女性が強い剣と魔法の世界で元剣士の男は剣帝になる   作:たこさぶろう

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熱烈歓迎──3

三人と別れて帝都で買い物を済ませ島に戻りガルー達に挨拶を済ませた翌日の早朝、可愛い弟子達にバレない様にスワロテリが用意した船に乗り込み向かった。

 

 

 

「船旅も悪く無いが……少し退屈だな」

 

 

王族専用なだけあり前世の頃乗った豪華客船に負けないほど豪華な作りで、乗り心地も良くこの世界に来て初めての船旅で最初は浮かれていたが、退屈さが勝ってきたのだ。

 

 

 

「クリス」

 

「ダメです」

 

「ダメかぁ」

 

 

ちょっと暇だから戦おうじゃ無いかと誘う気でいたホムラはその言葉を口するよりも早く断られてしまい渋い顔をする。

 

 

 

「散策もダメなんだろ?」

 

「これからこの船の乗客員、護衛の方々が挨拶に来るのでここにいてください」

 

「はいはーい」

 

 

 

リリー達に見つからない様に夜逃げ同然に島から出たので本一冊すら持たず。やる事と言ったら貰った剣を眺めることしかない、ホムラは鞘から抜きくと剣を眺めていた。

 

 

 

(不思議な剣だ……今までそれなりの数の剣を持ったがこんなにもフィーリングが合う剣があるとは思わなかった──もしくは、この剣に俺が合わされているのか)

 

 

持つだけでもそれなりにダメージが襲う他の魔法剣とは違い、手に馴染むどころか身体の一部ではないかと思う手応えを帝都で襲われた時に感じた。

 

 

「試してみたい物だな」

 

 

 

しばらくすると船長と乗客員が、それから少し遅れて護衛がやって来た。

海の上で生きてきた人間であろう女達からは誇りと頼もしさを感じこの者達の船ならば安全な航海になるだろうと二人は確信したが、護衛達──海軍の態度は眉をひそめるものだった。

 

 

 

「……あれが帝国の」

 

「男が貴族ごっこか、帝国は面白い事をする」

 

「剣士ごっこだろ? 」

 

「いい美少年じゃないか、着飾らせて人形の様に飾らせればいいものを」

 

 

 

 

隊長は匂いフェチを抜いたサリィのような真面目で真っ直ぐな女性だ。しかしその部下達は嘲笑しながらホムラを見るのである。

 

 

 

 

「私はホムラ・アーガネットだ。昔の馴染みでまた爵位をもらっただけのつまらない男だが、短い航海の間だがよろしく頼むよ"ロナ・アーリー"」

 

「はっ! 」

 

 

 

隊長の名だけ呼び、ホムラは護衛達から興味をなくすと窓から外を眺めた。

 

 

「それでは私はロナ様と打ち合わせに行って参りますので暫くお待ちください」

 

「────わかった」

 

 

 

ホムラを残して全員部屋を出て行くと、溜息を吐く

 

 

 

(いかんな、前の頃に比べて気が荒くなっているな……この世界の環境がそうさせたのかはわからないが、これでは剣士では無くただの人斬りだ)

 

 

 

男である制限が無ければ今頃綺麗な服を着て船旅を楽しむどころか、薄汚い格好で世界を飛び回り幽鬼のように強者を求めて彷徨う、そんな生活も悪く無いと思う反面剣士では無い、己の剣の才能と衝動、これからどう向かい合えばいいかと目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

「────と、言った風に常に索敵魔法を使用し、周囲の船や魔物の反応を確認している為に我々は安全に航海ができるのです」

 

「成る程、スワロテリは漁業が盛んだと聞いていましたが索敵魔法の応用すればそれも可能、何よりも繊細な魔法を扱える人材の豊富さも素晴らしい」

 

 

 

打ち合わせは早くに終わり、ゴーレム襲撃の情報収集を兼ねてロナと話をしていた。

 

 

 

「我々スワロテリも帝国も差はあれどボリロス島周辺の監視は厳重にしているはず。その監視網を潜り抜け四方八方からゴーレムで侵攻してくるなどあまり考えたくありませんね」

