初期スキル】

 東京レース場〇

 末脚

 急ぎ足

 

【覚醒スキル】

 直線回復(Lv2)

 全身全霊(Lv3)

 地固め(Lv4)

 脱出術(Lv5)

 

【育成ポイント】

・恵まれたスキルから育てづらいステータス補正

 スキル構成はチャンピオンミーティングの中長距離の逃げ戦法に欠かせないものばかりで、優秀の一言。しかしステータス補正が根性20%、スタミナ10%と非常にステータスを上げづらいものになっている。

 

・イベントで難易度が変化する

 シニア級1月のイベント『頂きに向けて逃亡?』の選択肢で難易度と目標レースが変化する。上の選択肢の『君は天才じゃない』を選択するとライバルが強力になり、最終目標がジャパンカップになる。下の選択肢を選ぶと最終レースはライバルの能力は変わらず、有馬記念となる。レース後のイベントも少しだけテキストが違う。

 

・イベント発生条件

 検証したところ、クラシック級で日本ダービーとジャパンカップを優勝するとイベントが発生する模様。難易度は高くなるが、レース後の能力値は多くもらえるため、より強いウマ娘育成を考えるならば、上の選択肢を選ぶべき。

 

目標一覧

目標1 メイクデビューに出走

目標2 皐月賞で5着以内

目標3 日本ダービーで5着以内

目標4 菊花賞で5着以内

目標5 日経賞で2着以内

 

選択肢『君は天才じゃない』を選んだ場合

目標6 天皇賞・春で1着

目標7 宝塚記念で1着

目標8 天皇賞・秋で1着

目標9 ジャパンカップで1着

 

選択肢『君は才能あふれるウマ娘だ』を選んだ場合

目標6 天皇賞・春で3着以内

目標7 宝塚記念で3着以内

目標8 天皇賞・秋で1着

目標9 有馬記念で1着

 

・育成のポイント

 日本競馬史上初の凱旋門賞を制覇した馬、グレートエスケープがついに実装。アニメ一期では実装されていなかったため、モブと変わらないポッと出のラスボスだったが、スキル構成は流石の一言。

 しかしその分ステータス補正は非常に育てづらく、サポカが揃っていないとスピードとパワーが全然伸びない。さらに育成シナリオでは高難易度ルートもあるため、容易に育成途中終了が起こりうる。ライスシャワーを超える高難易度シナリオと実装されてからすぐ言われるようになった。

 ところがどっこい、固有スキルの発動のしやすさと上昇率の高さで意外となんとかなってしまう。出遅れても挽回できそうな条件も含まれているが、その場合、逃げでは位置取りが前になりすぎて発動ができない。

 ちなみに我慢している、は『全体順位の上位40%以下』であり、18人のレースだと7位以下、9人のレースでは4位以下となる。だが発動するのは最終コーナーのため、条件が厳しい。そこに出遅れというバッドスキルが発動しないといけないため、素直に逃げ育成で良いだろう。逃げでは先頭さえキープしていれば大抵のレースで後続をガンガン引き離していく。

 目標レースはわかりやすい王道路線。クラシック級で日本ダービーとジャパンカップを制しているとイベントが発生し、上の選択肢を選ぶと一部の対戦相手と最終レースが変化する。

 壁は天皇賞・春。通常ルートではマヤノトップガンがライバルだが、通常ルートでも充分強敵。強敵ルートになるとここにマヤノトップガンの能力が強化されるだけでなく、それに近い能力値のメジロブライトも追加される。

 最低でもスピ・スタ500、回復スキルが欲しいところ。

 宝塚記念と天皇賞・秋のライバルはエアグルーヴとサイレンススズカが共通して出現する。通常ルートの最終レースは有馬記念で黄金世代を相手どる必要があり、単純に難易度が高い。

 強敵ルートのジャパンカップではルドルフ会長、エルコンドルパサー、スペシャルウィーク、オグリ、ナリブなどなど、夢の11Rの様相を呈し、ちょっとしたレジェンドレース並に難易度が高くなる。

 

 

 

【ボイス】

 

〇ホーム画面

 

親愛度1以上「レースでは一人だが……一人で挑めるように、助けてくれるんだろう、相棒」

 

