三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第弐拾陸話『虎の合流と、黒い沁』

 陳留を攻略してから数日後。陳留の執務室に、田豊が駆け込んできた。一体どうしたんだ?

 

「えええ、袁紹様、た、大変ですぞ!」

「どうした? 落ち着け田豊。お茶でも飲むか?」

 

 しかし、田豊の動揺を収まる気配を見せない。そして彼は、とんでもないことを言った!

 

「そ、それどころではありませぬ! この陳留に孫堅軍が迫っております!」

「な」

 

 なんですとーーーーーー!?

 

 これには俺もショックだ。何しろ孫堅軍は、破竹の勢いで華南(中国南部)を征服しているまさに日の出の勢いの勢力。しかも、孫堅自身の強さも、まさに破格なのだ。何しろ、史実で小覇王と呼ばれた孫策の父親なんだから、その実力は推して知るべし。

 うちにも、顔良や文醜、関羽に張飛、そして万旋といった頼りになる奴らがいるとはいえ、孫堅軍と戦うとなると分が悪すぎる。

 

 お、俺の進撃もここまでか、と慌てていると……。

 

「袁紹様、孫堅軍はこの陳留の手前で動きを止めました。今のところ、攻撃を仕掛けてくる様子はありません」

 

 守備兵がそう報告してきた。攻撃を仕掛けてくる様子はない……? 一体どういうことだ? とりあえず一安心ではあるが……。

 そう思っていると、今度は文官がやってきた。

 

「え、袁紹様! 孫堅が、袁紹様との会見を希望しております!」

「な」

 

 なんですとーーーーーー!?

 

* * * * *

 

 そして今、俺の目の前に、孫堅とその息子、孫策が立っているわけですが。いやはや、すごい気迫というか圧というか。もう、こちらが圧倒されそうです助けてください。

 

 そんな中、孫堅はとんでもないことを言ってきた!

 

「この孫堅、袁紹様に降伏いたします。領土もすべて袁紹様に献上いたしますので、我らをどうぞ袁紹様の剣として存分にお使いください」

「な」

 

 なんですとーーーーーーー!?

 俺は心の中で、今日三回目となる「なんですと」を叫んでいた。

 

「え、えーと、孫堅様……」

「孫堅で結構でございます、袁紹様」

「そ、それでは孫堅さん。今の言葉、もう一度言っていただいてよろしいでしょうか?」

「はい。この孫堅、袁紹様に降伏いたします」

「えーと、理由を聞いてもいいかな……あいや、よろしいですか?」

 

 俺がそう聞くと、孫堅は真顔のまま話し出した。何か向こうのほうが主君みたいな気がするのは気のせいだろうか。

 

「俺は、袁紹様の中に、この大陸を平和に導く光のようなものを見出しました。そして陳留の戦いを見て、それが間違いではないと確信いたしました」

「……」

「ならば、袁紹様に合力し、あなたの元で中国統一するのは、天の意思ではないかと考えた次第です」

 

 びびりながら孫堅の目を見る。その瞳には真実の光を宿し、もう片方の瞳のない目には信念を秘めた光が見えた……気がした。

 うん、それなら彼を迎え入れるのがきっと正解なんだろうな。根拠はないが、なんかそんな気がした。傍らの郭嘉に目を向けると、彼もうなずいてくれた。

 

「わかった。まだまだ未熟な君主である俺だが、あんたに認められてとても嬉しく思う。あんたの民や兵たちにも慕われるように頑張るのでよろしく頼むよ」

「ははっ」

 

 そして、玉座の間は歓声に包まれた。

 

* * * * *

 

 そして、孫堅との面会が終わったあと、めでたい席の後ではあるが、今度は気が重いことをしなければならない。

 洛陽攻略を行って失敗した、袁煕とその部下たちの処分を決めなければならないのだ。

 

 俺の前にやってきた袁煕に、俺は少し悲しい表情を向けながら口を開いた。

 

