地獄のような世界に転生したら死神がやってきた   作:二三一〇

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 実はこれでストックは無くなったので更新は時間がかかるかもしれません。


第二の人生は波乱含みなものだった

 いわゆる転生というものだろう。そう勝手に理解していた。かつての俺は糊口をふさぐために日々過ごしていた人間だった。

 

 そんな俺が命を失ったのは、仕事中。背後から、おそらくナイフや匕首のような物で刺された俺は、薄れゆく意識の中で何もない人生の終焉を呪った。

 

 気が付けば、俺は十二歳の男子になっていた。唐突に思い出した、という感じが正しいのだろう。前の名前は思い出せないのだが、正直それはどうでもいい。それまでの十二年間の記憶もあるので、無くて良かったと安堵したくらいだ。

 

 

 

 半澤九郎。

 それが俺の今生の名前であり、全てである。わりと裕福な家に生まれ、それなりに見栄えのする両親と九つ下の可愛い妹を授かり、それまでの人生などはどうでもいいものと考えた。

 

『今回の人生は、もっと彩りのある人生にしたい。日がな一日仕事に追われて、強盗に後ろから刺されて死ぬような事にならないように』

 

 そのためにはより良く楽しむべきだ。そう思い広い居間にあるゲーム機のスイッチを入れる。

 

『そういや、名前が違うな』

 

 アイボリー色の本体には『PS(プレイスタンド)』と書いてある。中のゲームタイトルは同じだ。今は西暦2002年。この人気シリーズもまだ3が出た頃だ。今やってるのは二枚組CD-ROMだ。構成は同じなのにゲーム機の名前だけは違う……ひょっとすると、ここは世界線の違う世界なのかも知れない。

 

「おにーたん」

「お、莉緒か。お母さんは?」

「おだいどころ。あぶないからおにーたんのところにいってって……」

 

 今年で3歳になる莉緒はとても可愛い妹だ。この年で目に入れても痛くないなんて意味が分かるとは思わなかったけど、本当にそう思う。とてとてと歩いてきて、俺の前に来ると手を上げるのでいつものように抱き上げ、脚の間に座らせる。リビングでのこのゲームスタイルは莉緒が自分で動くようになってから続いている。

 

「莉緒が来たんじゃ、バイオハザードはやれないよね」

「う?」

「なんでもないよ。スマブラにしよっか。莉緒もやる?」

「やるぅー♪」

 

 前世ではゲーム機はPSのみだったけど、ここにはサターンやキューブもあったりする……ブルジョアめ(笑) ちなみに正式名は『シテンノーCube』……なんか本社に四天王像を祀っているらしいからこんな会社名になったらしいけど、Cubeはなんで英語? 閉じ込められてデスゲームかな?

 

 ともかくスマブラDXを起動してプレイ開始。莉緒は負けず嫌いなので基本は接待プレイなのだが、あんまりやり過ぎるとバレる。二回に一回はガチにボコるのが正しいようだ。あ、コングにやられた。

 

「おにーたん、よわぁw」

「うっせ、見てろよ」

 

 こんな子供の頃からでも煽ってくるんだから女の子って怖いね() しばらく兄妹の触れ合いをしてたら母さんが居間に戻ってきた。

 

「ちょっと出てくるけど、ケーキ何がいい?」

「え? めずらし」

「りお、いちごのやつー」

 

 ちゃっかり自分の希望だけは言う莉緒を余所に母に尋ねる。前世の記憶があっても今の九郎としての記憶だってきちんとある。今の俺には彼女が母なのだ。

 

「お父さん、別の会社の役員になるんだって」

 

 嬉しそうに言っているが、父さん官僚だよね? いわゆる天下りというのではないかな? まあ、自分の親の動向をアレコレ文句言うのもなんだし、別に気にはしないけど。そもそも十やそこらの子供の考える事じゃないな。

 

「へえ、そうなんだ。なんて所なの?」

「ふふーん、外資系の会社だって。サンダルなんとかだっけかな? お祝いに今日はいいお肉も買ってきちゃうからね♪」

「すげえー。ケーキは何でもいいの?」

「二つまでならね」

「りおはー、みかんとかぱいんののったの!」

 

 俺に割り込んで苺ショートにフルーツタルトまで足す……お前そんな食えないだろ(笑) ゲームをしていたので適当に頼むと母は留守を任せて出ていった。

 

 何かが引っかかっていたのだけど、その時はスルーしていた。本当に理解したのは夕食の時に父からランダルコーポレーションという名前を聞かされてからだった。

 

 

 

 

 

 てか、やべーよ……ここ、『がっこうぐらし』の世界じゃん。マジモンのデスゲームが始まっちゃうところじゃんっ!