親愛度3以上「寮で過ごすのは窮屈に感じるものだ。相棒、脱走するのに手を貸してくれないか?」

 

親愛度5以上「本当は、私は大したウマ娘じゃないんだけど……それでも、勝利を諦めたりはしない。どこまでも、走り続けるよ」

 

七夕にログイン「短冊? いいや書いていないよ。願いは自分で叶えるものだ」

 

ハロウィンにログイン「トリックオアトリート! ハロウィンは大好きだ。お菓子をたくさん食べられるからな。なんだ相棒、その目は。やらんぞ」

 

誕生日にログイン「相棒、誕生日おめでとう。君が産まれてきてくれたから、私もこうして……今のは無しだ。恥ずかしいことを言った気がする……!」

 

誕生日にログイン2「プレゼントはとっておきのものを用意してきた。もちろん昨晩に無断外出をしてな。フジ寮長には秘密にしてくれるよな」

 

ウマ娘の誕生日(4/1)にログイン「ダンスパートナーさん、スペ、スズカ、アイネス姉さん、エアグルーヴ……ルドルフ会長にまで、祝われてしまった。興味ないつもりだったが、嬉しいものだな」

 

ウマ娘の誕生日(4/1)にログイン2「相棒、プレゼントは……いや、一つ欲しいものがあった。その……一緒に、ディナー……とか……ダメか?」

 

未読のお知らせ「知らせが届いているようだ。また生徒会からの呼び出し状か?」

 

プレゼントがあるとき「何かプレゼントがあるようだ。早く開けないか?」

 

ミッション達成「ミッション達成だそうだ。ま、私たちにとっては簡単なことだったな」

 

イベント予告「イベントが準備中か。また今回も、面白いことになるといいな」

 

イベント開催中「イベント開催中だぞ。羽目を外して楽しまなくては。早く見に行くとしよう」

 

朝「朝練は気持ちがいい。まず一日の始まりを充実させなくては、目標に近づけないからな」

 

朝2「授業に出るのは面倒だが、私も学生。ほどほどにやらなくてはな……」

 

昼「ここからがトレーニングの本番だな。質も量も、こだわって鍛えていこう。頼むぞ、相棒」

 

昼2「昼食はハンバーガーにラーメンにフライドポテトも……あ、相棒! いや、これは、栄養管理の……というか、別のものにするよ……」

 

夜「相棒、疲れていないか? いつもお疲れ様。君が頑張るからこそ、私も努力していられるんだ」

 

夜2「夜こそ本番! 脱走してトレーニング、或いは愛車のバイクで走り出す! 暗い夜の帳の中を!」

 

春「春はクラシックの季節だな。トレセン学園のウマ娘にとって、熱く緊張感溢れる季節かもしれない」

 

夏「暑い……こんなに暑いと夜には部屋を脱走したくなってしまうな……」

 

秋「何故かほかのウマ娘の体調や怪我がすごく気になるんだ。ライバルが怪我でいなくなる、なんてことはつまらないことだからかな」

 

冬「雪が積もればそれを利用して脱走ルートを確保できそうだな……雪を集めてそれを足場に……フフフ、悪くない」

 

ウマ娘と会話「スペはよく世話を焼く後輩だ。素直に憧れを向けられると照れるが、いい刺激になる」

 

ウマ娘と会話2「このお弁当か? アイネス姉さんが作ってくれたんだ。栄養が偏ってるからと……私に姉はいないが、思わずそう呼んでしまう何かがある……!」

 

ウマ娘と会話3「ルドルフ会長は何故私を笑わせてくるんだ……っ、思い出しただけで……笑いが……んふっ……!」

 

ウマ娘と会話4「己を知り、敵を知れば、百戦危うからず。情報は大切だからな。そのために禁止されたデータ保管室に忍び込むのも、仕方ないことだ」

 

ウマ娘と会話5「エアグルーヴが来たら教えてくれ。また私を探し回っているらしい。まったく……少し生徒会室を改造、いやリフォームしただけなのに。蛇口からオレンジジュースが出るように」

 

〇育成

 

体力低下「疲労は確かに大きい。だが、そんなときこそ限界を越えるチャンスともいえる……か?」

 

