三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第壱話『俺は宜園 章! 袁紹ではない!』

ベンチで本を読む一人の男。男は本の内容に魅了されたらしく、目を子供のように輝かせている。

彼の目を輝かせるほどの本……その本の表紙には『三国志』とつづられている。だが―――。

 

「いいよなぁ、この白馬の戦いに挑むシーン。序盤の山場だけどグッとくるわ。

 特に、郭嘉が、劉備との決戦に未だ躊躇する袁紹を、韓非子の言葉を引用して説得するところなんてもう……」

 

 そう、その『三国志』は、我々の知る三国志とは大きく違っていた。劉備は袁紹の客将だったことはあれど、少なくとも白馬を舞台に戦ったことはなかったはずだし、そもそも郭嘉は最初から最後まで曹操の幹部だったはずである。

 しかし、そうした違いこそあれど、やはりこの『三国志』は、この世界の人々を大いに魅了してやまないようだ。

 この物語の元となった史実が、どのような分岐の末に生まれ、綴られていったのか。

 

 全ては、ある一人の男から始まる。

 

* * * * *

 

 現代社会。そのある地方都市の電車の中。俺……宜園 章(ぎその・あきら)28才・サラリーマン・男は、本を読みながら滂沱のごとく涙を流していた。

 

「ううう、三国志はとても感動するよなぁ。ぶわあああああ。姜維が成都陥落を知らされて剣を折るところも感動するし、この出師の表のところなんか、もうすごいよもう。ぶわああああ」

 

 そう、俺は三国志(横山氏が書いた漫画版だ!)を読んでいたのだ。

 

 好きな国は蜀、好きな武将は劉備だ。どれくらい好きかというと、もし俺があの時代に生まれていたら、真っ先に劉備の元に駆け付けて、蜀の敗北を阻止してやりたい。それができるなら、現世での命なんて惜しくないと思うくらいに。

 

 俺は子供のころから三国志が好きだった。

 きっかけは、親父に連れられて出かけた本屋だったと思う。親父がビジネス書を探している中、ふらふらと適当に店内を歩き回っているところで見つけた、否、運命の出会いを果たしたのだ。いわゆる横山三国志と。

 

 その絵柄はもちろん、その重厚な物語に魅了された俺は、たちまち手に取った第一巻を読破してしまい、親父にねだって、ひと月に一巻ずつ本を買ってもらった。

 

 買ってもらった全巻は今も俺の宝物であり、同時に人生の支えになってもらっている。本当にありがたい存在だ。

 

 とはいっても、読んだからといって、残業や徹夜の疲れが癒されるわけではないんですけどねっ!!

 

 ……こほん、この前の残業の疲れからちょっと暴走してしまった、ごめん。

 

 そんなわけで俺は今日も、三国志に生きる力を与えてもらい、必死になんとか、社畜生活を乗り越えたのだ。

 

 だが!

 

 どんっ!!

 

「え?」

 

 電車を降りて、これまた三国志を読みながらホームを歩いていた俺は誰かとぶつかった!

 その拍子に俺は、線路側に倒れこんでしまった!

 その俺に向かって電車が走ってきた!!

 

 そして―――!!

 

* * * * *

 

「……ま、袁紹様、お起きください。そろそろ、例の件の時間ですぞ」

 

 誰かが呼ぶ声がする。

 目を覚ますと、そこはいかにも中国といった感じの寝室であった。

 そして俺に対して、これまた三国志に出てくる人物が着ているような衣装をまとった男が、俺に礼をしながら話しかけている。

 

 え、待って。ここはどこだ? 俺はホームから転落したはずでは?

 それにこいつは、どうして俺を袁紹と呼ぶんだ? 確かに俺の名前は、宜園 章で、名前の一部を音読みすれば『えんしょう』になるけども。

 

「ち、ちょっと待ってくれ。ここはどこだ? そしてお前は何者だ?」

 

 すると、その男はこう言った。

 

「どうなされました、袁紹様? まだもうろくされる年ではありませぬぞ。ここは南皮の町の宮殿、そしてわたくしはあなたの重臣、田豊ではありませぬか」

 

 なんですとーーーーーーーーー!?

 

 俺は、はるか昔、三国志の世界に転生させられたことを認めざるを得なかった。

 

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