三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第拾七話『東部戦線・その弐~北海攻略戦・後編』

 その夜、北海と東来港との中間地点にある仮設陣は静寂に包まれていた。

 

 袁紹軍が陶謙軍攻略のために築いたと思われるこの陣を奪い取った陶謙軍は、酒に酔い、深く眠りに落ちていたのである。兵士たちだけでなく、陶謙軍配下の武将たち、そして陶謙本人でさえも……。

 

 むろん、陶謙は戦いを嫌う穏健な群雄であったが、それでも無能というわけではなかった。袁紹軍の攻撃に備えて、各城の防備と警戒態勢を万全に整えていたことからも、それがわかる。

 だがそんな彼をしても、自軍の脅威である敵陣を、さしたる被害もなく奪い取ったという事実、そしてそのできすぎた戦勝に酔う将兵の雰囲気、この二つに溺れずにいることは至難だったのである。

 もし彼に、この戦勝を疑う気持ちがあれば、この後の結果は変わっていたであろう……。

 

* * * * *

 

 突然、陶謙軍が駐留していた仮設陣に、鬨の声と、ドラの音が響き渡った!

 

「な、何事だ!?」

 

 その音を聞き、慌てて飛び起きる陶謙。だが返事はない。彼の周囲の兵たちはすべて寝静まっていたのだ。

 どんどん大きくなっていく轟音。陶謙が天幕を出ると……。

 

 そこには、陣に押し寄せてくる袁紹軍の姿があった!!

 

「皆の者、起きよ! 袁紹軍の夜襲じゃ!!」

 

 陶謙が声を張り上げて号令も発するも、寝起きを襲われた陶謙軍将兵の動きはあまりにも鈍い。

 彼らが慌てつつも鈍重に戦いの準備を進めている間にも、袁紹軍は猛然と陣に向かって突進していく。

 

「袁紹軍武将、関羽! 一番乗りぞ!!」

 

 隊の先頭に立ち、突進していく馬上の関羽が、陣の柵を乗り越え、陣の中に乗り込む。その後に、彼率いる隊の兵たちが続く。

 

 関羽がその槍を一閃すると、たちまち数人の陶謙軍の兵士たちが血を噴き出して倒れる。

 その有様を見た周囲の兵たちは、たちまち恐れをなし、逃げていった。

 

 さらに、関羽の兵たちや、張コウ隊が乗り込んでくるにいたり、陶謙軍の士気は完全に崩れた。雑兵たちは武器を捨てて慌てて逃げだしていく。準備を整え、立ち向かう者たちもいたが、その数は少なく、彼らもあえなく、関羽や張コウ、彼らが率いる兵たちの武器の錆になっていく。

 

「おのれ、袁紹軍め……!」

 

 自らの失策を悟った陶謙も急いで馬にのり、北海へと駆けて行った。

 

* * * * *

 

 陶謙は決して愚かではない。そう、愚かではないのだ。彼は何か変事が起きた時にそれを他の城に知らせるよう、のろしの準備をしていたのだ。

 陶謙は北海へと退却する途中、部下に命じて、その狼煙をあげさせた。これによって、北海周辺で事が起こったことは、下ヒ、小沛、寿春の各城へと知れ渡った。

 

「陶謙様が袁紹軍に敗れ、北海に潰走していると!? それはいかん。ただちに、北海に援軍に向かわねば!」

 

 下ヒを守る重臣、陳登はただちに準備を整え、北海に出陣し。

 

「ものども急げ! 北海に駆け付け、陶謙様をお助けするのだ!!」

 

 小沛を守るゾウ覇は、自ら真っ先に馬に飛び乗り、城を飛び出していった。

 むろん、寿春からも援軍が進発していた。

 

 これらの軍勢が北海に駆け付ければ、戦況は一気に逆転したであろう。

 そのことは、袁紹軍も十分に理解していた。

 

 北海と小沛の中間地点にある街道。その両脇にある森に、張飛率いる隊と、袁紹の三男、袁尚率いる隊が伏せていた。

 

 息をひそめている張飛の目に、ゾウ覇軍の姿が小さく映り始める。

 

「野郎ども、まだ動くなよ。俺たちが暴れるのは、奴らが罠にかかってからDA。まだだ、まだ……!」

 

 ゾウ覇隊は、さらに街道を猛進していく。そしてゾウ覇がある地点に差し掛かった時!