体力低下「きついな……脚が上がらない……休暇を所望する。相棒、休ませてくれ」

 

絶好調「闘志が漲っている! 栄光へ向けて、早くトレーニングを始めよう!」

 

絶好調「頂点へ至るため、時間は無駄にはできない。フルスロットルでトレーニングしていこう」

 

好調「相棒とのトレーニングが未来への栄光と繋がっている。私はそう信じて、走るだけだ」

 

好調「今日も一日……なんだ? 何か言って欲しいのか?」

 

普通「トレーニングの時間だ。どんなメニューから始めるんだ?」

 

普通「ストレッチは済ませてきた。何事も準備は大切だな」

 

不調「コンディションが悪い……そんなときもある。不調のときでも体と上手く付き合う方法を覚えなければな」

 

不調「集中しなければいけないのだが、気合いが入らない……いや、トレーニングはきっちりやるぞ?」

 

絶不調「体が重いな。体調管理がなってなかったのか……?」

 

絶不調「やる気がない訳では無いんだが……なぜか思い通りに体が動かせない」

 

3ターン連続出走時の会話「実戦を続けるのは良い事だと思うが……基礎を疎かにしては本末転倒じゃないか?」

 

4ターン連続出走時の会話「またレースか……流石に……いや、何も言うまい。それが最善というのなら、信じるさ」

 

目標レース:絶好調「レースに絶対はない。どんなに良いコンディションでも負けることはある。だが敢えて言おう。『勝ってくる』」

 

目標レース:絶好調「調子も準備も万全ってやつだな。相棒、見ておけ。『いいレース』をしてくる」

 

目標レース:絶好調「相棒のおかげで絶好調だ。あとは私が勝ってくるだけだな」

 

目標レース:好調「ジャンクフード断ちの影響か、体の調子がいい。栄養管理は大切だな」

 

目標レース:好調「トレーニングも充実していた。こちらの用意は万全だぞ、相棒」

 

目標レース:好調「脚の調子はとても良い。なら、負ける訳にはいかないな」

 

目標レース:普通「レースだな。行ってくるとするよ」

 

目標レース:普通「平常心でいつもの力を発揮する。私たちならそれで充分だろう?」

 

目標レース:普通「気負わず冷静に。かからず、出遅れず……一番難しいかもな」

 

目標レース:不調「不調だろうと私の走りに陰りはない。心配するな」

 

目標レース:不調「いつも上手くいくわけではないからな……そういうときを突破してこそ、だろう?」

 

目標レース:不調「トレーニングで追い込み過ぎたか? だが、それでも私の勝利が揺らぐには遠い!」

 

目標レース:絶不調「良い状態ではないが、レースの結果に直結するとも限らない。いくらでもひっくり返して見せる……!」

 

目標レース:絶不調「こう見えて、絶望的な状況を吹き飛ばす方が得意でね。相棒、任せておけ……私は最後まであきらめない!」

 

目標レース:絶不調「例えどんな状態だろうと、勝利は諦めない。最後に勝利をもたらすものは、勝ちたいという執念だ」

 

チームレースの掛け合い1

グレートエスケープ「お前に追いかけられると速く走れるな」

エアグルーヴ「やかましい。レースに集中しろ」

 

掛け合い2

スペシャルウィーク「エッチャンさん! 一緒に頑張りましょう!」

グレートエスケープ「しっかりついて来るんだぞ」

 

掛け合い3

サイレンススズカ「エスケープ、いきましょう」

グレートエスケープ「ああ、どこまでも!」

 

掛け合い4

ダンスパートナー「エッちゃん、ゲート任せた!」

グレートエスケープ「どのように!?」

 

【プロフィール】

 

キャッチコピー:あらゆるものから逃げ切る稀代の”脱走王”

自己紹介:私の名前はグレートエスケープ。目指す場所は頂点、唯一つ。そのためにも相棒、よろしく頼むぞ

学年:高等部

所属寮:栗東寮

 

身長:172cm

体重:微減(調整に抜かりなし)

誕生日:4月1日

 

得意なこと:ピッキング

苦手なこと:蛇

 

耳のこと:情報を逃さぬよう常に聞き耳を立てている

尻尾のこと:よく小物を隠している

 