 調べてみたら神奈川の一角に『巡ヶ丘市』ってあるし。間違いない。ここはいずれゾンビ化する病気が蔓延する世界だ。

 

 転生するなら、もっと平和な世界にしろよ……しかも事前に言っておいてくれよ! 神様とか出てこなかったけどなっ!

 

 ともかく、ヤバい。このままだといずれ近いうちにゾンビが跋扈する鬼畜仕様の世界になる。あーっ、生まれ変わったのに、また死にたくないっ!

 

 そうだ。

 身体を鍛えよう()

 

 何年後からよく分からないけど、時期的にはまだ大分あるはずだ。筋肉モリモリのマッチョなら、大した特徴もないゾンビならイケる気がする(錯乱) あー、そうだよな。これがバイオ世界とかだったらB.O.Wとか出てきてさらに無理ゲーになるとこだった。まだ、マシだと思うことにしよう(比較対象が鬼畜な件)

 

 出来れば銃とかも使いたいけど、ここは日本だ。その筋の人間とかから買うって手もあるけど、それはリスキーだし持ったとしても上手く扱えなくては意味がない。

 

 

 身を守る術は何とかするとして、環境を整えておく必要もあるかもしれない。あの学校こそが事態を終息させるキモだ。

 なら、巡ヶ丘学院に入ればイイって話だよな。その頃までに身体鍛えて高校行っても鍛えまくる。そうすれば必然的に生存率も高くなるよね。

 

 あと、原作キャラとかはちゃんと居るのかな? その辺が気掛かりではある。

 発生時期とか分かんないけど、キャラの年齢から逆算できるかも知れない。確か学園生活部の三人は三年生だったはず。

 

 

 それから折を見て巡ヶ丘へ足を運び、何度目かの来訪で彼女たちの年齢、というか世代が分かった。俺の一学年下、つまり一つ年下になるらしい。これによってパンデミックが起こった年が分かった。2010年に彼女達は三年生になるからだ。

 

 正確な日時は分からないが、春から初夏にかけてのどこかになる筈だが……計算してみて恐ろしくなった。8年、たったそれだけの間しか時間がない……やれる事を全てを貪欲にこなさなければ、生き残れないのだ。

 

 地元の中学を出て巡ヶ丘学院へと進学する時、両親からの反対は無かった。ランダルコーポレーションの日本支社のある土地ということもあり、両親や妹も事あるごとに様子を見に来れるからだ。一人暮らしには文句を言われた(主に妹に)けど、鍛錬の時間を多く取りたいからだ。

 あともう一つ理由があるとすれば、精神を鍛えるためでもある。来たるべきアウトブレイクに備えて一人で生きる事に慣れておく必要があるのだ。

 

 俺が二十歳になる年にそれが起こる。ならばそれまでは安心だと思うのだけど、不確定要素はどうしても拭いされない。体を鍛え、サバイバルのイロハを学び、自室に僅かな量でも備蓄をするためにバイトをこなしていると時間というのはあっという間に過ぎていく。

 

 聖イシドロス大学への進学は見送っている。それより来たるべき災厄への備えをしなければと躍起になっていたので、両親や教師の反対も押し切ってフリーターという状況に落ち着いていた。

 

 

 

 

 

 部屋の中でもきゅもきゅと口を動かす妹様。うちの妹、たくましいな。食べているのはシリアルバーの中でも甘いとの評判の『スニークヌガーズ』。あ、シリアルバーじゃなくてお菓子だったね。でもカロリーはめっちゃ高いし子供は大好きだろう。

 

 もう一人の子はというと、やはり親元に帰れない事を気にしているようで菓子の包すら開けずに只管(ひたすら)に眺めるだけだ。もしかしたら甘いの苦手なのかな? ハンクにも伝えたが、この子の名前は若狭瑠璃。『がっこうぐらし』における主要人物、若狭悠里の妹である。

 

 

 若狭姉妹との出会いは、偶然だった。仕事上がりの商店街の外れで、車の前に飛び出す児童を助けた。まるっきり運任せな展開だったが、瑠璃も俺も怪我一つなく収められたのだから幸運だったのだろう。

 

 そのまま逃げた車の運転手は結局分からなかった(誰もナンバーや車種を覚えてなかった)事を父親は大層悔しがっていたと覚えている。何故なら彼は所轄の交通課に勤務する警察官だったからだ。

 

「医者の不養生とも言うが、警官の娘が交通事故とか笑い話にもならん」

 

 せめてもの礼にとお宅に呼ばれ、若狭家の家族に饗されたのは良い思い出だ。噂に違わず悠里の料理の腕前は確かなもので、一人暮らしの身には嬉しかった。先のセリフは二人の娘が席を外したあと、酒を傾けながら言ったものだ。

