びっくり。
仕事おやすみ中で、たすかった。
では、どうぞ(←ちょっと頭がよわい)
困った事態になった。
回復方法も分かっているし、ハンクという心強い味方にも恵まれて、先の展望は明るいと思えていた。原作での
だが、ここは哀しいかな現実であり。
多くを助けてもトロフィーが貰えるわけではない。
そんなものより。
守るべき存在が俺にはあるのだ。
『リオは感染したのか?』
『確率は高い……と思う』
空気感染の初期症状は風邪に似ている。
微熱から徐々に上がり、喉の炎症が進む。それと同時に意識も混濁し始める。幻覚や幻聴などの症状から転化するまでの期間はまちまちだし、統計を見る事も出来ない。
『ここの水を飲めば、耐性がつくのだろう?』
『……そのはず』
原作知識でなら、巡ヶ丘学院高校の簡易浄化設備の水は
先ほど汲んだ水をそのまま飲ませたが、呼吸は未だに荒いままだし、熱も下がらない。
『あまり悲観するな。ただの風邪かもしれんのだろう?』
『……ただの風邪じゃなかったら、どうなるか分かってるだろ?』
『かれら』が死後に分解されている。この、原作には無かった変化がオレを不安にさせているのだ。
分解された『かれら』がエアロゾルとして感染を起こす可能性もある。もしかしたら原作での『空気感染』もこれだったのかもしれないけど……
もし学校の水が特効薬にならないのなら。世界はこの病によって絶滅、はしなくても……相当数減るだろう。
そして、この辺り一帯は。
いや、ひょっとしたら日本全土は。
滅菌処理によって死滅するかもしれない。
楽観視していたわけではないけど、こんなのはあんまりだ。やり直しを要求する……応えてくれる神など、居るはずもないのだけど。
応えてくれる神はいなくても、人ならいるかもしれない。
『青襲……アイツなら分かるかな?』
『アオソイ? 人の名前か?』
聖イシドロス大学理学部情報生化学科の学生……というぐらいしか知らない。だが、原作においてこの病に対して一番正確にアプローチしていた人だ。
彼女なら、何か分かるかもしれない。
『とはいえ……今の時期の大学は、ヤバそうだしなぁ』
詳しい経緯は分からないけど武闘派と穏健派が対立する前の混乱期のような気がする。人数も多いだろうし、リーダーとかもまだ定まってない可能性もある。逆に言えば、中に滑り込むにはいい時期でもあるかもしれない。青襲自身はたぶん無事だ。理学棟から出るという選択は彼女はしない。
だけど、あそこの水は特効薬にはならない事は確認済みだ。ひいてくる水系が違うのか、設備の問題かは分からんが、とにかくあそこは長期間避難していていい場所ではない。
ということは……彼女をこちらに呼び込む方がリスクは少ないか? 発症している人間を運ぶより、動ける人間の方が動かしやすいかもしれない。
それに、あの環境は彼女の寿命を減らしていた可能性もある。お互いwin-winな状況を作れるかもしれない。
『ハンク……人一人を連れ出すって可能?』
『状況によって難易度も変わる。場所にも寄るが、敵性勢力の排除を問わずなら可能だ。今は銃もある。『かれら』への対処法も分かっているが、やはり場所がキーになるな』
いつでも冷静に分析するハンク。
しかし、場所は問題だ。ここから聖イシドロスまでは直線距離で約二キロ。『かれら』が徘徊する中を移動するには車が必要だろう。
だけど、禍根を残さずに連れ去るのは難しいかもしれない。排除が容易いのは分かる。だが、感染していない、もしくは未だに発症していない段階の人間を殺めるのは……どう考えてもアカンだろう。
『そのアオソイはキーパーソンなのだな? ならば確保が正しい。その大学は安全ではないのだろう?』
『それはそうなんだけど……』
ちなみに、俺は青襲椎子と面識はある。というか無理やり理由を付けて彼女と顔合わせをしたのだ。その際に携帯番号は入手している……でも、今の状況下だと通常の電話は繋がらないだろう。
『アレを使えば良いのではないか?』
『アレ……あっ!』
衛星携帯電話!