靴のサイズ:右25.0cm 左25.5cm

 

家族のこと:母は姉と間違えられるほど若々しい

 

グレートエスケープのヒミツ その①

・穴を掘ると心が安らぐ。

 

グレートエスケープの一コマ

・画像読み込み中……

 

 

 

 ×××

 

 

 

〇ニヤニヤ大百科

 

「勝ったレースだけがいいレースだ」

 

 

 

 グレートエスケープ(ウマ娘)とはChaigamesのメディアミックスプロジェクト『ウマ娘プリティーダービー』の登場キャラクター。

 

 実在の競走馬、グレートエスケープをモチーフとしたウマ娘である。

 CV:〇〇 ××

 

【概要】

 誕生日:4月1日 身長:172cm 体重:微減(調整に抜かりなし) 3サイズ:B81・W58・H84

 

 ニヒルな笑みがワイルドさを感じさせる、クールさとノリの良さを併せ持ったウマ娘。走ることそのものよりも、レースで勝利することに喜びを見出す勝利至上主義者。

 ストイックに自分を追い込むかと思えば、ルールを無視して羽目を外すこともある遊びの達人でもある。夢はすべてのウマ娘の頂点に立つこと。

 

 

 

 肩まで伸びるクセのついた黒い髪と右耳に耳飾りをつけたウマ娘。

 

 勝負服はワインレッドのシャツに黒いパンツスーツスタイルでジャケットは羽織るだけのマフィアちっくなもの。

 

【アニメでの活躍】

 アニメ1期、2期共に放送時は実装されていなかった。1期は同厩舎で後輩たるスペシャルウィークが主人公だったが、特にその要素はなく、憧れの先輩も終始サイレンススズカが担っていた。

 9話の凱旋門賞でライバルとしてグレイテストランが恐らくグレートエスケープをモチーフにしていたのは間違いないが、最終話でスペシャルウィークと会っても特段仲がいいと言った描写はなく、終始ライバル、あるいはラスボスとしての出番にとどまっていた。

 しかし、シーズン2の最終話ではグレートエスケープらしきウマ娘が映っていたが、当時は誰もそのことに気が付かなかった。

 

【ゲームでの扱い】

 

※性能省略

 

〇概要

 初期ステータスではスピードとスタミナが高め。成長率補正は苦行と評判の根性20%スタミナ10%。だが史実や、育成シナリオの内容を見れば納得しかない。

 

 固有スキルは終盤に加速するか最終コーナーで加速するタイプのもの。後者は出遅れかつ、一定以下の順位にいることが条件というシビアなもの。かなりロマンスキルになっている。

 前者は先頭に立っていれば発動するので、作戦は逃げで使うのがベストだろう。数少ない固有スキル「すごく」勢であり、発動条件も比較的緩いため、シンボリルドルフやオグリキャップと並ぶ固有スキルtier上位とされている。

 逃げウマ娘には是非継承させたいスキルだ。

 覚醒スキルや初期スキルには加速スキル、回復スキル、パッシブスキルなどバランス良く、さらに逃げウマ娘にチャンピオンミーティングでは必須級とされる地固めを実装された現在、唯一自前で持っている。

 チャンピオンミーティングのためにも、ある意味必須のウマ娘。

 

【関連ウマ娘】

〇ダンスパートナー

 ルームメイトであり、史実でも同厩舎かつ一つ違いで度々同じレースを走った仲。グレートエスケープが種牡馬入り後、2回種付けし、産駒は重賞を勝利した。

 シナリオやイベントなどで一緒に出番があることが多い。

 彼女とは良き友人関係であり、互いのことを深く理解し合っている仲。トレセン学園入学前から親交があったと思しき描写がある。

 幼いころは庶民的で大人しいウマ娘だったグレートエスケープと、良家の生まれながらやんちゃだったダンスパートナーが互いに影響し合い、現在の関係になった。

 

〇アイネスフウジン

 史実では親子の関係。ウマ娘としてもその縁は続いているようで、アイネスフウジンはそのお姉ちゃん力でグレートエスケープに世話を焼いている。

 ストイックかつルールを破る破天荒なグレートエスケープもアイネスフウジンには強く出られないらしく、シナリオでも「めっ!」されて大人しくなるグレートエスケープが見られる。

