三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第弐拾九話『石なき道こそ石に気をつけろ、そんなことわざ……ありませんか、そうですか』

「まさか、高幹が叛旗を翻すとはな……。奴の影響力では、独立するだけの勢力は築けないと思っていたのだが」

 

 洛陽の会議室にて、顔良がそう腕を組んでうなる。

 彼がうなるのも当然だ。顔良が言う通り、高幹は俺……袁紹の甥ではあるが、ただの一武将であり、名はほとんど知られていない。そんな彼が声をあげても、誰もはせ参じようとしない……はずだった。

 

 だが。

 

「おそらくは、袁煕様と郭嘉殿のおかげでしょう。袁煕様を旗頭に据え、郭嘉殿が陣容に加わったことで、多数の将兵が集結したものと思われます」

 

 と田豊。彼の推察はほとんど的を得ていた。

 

 確かに、高幹だけでは独立できるだけの勢力を築くのは不可能だ。

 だが、俺の子である袁煕、そして袁紹軍随一の知将、郭嘉。この二人の名声と能力の評価、これが加わることで、高幹の名声は補強され、元袁紹軍内の不満分子、俺に滅ぼされた各勢力の残存勢力が、彼の元に結集し、一つの独立勢力を形成するまでに至ったのである。

 

 そこで俺は口を開いた。心の痛みやためらいを振り切って。

 

「いまさら、それを論じても仕方ない。高幹、袁煕、郭嘉の三人が独立し、反乱を起こした。これは厳然たる事実だ。俺たちは『章』の国とその人民たちを守るため、すぐにこれに対処しなければならない」

「はっ、その通りです」

「応」

 

 俺の言葉に、顔良と関羽がうなずく。

 

「関羽、張コウ、孫堅。お前たちは、南と西、東に展開して、袁煕軍を抑え込んでくれ。作戦などはお前たちに任せる。だが、連携などを乱して、奴らに付け込まれることのないようにしてくれよ」

「かしこまりました」

「……」

「任せていただこう」

「顔良の第一軍は決戦戦力として、ここ洛陽で待機していてくれ。袁煕軍が決戦に出てきた時、俺の近衛軍とお前の第一軍の出番となる。頼りにしているぞ」

「任せてくだされ。我が『章』の栄光に泥を塗ろうとする者には、それ相応の報いをくれてやりましょう!」

 

 それで会議は終わり、諸将たちは会議室を出て行った。その中、俺は一人、その会議室に座り込んでいた……。

 

* * * * *

 

 一方のギョウの城の宮殿。

 

「見事だな、瞬く間に周囲の諸城を陥落させ、しかもそれらの城の連絡や補給の体制を整えるとは」

「いえ、褒められることはしておりませぬ」

 

 高幹に賞賛された郭嘉はそう謙遜したが、実際、彼の手腕は賞賛に値するものだった。

 

 彼は蜂起すると、たちまち旧チョウエン領の各城、さらに北部のケイ、南皮をたちまち攻略していき、さらに見事な連携や補給の体制を構築していったのだ。さすが袁紹軍にこの人あり、と言われただけのことである。

 

「まだまだこれは序の口、本番はこれからですぞ」

「あぁ。足元固めは終わった。これからすぐに、南と東、西に進出し、にっくき袁紹の領土を食い荒らしてやるとしよう」

 

 その言葉に郭嘉は微笑むが、その目が笑っておらず、逆に冷たい光をたたえていたことに気づく者はだれもいなかった。

 

* * * * *

 

 安定の東にある河東港。今ここには、孫堅自慢の水軍が待機している。

 その中でもひときわ大きな船、孫堅の旗艦の上で、孫堅が部下たちに檄を発していた。

 

「いいか皆の者! 我が見出した光、この中国を平和で照らす光、その光が闇に包まれるか否かは、ここでの我らの戦いにかかっている! 『章』の国に仇なす不届き者に、我が水軍の力を見せつけてやろうぞ!!」

「オオオオォォォォォ!!」

 

 孫堅の檄に、部下たちが叫びで応える。それだけで勝つ根拠は十分であった。

 見張りが孫堅に伝える。

 

「孫堅様! 袁煕軍の艦隊が港を出ました! こちらに向かってきます!」

「よし、応戦用意!!」

 

* * * * *

 

 袁煕軍は初手でいきなりつまづいた。

 

 さすがは、これまでの戦いで力を磨いてきた強者たちである。袁煕軍に立ちはだかるように、その進路の先に布陣し、袁煕軍の進撃を阻んでいるのだ。個人の力量も、指揮能力も、戦術も袁煕軍の諸将の上を行く『章』の将たちの前に、袁煕軍は少なくない被害を受け、進撃を止める羽目になっていた。

 

 そして、それだけではなかった。

 

「進め、進め! 袁紹様に叛旗を翻した忘恩の徒から、奴らの圧政に苦しむ諸城を解放するのだ!!」

 

 高幹が『章』に攻め込むための態勢を整えるために、攻め取った諸城の領内に圧政を敷いた(それに対し、不思議と袁煕もそして郭嘉も諫めはしなかった)のが逆効果となった。上党から、反袁煕軍を掲げる反乱軍が生まれた。その首領はかつて、袁紹と戦い、そして助けられた劉備である。

 劉備率いる反乱軍は上党を解放すると、その勢いで晋陽に進撃してこれも解放し、さらにケイにまで迫っていたのである。

 

 この状況に、高幹は危機感を感じ、そして焦った。

 

「どうするのだ、郭嘉? このままでは戦う前に我らはついえてしまうぞ!」

「ふむ……なら、一発逆転の手を放つしかありませんな」

 

 高幹に問われた郭嘉は、能面の顔のままで答えた。

 

「総力を結集し、袁紹軍に決戦を挑みましょう。その戦いで袁紹を破ることができれば、『章』は再び散り散りになります。そうなれば、散り散りになった『章』の残骸など、我らの敵ではありますまい」

「おぉ、なるほど! さすがは郭嘉だ! よし、各戦線で戦っている軍を撤収させよ! それと同時に、残った南皮から、ありったけの物資をこのギョウに集結させるのだ!!」

 

 そう部下に指示を出す高幹を、郭嘉は相変わらず冷たい瞳で見つめ続けるのだった……。

 

* * * * *

 

 袁煕軍が撤退していく。その様子は、北平の西に展開していた第四軍を率いる、張コウの目にも見えていた。

 

「……」

「はっ。確かに奴ら、引き揚げていきますな。どうやら、兵力分散の愚を悟り、軍を集結させ、決戦に備えるつもりのようでございます」

「……」

「かしこまりました。我らも引き上げるぞ! 監視のため、最低限の兵を残し、急ぎ洛陽に引き返す!!」

 

 張コウの副将、キョウトが上官の意を受け、撤退の準備を迅速に行っていく。

 撤退し、洛陽に集結する、その動きは、他の戦線の孫堅、関羽たちの軍でも見られていた。

 

 この戦乱に関わっている全ての者は肌で感じていた。

 

 まもなく、最後の戦いが始まると……。

 

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