【デレマス×ガンダムブレイカー3】CINDERELLA of Gund@m breakerS 外伝 エクストラバトル編 作:擬態人形P
「やはり、カジマ大佐は動きが卓越していますね………!」
岡崎泰葉のデスティニーガンダム・ディサイダーは防戦一方だった。
ユウの駆るEXAMシステムを使ったスタークジェガンは「ビーム・ライフル」や「ハイパー・バズーカ」、そしてビーム・サーベルを織り交ぜ、全方位から攻めてくる。
機動力は現時点では明らかにあちらが上。
デスティニーガンダムの「ビーム・シールド」を駆使し防御をしているが、リペアキットはもう底をつきかけている。
だが………。
「根競べは私の勝利ですね………!EXAMシステムの制限時間はもう………!」
『みたい………だな!』
赤く光っていたスタークジェガンのバイザーが元に戻る。
途端に動きが緩慢になり、泰葉側にチャンスが生まれる。
何とか攻撃を耐えきった泰葉はパルマフィオキーナを狙い、突撃する。
「これで………!」
『ありがとうマリオン。………ここからは俺自身の力を見せる時だ!』
「!?」
しかし、ここで驚くべきことが起こった。
EXAMシステムの切れたスタークジェガンのバイザーが再び赤く光り出したのだ。
「まさか………!?」
『「HADESシステム」。』
HADESシステムはEXAMを元に作られたシステム。
ユウはEXAMが切れた時の保険として、このシステムも積み込んでいたのだ。
『出し惜しみはしない!』
そう言った途端にユウ機が再び加速。
泰葉のパルマフィオキーナを躱し、背後へと高速で回り込む。
『終わりだ、泰葉!』
右腕にビーム・サーベルを取り出し、EXアクションの「スラッシュテンペスト」を選択………高速の連続斬撃を使用し、一気に泰葉機を………。
「この瞬間を待っていました!」
『何!?』
………が、そのユウの目の前から泰葉機が消える。
彼女はデスティニーガンダムに搭載されていた「光の翼」を発動させ、高速移動をしたのだ。
次の瞬間、スタークジェガンの背後のバックパックがデスティニーディサイダーの右腕のパルマフィオキーナの一撃を受け吹き飛ぶ。
『EXAMの時に使用しなかったって事は、ここまで読まれていたのか!?』
「二度も油断はしません!貴方は何としてもここで落とします!」
反転したユウはそれでも右手のビーム・サーベルで泰葉機の右腕を斬り飛ばす。
それと同時に左腕で持ったハイパー・バズーカを上に撃つ。
対象にエネルギーの雨を降らせるEXアクションの「ショットバラージ」を選択したのだ。
『さあ、どうする!?』
「機体を覆うような「盾」があれば防げます!」
『まさか!?』
「敢えて言います!私はサウスポーです!!」
左腕でスタークジェガンの顔面を握った泰葉はそのまま天高く持ち上げショットバラージの雨を相手の機体で防御。
そして………。
「ヒート・エンドッ!」
最後に爆破をしてスタークジェガンを完全に破壊する。
『見事だ………。』
「貴方との戦い………忘れません。」
泰葉はそう言うと、赤外線レーザーで戻ってきた右腕の感触を確かめながら、一礼をした。
『いい加減にクェスを返せ!ファンネル・ミサイル!』
「だからしつこいって!」
ハサウェイのΞガンダムの猛攻を受け続ける松尾千鶴のモーランシェンロンガンダムと白菊ほたるのガンダムリコリス・アプライザは被弾し続けていた。
元々メガ粒子砲やミサイル等があって火力面に優れる上に、サイコミュ兵器の変則的な動きも織り交ぜてきている為に、暴れ出すと手が付けられない。
一応、千鶴はミサイルポッド、ほたるはドラグーンシステムを接続した状態での一斉射撃で反撃してはいるが、シールドも備えている為に中々耐久値を削れなかった。
「何か起死回生の手段があればいいけど………。ほたるちゃん、ドラグーン射出したらどうなる?」
