三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
曹操軍を、虎牢関の西に封じ込め、孫堅軍を味方につけた俺たち袁紹軍は、いよいよ曹操軍を倒し、天下を統一するために動き出した。
その出陣の前日。
「本当に大丈夫か?」
出陣の準備をする郭嘉に、そう心配そうに問いかける俺こと袁紹に、郭嘉は微笑んでうなずいた。
「はい、具合もだいぶよくなりました。それにいよいよ最後の仕上げ、私が出ないわけにはいかないでしょう」
「そうだな。でも、虎牢関は堅牢な要衝だからなぁ、突破するのも苦労しそうだな」
「心配はいりません。虎牢関の兵たちは、喜んで袁紹様を迎え入れることでしょう」
「?? よくわからんが……まぁいいや。それより、ここに俺と袁譚、袁煕を呼んだのは、何か理由があるのか?」
そう、この郭嘉の宿舎には俺だけでなく、俺の子である袁譚、袁煕も来ているのだ。
「はい。この戦いの後の策について……」
「この戦いの」
「後?」
郭嘉の言葉に、俺と袁譚がそう聞き返す。
「はい。天下を統一した後、中国を永遠に平和にするための策です」
そして郭嘉は、ある策を俺たちに話してくれた……。
* * * * *
そして出陣した俺たち。だがいきなり拍子抜けした。
虎牢関の兵たちはいともあっさり、俺たちを受け入れてくれたのだ。戦う以前の問題で決着がついてしまった。な、なにを言ってるのか自分でも(ry
「なぁ、これどうなってるんだ? お前、何かしたのか?」
そう聞くと、郭嘉はしたり顔で返してくれた。
「大したことはしてありませんよ。ただ、虎牢関や洛陽に、『曹操が劉備殿を捨て駒にしたこと』、『袁紹様が劉備様を助け、解放したこと』の二つのうわさを流しただけです」
それを聞いて、俺は納得した。彼らしい穏やかな策だが。(てっきり、虎牢関の兵士たちを洗脳したのかと思った)
そのような噂を流して、兵士たちをこちらに寝返らせたというわけか。
兵士たちがそれを知れば、『自分たちも捨て駒にされるかもしれない』と疑念を抱き、『その捨て駒にされた哀れな者を助けた袁紹』に寝返るだろう、という寸法。しかも本当のことだから、こちらの胸は痛まない。
本当に見事な策だ。
「さぁ、後は洛陽です。そこを攻略すれば曹操は死に体も同然です」
「そうだな」
「それゆえに曹操も必死に抵抗するでしょう。気を抜かずにいきましょう。もし気を抜いたら洗脳しますよ」
「わかってるよ」
そして俺たちは、虎牢関で軍を再編し、いよいよ洛陽に向けて軍を発した。
* * * * *
そして、袁紹軍による洛陽攻略が始まった。
曹操軍は、洛陽の防壁のおかげもあり、袁紹軍相手に良く持ちこたえているが、不利な状況になっていることは否めなかった。
郭嘉の流した噂がここの守りにも影響を与えているのだ。悪い影響を。
「夏侯惇よ、呂布の動きはどうか、まだ援軍を出す様子はないか?」
「はい。今だに動きはありません。この戦いの趨勢を見ているものかと」
「そうか。呂布め」
そういうものの、曹操は表情を崩さない。その様子は、彼に一切の感情がないかのようであった。
「兵たちの戦意を下げさせるな。なんとしても、袁紹軍の兵糧が切れるまで、敵の攻撃を食い止めるのだ」
「了解しました」
そう言って立ち去る夏侯惇。その後ろ姿を見て、曹操はつぶやいた。変わらぬ表情のまま。
「とはいえ、陥落を免れることはできまいな……。潮時を考えねばなるまい」
* * * * *
一方、洛陽の遥か西。呂布軍の天水。そこでは。
「呂布様あああ!! 先ほど曹操の使いがああああ!! 帰っていきましたああああ!!」
「そうかッ! それでよしッ! 来たる袁紹との決戦までッ! 我らの力を温存しておくのだッ!!」
呂布の言葉に、側近の徐栄も同意する。
「その通りでございまするるるるる!! 奴らが来た時には目にもの見せてやりましょうぞぞぞぞ!!」
「うむ、その通りだッ! 袁紹軍ッ! 我らの最後の相手にふさわしい相手だッ! 我らの命をもってッ! 奴らに我が呂布軍の輝きをッ! 見せつけてやろうぞッ!!」
カオスな雰囲気ではあるが、呂布軍はおそらく自分たちの最後の戦いになるであろうその戦い……袁紹軍との決戦に向けて、力をたくわえていたのであった。
* * * * *
そして話はまた俺たち……洛陽攻略中の袁紹軍へと戻ってくる。
俺たちはいまだ、頑強な曹操軍の守りに手を焼いていた。
「奴ら、かなり粘るな……。もうこちらの兵糧も心配になってきたぞ」
「そうですな……心配はありませぬ……ごふ」
そう言ってせき込む郭嘉の手から血がのぞく。
「って、お前のほうが心配じゃねぇか!?」
「大丈夫です。このぐらいで病に負けていては、軍師は務まりませんから。実はすでに策を施してあります。明日になれば策の効果が目に見えるようになるでしょう」
「お、おう」
そして翌日。
洛陽の守りが一気に弱くなった気がした。それどころか、城の内部でいさかいが起こっているように見える。
「な、なにをやったんだお前?」
「大したことはしておりませぬ。『曹操は、将兵を最後の一人まで捨て駒にして、洛陽を守り通すつもりだ』と噂をばらまいただけです。それで、捨て駒にされてはかなわないと、守備兵たちはあの通り」
「なるほどな。劉備さえ捨て駒にした実績のあるだけに、効果はてきめん。兵の士気はがた堕ちし、一部では投降しようとする兵と、戦い続けている兵の間で内紛が起こっている有様だ、と」
さらに、本陣に来ていた顔良がうなって曰く。
「本当に見事な策だな。改めて、お前が敵でなくてよかったと思うよ。勝てるわけがない」
「ありがとうございます。さぁ、袁紹様、いよいよ攻め時ですぞ」
「そうだな。少し休んでいてくれ。ここからは俺の仕事だ。さぁ、総攻撃をかけるぞ! 顔良、指揮のほうは任せる」
「かしこまりました! 郭嘉に良い目をさせているわけにはいきませんからな!」
そして俺たちは総攻撃をかけた。兵たちがはしごを駆け上り、門をたたき壊そうと破城槌を叩きつける。
もちろん、曹操軍も負けてはいない。熱湯を落としたり、矢を浴びせかけたりと抵抗してくる。でもその抵抗は、昨日までよりはるかに弱かった。
そしてついに、洛陽の門は開いた!
