三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第拾参話『敵はボク陽にあり!』

 さて、農民反乱を鎮圧し、さらに内政を立て直した俺たち袁紹軍はいよいよ動き出すことにした。

 そして俺は、官渡港へ向かう船団の船上にあった。この船団には、白馬の戦いで家臣に加わってくれた、関羽と張飛の姿もある。

 今頃は、顔良と文醜たちも、平原から東阿港に向かっているはずだ。

 

 官渡港、そう官渡だ。史実において、曹操と袁紹が激突し、そしてあと一歩ということで、袁紹が惜敗した地。

 俺がそこに向かっているのは、別に、史実のリベンジを果たそうというわけではない。あくまで戦略の一端なのだ。……いや、リベンジできたらいいな、とは少しは思うけどさ。

 

 次の敵を曹操に定めた俺たちは、まず対曹操戦の第一歩として、ボク陽攻略に挑むことにした。俺たちが官渡に向かい、顔良たちが東阿に向かっているのも、そのボク陽攻略のための作戦の一環というわけだ。

 俺たちが官渡を攻略して、そこを経由して北から、そして顔良たちが東阿を攻略。そこから東から攻め込むという同時侵攻作戦だ。

 兵糧がちょっと心配ではあったが、そこは幸いにも、住民反乱を受けて行った農業改革がいい方向に働いてくれた。その改革によって生産力が上がった結果、なんとか二正面作戦ができるほどまで、食料が確保できるようになったんだ。さすがに立て続けになるときついけどな。

 

 そう思い返しているうちに、官渡の港が見えてきた。

 

* * * * *

 

 いざ因縁の地ということで身構えたのだが、激戦になる、なんてことはなく、官渡はあっさりと陥落した。伝令によれば、顔良たちが攻め込んだ東阿も、これまたあっさりと陥落したという。

 

「なぁ、港にあまり兵力が配備されてなかった、というのは、やっぱりあれか?」

 

 俺が傍らの郭嘉に聞くと、郭嘉先生はよくできました、という顔でうなずいた。

 

「はい。港で守るのはあまりにも不利なので、戦力をボク陽のほうに集中させたのでしょう」

「そうか。そうすると、ボク陽のほうは、ちょっと苦労しそうだな。二正面作戦を取ってるから、さほど苦戦することはないだろうけど」

 

 俺がそういうと、郭嘉はため息を吐いて、やれやれという声で、苦言を言うように言ってきた。

 

「袁紹様、油断は禁物です。何事も、計画通りということはありません。状況はその時によって変わっていくものです。そのようなことを言っていては、足元をすくわれてしまうかもしれませんぞ。やはり袁紹様には洗脳をする必要が……」

「いや、それは遠慮しておくよ」

 

* * * * *

 

「曹操様、官渡と東阿に駐留していた兵力の退却が完了しました」

 

 曹操軍の本拠、洛陽にて、『その男』は曹操に、そう報告していた。

 

「そうか、ご苦労だった。ボク陽からの民間人の避難はどうなっている?」

「はい。そちらも滞りなく。曹操様、やはりボク陽に兵力をまわすわけには?」

 

 『その男』がそう聞くと、曹操は表情を変えずにうなずいた。

 

「うむ。西の呂布や、南の劉表、孫堅。どちらも圧力を高めてきている。今ボク陽に兵力を回せば、兵力を抜いたところから攻め破られるのは明白。とてもそんな余裕はない」

「そうですか……それならボク陽の兵力も引き上げるべきでは?」

 

 その言葉にも、曹操はやはり表情を変えずに返した。その様子は、まさに超然、まさに『神』と呼ぶにふさわしいようであった。

 

「いや、ボク陽で奴らに打撃を与えれば、虎牢関と陳留、そしてこの洛陽の兵力で拮抗させることができる。ボク陽で奴らを消耗させることは、我が曹操軍が負けを得ないためには必要なことなのだ」

「……」

「不服そうだな?」

 

 沈黙した『その男』に問いかけたその声は、どこまでも冷厳で、感情が一切感じられないものだった。

 

