三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

18 / 31
第拾八話『東部戦線・その参~東武追撃戦』

「部隊の様子はどうか?」

 

 自分の首を狙って迫りくる袁紹軍の兵を片端から切り捨てながら、ゾウ覇は自分の横で同じく戦い続ける副将に問うた。

 

「はっ。6割ほどが混乱から立ち直っている様子です」

 

 それを聞いたゾウ覇は、うなずくと獰猛な笑みを浮かべた。

 

「よし、それだけ立ち直っていれば十分だ。全軍、攻勢に移れ! 目の前の袁紹軍を蹴散らし、北海に突入するぞ!!」

 

 ゾウ覇隊の戦い方が防戦から攻勢に一転した。その様子は、ゾウ覇隊と戦っていた張飛の目にもはっきりとわかった。

 彼の副将・范彊が言う。

 

「張飛の大将、奴ら攻勢に移ったようだ! こちらに勝てるぐらいまで混乱から立ち直ってるようだぜ!」

「ちっ、奴らめ、なかなかやるじゃねぇKA! 野郎ども、ひるむな! 関羽の兄貴の準備ができるまでふんばりやがREEEE!!」

 

 引き続き、激闘を演じる張飛隊。しかし、さすが陶謙軍随一の猛将と言われるゾウ覇が率いるだけあり、ゾウ覇隊は精強かつ強大であり、張飛隊は、有利に戦いを進めていた戦況から一転、少しずつ、しかし確実に、壊滅に向かって進んでいた。

 

「張飛の兄貴、すまねぇ。俺の隊、張達隊、壊滅しちまった……! ぐふっ」

「おい、ち、張達!? ちきしょう、関羽の兄貴は何ぐすぐずしてるんだYO!」

 

 そう言いながらも、張飛はやってきた陶謙兵を切り捨てた。

 

 繰り広げられる激戦。その中、張飛隊は大きな被害を受け続け、数を減らしていく。袁尚隊の援護なく、さらに戦いが長引けば張飛隊は壊滅し、その勢いをかって突撃したゾウ覇隊によって、北海は奪い返されていたであろう。

 

 だが、天は張飛隊に味方した!

 

「大将、あれを見てくれ! 狼煙だぜ!!」

 

 范彊に言われて振り向くと確かに、北海から青い狼煙がたなびいていた。

 

「関羽の兄貴、やっと準備ができたか! よーし、野郎ども後退だ! 作戦通り、奴らを東武まで誘導するZO!!」

 

 そして張飛隊は後退を開始。時を同じくして、袁尚隊も後退を開始した。

 

* * * * *

 

「奴らめ、ついに我らの強さの前に逃げ出したか。よし、全軍突撃! 敵部隊を追撃しながら北海に突入する!!」

 

 後退する張飛隊。そしてそれを追撃するゾウ覇隊。そして、北海の近く、東武にて追いついたゾウ覇隊は、張飛隊を割り裂くように突破し、さらに北海に迫る。

 はたから見れば、ゾウ覇隊は、張飛の隊を突き破ったかのように見える。だがそれは、張飛隊がそう見えるように隊を動かしていたからであり、先ほどの退却も、ゾウ覇隊を誘導するためのものであった。いや、実のところ、半ば潰走しているようなものだったのだが。それはともあれ……。

 

 もし鳥の視点を得ることができれば、張飛隊がわざと左右に散開し、ゾウ覇隊に道を開けているように見えるだろう。そして道が開けた先に待っていたのは……。

 

 こちらに向かって駆けてくる袁紹軍・関羽隊の姿だった!

 

「張飛の奴、ギリギリだったみたいだな。東武までたどり着くのが予定より少し早まってしまっていたとは。だが、その分は俺たちが補えばいいこと。皆の者、陶謙軍が態勢を整える前に一撃を加えるのだ!」

 

 関羽の号令一下、彼率いる隊は、ゾウ覇隊に向かって猛突撃を開始した!!

 

「くそ、敵の突撃か! みな、迎撃態勢をとれ!!」

 

 突撃を受けたゾウ覇が兵士たちにそう号令を駆けるが、それを受けて兵たちが迎撃態勢をとるより、関羽隊が接敵するほうがわずかに早かった!!

