地獄のような世界に転生したら死神がやってきた   作:二三一〇

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 屋上での朝チュン……ではありません。

 追記:誤字報告ありがとうございます。バリケードと書いたつもりでバリゲードのままとか……はずかしひ……

 さらに追記:お気に入りが百件突破しておりました。皆様ありがとうございますm(_ _)m 感想なども頂けるとモチベ上がりますので嬉しいです♪



物思いにふける朝

 朝の目覚めはわりと最悪だった。

 悪夢とかでうなされる訳ではなく、ただ単に強烈な筋肉痛だ。筋繊維がバキバキと音を立ててるかのように軋み、それに伴う痛みが全身を襲う。

 

『さすがの俺も近接戦だけであれだけの活性死体を相手にした事はない。お前がB.O.Wと呼ばれても俺は不思議には思わん』

 

 いや、人外扱いは辞めてくださいよ。

 こちとら転生はしたけどただの二十歳のプータローだよ? 肉体的には至って普通なんだから。

 

『ジョークはともかく、今日は休息にあてた方がいい』

 

 今のどこがジョークだったか問い詰めたい所だけどご意見はありがたく頂戴します。突貫工事で三階を安地に出来たから、まあ今日は大丈夫だろう。

 

 起きようと思ったらお腹の辺りに違和感があった。やけに温かくて柔らかいものがある。

上まで上げておいたファスナーも開いてたのでそちらを覗いてみると、なんだか茶色いものが俺の右脇腹にくっついている……へ?

 

『一時間ほど前に起こしに来た。お前が起きないので潜り込んできたのだ』

 

 俺を抱き枕にして眠っているのは瑠璃ちゃんだった。

 おい、起こせよ、ハンクぅっ!

 

『お前の意識がない時には動かせないようだ。声も届かなかったようだな。私は何度も起こしたぞ?』

 

 ガッデムッ!

 そんなに便利にゃ出来てないのかっ!

 それよりこの事態をなんとかしないと。

 

『子供が人肌恋しくて来ただけだろう。なにを恐れる必要がある?』

 

 いや、そうかもしれんけどさぁっ!

 瑠璃ちゃん、他人の子なんだぞ? 色々と問題だろ!

 

『アメリカならどの州でも性的虐待と取られるな(笑)』

 

 笑ってんじゃないよ? くそ、ハンク(こいつ)随分と気安く言ってくれるじゃねえか。

 

『こんな極限状態だ。子供にはきつかろう』

 

 ……まあ、そりゃあそうだろうけど。

 よく見れば少し涙の跡もある。

 親父さんを亡くして、母はすでに他界済み。残った家族は悠里だけとか、人生ハードルートだもんな……

 

「……んぅ……ぁ、おはようございます」

「ああ……うん、おはよう」

 

 寝ぼけ眼の瑠璃は、小学四年生とは思えないほど大人びて見えた。一つ上の莉緒の方がよほど子供っぽいな。

 

「……起きたら九郎さん、いなくて。探してたら寒くなって、つい……」

 

 ……あ~、参ったな。勝手に彷徨いてたのか。バリケード作るから安全とは言ったけど、絶対とは言い切れないんだよな。それに階段を登るわけだから、奴らの近くを通る可能性も無い訳じゃない。ここはきちんと叱らないと。

 

「瑠璃ちゃん。悠里さんや他の人に何も言わずに動いちゃダメだよ。君が居なくなったら悠里さんもみんなも心配する。君を探しに危険な目に遭うことも有り得るんだ」

「う……うん。ごめんなさい」

 

 うんうん。素直なのが一番だね。

 でも、取り急ぎここから出てくれるかな?

 こんなとこ見られたら色々と誤解されちゃうからね。

 

「い、いま出ます。きゃ、」

 

 寝袋から急いで出た瑠璃ちゃんだけど、どうもスカート姿で入ってたらしく。折れ目が付いて一部捲れ上がってしまっていた……あ、お、俺は悪くないっ……よね?

