ここからはなんでもアリな、コメディ重視なノリでいきます。
ネタが思いついたら更新していくので、後述する場所でネタなどを落としてくれると更新が早くなるかもです。
今日は一年に一度の種付けの日。
人間の都合で、私にとって興味もない牡と引き合わされ、無理やり子供を作らされる。
屈辱的で、私は当然言うことなんて聞きたくなくて、やってくる牡馬を尽く蹴って追い払おうとした。
「こんな蹴り癖があったらいい種牡馬は付けられないなぁ……」
「断られちゃいますよね……」
「良血だからきっといい子が出ると思うんだけど」
牧場の人間がボヤくが、だとしたら良いざまだ。
これまで何回もヤられていたが、もう言うことは聞かない。
私はこれからは自由気ままに草原を走って、たんぽぽを齧り、ゴロゴロしながら生きていくんだ。
そう思っていても、やっぱり種付けのために大きくて怖いモノの中に入って、ガタガタ暫く揺られて連れてこられてしまった。
人参は囮だったのかもしれない。汚い奴らだ。
「今日はとびきりのイケメンだぞぉ」
「良血ではないけど、いわば叩き上げってやつだな」
誰だろうと関係ない。
第一、去年はイケメンとか言いながら連れてきたのはオジサンだったじゃないか。
私は蹴って追い払おうとするが、牧場の人達は慣れたもので蹴られないところにするする逃げていく。
「グレートエスケープが到着しましたー」
私はそっぽを向いた。
どうせいけ好かない勘違い牡馬なのだろう。
「やぁ、初めまして。僕の名前はグレートエスケープ。今日はよろしく」
「……」
無視だ無視。
どいつもこいつも人間の言うことを聞いて乱暴に迫ってくる奴らばかり。
この牡も同じなのだろう。
近づいてきたら蹴ってやる。
「あー……大変だよねぇ。僕もたくさんやるように言われて……正直しんどいよ。愚痴吐く相手もいないしさ……君はどう?」
「……さぁね。仕事なら仕方ないんじゃない?」
「でも好きな子とこういうことはしたいだろう? 僕はまだそういう子がいないんだけど……苦しいものだよね」
「え――あなたも、なの?」
思わず振り返る。
そこにいたのは、筋骨隆々でありながら、荒々しい雰囲気はまったくなく、困ったように笑う若い牡馬で。
不覚にも、カッコイイ顔だな、なんて。
「~~っ!」
そんなことを考えた自分を振り払うように頭を振った。
私は人間なんかの言いなりにならない。
私は私が望むことだけをするんだから! しかし彼の声は、驚くほど耳にするりと流れ込んできて、それが不快ではなかった。
「名前、聞いてもいいかな」
「っ……ジャコビニア……です」
「素敵な名前だね」
「べ、べつにっ。大した名前じゃないから……あ、貴方の名前!」
「うん?」
「こっちが名前を教えたんだから、貴方も名前……を……」
「僕の名前はグレートエスケープ。もう一度名乗らせてもらうよ」
「そ、そう。貴方も、素敵な名前なんじゃない?」
「ありがとう」
彼――グレートエスケープが名乗るのと同時に浮かべた微笑みに、私の心臓は爆発したみたいに高鳴った。
今まで感じたことのない感情に、私は行き場を持て余した。
しかし、周りの人間たちは急かすように私の後ろに彼を誘導する。
「こらっ、やめないか! 彼女も望んでいないだろう!」
グレートエスケープが周りの人間たちを追い払おうとしている。
しかし、彼にも役目というものがある。
このまま拒否されては彼が叱責を受けてしまうかもしれない。
気づけば、言葉は口をついて出ていた。
「――いいわよ」
「え?」
「っ……別に、その……私に……そういうことシても……いいって言ってるの! 恥ずかしいから早くしてっ。それと……優しくしてよね……」
「ジャコビニア……」
「今は……サニー、って呼んで……子供のころは、そう呼んでもらっていたから……」