「オート操作じゃ、ファンネル・ミサイルとかで簡単に撃ち落とされると思う………。」
「だよね………。何か一発凄まじいダメージを与えられれば………。」
「「アレ」………。」
「え?」
「アレ………使えば………もしかしたら………!」
「で、でも………。」
「でもじゃないよ。裕美ちゃん達も必死だから………。」
「………分かった。」
千鶴機とほたる機は残りのリペアキットを全部使う。
そして、千鶴はミサイルポッドをばら撒いて煙幕を作り、ほたるはオート操作のドラグーンを遂に射出する。
『オート操作で撃破できるとは舐められた物だな!』
当然、ハサウェイはファンネル・ミサイルでドラグーンを撃ち落としていく。
しかし、逆に言えばその間は千鶴機やほたる機には攻撃は向かない。
「行くよ!」
その僅かな隙を狙って千鶴はディスタントクラッシャーを飛行するΞガンダムの真下に仕掛け、ほたるのリコリスを背中に担ぎ、一気に距離を詰める。
『その位置ならファンネル・ミサイルが当たらないと思ったか!?』
「そうは思ってません………!」
ほたるはそう言うと、千鶴のモーランシェンロンを足場にして飛び上がり、ハサウェイ機の腹部にしがみつく。
『またそうやって動きを封じるつもりか!?振り落と………。』
「えっと、大変申し訳ないんですが………。」
通信画面に映るほたるは困ったように笑みを浮かべる。
その顔を見たハサウェイは直感で何かを悟ってしまう。
『ま、まさか………!?』
「このリコリスは見ての通りガンダムデスサイズヘルEWの胴体を使っているので………。」
『や、やめろ!早まるな!』
「早まった人に言われたくありません!………未来への水先案内人は、この白菊ほたるが引き受けました!」
そう言った途端にリコリスのドラグーン基盤内部に搭載されていた擬似太陽炉が赤く輝き、大爆発を起こす。
ほたる機が文字通り「自爆」したのだ。
コックピット付近に直撃し、大量のファンネルを含めたミサイルが誘爆したΞガンダムは文字通り爆散してしまう。
『そんなの、有りかよ………。』
「ありがとう、ほたるちゃん。リペアキットは無くなったけれど、私はまだ戦えるから………!」
千鶴はそう感謝の言葉を言うと、関裕美の方へと向かっていった。
『どうした、裕美!お前の力はこんな物か!?』
「くっ………!?全部の動きが正確過ぎる………!?」
フィン・ファンネルを撃ちあう形になった裕美のプロトライトガンダムとアムロのHi-νガンダムの戦いは、アムロ側が圧倒的に有利だった。
裕美がマルチタスクでファンネルを操っている際の通常射撃の命中率は大体普段の7~8割くらいだ。
それでもいつもはファンネルで相手の動きを封じられるからデメリットは少なかったが、アムロはそうはいかない。
巧みに自分のファンネルで裕美のファンネルをけん制しながら、ビーム・ライフル等の武装を100%的確に撃ちこんでくる。
(ファンネルに集中したら動きが緩慢になるし、その逆も………!)
焦りと不安が裕美の集中力を削いでいく。
こうなってしまうと裕美の精神の均衡も崩れてしまい、切り札の「アサルト覚醒」まで使えなくなる。
「ど、どうし………。」
『貰った!』
「あ!?」
その焦りによって生じた僅かな隙を狙い、アムロは6基ある裕美のフィン・ファンネルの内の1基をビーム・ライフルで撃ち落とす。
数が減ってしまったら残りが減るのも早い。
裕美が何とか立て直そうとしている間にもう1基、更に1基とどんどん撃ち落とされてしまう。
(な、何とかしないと!?)
慌てた裕美はビーム・キャノンとミサイルとビーム・マグナムでアムロ側のフィン・ファンネルも狙いに行くが、読まれているのかあっさり躱されてしまう。
その隙を狙って裕美のプロトライトガンダムの方にアムロ機のニューハイパーバズーカが直撃し、リペアキットを使う羽目になる。
(残りのリペアキットの数も………!?あ!)
