東方無魔録   作:雫泉

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03話 空を飛びたい少女

 相変わらず人間たちの襲撃は続いており、また1年と経っていた。

 流石に学び始めているのか毎日襲撃することが無くなり、そして武装や部隊の組み方、襲う時間帯も変わっている。吸血鬼の弱点を徹底的に狙う装備だったり、夜ではなくあえて昼、それがだめなら朝と、吸血鬼にとっても使用人たちにとってもキツいだろうと予想をした上で襲うようになってきている。それでもそもそもの戦力差が明らかなのか、未だ変わらず紅魔館側が有利なままなのだが。

 そして、今夜はどうやら襲撃は無いようで静かな夜を過ごしている。ただ争いがないというだけの意味で静寂という意味ではない。

 

 庭の方ではシルフィアとレミリア、そしてアルジーナの3人がいる。ノーラスは当主として忙しいのもあって留守にしている。

 何をしているのかと言えば、アルジーナの飛行の仕方から能力のこと等々。一言で言えば力の使い方だ。

 能力に関してはシルフィアは持っていないため、あくまでレミリアから聞いた話から考えた上でしかない。

 

「いいですか?空を飛ぶ方法ですが、まず宙に浮いている自分を想像してください。大体で構いませんからどういう姿勢でどのくらいの高さまで浮かんでいるのかをです。それが出来たらもう飛べたも同然ですよ、全身から体内の力を放出しながらコントロールするのですよ」

「……難しそう」

 

 聞いた上での最初の感想だが、レミリアもそれには頷いている。彼女自身も今でこそ飛ぶことが出来るようになってきているが、最初の頃はアルジーナと同じく理解すら出来ていなかった。

 

「大丈夫、アルなら出来るわ」

 

 姉に応援されたからか、やる気ではあったアルジーナの真剣さが一回りほど増している。

 本人のその真剣さから、教える側の2人は口を出すこともせずただ黙って見守っている。

 と言うよりも、結局は本人が感覚で掴まないと成功しない。あれこれと助言することはあっても、それはあくまでも手助けなだけだ。

 

 

 練習を始めてから数時間も経った頃には、僅かに浮かぶことができるようにはなっている。流石に高く飛んだり飛び回ったりまでは出来ないが、それでも浮かべるようになるだけでも上出来と言える。

 

「今日はこのくらいにしておきましょう。その感覚を忘れないようにしてくださいね」

 

 空を飛ぶということの中で一番大切なのは宙に浮かぶこと。当然だが、それが出来なければ空を飛ぶことは出来ない。

 シルフィアはアルジーナへと、そのことを伝えて今日の練習は終了した。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜明け前。姉妹二人はレミリアの部屋で寛いでいた。

 今までアルジーナが、何かを教えてほしいとかそういった主張はしていたが、今まで一度も家族に甘える方での主張はしたことがない。そんな彼女が初めて家族に対して、それも親ではなく姉の方に一緒に寝たいと言い出したのだ

 どうしてまた急にそんな事を言いだしたのかは、本人にも詳しいことはわからない。ただ言えることは、そういう気分だったからだ。

 

「アルってすごいね、もう浮くことが出来るようになったんだから」

「そうなの?」

 

 先程までの空を飛ぶ練習でのこと。アルジーナは一晩で浮くことまではできたが、他は数日は必要としていた。

 そもそもだが、普通は数日掛かって当たり前でもある。

 

「私もお姉さまみたいに飛べるようになる?」

 

「なれるよ、私の妹なんだからね」

「ほんと?じゃあがんばる」

 

 じゃあってなんだとは思うレミリアだが、それよりも頑張ろうとする姿勢には称賛している。

 想像よりも少しだけ早く空を飛び回れるようにはなるのだが、それはまだ先の話だ。

 

 

 

 

 

 

 翌日、そのまた翌日と空を飛ぶ練習は毎日続いている。

 浮くことが出来たのならば今度はそれを維持し、維持ができるようになれば次は高度をあげて同じ事を繰り返す。ある程度できるようになれば今度は、それが当たり前のように自然と浮くことが出来るように練習する。そこまで出来て初めて本格的に飛行訓練に進むといった具合だ。

 

「流石ですね。そのままの高さと体勢を維持し続けてください」

 

 まだ地面から大した高さではないが、一目見て空中に浮かんでいると分かる高さまでできている。

 危なっかしくふらつきながらも、それでもなんとかバランスは保てている。とはいえ大した高度は高くないため、たとえコケても怪我をするようなことはない。

 そして、それも数時間もすれば安定し始めてきている。

 

「ふぅ……お母さま、どう?」

「合格ですよ。次はもう少し高くやってみましょう」

「うん、わかった」

 

 少しの休憩を挟んで、今度は先程よりも高く飛んでから維持している。

 低い所よりも高い所のほうが難易度は上がる。それでも、既に低空で静止する事はできているため、それもあってそこまでの難易度にはならないのだ。

 

 練習は順調に進み、時間もあっという間に経過していた。

 練習は一時中断して、現在は家族揃って食事をとっている。

 

「シルフィア、アルジーナの訓練の調子はどうだ」

「順調ですよ。この調子でしたらそろそろ自由に飛ぶこともできそうですね」

 

 その報告を聞いて、何やら誇らしげに笑みを浮かべている。

 流石は我が娘だと自分で自分に自慢でもしているのだろう。そう考えていることは見てわかるほどだ。

 なんとも分かりやすい人だという事は知っていながらも、改めてこの場にいる全員がそう思っている。

 

「アルジーナ、お前はどうだ?」

「たのしい」

「そうか、それは良い事だ。頑張りなさい」

 

 楽しめているということは良いことだ。強制的にやらされて嫌になることも無く、本人のやる気の方も続く。

 こういった訓練の中で一番の敵とも言えるものが、モチベーションの低下だ。たとえ才能があってもモチベーションを維持できなければ続かないし、良い成果も期待できないだろう。

 

 

 

 

 

 

 飛行訓練を始めてから数日は経過した頃には、既に空を自由自在に飛び回れるほどまでに上達していた。流石に速く飛び回るというのは無理があるようだが、それでも十分と言えるほど自在に飛行できている。

 これ以上シルフィアが教えることも無くなり、あとは自分自身で上達させていくだけだ。

 

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