 

「先立たれた妻に言い訳も出来ん所だった。君には感謝している」

 

 ちなみに、それとこれとは違うので娘には手を出すなよと釘を刺された。年頃の娘を持つお父さんは大変だなぁ。

 

 

 

 そんなわけで。町が非常事態になっている最中に、その父親が呑気に家にいるとは思えない。そしてハンクの言った通り、警察にはほぼ対処できない状況らしい。父親ですら生存していない可能性すらある。

 

 さらに悠里の事も気がかりだ。

 原作通りなら彼女は屋上で園芸部の作業中だった筈だが、この世界では妹が生存している。バタフライ効果で彼女が家に戻っていてもなんらおかしくはないのだ。

 そんなわけで協力を仰ぐ為にハンクに呼び掛ける。

 

『ハンク。起きてるか?』

……休息は終わりか?

 

 彼はごく平坦な口調で答える。声色は俺と変わらないのに別人に聞こえるし、話してる言葉も英語じゃない。本当にハンクなのかと疑問に思うと彼は溜息をついた。

 

嘘をつく意味があるか?

 

 そう言われると、今のところ嘘を言う理由はなさそうに思える。そもそも頭の中にいきなり現れた存在なのだ。

 

『とりあえず、なんで俺の中に入ってきたのか教えてもらっていい?』

何度も言うが俺の意思ではない。気付いたら君の身体に入っていた。それが全てだ

 

 ふぅ……まあ、それはとりあえず置いておく。それにこれは幸運とも言える。

 ハンクはこうした事態に最適な人材だ。ゲームの中では『死神』と呼ばれ、危機的な状況において必ず生還するという凄腕のエージェントである。その力は先ほど証明済みだ。俺だったら尻込みしてやられていたかもしれない。ハンクが居たからこそ、莉緒や瑠璃も助けられた。

 

『さっきは助かったよ。莉緒と瑠璃ちゃんを助けてくれてありがとう』

必要だからしたまでだ

 

 素っ気ない返答に苦笑するしかないが、たしかにこんな奴なのかもしれない。

 

目的の地点までおよそ800メートル。五階建てのマンションの三階か。お前だけなら行くのは容易だ

 

 簡単に言ってくれるが、それはハンクが操縦した時であって俺ではない。交代してくれんの?

 

構わん。俺の意識が帰還するまでは共同体だ。出来る限り協力はする

 

 頼もしい言葉だ。だが、彼は同時にこうも言った。

 

戦闘以外はしない。女子供は苦手だ

 

 おうふ……まあ、納得は出来るけどね。死神なんて呼ばれる人が子供の世話とか笑い話だ。

 

ただ、ルリを同行させるのは少々難儀するかもしれん。残していくリオの事も気がかりだ

 

 たしかにこの部屋に一人で残されたとなったら、あの妹様だ。喚いてかれらを呼び寄せかねない。様子を見に行くだけに留めてもいいかもしれない。

 

「瑠璃ちゃん。お家の方に行ってくるけど、少し危険だからここで待っててくれないかな? お父さんか悠里さんがいたら連れてくるから」

 

 努めて優しく言うと、彼女はこくりと頷いた。怯えてはいるけど、状況の判断は出来るらしい。

 

「莉緒。そんなわけで出てくる。さっきと同じようにノックは三、二で。他の奴が来ても絶対出るなよ?」

「はいはい。音は小さくしてカーテンはきちんと閉めろ、でしょ? ゲームはやっててもいいわよね?」

「携帯型は止めておけ。電池や充電の限りがあるからな。PS3ならいいよ」

 

 据え置き機は停電があればつかえなくなる。今のうちにやっておけばいい。その間にこっちはパーリィナイトだぜ。

 

ナイスジョークだ。飛び散るのはクラッカーじゃなくて血飛沫だがな

 

 ジョークでも言わなきゃやってられない。

 本当に、なんでこんな世界に転生してしまったのだろうか。

 

 

 

 

 マンションに辿り着く前に六体の『かれら』を蹴散らした。ハンクの手腕は的確で無駄がない。鉄パイプだけでよくもまあ対処出来るものだ。ところがその武器を脇に置いて彼は警察の特殊警棒を抜き伸ばした。どうしたのかと聞くと『狭い空間では取り回しに難がある』とのこと。徹底してるなぁ。

 

 

 マンションに入ると倒れていた人が動き始めたので素早く首を踏んで折るハンク。噛み付かれた跡があるから『かれら』なのは間違いないのだが、ただの怪我人だった場合とかは考えてないのだろうか?

