女性が強い剣と魔法の世界で元剣士の男は剣帝になる   作:たこさぶろう

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不満解消──1

クレッサを出発して三日、盗賊の襲撃があったものの予定通り首都へ到着────したが、ホムラ達が乗る魔馬車はその門の前で止められていた。

 

 

 

「……何をやっているんだか」

 

 

 

窓から覗き込んで外を見ると護衛達と武装したスワロテリの兵士達が睨み合っていた。

 

 

 

「俺は招かれた客人であっているよな? 」

 

「はい」

 

「ならアレはなんだ」

 

「向こうの兵士達を見るに────昔気質の方々でしょう、男が貴族である事を良しとせず。ここの王の船を汚した事への怒り、いえ、ホムラ様が剣士である事を認められないのでしょう」

 

「馬鹿馬鹿しい、見てみろあの門番の表情を、邪魔をしている兵士達はよほどの地位にいるのか困り果てているでは無いか、老兵は強かな者もいるがこれではただの老害だよ」

 

「……まだ老兵と呼ぶには若いかと」

 

 

 

「いい加減にしてください! 此方は王の命令でアーガネット男爵を連れて来たのですよ! 」

 

「認められぬな」

 

「そうだ。あの様な小娘を王だと前王から仕える我々は認められぬ! 」

 

「故にあの小娘が呼び寄せた胡散臭い男など首都に入れることなど不可能」

 

「礼儀も知らぬ若造が剣士を名乗るなど片腹痛いわ! 」

 

 

 

散々な言われ様にホムラは呆れ返る。

 

 

 

「凄いなぁ、帝都にいた頃を思い出すよ」

 

「私は兵士だったので昔のホムラ様を知らないのですがそれほどだったのですか? 」

 

「まぁここと違って俺の味方をしてくれる者も多くいたからな、歳をとっても現役か、子供の前で真剣でやりあってたよ」

 

 

 

昔話に花を咲かせて時間を潰すが一向に

進展しない、ホムラはため息を吐きながら扉を降りて外に出た。

 

 

 

「────っ!! 」

 

 

「いつまでお喋りをしているつもりだい? 」

 

 

 

痺れを切らして降りて来たホムラの眼光に兵士達は動揺する。

 

 

 

「き、貴様が帝国の男貴族か」

 

「元貴族と言っておきましょう、中立地帯への襲撃の調査のために再び爵位を与えられただけのつまらない男です」

 

「アーガネット男爵! お下がりください!! 」

 

 

サリアの部下である腰まで伸びた綺麗な黒髪の騎士、リーンはホムラを庇う様に立つ、ホムラはリーンが自分に対して不満を持ち、護衛もしぶしぶやっている事を何となく感じ取り肩に手を置いた。

 

 

「そこの女兵士、腰に差している剣を見るに腕に自信がある剣士と見た。剣士なら言葉ではなく剣で語ろうではないか! 」

 

「勝手な真似をっ! 」

 

「アーガネット男爵! いくら貴方でも──」

 

 

「──言ったな小僧!! 」

 

 

 

兵士達を束ねていた隻眼の女、トゥラは既に剣を抜いてホムラに振りおろしていた。

 

 

 

「クリス、俺好みの強い奴以外の掃除を頼む」

 

「御意」

 

 

「ほう、受けたか……!! 」

 

 

 

ホムラは予備の剣でよそ見をしながらトゥラの一撃を防いでいた。ホムラの剣が砕けてトゥラはニヤリと笑う、しかし自分の右手が麻痺し括っていた髪が地面に落ちた瞬間、ホムラを睨みつけた。

 

 

 

「舐めた真似を……!! 」

 

「一つ教えて差し上げましょう、相手の一振りを防ぎながら斬る。これはアーガネット家の者は皆使える芸当なのですよ、母や私は勿論そこにいる使用人も、爵位を剥奪され家を去った料理人、庭師、教育係の講師やその他諸々……それを踏まえてかかって来なさい」

 

 

ホムラがトゥラの腕を突くと麻痺が治り、トゥラの顔には怒りが浮かび剣を振る。縦横斜め、隙のない連続攻撃は並の剣士なら防ぐ事で精一杯だが、ホムラは涼しい顔で避け続けた。

