三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
ラストに向けた伏線も張っていけたらいいな、と思っておりますよ。
それでは、どうぞお楽しみください。
袁紹軍は反孫堅連合への加入を利用して、西のチョウエンを討伐し、ついに華北を統一した。
その後の戦局は中原の曹操軍と、荊州の劉表軍による連合軍と南の孫堅軍との戦いに移行し、それ以外の戦いはひっそりと終息した。
だが、各勢力は戦いを捨てたわけではない。否、連合が解散した後に起こるであろう新たな戦いに向けて、爪をといでいたのだ。
そう、それは袁紹軍でも―――。
* * * * *
「それじゃよろしく頼む。関羽、張飛。チョウエン討伐戦が終わってから、それから日も経ってないが大丈夫か?」
俺が目前の関羽と張飛の二人にそう聞くと、二人とも会心の笑みを浮かべて言った。
「問題ありませぬ。袁紹様の、そして我らの理想のための戦いとなれば、力がいくらでもわいてきます」
「俺も大丈夫だZE。むしろ、まだ戦い足りないくらいだ。HAHAHA!」
……大丈夫みたいだな。うん、知ってた。
そう思っている俺の横で、郭嘉が咳払いして注意する。
「この作戦は、我が軍にとってもとても重要なものとなります。無事に作戦を遂行してくださるようお願いします」
「承知した」
「任せておいてくれYO! HAHAHA!」
「あ、あぁ……わかった」
そして二人は執務室を出て行った。それにしても張飛、その変にカタコトの入った話し方は生まれつきなのか?
さて……。
「この作戦、うまくいくと思うか?」
「二人の能力、そしてあちらの将の能力なら問題ないでしょう。それに、この作戦を遂行できなければ、逆に我が軍は詰んでしまいます。まぁ、大丈夫でしょう。朗報を待ちましょう」
「そうだな……少し胃が痛いが」
* * * * *
そして。
「牙門将軍・関羽だ。これよりそちらの指揮下に入る。よろしく頼む」
「張飛だ。よろしく頼むZE!」
東来港で、関羽と張飛は、その港に駐留している指揮官と対面していた。
「……」
「ん、どうしたのだ、張コウ殿?」
そこへ、張コウの横にいた武将が、口をはさんできた。
「張コウ様の副将、キョウトという者です。張コウ様はとても無口ゆえ、私が代弁させていただきます。よろしいでしょうか?」
「お、おう……」
度を越えた張コウの無口ぶりに困惑する張飛に苦笑を返すと、キョウトは口を開いた。
「ようこそ、東来港へ。この港と東部軍団を預かる、武衛校尉・張コウだ。天下に名高い関羽、張飛両将とともに戦えること、誇りに思っている、とのことです」
「そうか。こちらこそ、東部軍団の軍団長である張コウ殿と共に戦えて光栄だ。さて、状況はどうなっておられる?」
そこでまた、張コウは無言のままうなずく。
「……」
「……現在のところは拮抗状態にある。陶謙軍は、連合解散後の我が軍の侵攻を警戒しており、各城に十分な兵力を配備して、警戒も怠っていないようだ。関羽将軍が北平、ジョウ平から兵馬を連れてきてくれたが、それでも攻略は容易ではないだろう……とのことです」
そこで、関羽は顔をしかめた。
「なるほど、陶謙も馬鹿ではなかったか……。そうとなれば、目の前の北海を攻めるのも、そこから骨が折れるな。それだけ警戒してるのなら、攻めたら間違いなく、ほかの城からも援軍がやってくるだろう」
「まぁ、いくら援軍が来ても、俺たちなら負ける気はしないが、緒戦で激戦をやって大きな損害を受けたりしたら、その後が大変だからNA」
「そうだな。少なくとも、陶謙を油断させて、奴らの初動を遅らせることができればな……」
と、そこで張飛が我知らず名案を発した!
「いっそ、尻尾巻いて逃げるふりをするKA?」
『!!』
それを聞き、関羽も頭にひらめく者があった。
「いい手かもしれん。かつて袁紹様は、港を手薄にして曹操軍を誘引し、奴らを港から出さずに一気に撃滅した。それを応用すればあるいは……」
* * * * *
その2週間後。陶謙軍の本拠地、北海に偵察兵が駆け込んできた!
「と、陶謙様、報告いたします! 袁紹軍が、東来港とこの北海の中間地点に、陣を建設しました!」
「な、なんと!?」
陶謙は驚愕した。彼は戦いを好む群雄ではなかったが、だからといって無能というわけではない。彼はこの陣が、自軍に対する脅威となることを察したのだ。
だが、だからといってこの陣を攻めるわけにはいかない。今はまだ連合を組んでいるのだ。ここで攻めてしまえば、義に反したとして、各群雄からの信頼を失ってしまう。
彼は歯噛みすることしかできなかった。
* * * * *
さらにそれから数日後、連合が解散となった日。
「よし、いよいよ攻めるぞ! 皆の者、今までのうっ憤、ぞんぶんに晴らすがよい!」
陶謙の檄に、兵たちが意気あがり、ときの声を上げる。袁紹軍の陣を前に、指をくわえて見ていたのは、陶謙だけではなかったのだ。
「よし、出陣じゃ!」
北海の門を開け、陶謙と彼率いる軍勢が怒涛のように出陣する。
そして陶謙隊はその勢いのまま、袁紹軍の陣に向かって突撃する。陣を守っていた兵たちは、最初は弓矢で応戦していたが、やがてその勢いに恐れをなしたのか、慌てて逃げだしていった。
かくして陶謙軍は大した損害もなく、陣を奪取することができた。それがすべて、関羽たちの策とは知らずに。
そう、それは最初の布石。陣をあっけなく渡すことで、陶謙軍に「袁紹恐れるに足らず」という毒針を打ち込むための。
そして―――。
* * * * *
「どうだ、陶謙軍の様子は」
件の陣を見下ろす丘に陣を敷く関羽に、偵察兵が報告する。
「ははっ。陶謙軍の兵たちは、われらが陣に残しておいた酒を呑み、浮かれております。見張りの兵ですら、酒を飲み、ほろ酔いの様子」
それを聞き、関羽はうなずいた。
「目ざわりな陣を奪取、ましてや楽勝で奪い、さらにそこに酒があるとなればそうなるだろうな」
「……」
「そうですな。こう奴らにとって望ましい状況が続くと、例え自分が奴らの立場でもそうなる可能性が高いであろう……とのことです」
「うむ。張飛のほうはどうだ?」
関羽がそう聞くと、脇の偵察兵が一礼して答える。
「はっ。既に罠を敷設を終え、伏兵していると」
「よし、すべて順調だな。だが、順調だと油断していると、逆にこちらがしてやられるかもしれん。これからたたく陶謙軍の奴らのようにな。気を引き締めていくとしよう。全軍、出撃準備」
関羽は緩みそうになった表情を引き締めて、全軍にそう号令を発した。