 

それは俺の任務じゃない。若狭家の住人の安否確認と救助だけが任務だ。違うか?

 

 そう言われると何も答えられない。全ての人を助けられる訳じゃないし、そのために本来の目的に支障が出る行動はするべきじゃない。たしかにその通りだ。人としては悪だと思うけど。

 

理解しているならいい

 

 エレベーターが稼働しているので八階を押す。死神(ハンク)の事だから階段で行くとか言いそうだったのだが意外だ。

 

疲労度を考えればエレベーターだ。それに民生品のエレベーターなら非常時の脱出方法も色々とある

「グアッ」

 

 八階に着くと噛みつかれた人と『かれら』がなだれ込んできた。

 

「フッ」

 

 ところが。ハンクの奴は素早く躱して背後から『かれら』と被害者の後頭部に警棒を見舞っていた。狭い場所、急な襲撃にも冷静に対処するとはさすがとしか言えない。ただ、被害者の方はまだ転化してなかったと思ったけど。

 

いずれ変わる。先に始末した方が楽だ

 

 いや、それニコライのセリフと変わんねえんだけど。やっぱ内面は冷徹な傭兵なんだなぁと痛感した。

 

 廊下には他にも転がっている死体が多数ある。そのうちの二体ばかりは損壊がそれほどでもないのか、転化して『かれら』となって歩いてくる。

 ハンクは手前の奴を前蹴りで倒し、後ろから来る奴に警棒の連打を浴びせる。頚椎の砕ける音が聴こえてそいつが倒れる頃には、前の奴が立ち上がって来たのでそれをまた蹴り倒し、上から踏みつけて首を折った。手際が良すぎて怖い。

 

あの部屋か

 

 若狭家の扉の前に、人が座り込んでいた。制服警官の姿である。動き出す様子は無かった。

 

潔いな。これがサムライと言うやつか

 

 座り込む彼は、既に何箇所か噛まれた跡があった。その手には日本警察標準装備のリボルバー、M360J。近くには警棒もあるが、血塗れである事から相当な修羅場が想像された。ハンクが拳銃を手に取ると、弾丸を確認する。残弾は三。口に咥えて撃ったのだろう。『かれら』にならないように。

 

……少しだけ代わる

 

 ハンクがそう言うと、身体が動かせるようになった。途端にフィルターのかかっていた感情が浮かび上がり、思わず涙が溢れる。銃での自殺の割に変形の見えない顔は、間違いなく二人の娘の父親だった。

 

「親父さん……あんた……」

 

 暴徒と化した『かれら』に対し、発砲しないで戦い続けた。その行いに手を合わせて頭を垂れる。せめて、安らかに逝ってほしいと願わずにはいられなかった。

 

 と、扉の中から音が聞こえた。微かに叩く、音。まさかと思い、親父さんの身体を横たえて扉を開ける。

 

「……あ、くろう、さん……」

 

 玄関に跪いて、呆然とする悠里がいた。

 部屋の中は荒らされてはいないようで、彼女にも怪我は無さそうだ。急いで扉を閉めて、鍵を掛けておく。『かれら』にはドアノブを回す知性は無いが、念のためだ。

 彼女は放心したまま、つぶやく。

 

「お父さんが、自分で……銃を、ぁぁ……」

 

 自殺の瞬間を聞いてしまったのだろう。入る時に襲われ、中にいる悠里を守る為に戦い、噛まれて感染した事を知って、自らの命を捨てた。ドアの前に座ってそれを行った時の心情を思うと、慰めの言葉など浮かばない。

 

「るーちゃんも、戻ってない。どうしよう、わたしどうしたら……」

「瑠璃ちゃんは保護してある」

「……え?」

 

 呆然と呟く悠里の瞳に、ようやく光が戻る。そこで俺のことをやっと認識したのか、腕を掴んできた。

 

「九郎さん! ほんと? るーちゃん、無事なのね?」

「あ、ああ。帰宅途中に襲われてたから助けて、今はウチに避難しているよ」

「う……、よ、よかった……るーちゃん、よかった」

 

 頽れるように抱きついてくる悠里。

 あの、非常時だからアレだけど……りーさんヤバい体型なんでそういうのは勘弁して欲しいッス。

 

若いな

 

 頭の中でハンクが呟いた。うっせ。こちとら未だにDTなんだよ(自爆)

 

 ともかく。原作キャラの一人と合流出来たのは良かった。ただし、状況はかなり違っている。これが吉と出るか凶と出るか……

 

 




 悠里さんのポップ位置について。るーちゃん救えなかった反動から部活動に注力していた、と邪推してみました。普段なら家にいるか買い物してるかじゃないかな、と。あと、母親が死別してるというのも独自設定です。
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