 

「えぇ、しかし百を超えるゴーレムが現れた以上、これまでとは考え方を改めるほか

ありません、帝国、スワロテリ、そのどちらかが侵略目的と言うよりかは様々な国に潜む膿が結託したからこそ出来たのでは無いか─

─と言うのがホムラ様の考えです」

 

「こちらの大陸も少々怪しい動きを感じています。我々は海軍な為陸から先は護衛できませんが、どうかお気をつけて」

 

 

 

暇を持て余していた護衛の一人が立ち上がると部屋から出て行こうとする。ロナはそれを止めた。

 

 

「どこへ行く」

 

「護衛ですよ護衛、貴族様を一人置いておくわけにはいかないですからねぇ」

 

「じゃあ私もついて行こうかな」

 

「貴様ら! みっともない真似をするな! 王に恥をかかせるつもりか!? 」

 

 

 

 

「構いませんよ、そのままホムラ様の暇つぶしでもしていただけたら」

 

「クリス殿! 」

 

 

 

 

 

 

「失礼しますねぇ」

 

 

ホムラが眠る部屋に入った四人、ぐっすり眠るホムラの姿に口笛を吹く────その瞬間、背後の壁に剣が刺さった。

 

 

 

「……え? 」

 

「──────────あぁ、すまない、敵だと思った」

 

 

 

眠そうに起き上がると帝都で買った予備の剣を鞘から抜き放ち構えた。

 

 

 

「ちょ、ちょっと! 」

 

「本気!? 」

 

 

 

護衛達はホムラに威圧され後ずさる。

 

 

 

「俺の使用人に言われてここに来たんだろう? 俺も貴方達も退屈していた────ならばやることは一つじゃないか」

 

 

 

一歩、歩いた瞬間ホムラは振り向くとガラスが割れ、飛んで来た矢を掴んだ。

 

 

 

「て、敵襲!? 」

 

「か、海賊だ!! 」

 

「馬鹿な、常に索敵をしているんだぞ!? 」

 

 

 

「無礼な奴め」

 

 

 

ホムラは窓に近づこうとするが護衛達に止められる。

 

 

 

「おやめください! 」

 

「敵が来ているのなら斬るまでだ」

 

「我々がやりますから! どうか大人しく座っていてください!! 」

 

「……ならばお手並み拝見といこうか」

 

 

 

ホムラはしぶしぶ剣を鞘に収めて窓がない椅子に座り護衛達を眺める。

 

 

 

『乗り込め! 男だ! 男がいる!! 』

 

『邪魔する奴は皆殺しだァッ! 』

 

 

(野蛮だな)

 

 

 

最初こそ慌てていた護衛達は魔法を駆使して海賊を迎撃、順調に迫って来ていた海賊戦を沈没させていたが、船が大きく揺れた。

 

 

「うわ」

 

「危ない!! 」

 

 

 

船の衝撃で椅子から吹っ飛んだホムラは弧を描き天井に頭をぶつけて床に落ちる寸前で護衛の一人に受けとめられた。

 

 

「だ、大丈夫ですか!? 」

 

「ありがとう──────だけどもう今日は何もしたくない気分だ」

 

 

 

ズキズキと痛む頭を押さえ、目には涙を浮かべる。その姿に男を見下している護衛の一人は保護欲に目覚めた。

 

 

 

「──わ、私がこのまま守ります! 」

 

「オイどうした!? 」

 

「とりあえず状況の把握だな、俺を抱えていては戦えないだろう? 自分で歩くから下ろしておくれ」

 

「しかし」

 

「なら俺の近くで守ってくれ」

 

 

「はい!! 」

 

 

ホムラは皇帝から与えられた剣と予備の剣を持ち護衛を連れて部屋を出た。

 

 

 

「ご無事でしたかアーガネット男爵」

 

「第一派は見事にスワロテリ海軍の優秀な兵士が難無く迎撃をしてくれたが、この衝撃はなんだ?」

 

「突然どこからともなく海賊船が出現したのです! 」

 

「マネ、詳しく話せ」

 