 

〇スペシャルウィーク

 悪いことを教える先輩と素直に言うことを聞いてしまう純朴な後輩という関係。史実の関係からアニメ1期では師弟関係になるのでは、と噂されていたが実装されなかったためお流れに。

 先輩ポジにはサイレンススズカがついたが、実装されてからはちょっと悪い憧れの先輩というダークな要素をちょっぴり持つことになった。

 

〇エアグルーヴ

 追って追われる関係でさながらトムとジェリー。

 育成シナリオ内イベントではエアグルーヴが「問題児の中でもゴールドシップとグレートエスケープは相当なもの」と発言しており、かなり頭を悩ませている模様。

 しかしお互いに困ったことがあれば手伝うように、良きライバル、友人の関係が根底にはある。

 

〇シンボリルドルフ

 史実では母父、祖父にあたる関係。そのせいなのか、テイオー同様、ルドルフがエスケープに構うシーンがある。テイオーがルドルフに甘えるのに対して、エスケープの方はルドルフから話しかけることが多い。

 基本的に孫に構う祖父と反抗期の孫という感じだが、ダジャレで笑う数少ない相手でもある様子。エアグルーヴのやる気が下がった!

 

【連載作品】

 グレートエスケープが育成ウマ娘として実装されてから間もなく、週間パンクジャンプ(略称パンジャン)でグレートエスケープが主人公の『THE GREATEST RUN』が連載開始される。

 内容はグレートエスケープが歩んできた史実と同じ流れだが、それを上手くウマ娘の世界観に落とし込んだものとなっている。

 いってしまえば、アニメの構成と近いもの。

 

〇あらすじ

 国民的エンターテインメント、トゥインクルシリーズ。華やかな舞台とは裏腹に、夢敗れて去っていくウマ娘が数多くいる、過酷な世界。

 トレセン学園は、そんな選ばれしウマ娘たちが切磋琢磨する学び舎である。

 そのトレセン学園に所属する新人トレーナー、サクラバ・ユウナはウマ娘をスカウトするが、新人であることを理由にどの娘にも断られていた。

 新人誰もがぶつかる壁を前に、心が折れかけていたサクラバだったが、そんなある日、トレセン学園の壁を乗り越えて目の前にウマ娘が現れる。

 そのウマ娘の名前はグレートエスケープ。

 出会いをきっかけに、グレートエスケープとサクラバはトレーナー契約を結ぶ。

 溢れる野心を胸に戦う彼女の奔放さに振り回されながら、サクラバも彼女を支えるために、トレーナーとして成長していく。

 

 登場人物など詳細は個別記事を参照。

 

【関連動画】

読み込み中……

 

【関連項目】

……

 

 

 

 ×××

 

 

 

〇グレートエスケープの育成シナリオに対する反応

 

「夢女ステークス1番人気まさかの馬券外」

「逆に湿度四天王に突っ込む勢いで大穴開けてきやがった」

「ウソでしょ……グレちゃんそんなに湿度高いの……?」

「スポ根が根底にあるけどちょくちょく湿る。王道だけど重い。本人の心が重い」

「あんな『イケない子猫ちゃんだ』みたいなこと言いそうなのに!?」

「むしろ子猫ちゃんなんだよなぁ」

「ほいスクショ」

 

『これでダメだったら私は地獄行きだな……』

『地獄だろうとついて行くよ』

 

「え……なにこれは……」

「育成シナリオはナリブみたいに条件が合えば選べるけど、高難易度じゃない方だと春天のあとは怪我の下りが入る」

「どうしてそうなるのよ!!」

「怪我してしまったけど走りたい→もし負けたらトレーナーの責任と言われてしまうのをわかってるのに走ろうとしているなんて最低なことだ→上記画像」

「やだ、トレーナーもグラビティー……」

「基本的にスポ根で、才能豊かで大胆不敵な雰囲気があるのは周りに見せている姿であり、辛い時にはただの女の子であることをトレーナーにだけ見せちゃうなんて……凄まじい湿度……」