グレートエスケープはたくましい馬体を揺らし、私の背後に回る。
視界の端に見える彼の姿は、言葉ではこちらをいたわっていても、滾った情欲がにじみ出ているのがわかった。
それが、なんだか嬉しくて、私は彼に体を任せた――
※突然ですがトレセン学園高等部のグレートエスケープと、同じくクラスメイトのジャコビニアがウイニングライブで踊るうまぴょい伝説の練習風景をご覧ください。
「うまぴょいうまぴょい!」
「グ、グレさん、体力がすごいっ……私もうだめで……!」
「どんだけ作戦をこねくり回そうと、結局最後にものを言うのは基礎能力だ。そしてこの基礎能力というのは、地道で苦しい反復練習でしか得られない」
「はぁ……はぁ……私、もっとグレさんは努力とか……嫌いだと思ってた……」
「私ほど最高のウマには努力は必要ないがな! ただ、まぁ……やらねーと勝てない可能性がほんの少しだけ、あるからな。業腹だが……」
「努力……」
「ニア……練習を再開するぞ。せっかく僕にトレーニングを指導するように依頼したんだ。無駄な時間にはしたくない」
「は、はい! わ、私も頑張るからっ」
「そうだな。先ほどのダンスの振付だが、この瞬間に脚をこう――」
「わ、す、すごいテクニックと体力……!」
ハイ、というわけで終わり。
お疲れさまでした。フー、気持ちえがっだー。なにが? 詳しく聞くんじゃあないッ。
「貴方……ぐ……グレ様……次、また逢える、かな……?」
「ああ、きっとまた。貴方が望むなら」
気怠い体を揺らしつつ、笑顔を浮かべるとジャコビニアは蕩けたように笑った。
今日のお勤めはこれで最後。
疲れるが、彼女も中々美ウマであり、つい楽しんでしまった。
種牡馬場を去りながら紺野さんの後をついていく。
「あー、お疲れお疲れ。うむうむ、くるしゅうないぞ」
スタッフたちによる馬体検査を簡易的に受けてから馬房へ帰っていく。
今日の相手全員、俺のムキムキな肉体に見とれていた。
やっぱり怠けた体になってはいけないな、モテ具合的に考えて。
「グレスケ、お疲れ様ー。今日4回やったのにケロっとしてるなお前」
支度を整えると最後は屋内運動場で軽い運動の時間だ。
種付けの後の運動は格別だぜ。こう、男として磨かれているような……自分に酔える感じがたまらない。
紺野さんが以前、種牡馬として大切なのは能力を遺伝させることはもちろん、種付けを何回もこなせる性欲だと言っていた。そして、グレートエスケープはぴったりとも。
エロ魔人みたいな言い方が気になるが、実際好きである。
「~~♪ けどなー、またもっと走りたいなぁ」
紺野さんに引かれつつ、ぐるぐると歩いているが、やっぱり物足りない。
騎手を乗せて、ターフの上を全力で走り、大歓声を一身に浴びたい。
レースから離れて、レースが大好きということを改めて実感するのは、やっぱり世の中そういうものなのだろう。
馬房に戻って飯を食っていると、何やら騒がしい。
空いていた隣の馬房に入る馬が今日来るらしいので、そいつだろうか。耳をすませると、聞きなじみのある声をキャッチした。
「ヤダーッ! ヤダヤダヤダーッ! もう種付けやだーッ!」
「もう終わりだから! 暴れるなって、帰るから! おうち帰るから! 大人しくしろ!」
「帰る! 種付け行くのもうやだぁーーッ!」
この声は聞き間違えるはずもない。
長年俺の隣の馬房で生活していた後輩馬だ。
思わずため息を吐きながら呼び止めた。
「静かにしろ、スペシャルウィーク。もう夜になるぞ」
「あぁん!? 誰だ僕に意見垂れるのは! 僕はあの栗東トレセンのボスのグレートエスケープの弟分であああぁぁーーエスケープ先輩だァァーーッ!」
ばたばたと寄ってくるスペシャル。
さっきまで引き縄を掴んでいたスタッフはずるずると引きずられているが、まるで構う気配がない。ストレスたまってるんだな。