 

 ガバァ!!

 

 彼は、乗馬もろとも、突然口を開けた穴に飲み込まれていった。張飛隊が掘っていた落とし穴に落ちたのだ。それからも、張飛隊の仕掛けた罠が次々に、ゾウ覇隊に襲い掛かり、かの隊は一気に混乱状態に陥った!

 

「よし、かかったぞ。皆の者、突撃DAAAA!!」

 

 張飛隊は、張飛を筆頭に、罠にかかり混乱しているゾウ覇隊に突撃していった!! 今頃は、下ヒから発した陳登隊も、罠に引っかかって足止めを食らっているころだ。

 

「弓兵、火矢で張飛殿の隊を援護せよ!」

 

 さらに、張飛隊が伏せていたのとは反対の森から、袁尚隊が姿を現し、火矢で張飛隊を援護し、ゾウ覇隊に被害を与える。

 

* * * * *

 

 一方、舞台は戻って北海近く。

 

 潰走している陶謙隊を、関羽隊と張コウ隊からなる袁紹軍が追撃する。

 

 三度目になるが、陶謙は無能ではないし、彼率いる軍は惰弱ではない。

 陶謙は、少数の親衛隊の兵を殿として残し、袁紹軍の足止めを図ってきた。

 

 残った彼らは、あえなく関羽や張コウ、袁紹軍の兵に切り捨てられたが、それでも彼らの進軍を少しでも遅らせる役には立った。その意味で、彼らの死は無駄ではなかったであろう。

 

 そして、関羽たちが進む先、北海の城の門に陶謙が飛び込むと、その門は彼の軍勢以外の者を阻もうとするかのように、ゆっくりと閉じていく。

 

「……」

「関羽殿、北海の門が閉じていく。どうやら、奴らは外に取り残された兵を見捨ててでも、我らの突入を防ごうとしているようだ、とのことです」

 

 張コウの言葉に、関羽もうなる。

 

「むぅ……いかん。陶謙軍の追撃と並行して城に突入し、一気に占拠するのがこの戦いの骨子。なんとしても、門が閉まる前に、内部に飛び込むのだ!!」

 

 さらに突撃の速度を上げる袁紹軍。しかし、やはり門が閉じるほうが早い!

 

 だが、今まさに閉じようという時、思わぬ僥倖が起こった!

 

 ある兵が、門を閉じようとしている兵を切り捨てたのだ!

 

「ぐはっ! な、なにを……」

「外にいるのは俺たちと同じ陶謙軍の兵なんだ! 殿の身のために、彼らを見殺しにするなど、俺には我慢できん!!」

 

 たちまち、城壁の内側で小さな反乱が起こる。そのせいで、門が閉じるのが少しばかり遅れる。

 その間隙をぬい、ついに関羽隊は城内に突入した!

 

 そして城内で再び戦いが起こる。反乱を起こした兵を殺そうとしていた兵たちも、あわてて関羽隊との戦いにうつる。だが、混乱の渦中にある彼らでは、屈強なる袁紹軍に立ち向かうことはできない。門の守備隊はたちまち壊滅した。

 袁紹軍はさらに、町の各所の制圧にかかる。

 

 そして、北海は陥落した。陶謙はからくも脱出し落ち延びていったが、城は袁紹軍の手に落ちたのだ。

 

 さらに関羽は次の手を打つ!

 

「よし、全隊、ただちに次の戦いの準備をせよ! 再編成と準備ができ次第、北海に迫りつつある敵軍を逆撃する!!」

 

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