 

 突破した勢いにのってそのまま北海に向かっていたところに、別の部隊による突撃を受けたのだ。いきなりの突撃によって動揺したゾウ覇隊の兵たちは、それから立ち直り、武器を構え直す前に関羽隊の攻撃を許してしまい、かなり不利な戦いを強いられていた。

 さらに、大きな損害を受け、兵力を3割に減らしながらも、張飛隊が後背から攻撃をしかけ、さらにほぼ無傷な袁尚隊も後方から弓矢で支援する。

 

「くそ、このままでは不利だ! 撤退、撤退だ! 撤退して、態勢を立て直す!!」

 

 さすがに、ゾウ覇もただの猛将ではなかった。攻め時、そして退き時というのをしっかりとわきまえていた。彼は、被害が致命傷となる前に撤退を決断し、自らが守る城に戻って立て直そうとしたのだ。

 

 だが、そうして彼が撤退することさえも、関羽たちの作戦には織り込み済みであったが。

 

* * * * *

 

 ゾウ覇隊のさらに後方。ロウ邪の地に、寿春から発した陶謙隊の姿があった。

 その陣頭に立つのは陶謙。彼は北海から落ち延びた後、この隊と合流し、その指揮を引き継いだのだ。

 

「見ておれよ、袁紹軍め。ゾウ覇隊と合流すれば、奴らを破り、北海を奪回することは不可能では……」

 

 その目に土煙をあげてこちらに接近してくる黒い影の群れがあった。陶謙は軍勢を停止させて様子を見る。

 果たして、影の群れはますます近づいてくる。それは、関羽隊に追い立てられているゾウ覇隊であった。

 

 関羽は、ゾウ覇隊が撤退するのをあえて見逃すと、少し距離が開いたところで、その後背から追撃を仕掛けた。北海からは持ち込んでいた投石器による、岩の援護射撃だ。

 これを受けたゾウ覇隊は動揺した。上からは岩が飛んできて、後ろからはかつては劉備軍で名をとどろかせた関羽率いる隊の攻撃。しかもそれを突然に受けたのだ。動揺するのは当然のことだった。

 うろたえながらも武器を構えた兵たちを、関羽が槍の一振りで真っ二つにすると、ゾウ覇隊の撤退は敗走へと変わった。雑兵たちは、関羽、そして彼の率いる兵たちの強さにおびえ、散り散りになって逃げだした。兵士たちも、一部の者は応戦したものの、残った者は、今彼らが来た道を逆に走っていく。

 そんな彼らの前に、陶謙隊が現れたのである。

 

 陶謙隊と関羽隊に挟まれたゾウ覇隊はたちまち混乱状態に陥った。戻ることはかなわず、進む先には友軍が居座っている。さらに迫ってくるのは絶対なる死。

 兵たちはある者は文字通り屍を踏み越えてでも逃げようとし、またある者は、立ちふさがる友軍の兵を喚きながら斬り捨てた。

 さらにそこに関羽軍が突撃する。混乱し、同士討ちまで起こしている陶謙軍に数の利はもはや存在しない。陶謙軍の兵や武将は、ある者は戦死し、また別の者は同士討ちの錆となって果てた。

 

 この戦いで、ゾウ覇、そして陶謙軍の大将である陶謙は、乱戦の中で果てた。作戦通りとはいえ、見事すぎる戦果であった。

 

「もう少し早く準備をすればよかったかもしれん。すまなかったな、張飛」

「いや、ちょっと関羽の兄貴を恨みはしたが、この勝ちを前にしたら、そんな気持ちは吹き飛んじまったZE」

 

 そう言って笑いあう関羽と張飛の義兄弟。だが、それはまだ早かったようだ。二人のもとに、張飛の副将、范彊がやってきて、こう告げたのだ。

 

「張飛の大将、ちと困ったことになった。袁尚様が、潰走する陶謙軍の残存部隊を追撃していったぜ」

「なんと!?」

「おいおい、マジかYO。敵の主力は倒したとはいえ、向こうにはまだ、万全な状態の下ヒの軍もいるはずなんだZE?」

 

 渋い顔をしあう二人。少しして関羽が顔を上げて言った。できれば関わりたくないが、友軍だし、何よりも袁紹の子息なのである。見過ごすわけにはいかなかった。

 

「仕方あるまい。部隊の再編制後、ただちに袁尚様の後を追おう」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。