三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
今回の話はずばり、袁紹さん、演説をする、の巻でございますw
そしてラストにはあの人が!?
……さて。
「三国志の世界に転生させられたことを認めざるを得なかった」と言ったが、それは撤回する。
いきなり、三国志の世界に転生したと聞いて、そうホイホイ信じられるものか。そんな非現実的な。
……いや、もし本当だったらとても嬉しいけどな。
「あー、田豊と言ったか?」
「はい、袁紹様」
うん、彼が田豊というのは確定っぽいな。そういえばこいつ、官渡では持久策を何度も提言したのを疎まれ、さらに政敵の讒言で牢屋に入れられて獄死するんだよな。ううう、俺はそんなことしないからな。
「今は本当に後漢……あー、漢の時代なのか?」
「はい、さようでございます。正確には、初平2年の1月でございます」
初平2年……ということは、西暦に直すと190年。反董卓連合が結成された年か。大変な時に飛ばされたものだ。転生させられたのが本当ならば、だが。
「そしてここは本当に南皮なのか?」
「はい。それ以外のどこに見えましょうか?」
これも間違いなし、か。残念なのか喜ぶべきことなのか判断に苦しむけどな。ちなみに南皮は、今の中国、河北省滄州市にある県だ。中国における県は、日本のそれとはかなり違っていて、三国志好きな俺(と作者)も、あまりよくわからず混乱している。詳しく知りたければ、Wikiを読んでくれ。
「袁紹様、誰に話しておられるのですか? そして、何をよくわからぬ単語を口にしているのですか?」
「……いや、なんでもない。気にしないでくれ。そしてこれが肝心なんだが……」
「はい」
俺は覚悟を決めて、最後の質問を口にした。
「これは本当に現実なのか? ここはドラマのセットで、実はドッキリでした、ということではないのか?」
「は? ドラマ? セット? 言っている意味がよくわかりませんが……。袁紹様、一体どうなされたのですか? 侍医に見てもらったほうがよろしいのでは」
「いや、大丈夫だ」
どうやら、ここは本当に三国時代、というか後漢末期、袁紹軍の本拠地、南皮で、俺はこともあろうに袁紹に転生してしまったらしい。
それにしても、なぜ袁紹に転生してしまったのか。せめて、劉備軍の将に転生させてくれたらよかったものを!
「袁紹様、何を悶えておるのですか? 苦しいなら、侍医をお呼びしますが……」
「いや、なんでもない……」
まぁ、しかたない。覚悟を決めよう。俺はここで袁紹となり、袁家の未来を変えるべく頑張る! そしてあわよくば劉備を助けて、彼の勢力の滅亡を防ぐことができたら御の字だ。できれば関羽の悲劇は阻止してやりたい。
一瞬、ここを脱走して劉備の元に駆け付けようかと思ったが、さすがに俺……というか袁紹を信じてついてきてくれている家臣や民を見捨てるのは、さすがに夢見が悪いし、良心がとがめる。
よし、覚悟は決まった。腹はくくった……多分。え、くくれないほど太ってるって? やかましいわ!
……さて。
「ありがとう。とりあえずだいたいのことはわかった。少し休んで考えをまとめたいので下がっていいぞ」
ところが田豊は首を左右に振った。まだ何かあるのか?
「残念ですがそういうわけにはいきません。この後、袁紹様にはやってもらいたいことがありますので」
「え? 政務は少し休憩をとってからでもいいだろ? 国会議員なんか、結構昼寝してるぜ?」
「コッカイギイン? それは何者でしょうか? いえ、政務ではなく、袁紹様には演説をしてもらわなければなりませんので」
演説? なんだそりゃ? 何か嫌な予感がするが。
「演説? 何の演説だ?」
「袁紹様、もうろくするにはまだはようございますぞ。反董卓連合結成にあたっての演説でございます」
なんですとーーーーーーーーー!?
* * * * *
そして俺は田豊に、宮殿の入り口まで連行……もとい連れてこられた。
入口まで出ると、宮殿の外には反董卓の諸侯のものらしい将兵がずらーっと並んでいる。なんとも壮観だ。
いやいや、そんな感慨を抱いてる場合ではない。俺は今から、こいつらに対して演説をしなけりゃならんのか……。
しかもその重要性は、会社の朝礼とは桁が違う。何しろ、俺の演説次第で、反董卓連合軍が董卓に勝てるかどうかが決まるのだ。そんな大切な演説を平気でできるとは、この時代の人たちはすごかったんだなぁ。俺なんて、演説なんて、会社勤め6年の中で、朝礼で一回やったっきりなんだぞ!