「うわぁぁぁぁーーーー寂しかったですよぉぉぉぉ!」
「わかったわかった。一回落ち着いてやれ。厩務員が引きずられてるぞ」
築地のマグロのように。
牧場の夜を満月が照らす。
落ち着いたスペシャルウィークは隣の馬房に入れられた。スタッフの人が怒っていたからスペシャルは少しシュンとしていたが、あれだけ引きずられてあのくらいで済むあたり、寛大というほかない。
「エスケープ先輩……ぼくもうだめです」
聞けば種付けが大変で嫌になっているらしい。
まだ種牡馬生活は始まったばかり、今からそんなんでは参ってしまうのではと心配だ。
「僕は引退したら人間さんと遊んだり、牧場で一人でかけっこするつもりだったんです」
「そうか。一人でかけっこか?」
「かけっこするときはなんというか救われてなきゃあダメなんですよ。独りで豊かで……」
話を聞くと種付けが苦痛だという。
元々人間によく懐いていたスペシャルにとって馬との関わりが多い今は大変なのだろう。
上手いことやってる俺としては、なにか助けてやりたいができるアドバイスが思いつかない。
「まぁ、仕事と思って頑張るしかないんじゃないか?」
「エスケープ先輩も大変なんですか……?」
「え? 大変。ウン、スゴク、タイヘン」
嬉しい悲鳴とは言わない。
「先輩も頑張ってるんですもんね……僕も頑張ります」
ぐすぐす言いながらも気を取り直したスペシャル。
楽しんでいることを申し訳なく思う気持ちもあるが、俺が神妙にしたらスペシャルが楽になるわけではない。
「それで、スペシャルは馬房が変わったが、どうだ。居心地悪くはないか」
「はい! むしろ先輩が隣にいるので黒井先生のところを思い出します!!」
にこにこと表情を変えるスペシャル。
馬でなくとも、新天地というのはストレスがかかるもの。俺は元々新しい場所は好きだったが、スペシャルはそういう気質じゃないのだろう。
再び隣になったのだから、こいつのことは弟分として守ってやらなきゃな――そう思い、気にかけることにした。
と、いうわけで、なにかとスペシャルと一緒に過ごすようになった俺は、種付けの合間に放牧地に出されると、のんびりと過ごしていた。
わーっと適当に走ったり草を食むスペシャルを見る気持ちは兄貴分通り越してお父さんだ。
じっとしていると、スペシャルに突っかかるほかの種牡馬がいた。
なにやらいびられているようだ。スペシャルも反論しているが、数と風格に押され気味。
なんだが生まれ故郷の牧場にいた頃を思い出す。
あんちゃんはいじめられっ子だったと言うが、それは本当に子供のときであり、今の俺になってからは我関せずだったと思う。それでもちょっかいかけられたらボコボコにしていたが。
とにかく見過ごせないので彼らに近づいた。
「こらこらきみたち。亀をいじめてはいけないよ」
「亀ぇ?」
「なんだい君は、あっちに行っているといい」
「あぁ、彼、新入りじゃないか。この子と同じ」
「こいつが……フン、まぁ悪くないんじゃないか?」
「せ、せんぱぁぁぁぁい!! こいつらやっちゃってくださいよ!!」
「スペ、お前そんなことしてるとファンが泣くぞ。……なんでだろう、俺がファンに怒られそうな気がしてきた」
スペシャルウィークに絡んでいた種牡馬たちはいずれも結構な歳上の馬たちだった。
いずれも落ち着きを払いつつも、こちらを値踏みするような視線を向けている。
1頭、少しぼーっとしたようにも見えるが。
「初めまして。グレートエスケープです。よろしく」
「君の噂は聞いているよ。私の名前はフジキセキ。この社来SSで種牡馬をやらせてもらっている」
「……サクラバクシンオー。以後お見知り置きを」
ハキハキとしている青鹿毛がフジキセキ、ぼーっとした鹿毛の馬がサクラバクシンオーだった。