「基本的にライオンとか虎みたいな振る舞いするけど何かあると子猫になる」

「ヘタレウマ娘ステークス1番人気」

「凱旋門賞ウマ娘の姿か……? これが……?」

「今北産業」

「・夢女ステークスには参加できそうだがヘタレ要素が強い

 ・シナリオが重い、シンプルに苦悩が重い

 ・勝利以外無駄だと言い切ってしまうストイックな熱いシナリオ」

「なんか……人気馬が大穴を2着に連れてきたみたいだな……」

「スペちゃんじゃん……」

「確かに」

「そしてセイちゃんに並ぶレベルの恋愛よわよわ勢」

「嘘みたいだろ? ウマ娘に実装された種牡馬の中では現時点で一番種牡馬成績すごいんだぜ? なのによわよわだなんて……」

「ちなみにどのくらいすごいの?」

「SS、ディープ、キンカメには負けるけどその下にはつけるくらいの種牡馬成績」

「さぞモテるんやろなぁ」

「モブウマ娘や後輩にはモテモテだったから……」

「なんでトレーナーに対してはよわよわなの?」

「ちょっと横になりますね。先輩も一緒に」

「実質セイちゃんとグレちゃんの百合じゃん?」

「傷の舐め合い百合かよ」

「一戦しかやりあってないけど、逃げ脚質やキャラクターの策士っぷりは結構似てるポイント多いよね」

「恋愛クソ雑魚っぷりまで似なくても」

 

 

 

〇新連載について

 

「全然プリティーじゃねえ!!」

「プリティーダービーはタイトルにないだろ!!」

「案の定シングレと同じ圧倒的画力とプリティ要素を欠片も感じないスポ根物語」

「トレーニング風景や理論、描写がガチで面白い上にテンポも早くていいな」

「半年くらいで連載終わらない?」

「流石にないだろ」

「新人女トレーナーは梶田さんなのか滝さんなのか」

「トレーナーの妹として医療担当みたいな子が出てきたんだけど」

「ノリのいい明るいねーちゃんとちょっと内気だけど献身的な妹か……」

「オーナーを思い出すな」

「死別ネタは鬱すぎるのでNG」

「さすがにやらないだろうけど、そういう要素はありそう」

「……姉妹と担当ウマ娘でトライアングラー?」

「悲しみの向こうへと?」

「中に誰もいませんよ」

「外からゴールドシップゥ!!」

「育成シナリオでマヤノもブライトも来ないと思ったらゴルシに負けるのやめて?」

「時々やたら距離が近いのはなんなん? エ〇なん?」

「我々にエ〇は禁止しておいて公式作品ではエ〇を出すなんて……!」

「みんな禁止のせいでピュア度がとんでもないことになっとるな」

「ダンスパートナーは実装されたけどこの流れでダンスインザダークも……?」

「どうじゃろ、古馬と走ってないからな……絡ませづらいのもあるかも」

「たたクラシックの時ライバルと言えるのはダンスインザダークくらいなものだし……あとはバブルガムフェロー?」

「グレートエスケープのライバルは

・クラシック ダンスインザダーク

・クラシック終了後から4歳 バブルガムフェロー、マヤノトップガン

・5歳以降 エアグルーヴ、サイレンススズカ、そして最強世代」

「毎回言われてるけどグレートエスケープに負けて最強世代は違和感あるよな」

「・エルコンドルパサー→凱旋門賞で敗北

 ・グラスワンダー、セイウンスカイ→有馬記念で敗北

 ・スペシャルウィーク→ジャパンカップで勝利

 スペシャルウィークが最強なのは明らか」

「そのあとグラスワンダーはスペシャルウィークに勝ってるんですが」

「つまり……どういうことだってばよ?」

「グラスワンダー、エルコンドルパサーはスペシャルウィークに強い。スペシャルウィークはグレートエスケープに強い。グレートエスケープはグラスワンダー、エルコンドルパサーに強い。

 つまり……黒 井 最 強」

「黒 井 最 強」

「黒 井 最 強」

「黒 井 最 強」

「黒 井 最 強」

「熱くて面白いのでみんなも読んでくれよな」

 

 

 

 ×××

 

 

 

 懇備弐牧場は年間数頭から十数頭のサラブレッドを生産するマーケットブリーダーと聞いており、あまり広くないものと思っていたが、やはり北海道の敷地というのもあるのだろう。

