女性が強い剣と魔法の世界で元剣士の男は剣帝になる   作:たこさぶろう

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平穏の終わり──1

気がついたら俺は貴族の息子になっていた。

 

俺はは又吉 吾郎、かつては剣魔と裏社会で恐れられていたが、今はホムラ・アーガネットと呼ばれる年齢八歳の男の子、男より女が多くて強い世界の貴族の生まれ、男というだけで舐められる世界で日本にいた頃のギャップでパニックになっていると、母親らしき女性が錯乱して帝都で反逆、幸いにも日本と違って堂々と真剣を振るえるので俺は剣を手に取り、母が帝都に放った怪物達から民を守った。

 

日本の頃と違って容姿は淡麗でまだ子供、貴重な男、そして弱い筈の男が剣を手に取り勇猛果敢に魔物を討伐した事でなんとか首の皮一枚繋がり、爵位の剥奪と帝都からの追放で事なきを得た。

 

可憐で美人な使用人、クリス・マーハートのおかげでそこそこの家財と共に帝都を脱出して鍛治の里がある鉄資源の豊富なボリロス島へ逃げて、身分を隠しながらも悠々自適に暮らしている。

 

なんせ前世では戸籍が怪しく、裏社会で生きた剣士、剣魔と恐れられて強者と戦っていた野良犬みたいな人間が蝶よ花よと愛でられて育つよりかは、多少不便な生活の方が慣れているし、何よりも剣士として生きるならこちらの方がいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「んー、上手くいかないか」

 

 

 

ホムラは早朝、体の動かしやすい服装で鍛錬をしていた。

 

かつて剣魔と恐れられていた頃の自分を取り戻すために、男が鍛えて何をするんだと村の娘達にかれこれ五年、馬鹿にされながらもひたすらに剣を奮っていた。

 

 

 

(前世と違って剣魔として生きてきた才能と経験があり、剣を始めた歳もそう変わらない、しかし身体が技に着いていけない)

 

 

 

鞘に戻して地面に座り込む

 

 

 

(身体だけじゃない、剣も追いつけないから全力を出せない)

 

 

 

日本にいた頃は日本刀だけでは無く、世界各地の様々な剣を振るった。この世界にも似た剣があり、最初はそれを使っていたがフィーリングが合わずホムラ自身と剣のスペックを最大限発揮する前に壊れてしまうのだ。

 

 

 

(情けない、鍛冶屋に申し訳ねぇよこの体たらくじゃ)

 

 

立ち上がり、素振りを開始した。

 

 

 

 

「おはようございますホムラ様」

 

「おはようクリス」

 

 

 

鍛錬を済ませて小屋に戻り、タオルを使用人のクリスから受け取り汗を拭いながら椅子に座る。

 

本来であれば男である。もっと言えば貴族であるホムラを一人で外に置くのは危険だがボリロス島はそういったしがらみも無く、中立地帯として存在し、ホムラの実力からクリスは敢えて口出しをせずに見守っている。

 

 

 

「帝都の様子は? 」

 

「変わらず貴族達による小競り合いが続いているようです。爵位の高いアーガネット家が失墜してからと言うものの、皇帝陛下がそろそろお怒りになるのではないかと思うほどに帝都では策謀うずまいております」

 

「皇帝陛下の負担にならねばよいのだがな、爵位に興味などはないが帝国の貴族だった者として、皇帝陛下と帝国民が安全である事を祈るしかない」

 

 

 

クリスはホムラのテーブルに朝食を並べ始める。

 

 

 

「貴方様は爵位より剣ですからね、変わったお方です」

 

「人は皆違う生き物だからな、数が少ない男でも俺のような変わり者がいてもおかしくあるまい」

 

 

 

くつくつと笑い、ホムラは窓辺を見る。

 

 

 

「ここは静かでいいなクリスよ、宮殿にいた頃は窮屈で仕方がなかった」

 

「はい」

 

 

 

遠くから聞こえる鉄を打つ音と、海の音、信頼できる者と暮らす平和で穏やかな日々はホムラにとって居心地が良かった。

 

 

 

 

「坊や!」

 

「アグ様ですね」

 

 

 

 

しゃがれた声の女性に呼ばれたホムラは扉を開けて小屋の外に出た。

 

 

 

「なんだいアグさん」

 

「里長が晩飯食いに来なって、お前に剣をくれてやるってよ」

 

「そんな、また壊してしまうかもしれないのに」

 

「なまくら作るアタイらが悪いんだから気にするな、雑に扱って壊したなら二度とお前に剣を作らねぇ、だけどちげぇだろ? 」

 

「それはそうだが……」

 

「それにアタイらの夢でもあるんだよ、強くてイイ男が自分が打った剣で戦う、御伽噺みてぇな事が実現できる男がいる……ならアタイら鍛冶屋はイイ剣を打つだけさね」

 

 

 