 

『女児の下着で動揺する方が問題だ』

 

 ええ……(白目)

 恥ずかしそうにスカートを押さえて離れる瑠璃ちゃん。言葉は出さないけど何度も頭を下げて下へと戻っていった。

 

 ……やっぱ悠里さんの妹だな。

 ウチの妹様だとこうはならないからね。

 

『ふむ……コレが“萌え”という感覚か』

 

 ハンク、それは理解しないで欲しい……お前のキャラが崩れるから()

 

 

 屋上の水道の蛇口を捻る。ここは浄水施設もあるし、ソーラーパネルでポンプも稼働出来る。しばらくしたら失われる文明の恩恵を享受しておこう。手を洗い、顔を洗ってから口を濯いで水を飲む。

 

 ここの水はこの悪夢のような病気の特効薬だ。出来る限り飲んで耐性を高めておく。

 

『そうなのか? その情報の開示を求める』

 

 そうだった。これは原作知識なので殆どの人間は知らないはずだ。教えたとしても一笑にふされる程にあり得ない話だけど、ハンクには教えておいた方がいい。

 

 

 

 ──このゾンビ化はこの土地に由来する『風土病』が原因の発端になっている。

 かつてこの土地では同じように人が人を襲い、人口が半減するような事態まで起こった事があったらしい。まだこのあたりが“巡ヶ丘”じゃなくて“男土”と呼ばれた頃の話だ。

 

 それとは別件だけど、那酒沼(朽那川の源流にあったとされる沼)にいた“おしゃべり魚”という昔話がある。これが形を変えて残った惨劇の概要だとすると面白いんだよね。

 

『……B.O.WかUMAか。なんにせよ曰く付きの土地だったのか』

 

 一応この風土病の原因菌の事を“Ω(オメガ)”と呼称する。ランダル側ではいくつかの生物兵器があるけど、そのうちのΩがそれに合致するんじゃないかと思われるからね。

 

『t-ウィルスのようなものだな』

 

 認識はそれでいいと思う。今言ったとおり、アンブレラのように軍事目的で利用しようと企んでいたのがランダルコーポレーションだ。

 

『まさにそのものだな』

 

 ちなみにこの世界にはバイオハザードのゲームは出てるけど、それも2までしか出ていない。アンブレラという架空の企業がランダルのイメージと重なりすぎたために訴訟騒ぎになって続編は作られなかったんだ。

 

『私が登場するというのは、その“2”だったはずだな?』

 

 そうだ。でも、メインストーリーじゃなくて番外編的な扱いだけどね。ところでハンクってラクーンから脱出できたの?

 

『ああ。帰投するヘリの中で仮眠をしていたらお前の中で目覚めたのだ』

 

 そいつはすまないなぁ。まさか過酷ミッションのダブルヘッダーとは思わなかっただろう。

 ちなみに俺の元いた世界ではもっといっぱい出てるはず。ハンクもリニューアルされてたよ。

 

 話がそれたね。なんにせよ、風土病はあったけど常に発症する人が居たわけではないらしい。この風土病を起こす菌“Ω(オメガ)”には、その効果を打ち消す抗体のような存在があったんだよ。それがこの学校の水道水だったのさ。

 

『……そんなバカな』

 

 そう思うよなぁ。でも、この学校の水は特効薬とも言えるもので、ゾンビ化が軽度で済んでいる場合は人間に戻す事すら可能なんだ。罹患した胡桃は後遺症を患ってはいたけど人として生活する事が出来るようになっていたんだから。

 

『にわかには信じられん。企業が仕組んだ事ではないのか?』

 

 ランダル側でもこの事は想定外だったらしい。滅菌作戦寸前まで行ってたからな。由紀がランダル側にこの情報を開示する事で、ようやく事態が終息に向かう。ここから先は原作でも語られてないけど、学園生活部の面々はちゃんと生きているんだ。いわゆるハッピーエンドって奴さ。

 

『ふむ……つまりこの『かれら』との戦いに、人類は勝利出来ると確約されている訳か』

 

 まあ、そうだね。

 問題はランダル側に具体的な症例を示す必要がある。俺の原作チートを言うだけで理解してもらえるとは思えないからな。

 

『検体が必要なのだな?』

 

 そう言われるのはイヤだけど……まあ、実際そうだな。原作ではその位置にあるのは胡桃な訳で、おそらくそういう流れになるとも思う。でも……

 

『会ってみて気が変わったか? それともお前の友人に対して後ろめたいのか?』

 

 本当にイヤなヤツだな、オマエ。

 人の心情とか考えて物言えよ。

 自分より年下の人間が酷い目にあうのが必然とか、結果として命が助かるとしても障害は残るんだぞ?