「さて、袁煕。ここに呼び出されたわけはわかっているな?」

「はい」

「お前の軍の兵力は洛陽及びその周辺の戦力とほぼ同等。そのような中で攻略戦を仕掛けるのは無謀だとわかっていたはず。なのに強行して軍に大きな損害を与えた」

「……」

「それだけではない。下手したら、それによって圧力の弱まった洛陽から援軍が進発し、俺の本隊が挟撃され、下手したら俺が倒れ、俺の勢力は壊滅。俺の兵や民たちに大きな苦難がかかっていたかもしれん。違うか?」

「その通りです……。父上、このたびのことは、私の勇み足と無能が招いたこと。すべての責任は私にあります。責任は私が負いますので、なにとぞ部下たちには寛大なご処置を……」

 

 袁煕は深く反省しているようだ。すべての責任を自分で背負い込むとは、本当に立派な息子だ。彼に免じて、袁煕にもその部下たちにもあまり重い処分は課さないようにしよう。そう考えが固まりかけたころだった。

 

 袁煕の副官である高幹が許せないことを言ったのだ。

 

「わ、私はお止めしたのです! それをこの男はそれを無視して……!」

 

 それを聞いて、俺の中の何かがぷちっと切れた。

 

「黙れ、この野郎!!」

「!?」

 

 一喝した後、俺は大きく息を継いで続けた。

 

「お前のことを、俺が何も知らないと思っていたのか。今回の洛陽戦、お前が渋る袁煕を無理やり説得して進めさせた、と郭嘉の放った密偵からの報告が入っているんだ!」

「……!」

「失敗をしたことは大きな罪ではない。取り返せばいいんだからな。だが、自らの過ちを認めず、それを他人に押し付けるなど、お前は最低だ。少なくとも、俺が許せる奴ではない」

「……」

 

 高幹はひざまづき、沈黙した。その瞳は怒りと憎しみを宿しながら俺をにらみつけているが気にしない。

 

「処分を言い渡す。袁煕は、一時軍権を取り上げる。そして本土の内政を行う、袁尚の補佐をするように。その努力次第によっては、また軍を任せるかもしれん」

「はっ、寛大なご処置、ありがとうございます」

「袁煕配下の将兵は、それぞれ一時的に、顔良と関羽に預けることにする。袁煕が復権した暁には、再び彼の元に配備することになるだろう。その時に備えて、力を磨いておくように」

「ははっ」

「高幹、お前からは永遠に軍権を取り上げる。お前のような奴に軍を預けていては、ろくなことにならんのが今回のことではっきりしたからな。ケイに向かい、そこでの内政を行え。いいか、そこで民たちを苦しめることがあれば、軍権だけでなく命を失うことになるぞ」

「……はっ」

 

* * * * *

 

「おのれ、おのれ袁紹め!!」

 

 自室に戻るなり、高幹は荒れ狂い、部屋の中のものを破壊し始めた。彼の絶望と怒りはそれほどのものだったのだ。

 軍権を取り上げられる。それは、軍の比重が重い袁紹軍において、彼が上り詰める可能性が断たれたということだ。文官でも功績をあげれば、上り詰める目もあるかもしれないが、ケイという僻地ではそれも難しい。

 

 実質、彼が袁紹軍の実権を握る道はおろか、立身出世さえも奪われたも同然であった。

 

「見ていろ、袁紹……。必ず貴様を倒してくれる。ただ倒すだけではない。栄光の絶頂に立ったとき、貴様をその栄光から叩き落してやるわ。くくくく……」

 

 その数日後、高幹はケイにわたった。だが彼は、内政の大半を部下の文官たちに任せ、自分は裏でいろいろな工作を始めていた。その工作は実に巧妙で、ケイの文官たちはおろか、中央の文官武官たち、果ては袁紹自らにも露見することはなかった。ただ一人、郭嘉を除いては。

 

 ケイに放っていた密偵から、高幹の怪しい動きについての報告を受けた郭嘉は、病床の中で腕を組み、何かを考えていた。

 

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