「トウカイテイオーだ。ボクほどじゃないが見込みはありそうだ」
偉そうなのがトウカイテイオー。クールだが見下してる雰囲気がマシマシだ。
舐められては負けだと思い、俺は睨み返した。
「そうですね。先輩の去年のサイアーランキングは越えられると思いますよ」
去年(XX99年)38位のトウカイテイオーはわかりやすく青筋を立てた。
「へ、へぇ……ボクに対していきなりそんな口を利いたのは君が初めてだよ……! 皇帝の息子たる帝王に……」
「まぁまぁ、抑えてくださいテイオーさん。私たちはまだ子供がデビューして2年目だったから仕方ないですよ。私は31位でしたが」
「悪くはないんじゃないですか? 私は33位でしたけど」
「よしわかった。お前ら全員並べ。走りでわからせてやる」
「……で、お宅らはなんでスペに絡んでいたんですか」
「君は誰なのか、それを聞こうとしたら『僕の名前を知らないんですか! はーっ、これだから田舎モンは……』って言われてね……そしたらこっちのテイオーが興奮しちゃって」
「このボクに無礼な口を叩く新入りを教育しようとしただけだが?」
フジキセキが疑問に答えた。
合点がいった。俺は後脚で立ち上がると、前脚でスペシャルの頭に振り下ろす――いわばゲンコツをかました。
「わァっ!? 痛い……! いたぁーい……」
「お前が悪い。謝りなさい」
「えぇ……だって僕、エスケープ先輩の次に偉いのに!」
俺はもう一度前脚をそっと浮かした。
「調子に乗ってすみませんでした!」
「俺からも謝罪する……すまなかった」
「ったく……ボクは寛大だから許してあげよう。まずはボクの子分としてせいぜい励むといい」
「嫌だけど」
「なっ、なにーっ!? ちょっと話が分かるやつだと思っていたらつけ上がりやがって……喰らえ、テイオーキック!!」
「……トウカイテイオーくん? このグレートエスケープに何か言うことがあるんじゃないか?」
「ずみまぜんでじだ……」
暴力には暴力で。怪我しない程度にしこたまシバいてやったらだいぶ従順になった。
瞳は『コノヤロウ、次はボコボコにしてやる』と雄弁に語っていたが。
「さて、親睦を深めることができたわけだし!」
「この流れで? こいつ無敵か?」
「今夜、この社来SSの種牡馬たちの集会があるんだ。そこで君たちも自分のことを知ってもらうといい」
フジキセキの説明に俺は首を傾げた。
夜は全頭馬房にいるはずで、放牧はされない。
そもそもひとつの放牧地に種馬たちが一同に集まることなんてないのではないか……。
そのことを彼に聞くと、意味深な笑みを浮かべた。
「ふふふ、人間さんにバレなきゃあいいんだよ」
「無理だろ……鍵を開けるとかそういうの含めて」
「細かいことはいいのさ! この牧場には3頭のボスがいるから、ちゃんと挨拶をするんだよ?」
「ボスぅ? これまためんどくさそーな……」
「ハイハイ! それボク! それボクがなる!」
「静かに」
「ハイ」
「……フジ」
「お、なんだいバクシンオー」
「そろそろ……人間さんが来る……集牧(放牧地から馬を馬房に戻すこと)の時間だ」
「そっか! じゃあみんな自分の放牧地に戻ってね!」
「やいグレートエスケープ! 次はボクがボコボコにしてやるからな、首を洗って待ってろ!」
言うやいなや、フジキセキ、サクラバクシンオー、トウカイテイオーの3頭はそれぞれ自分の放牧地の方へ戻るとどんな手段を使ったのか、柵を越えていった。
「……先輩。みんな当たり前のように放牧地を乗り越えているんですけど、いいんですか? 人間さんに怒られますよね」
「まぁ、そうだな」
「というかどうやってるんですか!? あれみんなできて普通なんですか?」
「いや……普通できないはずだけど……なんだ、人間の見てないところでサラブレッド(俺たち)は色々やってるのかもな」