「いえ、そのようなことは……」

「否定せずともよい。我にはお見通しだ。良いか。国、そしてわしあってのこの国だ。そして国のためには、切り捨てるべき者は切り捨てるべきなのだ。それこそが、国をそして人々を安泰に保つための道だ」

「……」

「情を向けるのはよい。民を想うのもよい。だが、情や民ばかりに目を向けていては、かえって国や民の害になる。心せよ」

「……わかりました」

「うむ、下がってよい。これからもそなたの手腕に期待しているぞ……劉備」

 

* * * * *

 

 さて。洛陽でそのような会話が交わされているとはいざ知らず、再編成や補給を済ませた俺たちの軍は、いよいよボク陽へと攻め込んだ。

 関羽たちの隊が城門を攻撃し、俺の本隊が、投石器で城を射程外から攻撃する。東のほうでは、顔良たちの隊が奮闘しているはずだ。俺たちも負けていられないな。

 

 しかし、兵力ではこちらのほうが上回っているのに、なかなか攻略が進まない。ボク陽の曹操軍の士気は高く、必死に抵抗しているのだ。

 俺たち袁紹軍でも、ここまで士気は高くない。本当に向こうの将がうらやましいよ。

 

 とはいえ、やはり兵力の差が効いてきたようで、やがて抵抗は少しずつ弱くなっていく。そして。

 

「殿、ボク陽から降伏の使いがやってきました」

「そうか。それではただちに占領を進めてくれ。くれぐれも略奪する者がないようにな」

「ははっ」

 

 かくして、ボク陽は陥落した。ボク陽の抵抗もあり、こちらもかなりの被害を出したが、なんとか攻略できて何よりだ。ただ問題は、ここの戦いの消耗で、俺たちの戦力と、曹操軍最前線の兵力が拮抗していることだ。しかも、こちらはボク陽からしか侵攻できないのに対して、向こうは虎牢関と陳留の二方向から攻められると、こちらにとっては極めて不利な態勢になっているのだ。

 

 これはボク陽を復興させながら、状況が変わるのを待つしかないか……。

 まぁ、これまでもなんとかやってきたんだ。なんとかなるさ。

 

* * * * *

 

 一方、占領処理を進めている関羽と張飛は、町の中を巡回していた。町を見て回る関羽に、槍を担いだ張飛が話しかけてきた。

 

「城壁の被害に比べて、町中の被害はそれほど大きくないみたいだな、関羽の兄貴。この分なら、さほど時間もかからず、町は元通りになるだろうZE」

「あぁ。だが、あまりに被害が大きくないのがちょっと気にかかる。普通、敗色が濃厚になると、逃げだそうとした守備兵たちが略奪に走るのが常だが、それがほとんどないとは……」

 

 関羽がそういうと、張飛も少し表情を引き締めた。

 

「ああ、それは俺も気にかかっていた。それに、ここを守っていた敵将……典満だったか? 彼は上役とかいう男から『陥落間近になったら速やかに降伏せよ、無駄に兵を死なせることはない』と命じられていたそうじゃねぇKA。うちの殿サンの次に仁に厚いなんて、その上役って奴、もしかしたら……」

「ああ、考えたくないが、その可能性はあるかもしれん」

「やっぱりそうだよな……。劉備の兄貴、まさか曹操についてしまうなんてYO」

 

 そこで沈黙が二人を包む。それから少し時が経ち、関羽は決然とした表情を浮かべて言った。

 

「まぁ、兄者は兄者の考えがあるのだろう。俺たちは俺たちの考えがあり、理想がある。今はそれに従い、それを叶えてくれる主君のために戦おうじゃないか」

「そうだな。ここで変節しちまうようじゃ、劉備の兄貴に笑われるどころか、がっかりさせちまうからな。せいぜい頑張るとしようぜ。理想を叶え、また義兄弟で笑いあえる時が来るようにNA」

 

 そう言って笑いあう義弟二人。そして二人は、夕日の輝くほうに、ボク陽の町を歩いていくのだった。

 

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