三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第弐拾弐話『書き変わった歴史では、この戦いが官渡の戦いと呼ばれるんですか?(前編)』

 官渡港の南でぶつかりあった袁紹軍と、劉備率いる曹操軍。

 その戦いは、曹操軍騎馬隊による、袁紹軍左翼の万旋隊への突撃で幕を開けた。

 

 開幕いきなりの、しかも顔良に勝るとも劣らぬ突撃に、万旋隊はうろたえ、大きく乱れる。しかも、敵将・華雄は隊を四つの分隊に分け、それを順繰りに突撃させてきたのだ。いわゆる車掛かりの陣である。

 

「うろたえるな! 態勢を立て直しぇ!! 方形陣をとって、曹操軍を受け止め、押し返すんだじょ!」

 

 しかし、こちらも、顔良自らが見出し、鍛えた若き将・万旋。口調が変ではあるが、素早く態勢を立て直し、陣形を整え、華雄隊に相対する。

 

 かくして万旋は、華雄の車掛かりを相手に持ちこたえ、反撃の時を待ち続けた。

 華雄は引き続き、車掛かりの陣で万旋隊を削りにかかるが、万旋は陣を崩さず、持ちこたえ続けた。

 

 その彼に、一人の将軍が突撃してくる!

 

「俺は華雄隊・副将、郭シ! いざ勝負!」

「俺は万旋! 受けて立つじょ!!」

 

 かくして、万旋と郭シの一騎打ちが始まる。力任せの一撃を振るう郭シに対し、万旋はそれを捌きながら隙を狙う。

 だが、やはり万旋と郭シとでは経験が違う。力任せとはいっても、決して粗削りなものではなく、経験に裏打ちされた的確な攻撃を前に、万旋は早くも劣勢となっていた。

 

「どうしたどうした! 一隊の将というから挑んでみればこの程度とは! 全然食い足りないわ!!」

「なかなかの奴だじょ……。さすが歴戦の将は違う……。果たして勝てるのかじょ……?」

 

 弱気になり、闘志が崩れかける万旋。だが、その彼の脳裏に、師の言葉がよみがえる!

 

「自信を持て、万旋。俺は出来の悪い弟子に何週間も付き合うほど人が良い男ではない。お前に数週間どころか数カ月も訓練に付き合ってやってるのは、お前に見どころがある証拠だ」

 

 それは、万旋が将軍候補生だったころ、顔良との練習試合で何敗もしていた時に、師から言われた言葉だ。その言葉が、彼に再び闘志をよみがえらせる。

 

(そうだ! 俺は顔良様に見どころがあるといわれた男だじょ!)

 

 万旋は強く槍を握り直し、再び郭シと激しい打ち合いを演じる。だがその槍捌きは、今までより力と鋭さが増していた。

 そしてそんな中、好機が訪れた! 突然疾風が巻き起こり、砂を巻き上げたのだ。その砂が郭シの目に入り、彼は一瞬片目を閉じた。

 

(ここだじょ!!)

 

 万旋は力を振り絞って槍を振るって敵の槍を跳ね上げ、返す刀で槍を振り下ろし、郭シを一刀両断した!! 彼は断末魔を発することなく絶命し、馬から落馬したのである。

 

「袁紹軍・万旋、敵将・郭シを討ち取ったじょ!!」

 

* * * * *

 

「劉備様、郭シ殿が討ち取られました。それによって、袁紹軍の士気が上がり、華雄殿の隊と互角になっている模様です」

 

 本隊にて物見から報告を受けた劉備は、うなずくと少しの沈黙の末、口を開いた。

 

「さすがは袁紹軍。一筋縄ではいかぬか。よし、作戦を第二段階に進める。狼煙をあげよ」

「ははっ」

 

 かくして、本隊から狼煙が上がる。前線にてその狼煙を見た華雄は舌打ちを発した。

 

「なんだ、いいところだというのに。皆の者、かまうな。このまま袁紹軍を」

 

 蹴散らしてしまえ。

 しかし、彼はそれを最後まで言えなかった。彼の眼前に、槍の穂先が突き付けられたからだ。

 

「な、なにをする!?」

「あの狼煙が見えなかったのか?」

 

 槍を突き付けた兵士はその兜を脱いだ。その兵士は実は……。

 

「か、夏侯惇殿!?」

「私は曹操様より、貴様の隊の目付を命じられている。もしお前が劉備殿の指示に従わないというのなら、お前をこの槍の錆にして、指揮権を奪うのみ。よろしいか?」

 

 夏侯惇からそう言われては、華雄としてもその血の気を納めなくてはなるまい。彼は面白くなさそうな顔をしてどなった。

 

「ええい、わかった、わかったわ! 皆の者、後退だ!!」

 

 華雄の号令のもと、華雄隊は一斉に後退を開始した。それを好機と見たのは万旋だ。

 

「敵は後退したじょ! それ、奴らを追って追撃を仕掛けるんだじょ!」

 

 彼の指示の元、万旋隊は後退を開始した華雄隊に追撃を開始した。

 

* * * * *

 

 万旋が華雄隊に追撃を開始した、という報告は、前軍中央の隊を指揮する顔良のもとにも届いていた。

 

「むぅ……」

「どうしたのだ、顔良殿?」

 

 うなった顔良に、文醜が声をかける。

 

「どうにも引っかかるのだ。将の一人が討たれたので、動揺を抑え、態勢を立て直すため後退する。それはおかしいことではないのだが……」

 

 彼の言う通り、おかしいところのない敵の後退。だが顔良は何か言いようのない不自然さを感じていた。彼の脳みそに刻まれた戦いの経験が、彼に何かを訴えかけるのだ。

 

 その彼に、再び物見からの報告が届けられる。

 

「物見より報告です。曹操軍の左翼と右翼が前進を開始した、とのことです。後退を開始した敵隊を援護するためかと思われますが……」

「そうか、いかん!!」

 

 その報告を聞き、彼の中で不自然さの答えが見つかった。この後退が敵の罠だということに、思い至ったのだ。

 

「ただちに我らも前進するぞ、急げ!!」

 




次回、名前だけは出てきたあの勢力が、意外な形で話に関わってきますよ!
お楽しみに!
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