「えぇ……やりませんよぉ」
「俺もそう思う。じゃ、俺も帰るから」
よっこいせ。
柵の1番上に前脚を乗せて、その力で柵の上に立ち、通路を挟んで反対側の放牧地にジャンプする。柵が鉄製でよかった。
「エスケープ先輩も普通にできてるじゃないですか!?」
スペシャルの悲鳴が聞こえた気がするが、よく聞こえなかった。
気づけば厩務員が放牧地にやってきて、馬たちを呼んでいた。
「テイオー、帰るよ」
「この帝王たる僕に向かって呼び捨て? ふっ、これだから下々の民は……まぁいいだろう。早く食事の準備をしたまえ」
「ほんと悪さをしない馬だなぁ……気分を害さなければ大人しい……」
「フジキセキ。馬房に帰るよー」
「えー、せっかくなら遊ぼうよ! ほらこっちで!」
「やめなさい、シャツの袖を引っ張らないの。やめ、ちょ、すごいちからだ! アッ!? パルフ・ローレンのシャツがッ!!」
「バクシンオー。……寝てる? あ、起きてるか。じゃあ帰るよー。……寝てる?」
「……ちょわー」
さきほどの3頭はそれぞれ、馬房に帰っていく。
俺たちの前で見せた姿とはまた違うキャラだったが、人間でも相手によって振る舞いは変わるもの。馬たちも意外とそういうところがあるのかもしれない。
「エスケープも帰りますよぉー。君も大人しいね……」
夜になった。
「集会の時間だ! コラァ!」
!?
「というわけで迎えに来たよエスケープくん」
「ああ、フジキセキか……いったいどうやって鍵を……まぁいいか。おーい、スペシャル、行くぞ」
「むにゃむにゃ……まだ食べられるよぉ」
寝ているスペシャルウィークを叩き起こして放牧地に行く。満月に照らされ、真夜中でありながらたくさんの馬たちが過ごしているのが見えた。
周囲の馬たちが値踏みするぶしつけな視線を俺とスペシャルに向ける。
重く淀んだ空気が滞留していた。
少なくとも歓迎会をやる雰囲気ではなさそうだ。
その集団の中で、中心ともいえる位置に2頭の馬がいた。
「おい、フジ……そいつが例の新入りか」
「そうだよ。お父さん」
お父さん?
青鹿毛と呼ばれる、混じりけのない美しい黒い身体を誇る鋭い眼光を持つ馬。
ミルクを垂らしたかのように伸びた流星が月夜に輝いていた。
その馬は気だるげに名乗った。
「オレの名はサンデーサイレンス……大人しくしてろよ、新入り。オレがこの社来SSのトップだ。あと……おい、マックちゃん。マックちゃんも自己紹介してやれ」
「どうも。メジロマックイーンです。一応、ボスということにされています。とにかく、私の邪魔をしなければそれで構いません」
言葉の節々に、マウントをとるような気配。
別に序列なんてものに興味はないが、舐められるのは気に食わない。
ジャブひとつでも打ってやろうと、口を開いた。
「俺はグレートエスケープ。辛気臭い場所のボスとよろしくするつもりはあまりないが。お通夜みてーだ」
挑発を口にした途端、空気がぴり付く。
ボスを名乗る2頭だけでなく、周囲にいた馬たちの視線も警戒から敵意に移り変わったような気がした。
怖いのか、スペシャルが後ろからつんつんと突いてくる。
「ビビってんじゃねーよ、スペシャル。ただのアイサツだろ、こんくらいは」
「いや……あの……お通夜です」
「なにが」
「今夜のこの集まり……マジでお通夜なんですよ。ほら、あそこ」
スペシャルの指示する方向には、1頭の馬が遺影を抱えていた。周囲を、その馬を慰めるように他の馬が囲んでいる。
「おじいさん……せっかく会えると思ったのに……」
「辛かったねアドマイヤベガくん……トニービンさんは君のことをとても誇りに思っていた……」
「泣いてもいい。そのあと、彼のぶんまで頑張るんだ……」
思わず表情が固まる。その傍には何をどうやって取り付けたか知らないが「名馬トニービンを偲ぶ会」という文字が書かれた垂れ幕があった。