 

 

「一振りが速い、しかしそれまでの剣だ」

 

 

トゥラの剣の柄を蹴り、手から抜けた剣を奪うと首元に刃を当てた。

 

 

 

「相手の力量が測れぬとは俺もまだ未熟と言うワケ、か」

 

「っっっっっっ!! 」

 

 

ホムラは最大限の侮辱と共にトゥラの剣を放り投げると、トゥラは膝をついて地面を殴る。興味の無いホムラはもう一本の剣を抜いて次の相手を探そうとしたがクリスの手によって全滅していた。

 

 

「……ご命令通り掃除は終わりました」

 

「相変わらずやるな」

 

 

 

(……男のクセに、強い)

 

 

リーンはホムラを睨みながら舌打ちをする。

門番達がゾロゾロと出てくるとホムラをクリスに槍を向けて囲む

 

 

 

「貴様達、何の真似だ!! 」

 

 

 

リーンは吠える。しかしホムラとクリスは武器を捨てて大人しく門番に拘束され連れて行かれた。

 

 

 

「隊長! よろしいのですか!? 」

 

「…………」

 

「隊長? 」

 

 

 

上を見上げる隊長ヒュリアの視線の先にいる金髪サイドテールの少女、スワロテリ連合国の王クロノールは笑みを浮かべて見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

牢屋に入れられたクリスとホムラは寛いでいた。

 

 

 

「あのプレッシャーは凄まじいな」

 

「噂に聞くクロノール王ですね、私と同年代でありながら陛下に劣らぬ覇気、まさしく王の器です」

 

「啖呵切って出たまでは良かったけどその先考えてなかったから本当に助かった」

 

 

 

「あら、意外と大雑把な男なのね」

 

 

部下を一人も連れずにやって来たクロノールにホムラは眉を顰めた。

 

 

 

「貴方がクロノール王でしょうか? 」

 

「えぇ、クロノール・ロア・リェミーチェ、この国の王よ」

 

「一人でこんな所に来るのはいかがなものかと」

 

「心配は無用よ、外に私の近衛兵がいるし、中には貴方達がいる」

 

 

「ダメだクリス、俺の思っていた以上に変わり者だ」

 

「変わり者代表の貴方がいいますか」

 

「同意見だわ、アウトレイジの剣士……上から観察していたけどアーガネット男爵、貴方の剣技は大したものね」

 

「貴女の前で剣を振ったのはあの女の首元に刃を向けた時だけ、それで私の力量を見定めたと? 」

 

「少なくとも、剣では無く相手の目を見て太刀筋を読んで回避するなんて剣士としての経験と度胸が無ければ出来ない芸当よ、それにトゥラも決して弱くはない剣士、それこそ部隊の隊長を任せているのに、まるで子供扱い」

 

「確かに強いでしょうなぁ、強すぎるからこそ私に一太刀も浴びせる事なく負けた」

 

「それが貴方の不満なのね」

 

「えぇ、私は男で、その上美男子と評されるほど容姿もいいので常に狙われる。それ故に私は常に最大限の動きで剣を振れます。しかし私と相対する剣士は皆実力が確かでも私が男であるからと見くびり、本来出せる実力を出すまでが遅い──悲しいものですよ」

 

 

 

かつて吾郎だった頃、剣士であれば"剣魔吾郎"の名を聞けば震え上がり相対する者は否が応でも己の限界を超えた実力を出す。楽しい、楽しくてしょうがなかった。剣士として他者を圧倒するよりも心ゆくまで剣と剣、技と技のぶつけ合いを極限の域に至るまで、命尽きるまでと生きていた。

そして不幸な事に自分が吾郎と言う人間だった事とその生き方を朧げながらに覚えてしまっている。それ故にこの世界では満足出来ずにいた。

 

 

 

「もし、貴方の不満を解決できる方法があるとしたら、どうする? 」

 

 

 

「────何? 」

 

「この国も実力主義、三日後にある剣士達の武闘会、そこにスワロテリで名の知れた剣士達が集うわ」

 

「へぇ、それは楽しみだ」

 

 

 

不敵に笑うクロノールとホムラを見てクリスはため息を吐いた。

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