「あぁっ、はい! 索敵魔法をすり抜け右舷から三隻の海賊船が出現し、皆様が迎撃して全船の轟沈を確認したのですが、今度は突然左舷から五隻の海賊船が出現しました! 」

 

「空間転移魔法とでも言うのか!? 」

 

「馬鹿な、武器と人を積んだ船を転移だと? そんな事できる者がいるなら輸送業はその者の独壇場になっているだろう! 」

 

「新たに出現した船は?」

 

「アーガネット男爵の使用人の方がたった一振りで……」

 

「人間なのか……!? 」

 

「まぁ、できるだろうな……うん」

 

 

 

貴族の血を引く男よりも帝国最高戦力が鎧を脱ぎ捨てメイド服を着て去っていった事に頭を抱えた政治家や貴族が多くいる事を知っているホムラは何とも言えない表情で目を逸らす。

 

後三十年早く産まれていれば今頃世界は帝国の物、そう思ってしまうほどの実力を十三歳、今のホムラの年齢と同じ頃に言われていたのだ。

 

 

 

(対国、対城、対要塞、攻めるには軍隊を動かす物をクリスはたった一人で済ますからなぁ)

 

 

条件反射、目で見たわけでも音を聞いたわけでも無いがホムラは振り向きざまに鞘から剣を抜き放ち護衛達の間を突いた。

 

 

 

「こ…こきゃっ」

 

「か、海賊が中に……!?」

 

 

海賊の女の首を突き刺したホムラは返り血を浴びて不愉快そうに顔を顰めた。

 

 

「くそっ、予備を五十着貰ってなかったらクリスに叱られていたぞ!! 」

 

「あ、アーガネット男爵は、気づいていたのでありますか……!? 」

 

「これでも帝都一女から愛された男だ。あの手この手を駆使して一夜で七百人の女が夜這いに来た時に比べれば僅かでもこの場に異変が起こればわかる!! 」

 

「な、七百人!? 」

 

「俺が八歳の頃の話だ。七歳から二十三の女が来た」

 

「は、犯罪ですよ……」

 

「まったくだ。まだ精通もしていない童に恐ろしい事をする」

 

 

 

軽口を言いながら自分達の隙間を掻い潜り剣を振り突然現れた海賊達を斬り伏せて表情一つ変える事はない、ごっこ遊びと思っていた男の実力、振る舞いを見て護衛達は己を恥じていた。

 

 

 

(──思っていた以上にやるな)

 

 

 

ホムラは護衛達の戦いを見て感嘆する。見下している男相手とは言え貴族相手への無礼極まりない態度、海軍の兵士として疑っていたが、思っていた以上に強かった。

エースと呼ぶには実力が足りない、しかし安定さは間違いない物、揺れが少ないとは言え揺れる船内でバランスを崩す事なく、無駄の無い動きで侵入して来た海賊達を斬る。例えそれが狭い船内で人が密集していても味方の邪魔をする事ない見事なものだった。

 

 

「後どれくらいで着く? 」

 

「もう港は見えていますが、このまま港に着いてしまったら」

 

「まぁ海賊の被害が市民に及ぶよなぁ」

 

 

ホムラは血で汚れた剣を投げ捨て、持っていた予備の剣を抜く

 

 

「アーガネット男爵」

 

「ん? 」

 

「我々の先程の無礼、おゆるしください」

 

「馬鹿にされてるのは慣れてるからな」

 

 

 

ホムラは海賊を斬り捨てる。

 

 

 

「一度没落して貴族としては微妙な立場だけどな、一線超える様な事を言われたら貴族として黙っていられない、転がってる海賊と同じ末路になるからくれぐれも気をつけてくれよ! あ、それと」

 

「は、はい!」

 

「港で歓迎とかしてもらえる? 」

 

「はっ! 港町の者が宴の準備をしております!! 」

 

「それは嬉しいなッ! 早朝から船に揺られて優雅な船旅かと思えば海賊が来たからな! 」

 

「ぎゃっ! 」

 

「海の幸一つでも食わなきゃやってられないっての!! 」

 

 

 

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