翌日
ペンシルベニア州 シューニス
シューニスハイスクール
『ガメラとギャオスの戦闘でロンドンは壊滅的な被害を受け、復興の見通しは立っておりません。ロンドン議会からの発表によりますと今回の戦闘で死者1万人、負傷者1万5000人、行方不明者3800人が発生しており今後更に増えると見られ、現在も軍を動員した救出作業が続けられています。この事態に対し英国議会はガメラをA及敵対勢力と認定。ガメラ撃滅の為ロンドン時間午前9時を持って、イギリス全軍に出動を命令しました』
「やっぱ怪獣は危険な動物なんだな」
「決めた。俺軍隊に入隊する」
ロンドンの惨劇から一夜が明け、ケビンが通う高校では、生徒達がスマホのワンセグやネットニュースを使ってロンドンで起きた戦闘のニュースを見ており、中には軍の入隊を志す男子学生もちらほらと居た。
余談ではあるが、現在アメリカ各地の新兵募集所では軍への入隊志願者が殺到していた。入隊志願者の増加は危機的事件が起きた際や景気悪化の時には良くある話ではあるが、それは国内での場合であり、国外での事件で志願者が増加する事は軍も想定しておらず、募兵官も対応に困っていた。
「………」
登校していたケビンはふとティーラの席を見たが、登校時間を過ぎているのにも関わらずティーラは出席していなかった。
その頃、ティーラはあの洞窟に来ており、ライトを頼りにあの卵型の石があった場所まで来ていた。
「………ない?」
しかし、彼女が目的の場所に着いたが昨晩まであったはずの卵型の石はなくなっていた。
「………?」
ティーラは足下に何かが落ちているのに気付き、しゃがんでそれを拾い上げると、それは黒い勾玉だった。
「…………!」
ティーラは背後に気配を感じ振り向いた。
イギリス
イングランド サフォーク
ミルデンホール空軍基地
「あーこれゲームソフトですよ。PCで動かなくて当然です」
ニックはディーバー・ウィンドウと名乗る人物から届いたディスクを、同じ部隊でコンピューターに詳しいカプランに見てもらい、ディスクの正体がPCディスクではなく、テレビゲームのゲームソフトであると教えられた。
「何だゲームかよ」
カプランは送られて来たゲームソフトをテレビゲーム機にセットし、起動させた。
「で?これ何のゲームなんだ?」
「これは、地球のマナの変動の予測ですね」
「マナ?」
「えぇ、原始的宗教で見られるエネルギーみたいな物ですね。SFやファンタジーではよく出てきます。このゲームはそのマナを操作して地球の様々な変動をシミュレーションするゲームです」
「ふーん」
「しかし、ディーバー・ウィンドウが何で少佐に……」
「知ってるのか?」
「ディーバー・ウィンドウは有名なコンピュータプログラマーです。過去にいくつものヒット作を出していて、特に推計統計学をモチーフにしたシミュレーションゲームに関してはかなりの物で、軍事戦略としても応用出来る物もあり、FBIからもマークされる程の人物だったんです」
「だった?」
カプランはニックにディーバー・ウィンドウのことを説明したが、最後の説明が過去形だったのに気付き、理由を聞いた。
「失踪したんです。噂じゃロシアに亡命したとか、中国か北朝鮮に拉致されたんじゃないかって」
コンコン
「失礼します」
そこにJ.Dとレインが入って来た。
「どうした?」
「少佐、命令が出ました」
一方、ニックにソフトを送ったディーバー・ウィンドウは、自室でパソコンを使って作業をしていた。
ブィーンブィーンブィーン
彼のスマホに電話が入り、ウィンドウは電話に出た。
「もしもし」
『私です』
電話の相手は女性だった。
「何か動きがありましたか?」
『合衆国政府は今回の事態に集団的自衛権の適応を宣言。ガメラ掃討の為、軍の出動を決定しました』
アメリカ合衆国
ペンシルベニア州 シューニス
学校が終わったケビンは自宅に帰り、いの一番で彼の祖母にリュウセイチョウの言い伝えについて尋ねた。
「リュウ・セイ・チョウって何なの?」
「………あれの言い伝えを聞いたのは、私があなたぐらいの年だったわ。私の祖母、あなたの曾祖母から、大きな災いだと聞かされたわ」
「災い?」
「あれが黄泉がえってたらこの世が滅びると言われたの。でも、あの封印の石を動かさない限りはそんなことは起きない」
祖母の話を聞いたケビンはばつが悪い顔をしたが、祖母はリュウセイチョウの言い伝えを更に続けた。
「でも、仮に黄泉がえった時の為の備えはあるわ」
「備え?」
「リュウ・セイ・チョウを封印する剣、それがあればリュウ・セイ・チョウを封印することが出来る」
数時間後
その日の夜、ケビンは再びあの洞窟に向かったが、閉めたはずの扉が空いており、ケビンは中に入った。
キュゥゥゥ
「?」
洞窟の奥から何かの鳴き声らしき音が聞こえ、ケビンはライトを奥に照らすとティーラが居た。
「ティーラ、お前ここで………!?」
ケビンが彼女に近付くと、ティーラは1メートル程の黄色い触手が生えたカタツムリのような生物と一緒に居た。
ザッ
キュゥ!
