外を見れば、吸血鬼にとっては何も嬉しくない雨がザァーザァーと音を立てて降っている。
ここ最近はやけに雨の日が多く、まだ幼い彼女たちには外で遊ぶこともできず退屈な夜を過ごしていた。
「あーもう!さいきん雨ばっかりでつまんなーい!」
金髪で独特な翼をしている少女が、窓の外を見て我慢出来ずに零した。
アルジーナにとっては2つ下の、レミリアにとっては5つ下の妹で、フランドールと名付けられたスカーレット家の三女に当たる。
彼女が生まれてから既に数年は経っているが、長寿の生き物にとっては、人間で言えば1年分にも満たない長さでしかない。
「ほんとうね。今年は特に降るわ」
一番上の姉であるレミリアは、外を見ながら落ち着いた様子だ。
妹が2人もできたからか、フランドールが生まれる前に比べれば姉としての自覚が強くなっている。
昔は気に入らないことがあればすぐイライラしていたりしていた。
一度切りだが、虫の居所が悪かったのか話しかけてきたアルジーナに当たったこともあったくらいだ。その後酷く落ち込んでいたが、当人は気にもしていなかったというのは内緒である。
室内での遊ぶ事にも飽きてきたのか、暇になった3人はただ雨が降る外を見ていた。
その先には、激しい雨の中にも関わらず、いつもと何ら変わらない光景が広がっているだけだった。
いつもと変わらない、吸血鬼を狩ろうという人間からの襲撃。それに迎撃し、返り討ちに遭わせている紅魔館の使用人たちの姿が見えるだけの、何も変わらない光景だ。
「向こうで遊んで来たいなぁ……」
「お父さまに怒られるわよ。それに雨も降ってるんだから」
父に怒られる。その言葉を聞いて、フランドールはあからさまに嫌そうな顔をしながら諦めた。
「お姉さま、なにかないの?」
「何かって急に言われても……」
それでも何か遊べることは無いものかと、真剣に考えている当たりは妹思いの姉といったところだろう。
「……能力」
数秒か、あるいは十数秒か。その短い時間で何か思いついた様子を見せたレミリアは、小さく口を開いた。
小さくともはっきりと聞こえた2人だが、1人は何のことか理解できたが、もう1人は何のことかさっぱりといった様子で頭の上に「?」が浮かんでいそうな様子で首をかしげていた。
「フランの?」
「そうよ!私とアルにもあったんだからフランにもあるはずだわ!」
理由になっているのか怪しいところだが、あまりにも暇すぎたということもあってか誰も気が付く者はいなかった。
「ふーん……おねーさまたちの能力ってどんなのなの?」
「そうねぇ、私のは運命が見える力って感じかな」
「うーん……うん?」
レミリア自身は出来る限り分かりやすい言い方をしたつもりではあったが、当然と言わんばかりに理解出来ていない結果だ。
急に
「うんめいって見えるものなの?」
「見えるっていうか、分かるって感じかしら。ある程度なら操作することもできるわ」
「あやつる?」
数年前にアルジーナに説明した内容と同じ説明を、今度はフランドールにしている。
食いついた彼女はもはや、外のことなど忘れて夢中に聞いていた。もっとも、それを理解しているかどうかはまた別の話ではある。
「いい?フラン、運命って言うのは必然と偶然の連続なの。必ず起こる出来事と、もしかしたら起こるかもしれない出来事がいっぱいあって、それが沢山繋がってるの」
分かったような分からないような。そんな曖昧な反応を見せながらも、姉の説明を真剣になって聞いていた。
「あとは、見えた偶然の運命を選んで引き寄せることが出来るって感じね。もちろん限界はあるけれど」
うんうん。と頷きながら、また同時に首を傾げていた。
理解したけどやっぱり分からない。そういう反応だ。
それでも折れることなく、何度でも分かりやすいように説明して気が付いたころにはそれなりの時間が過ぎていた。
すでに外は明るくなり始めていて、夜の時間が終わろうとしているのはすぐに分かることだ。
「そろそろ寝ましょう。外も明るくなってきてるわ」
「ほんとだ……。あ、ねえねえおねーさま。みんなでいっしょに寝よ!?」
「ええ、いいわよ。アルは?」
「私もいいよ」
「えへへぇ、やった!」
誰の部屋で寝ようかという問題はあったが、それはあっという間に解決していた。
妹ども2人が、レミリアの部屋と言うものだから結果的な多数決になって決まった。
「あれ?そういえばアルおねーさまってどんな能力なんだろ……。まあいいや」