 

ニカっとアグは笑いホムラの頭を撫でる。

 

 

 

「それにお前がいるおかげで若い奴も自分の実力を知る事が出来て調子に乗ることも無くなった。お前のおかげでこの島の未来も安泰だよ」

 

「はい! 」

 

 

 

前世では無かった穏やかな日々と優しい人達、ホムラは大切にしたいなと思いながら笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃっ!」

 

「あぶっ! 」

 

「ぶべっ! 」

 

 

 

夕方、クリスに見守られながらホムラは里の子供達の稽古をしていた。

 

幼い子は九歳から、上の子は十七歳、最初はホムラの事を馬鹿にしていたが、大人顔負けの実力と里に出没する魔物を討伐する姿からすっかり尊敬されるようになったのだ。

 

 

 

「リリは真っ直ぐすぎるから人の動きをよく見て臨機応変に、ノイラは基礎体力が少ないから地味だと思ってもちゃんと鍛える事、アトラは剣に邪念が篭りすぎだ!」

 

「あぅ!」

 

「うっ!」

 

「ふひぃ」

 

 

 

やれやれと剣を肩に担いで息を吐く、リリと呼ばれた活発な女の子は最年少の九歳の子、一番ホムラを尊敬し、教えられた事をしっかり吸収する将来有望だ。

 

ノイラと呼ばれた少女は年頃になり才能はあるが、恥ずかしくなって、素直になれずホムラに反抗しがちで最近の伸び悩む

 

下品に笑うアトラは子供達の中で最も強く、頭の中では常にホムラですけべな妄想でいっぱいだが、独自の持ち味をいかした形に囚われない変幻自在な太刀筋は大人達も舌を巻く

 

 

 

「まぁでも皆強くなったな、これからもちゃんと鍛えて立派な剣士になればいずれ帝国やサラロビア大陸に名前を轟かせる一流の剣士に慣れるぞ」

 

「わーい!」

 

「……ありがと」

 

「ホムラさん、この後一緒にお風呂でも……」

 

 

 

 

しばらくリリ達に付き合って遊んでいると約束の時間になり、緊張した面持ちで里長のガルーの屋敷に入ると、既に剣が三本用意されていた。

 

 

 

「…………凄い」

 

 

 

一本のグラディウス、鞘から出た状態で置かれたその剣はグリップに皮が巻かれた以外に装飾が施される事なく、冷たくて無骨な印象を受ける。ましてや元貴族が使うには地味すぎるほど、しかしホムラにとって無駄な装飾が無い方が好み、もっと言えばこの世界の慣れない剣との対話には都合が良かった。

 

横に置かれた双刀もシンプルな仕上がりでいて、鍛冶屋の腕を感じる一品でホムラは昂りを感じていた。

 

 

 

「喜んでいただけたようじゃなホムラ様」

 

「よしてくださいガルーさん、俺はもう貴族では無いのですから」

 

「こんな田舎島を支援してくださったアーガネット家への恩、一生忘れなんだ。どうかアーガネット家復興の礎となれば……!!」

 

「ガルーさん、貴方がアーガネット家に恩を感じるように俺もまたこの里に、この島に返せないほどの恩がある! しかし追放された身ではアーガネット家の復興はあまりにも非現実的、しかし、この剣に誓って全大陸に名を轟かせる最強の剣士になる事しかお約束できません! 」

 

「おぉ……! おぉ……! なんと立派な、あれだけ小さかったホムラ様が、こんなに……」

 

「泣くのは早いですよガルーさん」

 

 

 

控えていたクリスを交え、里長一家との夕食、食後の運動を兼ねて屋敷の警備兵、ロドやカレンダと一戦交えるかと考えたその時、邪気を感じて剣を持った。

 

穏やかな空気が一変、温厚は老婆に見えたガルーも里長、鍛冶屋の頭であり里最強の剣士としての顔が出る。

 

 

 

「ロドル、カレンダ、ヴァイト、アグ」

 

 

 

呼ばれた四人の剣士は御意と剣を抜いて屋敷を出る。

 

 

 

「ホムラ様、抜剣許可を」

 

「抜け、俺も出る」

 

「お待ちくださいホムラ様、我らが戦士達も強い、貴方様の出番はまだ早い」

 

「…………わかっている。しかしこの胸がざわつく感覚は強者との一騎打ちや凶暴な魔物達と戦う時とも違う、ドス黒くどろっとしたもの、何事もなければいいが──」

 

 

 

ホムラの言葉は爆音によって妨げられ、三人は屋敷を飛び出した。

 

 

 

 

「中立地帯にゴーレムだと!? ふざけているのか!?」

 

 

ゴーレムと呼ばれる自立型戦闘人形が突如として中立地帯であるボリロス島に現れる事などありえない、所属国のマークを消し、違法製造されたと思われるゴーレムによる破壊行為が行われていた。

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