「やめて!怯えるから」
ケビンが近付くと生物は怯えてティーラにすり寄り、ティーラは一喝した。
「何だ?そいつ……」
「イリス」
「え?」
ティーラは洞窟に居た生物を、5年前に飼って居た猫と同じ名前のイリスと答えた。
「この子は、私が育てる………そして、敵を取ってもらう」
キュゥ
「大丈夫よ、イリス」
「………ティーラ………」
ティーラはイリスに我が子の様に愛しい目を向けたが、ケビンには彼女が何かに取り憑かれて居る様に見えていた。
翌日
イギリス
イングランド サフォーク
ミルデンホール空軍基地
『ロンドンに甚大な被害を与えたガメラを掃討する為、NATOは集団的自衛権の発動を決定、当事国のイギリスを始め、アメリカを主体とした各国は軍に出動を命令しました。………ん?………えー、たった今入ったニュースです。英国国防省の発表によりますと、本日グリニッジ時間午前7時10分頃、北海にてイギリス海軍がガメラを攻撃した模様です。繰り返します、本日グリニッジ時間午前7時10分頃、北海にてイギリス海軍がガメラを攻撃して模様です。この攻撃がガメラにどれ程のダメージを与えたかは、まだ情報は入っておりません』
ニックはミルデンホール基地でJ.D、レイン、カプランと共にテレビでニュースを見ていた。
「イギリスが先手を打ったか」
「世界情勢は完全にガメラ抹殺で一色に染まってるみたい」
「………」
JD達がニックを見ると、ガメラ攻撃のニュースを聞いたニックは複雑な顔をしていた。
「……やっぱり少佐としては複雑なんだな」
「だろうな、少佐は7年前と5年前、2回もガメラに命を救われたことがあったらしいからな」
「…………!」
ニュースを見ていたニックのスマホに電話がかかり、画面の電話相手の名前を見た。
「メグミ……?すまん、ちょっと席外す」
ニックはJ.D達に一言言うと部屋を出た。
「メグミって?」
カプランは電話相手の名前を聞いて、J.Dとレインに聞いた。
「少佐の奥さんだよ」
「あぁ……………え!?少佐って結婚してたのか!?」
カプランはメグミがニックの妻だとレインから教えられかなり驚いていた。
「あぁ、確か日本人だったか?」
「そうらしいよ、モナークの情報官で、何でも幼なじみだったみたい」
「つか、お前ら知ってたのか?」
「知らないのお前だけだ」
「マジかよ……」
オーストラリア
ニューサウスウェールズ州 シドニー
シドニー国際空港
イギリスから11時間の時差があるシドニーのシドニー国際空港ではニックの妻であるメグミ・モートンがニックに電話をかけていた。
『メグミか?どうした?』
「うん、実は今からロンドンに行くわ」
『今からか?到着先は?』
「16時にヒースロー空港に到着する便よ」
『向かえに行こうか?』
「大丈夫?」
『多分な』
「わかった。ロンドンに着いたら連絡するね」
『あぁ、気を付けてな』
「えぇ」
メグミはニックの電話を切ると、搭乗ゲートに向かって行った。