動き回っていた足がもつれ、膝をついてしまう。その隙を狙ってアムロのフィン・ファンネルが一斉に攻撃。
シールドと手持ちの武器全てと両腕と両ひざから下が一気に吹き飛ばされ、完全に動けなくなる。
気づけば残りのフィン・ファンネルは1基まで減らされていた。
「リペアキット………!な、無くなってる………。」
代わりにフィールドリペアを使って何とか耐久値を回復した裕美だったが、アムロは一気にトドメを刺そうとしたのか、巨大なケーブルが繋がった主砲をラー・カイラムから取り寄せ抱えていた。
「「ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャー」………。」
『これで………終わらせる!』
完敗………という二文字が裕美の頭に浮かんだ。
結局自分の実力では今のアムロには到底敵わない。
頭の中に喜多見柚、村上巴、荒木比奈、藤原肇、ミサ、ロボ太等、様々な仲間達の姿が浮かぶ。
申し訳ない想いでいっぱいだった。
(みんなを信じてもっと強くなろうと思ったのに、これじゃあ、私何も………。)
思わず泣きたくなる裕美だったが、アムロはそれすら待ってくれない。
ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーの砲口が輝き、極太のビームが撃ちだされ………その射線に2機の機体が立ちはだかった。
「泰葉ちゃん!?千鶴ちゃん!?」
それは泰葉のデスティニーディサイダーと千鶴のモーランシェンロン。
2機は裕美のピンチに背負っていた武器を捨て最大加速で駆け付け、自機を盾にして裕美への戦艦クラスの攻撃を防ごうとしたのだ。
「だ、ダメだよ!二人共!これじゃ、みんな………!」
「デスティニーは伊達じゃない!ビーム・シールドで防ぎきってみせる!」
「裕美ちゃんは………守ってみせるよ!」
言葉とは裏腹に光に包まれる2機の機体。
だが、それでも逃げようとせず、必死に立ちはだかる。
「大丈夫!私も千鶴ちゃんもほたるちゃんも若葉さんも、裕美ちゃんが強いって事知ってるから!」
「裕美ちゃん!もっと自信を持って!GBNSの一員として!アイドルとして………!」
最後の千鶴の言葉と共に2機の機体は爆散。
だが、戦艦すら撃ちぬくビームは裕美までには届かなかった。
「……………。」
只々、仲間が散るのを無言で涙を流して見つめていた裕美。
しかし、彼女は両手で強く頬を叩くとアムロ機を睨みつける。
「ここで………私が倒れたら………!」
吹き飛んだ武器は戻ってこなかったが、それでも両手両脚は戻ってくる。
「何のためにみんなが守ってくれたか………!何のためにみんなが強くなってくれているのか………!」
力強く立ち上がった裕美は咆哮する。
「全ての意味が………無いからぁぁぁッ!!」
仲間の激が裕美の闘志を取り戻す。
もう細かい事は考えるのをやめた。
それに伴いニュートラルに戻った思考が、裕美にアサルト覚醒を促す。
機体が赤く輝き自機の出力が底上げされる。
『使えたか、その切り札を!だが、フィン・ファンネルは………!』
「まだ、1基残ってる!」
数を減らされたという事は逆に言えばその分操作に集中できるという事だ。
裕美は上がった出力に任せ、最後のフィン・ファンネルを動かし、アムロのフィン・ファンネル6基を狙いに行く。
全ての射撃を躱しつつ1基、また1基と逆に破壊してみせる。
『チィッ!?開き直ったか!?ならば………!』
「来て!「バレットオービット」!」
裕美は自機の上に自動で支援射撃を行うビットを2基生成。
これはオート操作だが、狙いをアムロ機ではなくフィン・ファンネルに変更。
プロトライトガンダム自身を狙いに来たファンネル2基を不意打ちで撃ち落とす。
『急に腕が上がった!?だが、それは所詮、防御用のビット!フィン・ファンネルを落とせばもう武器は!』
「武器ならある!」
自分のフィン・ファンネルを突撃させる形で残りの裕美のフィン・ファンネルを落としたアムロだが、不意の射撃で最後のフィン・ファンネルを撃ち落とされてしまう。
裕美が使ったのはジャイアント・バズ。千鶴が裕美を庇う時に落としていってくれた装備だ。
『仲間の武装を!?』
「これは千鶴ちゃんとほたるちゃんの想い!」
アムロはビーム・ライフルで裕美が右手に持っていたジャイアント・バズを撃ち落とす。
しかし、裕美は怯む事無く左手で千鶴のビーム・グレイブを持って遠投し、そのアムロのビーム・ライフルを弾き飛ばす。
すかさずブーストで横に移動した裕美は、今度は泰葉が落としていってくれた「フラッシュエッジ2」のビームブーメランを投げつけアムロが慌てて構えたニューハイパーバズーカを破壊する。
『動きが違う!?これが覚醒の力!?いや………!?』