「あ……え……? えっと……」
よく見たら周囲の馬たちは睨むというより、涙を目に浮かべている。
ああ、これ、完全に告別式とか、そういう場面だ。
俺は耐え切れなくなって叫んだ。
「調子乗ってすみませんでした!!」
〇〇〇
「凱旋門賞シナリオから半月……やはり来たな。グレートエスケープ凱旋門賞衣装が……!」
俺はウマ娘の運営アカウントからの告知に胸を躍らせていた。
先日実装された凱旋門賞シナリオ。そこで先にお披露目されたグレートエスケープの新衣装が、ファンたちの予想通りに実装されたのだ。
「衣装は……和風のお姫様スタイルなんだな。ちょっと忍者? みたいな要素があって……まさかこれ、総大将スペと対になる衣装ってことか!!」
鎧武者とドレスを重ねあわせた衣装の、通称『総大将スペシャルウィーク』と同じような赤を基調とした和風ドレスは丁度隣に立つと見栄えがよかった。
ちょっとアウトローでニヒルな身長172cmのキレイ系お姉さんと天真爛漫真面目系けっぱり少女(身長158cm)な後輩って……たまんねぇーッ!
俺は思わずPCの前で拳を握って声を上げた。
リビドーが溢れて止まらない。
その前に性能も確認しなくては。
「というわけでここに天井まで回したガチャ履歴がありますクソが!」
「世界の誰にも止められない、捕まえられない――私こそが世界最高のウマ娘だ」
【見参・花之都!】グレートエスケープ
得意率 パワー8% 根性8% 賢さ14%
適性 芝:A ダート:C
短距離:G マイル:D 中距離:A 長距離:A
逃げ:A 先行:G 差し:A 追い込み:G
・固有スキル
『波濤を越えて』
スタート時に出遅れた状態で、レースを冷静に運び、終盤の最終コーナーに中団にいると速度がすごく上がる。ロンシャンレース場の場合、加速力が上がる。
・覚醒スキル
『会心の一歩』
『コーナー回復』
『差し切り体勢』
Lv2『垂れウマ回避』
Lv3『乗り換え上手』
Lv4『中距離コーナー〇』
Lv5『王手』
・進化スキル
Lv3『逃亡者の乗り換え』
レース終盤始めの方に中団以降にいると加速力が上がり、前のウマ娘を動揺させる。ロンシャンレース場でなら、効果が増加するが、出遅れやすくなる(差し)
Lv5『偉大なるチェックメイト』
終盤の最終コーナーで中団以降にいる時、ゴールまで遠いと加速力が上がり、速度も上昇する。中距離レースの場合、効果が増える。(差し)
「あれっ、脚質が変わってる……逃げ先行タイプだったのに、まさかの逃げと差しというアンバランスな構成になってるじゃん! ……これはアレか。普段の逃げグレと凱旋門賞で差した差しグレを表しているのか……ってか自前で加速ゴリゴリのスキルがあるあたり、完全にロンシャン仕様なのな」
そんなことを言いながら、早速育成を始める俺。
俺のチャンミ育成苦行は始まったばかりだ!!
〇ネタ放流所
幻覚放流場→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=272498&uid=37842
アンケート→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270000&uid=37842
マシュマロ→https://marshmallow-qa.com/bigaro_irabu?t=rgvCYm&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
〇今後の予定
種牡馬編を簡単に投稿しつつ、ウマ娘編ではグレスケ世界でのグレスケの評価やシナリオ再構成(色々新規実装も増えたので)などやウマ娘編小ネタなどを書いていけたらいきます。
やる気次第なので、のんびりお待ちください