あれなら衛星を経由するから電波は届くはず。向こうが受信してくれるかは分からないけど、やってみる価値はあるか。
リバーシティートロン地下の避難シェルターにいた男が持っていたそれは、今どき珍しいストレートタイプの携帯電話だ。
『窓際、ないし屋上の方が電波は入りやすいはずだ』
起動後にアンテナを確認すると立っていない。仕方なく屋上に行くことにする。
「あ、ハンクさん♪」
廊下に出た所で、由紀に声をかけられた。何やら教科書とノートを持っていて、その横には貴依や胡桃の姿もあった。
「キミらは……ああ、勉強か」
「めぐねえが勉強しようって言ってさぁ……こんな時なのに」
未だ学園生活部としての活動にはなっていないのだが、日常を行うのはストレスに対して有効だ。
「学生は勉強しないとな」
「めぐねえとおんなじ事言ってる」
「でも、めぐねえ、数学教えられるかな? 現国だろう? あの人」
「あの人、在校時は主席だったらしいぞ」
「「へえー」」
胡桃と貴依が素直に感嘆する。これは神山先生に聞いたことなのでたぶん間違ってはいない。
歴代卒業生の中でも飛び抜けた成績だと褒めていたのだ……その横でテレテレしてた人とは思えなかった事を追記しておく。
「ハンクさんも一緒にお勉強、しよ?(にぱぁ)」
「あ、やる事あるからパスで」
「ええ〜」
「ほぉら。悪いな、邪魔しちゃって」
へばりつく由紀を胡桃と貴依がはがしてくれた。屋上へと上がると、今日は誰も居なかった。それでも気になるのでソーラーパネルのある側の端へ向かい、そこで電話を掛ける事にする。
だが、問題が発生した。
衛星と繋がらないのだ。本体の故障を疑うけど、さすがに分解して直すなんて事は出来るはずもない。
『悪天候ならばまだ理解出来るが、この晴天ではな。残る可能性はジャミングか』
『そんな事出来るのか?』
『広範囲なECMを発生させる技術は俺がいた時代にもあった程だ。だが、その場合は誰がそうしているのかという事が問題になる』
この地域一帯を覆うほどのジャミングとか、国家規模でないと出来る訳がない。となると、滅菌作戦への布石なんだろうか? タイミングで言うとちょっと早すぎる気もするけど。
『いずれにせよ、その携帯は使えない』
『マジか……』
諦めきれずにホーム画面を開くと、そこに有り得ない文字を見つけた。
『BOWMAN』
『
いや……このコミカルなアイコンは間違いなくボーモン君だ。ときに、ネイティブな発音、いいなあ。
コレが入ってるって事は、ランダルの関係者で間違いなかったわけか。このアプリは元は軍用で民生品として再開発されたとは言っていたけど、一般にはまだ公開されていなかったはず。つまりこれ経由ならランダル側との連絡も取れる訳か。
さっそくアプリを起動してみる。
大概のことは音声入力で操作可能なのがボーモン君のいいところ。
『アイディーか、パスワードを入力してね。ログイン済みのユーザーなら、音声入力でもいいよ』
がっでむ……
どうやら初期状態では音声入力は受け付けてくれてないみたいだ。
『ゲスト、というものがあるらしいな』
ハンクが見つけた小さな文字に『ゲスト(仮登録)はこちら』との案内がある。こういうのってオンラインでないと登録出来ないのではないかと思ってのだけど、入れてみたら難なくログイン出来た。
『ゲストログインはクラウドにアクセスするまでの間は一部機能を制限するよ。モバイル回線で繋ぎづらい環境なら、PC経由でのアクセスをオススメするよ』
なるほど。
俺は校長室に戻り、あのPCを引っ張り出す。ここにはLANが無いので職員室に行こうとすると、莉緒が目を覚ました。
「コホッ……どうしたの、くろう?」
「あ、起こしちまったか」
すぐに彼女の前に戻ると、ペットボトルに汲み置いた水を飲ませる。熱のせいか、こくこくと飲んでくれる。よしよし。
「ふう……」
「具合はどうだ? 熱、測るか」
「ノド、イガイガするし……少しふらつくかも」
耳に体温計を当てる。あまり正確ではないと言われてるけど、この素早さはありがたい。体温は37.2℃。平熱を知らないから断定は出来ないけど、まあ微熱なんだろう。聞けばいいって? 前聞いたときに「……スケベ」とか言われたんで懲りました。
「何か、仕事?」
ちょっと唇を尖らせる妹様に嘘など付ける訳もない。黙って行動する事はあるけど、嘘はあまりつきたくない。
「職員室でね、今後のチャートを作らんと」
「はあ? こんなときにアンタ……そういや、悠里さんも言ってたっけ。勉強とか、やるって」
「何もやらないと却ってよくないらしいから」
この辺りもウソじゃない。めぐねえとも話し合って各々授業とか出来たらいいかな、と思っている。オレの受け持ちは体育ぐらいだろうけど。
「ちょっと、ラクになってきたかも」
横になったままそう言ってくるのはいつになくしおらしい……え、誰だっけ?
