三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
完結まであともう少し! どうぞ楽しんでいただけると……幸いです。
197年。俺たち袁紹軍が呂布軍を倒し、袁紹軍に降伏した孫堅軍が劉焉軍を倒したことで、ついに中国は俺の手で統一された!!
さっそく俺は新王朝の国号を『章』に定め、王朝の人事に乗り出した。
それと同時に、『章』の統治体制というか、政治体制というか、そういうのも固めていかないとな。
本当に考えることは多そうだ。
……ん? 待てよ。そういえばそういうのが得意そうな御仁が一人いたではないか。そいつに教えを講うとしよう。
かくして。
「ああ、違いますよ、袁紹様。そこはこうしたほうがよいのです」
「ふむふむ、それじゃここがこうか?」
「いえ、そうではありません。こうなのです。やはり、袁紹様には一度侍医に見てもらう必要が……」
「いや、それはいいから。というか、どうしてなんでも医者と結びつけるんだ」
と、こんな風に俺は、田豊から統治体制構築についてのレクチャーを受けていた。
厳しくもわかりやすく、的確な講座で、構築や勉強がはかどるはかどる。
「それにしても袁紹様、どうして私めに? こういうことなら、郭嘉のほうがもっと詳しいのでは」
「いや、あいつは体調が心配だからな。それに、戦いが終わったので、なるべく休ませてやりたいんだ」
「なるほど。さすがは袁紹様。素晴らしい人徳でございます。この田豊、感服いたしました」
「いや、人徳というほどのものか……?」
人間として当然のことというか、当たり前の配慮というか、そういうものだと思うんだが。
やはり、現代の人と、三国時代の人とでは、価値観とかが違うのかもしれない。
転生してから7年経つが、今になってそういうのがわかってきた気がする。
……もっとも、俺が郭嘉に相談しないのは、別の理由がある。ここでそれを言うべきではないので、とりあえず黙っているが。
そうこうしているうちに、新体制の構築は完了した。
* * * * *
一方、そのころ、新体制発表式のために洛陽にやってきた高幹は焦っていた。
もくろんでいる計画のため、各所に使いを飛ばしているのだが、同志の集まりが少ない。
だがそれは当然だろう。袁紹による新態勢構築ができつつある今、彼の計画にのろうとする者が少ないのは当然だ。それに加えて、高幹自身、知名度も人望も、権力も少ない。人を集めるための力が圧倒的に弱いのだ。
これでは成功するか以前に、立ち上げられるかどうかも怪しい。
だが、高幹は焦りながらも、計画をあきらめるわけにはいかなかった。
自分の黒い欲望……袁紹への復讐を果たし、自分が頂点にのぼり、章王朝をわが物にするためには、退くわけにはいかないのだ。
* * * * *
その数日後、ついに新体制の人事発表式が行われた。
田豊の口から、高官に任命された人達の名が読み上げられる。
皇帝:袁紹
宰相:田豊
副宰相:袁譚
財務担当大臣:田豊(兼務)
内務担当大臣:審配
司法担当大臣:孫権
民部担当大臣:陳登
学芸担当大臣:袁術
軍務担当大臣:袁尚
軍総大将:顔良
軍副総大将:関羽
総参謀:孫策
第一軍大将:顔良(兼務)
第二軍大将:関羽(兼務)
第三軍大将:孫堅
第四軍大将:張コウ
これが読み上げられた時、会場からどよめきがあがった。高官の名に、俺の片腕であり、章王朝樹立の功臣である郭嘉の名前がなかったからだ。
だが、どよめきはすぐにおさまる。臣下たちは理解したのだ。
『狡兎死して走狗烹らる』――全土を統一し、用済みになった郭嘉は、その才能を俺……袁紹に危険視され、要職から外されたのだ、と。
群臣たちの中にあり、同僚たちから哀れみに満ちた視線を受けている郭嘉は、ただ無表情のまま俺を見つめていた。
* * * * *
とはいえ、それから数カ月は何事もなく過ぎていった。
あちこちの城も街も農村も、穏やかに時を刻んでいるようだ。俺の領内で使われていた農業技術も、今では中国全土に広まり、人々を助けている。
人々は口々に新時代が始まった、平和が訪れたと喜びあっている。
だが、俺はまだこれで終わりだと思っていない。まだ一波乱あると考え、覚悟していた。いや、それを待っていた。
そしてついにその時はやってきた!
西暦198年の秋、田豊がその知らせをもってやってきた!
「皇帝陛下! 一大事ですぞ! 高幹めが、ギョウにて挙兵いたしました!!」
「……」
来るべき時が来た……!
* * * * *
ギョウの城。袁煕軍に制圧されたこの城にて、高幹が声を張り上げ、集結した兵に対して、演説を行っている。
「皆の者! 袁紹は皇帝の器にあらず! 我らが盟主、袁煕様こそ、真の皇帝にふさわしい! 袁紹を倒し、章の国を袁煕様の手に取り戻すのだ!!」
「応ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そして高幹は後ろに立つ人物に振り向き、口を開いた。
「お前のせいで助かった。お前の名声のおかげで、これだけの不満分子が集まったのだ。礼を言うぞ……郭嘉」
言葉をかけられた男……郭嘉は、その能面のような表情を変えずに言った。
「いえ、私も袁紹に、要職から遠ざけられ、彼に恨みを持つ身ですから……。高幹殿、もしこの挙兵がうまくいった暁には……」
「わかっている。その時にはお前に、章の国の宰相職はお前にくれてやろう。それだけの働きを見せてもらうぞ」
「は……」
やはり、郭嘉の表情は冷たいままだった。
さぁ、いよいよ最終章突入です! この後は、火曜日(10/12)に29話、そして、木曜日(10/14)に最終話を掲載していきます。一気にラストスパートです!
どうぞお楽しみに……していただけると幸い。