……ああ、やばい。頭が真っ白になって、それまで連行されている間に考えていた演説の原案が頭からすっ飛んでしまった。ああ、でも演説しなければ……でも原案がぁ……でも演説がぁ……でも緊張がぁ……。
ああ、視界が真っ白に……。
……
………
…………
田豊によればその後俺は、見事な演説を行って、場を盛り上げたらしい。どうやら頭が真っ白になり、テンパった状態で何かのたまっていたらしい。
田豊いわく『諸侯やその将兵の士気をおおいに盛り上げる、見事な演説でした』とのこと。
俺はテンパった状態で、どんなことを言っていたんだ……。
さっそく、書記の奴が筆記したものを見せてもらった。
……。
董卓に比べ、我が連合軍の力は、呂布や華雄といった猛将を持つ董卓に比べればまだ小さい。にもかかわらず、ここに諸侯は集まってくれた。なぜか!
それは、我々の戦争目的が正義だからだ!
董卓が、献帝陛下を擁して圧政を強いて数年! 我ら、いや民がどれだけ奴の暴虐に苦しめられてきたか!
我々の掲げる、献帝陛下や漢朝臣民を解放するための戦いを、天が見捨てるわけはない!
我々の崇敬するべき前皇帝、幼き小帝陛下は死んだ。なぜだ!?
その悲しみや怒りを、忘れてはならない!
それを……董卓に殺された小帝陛下、そして奴のクグツに成り下がってしまわれた献帝陛下はその姿をもって、我々に示してくれた!
我々は、この怒りを結集し、董卓軍に叩き付けて、初めて献帝陛下を奴の手から救いだし、真の勝利を得る事が出来る!
この勝利こそ、董卓の暴虐により財産や命、色々なものを奪われた者たちへの最大の慰めとなる!
立てよ、諸侯よ! 将兵よ!!
我ら、反董卓のために集い、立ち上がった反董卓連合軍の者こそ、漢朝を救う選ばれた者である事を忘れないで欲しいのだ! 選ばれた英雄たる我らこそ、献帝陛下を、漢を救い得るのである!!
漢朝万歳!!
……。
……『機〇戦士ガン〇ム』の、ギ〇ン・ザ〇の演説のパクりじゃねーか!!
* * * * *
そんな、聞いていて恥ずかしくて悶絶しそうな演説をぶった後だが、南皮は相変わらずで、俺は政務の日々を送っていた。
何しろ、董卓と戦うとはいっても、俺の南皮と董卓の最前衛・虎牢関の間には、曹操の許昌がある。かなりの距離があるし、曹操とも戦うわけにもいかない。できることといえば、何かあった時に曹操の奴を手助けしてやることと、董卓が倒れた後のことを見越して国と軍を強化することぐらいだ。
というわけで、俺は内政と軍備にせっせと励んでいる、というわけだ。あ、そうだ。
「田豊、誰かを、在野の士を探しに向かわせてくれないか」
「かしこまりました。確かに、人材は大切でありますからな」
そう言って、田豊はそばにいた文官……えーと、董昭と言ったっけか……に声をかけ、人材発掘へと走らせた。
それにしても、いざ政務を執ることになった時はどうしたものかと思ったが、袁紹としての俺の頭にあった政務の知識と、それと田豊たち有能な文官たちのおかげで、どうにかなっている。本当にありがたい。
だが、確かに田豊たち有能な文官がいるといっても、人材が多いに越したことはない。領土を広げたら、それだけ人手もいるしな。今のうちに多くの人材を発掘したいところだ。
それと、田豊やら顔良やら文醜やらといった、三国志の人物とこうして顔を合わせたり、会話をしたりできるというのは、三国志ファンの俺としてはとても嬉しいものだ。曹操や劉備といった堂々たる英雄たちとも、言葉を交わすことはできなかったが、顔を合わすことはできたしな。本当に夢みたいだ。
もっと他の武将たちとも交流をしてみたいな。諸葛亮に「だまらっしゃい」と言われたり、司馬慰の夫婦喧嘩(奥さんが史上初のハンストをしたというアレだ)を調停してあげたり、呂布に「魂ィィィィ!!」と言わせ……いや、それはいい。言わせる前に俺が真っ二つにされるのが目に見えてる。
まぁ、人材発掘してるのは、そういう願望のためというのもある。
と、俺がそんなことを想いながら政務に励んでいると……。
「袁紹様、董昭でございます。さっそく市中から、在野の士を見つけてまいりました」
「おお、さっそくか。で、どんな奴だ?」
しかし、そこで董昭が言ったのは、とんでもないことだった。
「はい。頴川というところで見つけた郭嘉と申す者でございます」
……。
……はい?
「あのー、董昭さん。モウイチドイッテクレマセンカ?」
「はい。郭嘉と申す者でございます」
……。
……はい?
「董昭さん、すいません。なんかいまいち信じられないのでもう一度お願いします」
「はい。郭嘉と申す者でございます」
……。
………。
なんですとーーーーーーーーー!?
いきなり郭嘉さんを一本釣りですと!?