「熱は下がってるみたいだし。ちゃんと寝てろよ」
「フンだ。勝手にどっか行っちゃう方が悪いんだからね!」
うむ。悪態つくぐらいが莉緒らしいと思っちゃう俺も、かなり毒されたなぁ(笑)ポンポンと頭を撫でてやると布団に顔を埋めて「さっさと行けっ、アホッ」と宣う妹様。はいはい、と部屋を出て職員室へと向かう。
職員室の整備は、あまりしていない。
元々『かれら』化した先生はそんなに居なかった。扉が開いていたので表に出て行ったのかもしれないが、中の惨状はそこそこ酷かった。
なので血とか流しただけで散らばった荷物や何やらは空いてる机に乗せておいただけなのだ。この間、二年生コンビがCDラジオを聴いていた机は、そこまでの災禍を逃れていた。めぐねえや神山先生のでないのは確かだけど、誰だったっけ? この席。まあ、いいか。ともかく、席から出ている端子を繋ぎ、PCに電源を入れる。
…………PC起動中…………
ログインパスは回収したメモの一番最初の文字で合っていた。危機意識の低さが有り難い。
繋いだイーサネットケーブルはキチンと動作したけど、ローカルネットワークにしか接続出来なかった。
「やっぱ繋がらないか」
『試しに携帯も繋いでみろ』
先ほどの画面のままの携帯電話に接続ケーブルを挿し、もう片方のUSBをPCのコネクタに挿した。
すると、先ほどまでは繋がっていなかったゲートウェイがどこかと通信を始める。
『軍などでは秘匿回線という物がある。どういう仕組みかは専門でないから分からんが、な』
『ゲストIDを、登録したよ。音声入力等の制限を解除したよ。』
お。音声入力制限が解除されたみたいだ。俺は少しウズウズしながら原作のように声をかける。
「ボーモン君。メッセージを送るよ」
『了解したよ。メッセージアプリを起動するよ。あと』
あと、の言葉の後ろがなかなか出てこない。と思っていたら想定外の返しが来た。
『ゲスト、の音声がライブラリにヒット。アナタは、クロウ、ハンザワ、ですか?』
……え?
『くく。お前、登録などしておったのか?』
『してるわけないだろ』
『では、誰か別人が声紋データからアカウントを作っておいたのか。他人のアカウントを作るとか酔狂な人間も居たものだ』
酔狂とかいうレベルでは無い、と思うがどうするか。怪しい事この上ない。このアプリはランダルコーポレーションの提供してる非公開アプリ。アクセス出来る人間など限られている。丸裸で渦中に飛び込むようなものだ。
──だけど、いまは。
今だけは、情報がほしい。
「はい」
「了解。ゲスト、アカウントをクロウ、ハンザワ、のアカウントに、切り替えるよ」
……日頃、情報の秘匿性を重視するハンクが反対するかと思ったけど、意外な事に静観していた。
『ハンク、止めなかったけど……』
『覚悟を決めたのだろう? なら、それを尊重する』
彼は、そう呟くだけだった。いや、少し笑っていたかもしれない。書き換え作業の終了を告げるボーモン君。
『実行、完了だよ。クロウ、ハンザワへ秘匿メッセージが、一通、あるよ。開けるかい?』
おいおい。あるか分からんアカウントにメッセージ、しかも秘匿とか。どういうことだ?
『開くべきだろう』
ハンクの声に後押しされた。はい、と答えるとメッセージダイアログが開いた。
『これは、
少し愉快な様子のハンクだが、俺としては意味がよく分からなかった。そこにあった文面は。
Hi.
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Shiiko, Aosoi.
xxx-yyyy-zzzz
最後のメッセージは、グー○ルさんの翻訳で適当にできましたー。
あと、誤字報告もありがとうございます。まだちょっと熱に浮かされてるのでマチガイとかあるかも。