 

『では、胡桃ではなくて別の人間ならいいのか? 全て原作通りに進ませる必要はあるまい。要は“検体”となるべき存在を確保しつつランダルに接触すればいい話だ』

 

 簡単に言ってくれるね。

 俺としては今いる人たちは誰も感染してほしくないし、これから先に会う人たちも出来る限り助けたいんだよ。

 

『終息させるための駒を作りたくない、か。いつまでもこのサバイバルが出来るわけではないだろう。滅菌作戦はいつあるんだ?』

 

 ……明確な日にちは開示されてない。トリガーになる要素もいまいち分からないし、ランダルや米軍の情報も入ってこないから……正直なんとも言えない。すぐという訳ではないらしいけど、一月か二月か……

 

『まずは外部との連絡手段か』

 

 そうだね。どの辺りまで壊滅してるかは分からないけど、日本全滅って訳ではないと思う。ハンクはどう思う?

 

『……向こうではラクーンシティ、アークレイ山地を含めた半径50kmを封鎖して食い止めた。州兵だけで足りなくて米国陸軍も駆り出されたようだ』

 

 それで感染拡大は食い止められたわけか。それを踏まえて、今回のケースは?

 

『活性死体自体はアンブレラ製のモノの方が強力だ。感染の仕方も同じなら防げる筈だ。だが、ここはアメリカ中西部の街とは決定的に違う』

 

 日本……だからだよね?

 

『肯定だ。人口密度が極端に高い上に他の街との境と呼べる区画がほぼ存在しない。爆発的に感染する類の病に対しては、ほぼなす術がない』

 

 神奈川、埼玉や千葉といった東京に隣接した街は道路と道路、電車などの交通機関で繋がっている。アメリカの街とは違って、その間に何もないエリアはほぼ皆無だ。つまり巡ヶ丘から移動した人が首都圏に散らばる速度も確率も、ラクーンの場合とは比べ物にならない。

 

『首都圏と目される範囲を全て封鎖する事は出来るだろう。その際に人道的な手段を取らなければ、な』

 

 ……ハンクの言う意味が分かってしまう。避難を求める市民に対し、暴力的な手段で対処する。『かれら』であろうとなかろうと構わずに。

 ラクーンシティの時にも、そうした事例はあったそうだ。歩いて来るゾンビが二人来たから狙撃(スナイプ)した州兵は、それが足の悪い老夫婦だったと知って自殺したとか。

 

 胸糞の悪い話だけど、そうした対処をしないと感染拡大を止められないという側面はある。

 

『軍人ならそうする。命令は絶対であり、それに背く事は職務の放棄だ。撃って自責の念に駆られるなど惰弱としか言えん』

 

 ……それはアンタだから言えるんだよ、死神。普通の人はそうはなれない。そしておそらくこの国の軍隊もどきだと、そこまで冷徹な方法を取る事は難しいんじゃないかな?

 

『それは希望的観測というものだ。命令があれば軍人はやる』

 

 そうは思いたくない。

 でも、否定する事は出来ない。

 自分の行った凶行を鑑みれば、命令という大義名分、もしくは免責があればやってしまうのかもしれない。

 

『事実を認識し、冷静になれば対処は難しくない。俺がやったように近接戦でも何とかなるのだ。銃で武装し、兵員も揃っていれば制圧する事は無理でも封鎖する事は可能だ』

 

 彼(ハンク)の言う事はいちいちもっともで。

 

 同時に、人というモノの恐ろしさをあらためて思い知らされた。

 

 

「九郎さん。朝ごはんですよ」

 

 唐突に声をかけられて驚く。昇降口のドアから悠里が姿を見せていた。

 もうそんな時間か。寝袋を畳んで行くと、悠里がにっこり微笑んだ。

 

「るーちゃんは叱っておきました」

「えっ」

「お嫁にいく前にお父さん以外の人のお布団には入っちゃいけません、て」

 

 すごく自然に言われてる。笑顔もとてもかわいい。でも……何だかすごい圧力を感じた。

 

「は、はは……ごめんなさい」

「九郎さんが連れ込んだんじゃないんでしょう? 謝るのは筋違いですよ」

「そ、そう言ってくれるとタスカリマス……」

 

 普通に話しているだけなのに……怖い。

 

『ふむ。いい威圧だ』

 

 感心するとこじゃねぇし。

 すると、右手に温かい感触。

 

「さ、行きましょう。お味噌汁は残っていた豆腐にしました。傷みやすいから早く食べないとね」

 

 自然に手を繋いでくる悠里。

 少し頬が赤らんでいるのは気のせいだろうか。頭の中で味噌汁を喜ぶ声が、少しうっとおしかった。

 

 




 説明回でした。考察としてはかなり穴がある気がしますが、とりあえず気にしない(笑)
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