 雄大な放牧地に所々見えるサラブレッドたち。

 まさに競走馬の牧場といった様相だ。

 

「見学を希望していた緑沢です」

「ああ、どうも。お話は伺っています。お連れの方はお待ちですよ」

「ありがとうございます」

 

 インターネット仲間のダラカニさんは既に到着しているらしい。そういえば本名聞いてなかった。

 だとしたら妙だ。

 待ち合わせするなら、普通は名前を言わないと牧場側も把握出来ないはず……それぞれ個別に見学を申し込んだから牧場側も二人で来ることを想定しないはずだが。

 そう思い、足を運んだ先には放牧地を眺める私とあまり歳の変わらない男性がいた。

 スタッフというわけではなさそうだが、やたら慣れているような佇まいだった。

 

「こ、こんにちは」

「こんにちは。もしかして、グリーンダブルピースさんですか?」

 

 ハンドルネームで呼ばれるのは、なんだか面映ゆい。背徳感すら覚える。

 私は緊張しながら、青年……いや、壮年の男性に言葉を返した。

 

「はい……えっと、ダラカニさん?」

「そうです。初めまして……何回も会話はしてるから違和感ありますね」

「ええ、ホントに……」

 

 初めて会ったのだが、見たことある気がしてくる。

 というか、本当にどこかで見たことがある。テレビや、動画で。

 私は失礼を承知で尋ねた。

 

「あの……もしかして……間違えていたら失礼なんですが、白村……調教師?」

「バレました? 意外とテキの顔は覚えられないと思ってましたから」

「ちょうど先週の競馬サイトのニュースで写真が載っていましたので、それを見ていて」

「札幌記念のインタビューですかね。今週、管理馬が出走するので……今は札幌で滞在競馬してる馬が多くいるから、北海道にいるんですよ」

「そうだったんですか……今週も頑張ってください。それはそうと、懇備弐牧場にはよく来るんですか?」

「此処に限らず、牧場を回ることはよくありますよ。良い馬がいたらぜひ預けてくださいとお願いしますし、馬主さんに良い馬がいますよと薦めたりします」

「懇備弐牧場にも期待の馬はいますか? グレートエスケープのような」

「あんな馬、そうそういませんよ。社来グループみたいな大きいところですら、グレートエスケープのような馬を生み出そうとしているくらいなのに。だからこそ、馬産、ひいては競馬は面白いんだろうけどね」

「そうなんですか……でもグレートチャンプとか産まれましたよね」

「そうですね。種牡馬として、グレ坊……グレートエスケープが頑張ったからでしょう。あそこにいる牝馬はグレートエスケープの娘ですね。母父はスペシャルウィーク。お母さんとしても頑張っています」

 

 グレートエスケープという稀代の名馬も、すべて名前があり、大切に育てられてきたサラブレッドの血によって生み出された。

 受け継がれてきた血脈は、これからもグレートエスケープから、受け継がれていくのだろう。

 まるで大河ドラマのような果てしない世界に、胸が高鳴った。

 

「向こうの1歳馬は?」

「あれはディープインパクトのラストクロップになる、キャッシュレスのXX20です。牝馬だし、中央でも勝ち負けできるんじゃないかと思っています」

「あれは?」

「シニスターミニスター産駒ですね。もう一頭はゴールドシップ産駒で、向こうにいるのはハチミソングの産駒です」

「じゃあこっちは?」

「こっちはロードカナロアやグレートチャンプを種付けしてしまい、牧場の資金難に頭を抱える天長場長」

「俺の馬鹿野郎……! なぜ……何故俺は……あのような配合を……!」

 

 色んな姿があるんだなぁ。

 私はのほほんと蹲る牧場長を見ていると、彼がこちらに気が付いた。

 