* * * * *
袁紹軍が、門から洛陽になだれ込んでいくのを、曹操は宮殿の屋上から眺めていた。
袁紹軍は略奪に走ったりせず、まっすぐに宮殿に進撃していく。それだけが不幸中の幸いだろうか。
「我の鋼の意思が負けるとはな。我が鋼の意思に足をすくわれるとは、意外な結末であった」
そして、懐から短剣を取り出し……。
門が破られたことを報告しに宮殿にやってきた夏侯惇が見たものは、短剣を持ち、首から血を流して死んでいる曹操の姿だった。
「曹操様……!」
急いで曹操の元に駆け寄るも、彼はすでに冥府の門をくぐった後だった。
夏侯惇は悟った。
曹操は、自分の命より曹操軍のことを優先し、無駄な損害を出さないよう自ら命を絶ったのだと。
どこまでも冷徹な主君であった。
* * * * *
そして洛陽は、俺たちの手に入った。その俺たちに、夏侯惇とやらが投降し、曹操の首を持ってきたのだが。
「曹操の忠義篤い家臣であるお前が持ってきたんだ。首実検するまでもなく本物に決まっているだろう。俺の敵だったとはいえ、立派な群雄であり、偉大な主君をこれ以上人目にさらすのは忍びない。このままお前に返すから手厚く葬ってやってくれ」
本当は、人の生首を見るのが苦手だから、というのもいくぶんかあるのだが。でも俺がそう言うと、夏侯惇は涙を流して感動し、「なんと情け深いお方だ」とまで言ってくれた。なんか過大評価のような気がしないでもないが。
そんな俺に、郭嘉がこう言った。
「さぁ、孫堅殿の劉淵討伐も最終段階に入りつつあるそうですし、こちらも呂布討伐に向かうとしましょう」
「そうだな。みんな、最後の戦いだ!」
『おおおおおお!!』
そして洛陽で再び軍の再編成を行った俺たち袁紹軍は、再び西に向けて出発した。
洛陽から西の曹操軍の各城は、曹操が亡くなったと知るや、次々と投降。さしたる戦いのないまま俺たちの軍門に下って行った。
そして、呂布軍の領内に入ったところで。
「呂布ッ! ここにありッ!! ここが我が華やかなる散り場所ぞッ!!」
呂布軍がいきなり攻撃をかけてきた。郭嘉曰く。曹操を倒した時点で戦力差は明らか。戦略的な勝利が望めないとわかり、せめて最後にひと花咲かせようと城を出て攻めてきたのだろう、とのことだ。
呂布軍は確かに強かったが、ただの脳筋だからなのか、作戦など立てるだけ無駄と考えたからなのか、作戦などなく、ただ突撃しただけだった。
「慌てるな! 関羽隊と張コウ隊が左右から攻め立てるまで持ちこたえれば勝てる! 万旋! 文醜! 袁紹様を守りまいらせろ!!」
「お任せくださいだじょ!」
「応!!」
顔良隊と万旋隊が呂布軍の突撃を持ちこたえている間に。
「よし行くぞ、張飛!」
「おうYO!!」
「……」
「はっ。全隊、突撃! 横腹に突撃し、敵を突き崩す!!」
関羽隊と張コウ隊が左右から突撃して、呂布軍は崩れた。
それでも、呂布軍は頑強なる抵抗を続けたが、最後は呂布が俺の本隊まで迫ったところでついに力尽き、呂布軍はついに敗北した。
呂布は戦死し、残った将兵はこれで戦いは忘れたいというので解放してやった。
それと同時期に孫堅の劉淵討伐も終わりを迎え……。
ついに、197年。中国は俺、袁紹によって統一された!!
ここでお知らせです。
本作品は、後2話か3話ほどで終わりを迎えます!
いよいよラストスパート、この先どんな展開が待ち受けているのか、どうぞお楽しみに……していただけると幸いです(平伏