「これは泰葉ちゃんと若葉さんの想い!」
怒涛の攻めを見せる裕美は「アロンダイト」の大剣を掴み、突撃。
アムロが何とか構えたシールドを斬り捨て、これも破壊する。
『想いの力………なのか!?だが、大剣でビーム・サーベルより素早くは………!』
「忘れたの!?この機体は貴方のνガンダムの力も入ってるんだよ!!」
裕美はアロンダイトを落とすと何と思いっきりマニュピレーターで殴りつける。
プロトライトガンダムの腕はジェスタであったが、アサルト覚醒で出力が上がっている分叩きつけるように殴りかかった時の破壊力は凄まじい。
不利を悟ったアムロもビーム・サーベルを捨て殴りかかってくるが、出力の違い故か裕美側が押していた。
『くっ………たかがメインカメラをやったくらいで!』
「胴ががら空き!!」
渾身の想いを込めてガンダムXの脚でHi-νガンダムを蹴り飛ばす。
空中でバランスを取ろうとしたアムロだったが、そこに隙が生じてしまった。
裕美は再びアロンダイトを拾うと突きの体勢に入り、コックピットを狙う。
『裕美………君は!?君達は!?』
「覚えておいて!流派GBNSは、不屈の風だから!!」
最後に思いっきり貫いた裕美は大剣から手を離し、ゆっくりと距離を取る。
アムロ機はスパークしながら、敗北を悟った。
『君達がロンド・ベル側でシャア達と戦う姿も見てみたかったな………。』
「そういうエクストラバトルがあったらやってみるよ。約束する………。」
『そうか………ありがとう。』
そして、爆発するHi-νガンダム。
裕美はミッションクリアの文字を見て静かに目を閉じた。
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「だ、大丈夫ですか~。裕美ちゃん~!」
「若葉………さん?」
気が付けば、裕美はシミュレーターから出されており日下部若葉に介抱されていた。
勿論、そこにはGBNSの仲間やモチヅキもいて、心配そうに眺めている。
「私………最後どうなったんだっけ?アムロさんと約束したのは覚えているけれど………。」
「か、勝ったんだよ、裕美ちゃん!あのアムロさんに!」
「はい………!凄かったです………私達の想いをみんなぶつけてくれました!」
「そう………なの?」
興奮冷めやらぬ千鶴やほたるの言葉を受けながら、しかし裕美はあまり覚えていない。
確か泰葉や千鶴が庇ってくれて、覚醒を使った所までは覚えているが………。
「覚えてないのか?あんな恐ろしい形相でアムロを睨みつけて戦っていたお前の姿………普段からは想像できない程の凄まじさだったけどな。」
「え?私、そんな怖い顔してた!?」
「……………。」
モチヅキの言葉に思わずビックリしてしまう裕美。
それを聞いたモチヅキは何か考え込むように黙る。
「と、とにかく裕美ちゃんが勝ってくれて良かったですよ~。何か汗かいちゃいましたし、もう一度温泉入りませんか~?」
「賛成!今度こそ気持ちよくスッキリしよう!アイドルだし!」
「千鶴ちゃんの言う通りです………行きましょう、ね、泰葉ちゃん。」
「うん。………裕美ちゃん、立てる?」
「あ、大丈夫………。じゃあ、行こっか。」
裕美は立ち上がり笑みを浮かべると若葉と千鶴とほたると共に温泉へと向かう。
その姿を見ながらモチヅキはまだ考え込んでいた。
「さっきからずっと悩んでますね、モチヅキさん。」
「泰葉………確か、あの5人の中で最初に覚醒を使ったのは裕美なんだよな。」
「え?はい………。」
「カドマツから聞いた話じゃ、ミサを庇うようにしてPGを吹き飛ばしたとか………。あの時も形こそ違っているが、仲間の心を無駄にしないという思考が働いていた。」
「……………。」
「別に裕美だけが特別だって言っているわけじゃない。だが………アイツの想いの力は、お前達のような素晴らしい「仲間」が深く関係しているのかもな。」
「仲間………。」
モチヅキの呟いた言葉に泰葉も考え込む。
勿論、覚醒に必要な条件を考えるならば、それだけが全てでは無いだろう。
仲間を大事にする心ならば、泰葉も含め沢山の人達が持っているのだから。
只、1つ言えるのは………。
「確かな事実があるとすれば、お前や千鶴の武装を借りたとはいえ、裕美はビルダーズパーツ無しの状態でアムロに勝ってみせた。あのプロトライトガンダムが本来の姿を手に入れ、ファンネルをマニュアル操作できる裕美が本当の意味でもっと成長出来たら………どうなるのだろうな。」
少しだけニヤリと笑みを浮かべたモチヅキに対し、泰葉はそれでも穏やかに笑みを返す。
「根本は変わりませんよ。裕美ちゃん自身も私達アイドル達の関係も。だって………それこそ私達は仲間なのですから。」
泰葉は笑顔で仲間達と会話する裕美の後姿を見ながら言ってみせた。