「うん……? あ、白村先生じゃないですか。お久しぶりです。クロスケのお墓参りですか。そちらの方はご友人で?」

「はい。命日なのでお墓参りに」

「そうですか……ところで……そこの方、牧場で馬の世話することに興味ない?」

「あります」

「マジで!? 牧場スタッフにならない!?」

「仕事ないんでいいですけど、いや、いいんですか? 素人をホイホイ入れてしまって」

「いいですよ。私、見る目はあるつもりなので。グレートエスケープを見出したのも私ですから……それにいま給料余り出せなくてみんなやめちゃうし」

「天長場長の決定なので別にいいですが、散々そう言って牧場の経営傾けていませんでしたか……?」

「白村先生は黙っててください。とにかく墓参りに行きましょう」

「はぁ……本当に大丈夫ですか? というか給料……」

「天長場長は割とこういう人だから……オーナーの希望とはいえ、ダービー馬で乗馬させるのを許しちゃうくらいだし」

「ええっ……どういうことですか……」

 

 話しながら牧場長の後についていくと、馬の嘶きが近くで聞こえた。

 振り返ると、まだ仔馬くらいの体格のサラブレッドが、切なそうに鳴き声を上げながら私の傍にすりよってくる。

 ダラカニさん、いや白村先生が驚く。

 

「こいつ、グレートチャンプの子の……1歳馬。なんでこんなところに」

「あっ、デルタ! また脱走したのか!」

「デルタ……?」

 

 黒鹿毛の仔馬は、額に三角の流星を浮かべており、これが名前の由来になっているらしかった。

 グレートチャンプ-――グレートエスケープの子供にして、親子2代でダービーや凱旋門賞を制覇した産駒。その初年度産駒という、グレートエスケープから見て孫になる仔馬だという。

 

「デルタは寂しがり屋で、牧場の柵を飛び越えて脱走することがあるんですよ」

「へぇ……グレ坊もよくやってたなぁ」

「グレチャンもしていましたからね。遺伝でしょうか。脱走癖の」

「それなら、こいつもすごい馬になるかもしれませんね」

「いやぁ、どうだろうか。見栄えは良くないな」

「健康に走ってくれれば、それでいいですよ」

 

 場長は他のスタッフを呼びに、白村先生はデルタがどこかに行かないように宥めている。

 二人が期待しないというのだから、強い馬になるポイントはあまりないのかもしれない。

 だが、私には、将来すごい馬になるんじゃないか――そんな予感がしていた。

 突然牧場スタッフとして初めて関わったサラブレッドが、三冠馬という栄光を掴むそのときまで――その予感が本当かどうか、知る由もなかった。

 




人物紹介
〇仕事やめたおじさん(緑沢)
 突然電波を受信して仕事をやめて気ままに過ごした結果、グレートエスケープの故郷の牧場で働くことになった。慣れない世界ながらも順応し、懇備弐牧場を献身的に支える。そして、才能も開花。配合や経営など任されるようになり、スタッフからは実質の場長として扱われるようになっていく。

〇牧場長
 またリーディングサイアーの血を経営無視して種付けし、経営を傾かせた。それでもグレートエスケープからのサイアーラインや産駒が活躍しているため、取り返せている。そのため、周囲のブリーダーからはギャンブル気質ながらそれを当てる相馬眼を持つ男と尊敬されている。

〇白村調教師
 調教師として活躍中。公式ツイッターは競馬情報の他、サブカルチャーコンテンツの投稿もたくさんしており、オタク調教師としてネットで知られている。全力でうまぴょい伝説を踊り、それを投稿した結果、バズった。

〇デルタ(のちのデルタダイナマイト)
 のちに庭先取引で橘恵那オーナーに購入される。取引価格4000万円。牧場長、白村調教師、そしてオーナー自身、そこまですごい馬とは感じなかったが、緑沢の推しによって購入。XX24年に三冠馬となる……かも、しれない





幻覚放流場 みんなもグレートエスケープ世界の住人になろう!
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ネタ募集場 見たいネタがあれば気軽にどうぞ
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予告
いっけなーい! 遅刻遅刻!
私、グレートエスケープ7歳! この春からついに種牡馬になるの。
憧れの種牡馬生活、私も伝説のサンデー先輩みたいになってみせるんだから!
なのにいきなり絡んでくる謎の種牡馬たち。
え……種牡馬として失敗したら、追放!?
そんな……私の種牡馬生活、どうなっちゃうの~~!?

新番組、名種牡バ列伝グレートエスケープ 第1話「競馬場で逢った、ような……」

お楽しみに!!

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