三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

30 / 31
最終話『さらば袁紹! 新たなる旅立ち?』

 洛陽にある虎牢関。洛陽を守るこの要害の東にて、俺たち章軍と、高幹率いる袁煕軍は対峙した。

 戦力は章軍が、俺の近衛体、顔良の第一軍、関羽の第二軍、張コウの第四軍の合計55000人。袁煕軍が、高幹率いる本軍30000と、旧各勢力の残党その他30000の合計60000。向こうがやや有利だ。本当によくそれだけの兵力を糾合できたものだ。やはり郭嘉の奴の名声のたまものか。

 

 高幹は確かに名声も人望もないが、軍事的才能はそれなりのものを持っている。それは目の前の布陣の重厚さからわかる。

 

「さすが高幹だな。かなり重厚な布陣だ。だが、主力を前方に集めているのが付け入る隙になるかもしれん」

 

 本陣に作戦会議のために来ている顔良がそう感想を述べる。

 だが、俺は、それとは別に、その布陣に違和感を感じていた。それは、高幹の布陣が、前方にのみに注力し、横からの攻撃に無関心のような感じがしたのだ。

 横……虎牢関からの別動隊の襲来は、陳留攻略戦で俺が懸念していたことだ。高幹はともかく、郭嘉が気づかないはずはないのだが……。

 

 そこで俺はあることを思い出した。それは郭嘉が授けてくれたあの策、そしてある約束。

 

 あぁ、そうか……郭嘉は……。

 

「顔良、ちょっと話がある」

「はっ、陛下。何か?」

 

 そこで俺は顔良に、ある事実とある作戦を伝えた。

 

「なるほど。郭嘉でしたら、それはありそうですな。わかりました。そういたします。では!」

 

 そう言って、顔良は前線へ戻っていった。俺は続いて、伝令を呼び出す。

 

「はっ、何か?」

「いまだこちらに合流を急いでいる途中の孫堅の第3軍に伝えてほしいことがあるのだ。それは……」

 

 そして俺はあることを伝令に伝えた。孫堅だったら伝えなくても気づいてくれるかもしれんが、念のためだ。

 

「はっ、かしこまりました」

 

 そして伝令が去っていったところで、俺は台に立ち、将兵たちに声を張り上げて檄を飛ばした!

 

「我が『章』の将兵たちよ! これは愛すべき大陸を守るための戦いであり、この乱世最後の戦いだ! ここで我らが負ければ、中国大陸は再び混迷の闇に覆われることになるだろう! 皆の者! 『章』を守るために力を貸してくれ! 愚かな反逆者たちに目にもの見せてやろうじゃないか!」

『おおおおおおおお!!』

「よし、攻撃開始!!」

 

 そしてついに戦いは始まった!!

 

* * * * *

 

 戦いは終始互角に進んでいた。ある時は退き、ある時は進み、まさに一進一退。

 だがある時、事態は動いた。

 

 『章』軍の本陣から銅鑼がなると、『章』軍が少しずつ後退を始めたのだ。

 

 それを見た高幹はにやりと笑った。

 

「『章』軍の奴らめ、我らの力に耐え切れなくなって、後退を始めたか。それ今だ! そのまま前進し、皇帝袁紹の首をあげるのだ! 首をとった者には、ほうびは思いのままぞ!!」

 

 そういう高幹を、郭嘉は冷たい目で見つめていた。彼は、銅鑼の意味も、『章』軍後退の意味もわかっていたが、それをあえて高幹には伝えなかったし、彼の前進命令を諫めることもしなかった。

 

 『勝利』が目の前にちらついてきた高幹は、その『勝利』の二字に目がくらんで見えなかったのだ。もし彼が冷静であったら、このことに気がついたであろう。

 

 『章』軍の前軍部隊が、少しも崩れず、袁煕軍の突破を許すことなく、整然と後退し続けている、ということを……。

 

* * * * *

 

「陛下、袁煕軍が所定の地点まで前進した模様です!」

「よし今だ。孫堅の第三軍に合図を出せ!」

 

 俺の指示の元、兵の一人が銅鑼を鳴らす。それと同時に、虎牢関の洛陽側で待機していた孫堅の第三軍が関を出て、袁煕軍に横から突撃した!

 

 突撃した先は、袁煕軍の本隊、高幹の指揮する隊である。袁煕軍は『章』軍前軍の後退につられ、ちょうど高幹の本隊が虎牢関の真ん前にくる位置に前進してしまっていたのである。

 袁煕軍はこともあろうに急所を、しかも第三軍に横腹を見せる形でさらしてしまったのである。

 

 しかも、第三軍の指揮は、あの猛将であり名将の孫堅である。その猛攻の前に、本隊はたちまち崩れた。

 これに袁煕軍の前軍も動揺した。それを見逃す『章』軍ではない。この機を逃すような将を、俺は第一軍、第二軍、第四軍の頭に据えた覚えはないのだ。

 

「よし、陛下の策はなったぞ! 全軍突撃!! 一気に奴らを突き崩せ!!」

「うまくいったな。行くぞ張飛! 我らの最後の戦い、鮮やかな勝利で飾るぞ!!」

「おうYO!!」

「……」

「はっ。全軍突撃! 一気に攻勢に転じる!!」

 

 『章』軍の前軍も崩れかけた袁煕軍に一気に突撃をかける。それで一気に袁煕軍は総崩れとなった。

 

* * * * *

 

「か、郭嘉! て、撤退、撤退するぞ、急げ!!」

 

 崩れた本陣内にて、高幹はそういうと馬に飛び乗り、まさに脱兎のごとくギョウに向けて逃げ出した。それを追うように、彼の幕僚や本陣の兵たちもギョウに向けて落ちていく。

 

 それを冷ややかな目で見送った郭嘉は、表情を緩めて前方……『章』軍のほうを見つめた。彼が支え、そして導いた主の軍のほうを。

 

(私の意図を……私があえて放っておいた隙を活かしてくれましたか。さすが袁紹様です。もはや、私めがあなたに教えることはありませんな……)

 

 そう言って、彼も馬に乗りギョウに駆けていった。

 

* * * * *

 

 ギョウに撤退していく袁煕軍。そこまでたどりつければ、まだ再起の機会はある。

 

 だがそれは、最悪の形で裏切られた。

 

 ギョウの城に、かつての劉備軍の旗がはためいていたからだ。既にギョウは、劉備率いる反乱軍の手に落ちていたのだった。

 

 立ちすくむ袁煕軍。そこに追撃してきた『章』軍が追い付いてきて、袁煕軍は進退窮まった。

 ある者は武器を捨てて逃走。またある者は『章』軍に降伏し、袁煕軍は壊滅したのである。

 

 袁煕軍首脳の袁煕、高幹、そして郭嘉も『章』軍に捕らえられたのだった。

 

* * * * *

 

 かくして勝利を収めた俺の前に、まずは袁煕が引きたてられた。

 

「袁煕よ。何か申し開きすることはあるか?」

「……いえ、ございませぬ。ただ一つあるとすれば、私では父上の足元にも及ばなかったことだけが残念でございます」

「そうか……せめてもの情けだ。この俺自ら首を切ってやろう」

「はっ……ありがとうございます」

 

 そして俺は涙を呑み、自ら刀で息子・袁煕の首をはねた。この光景、この感触だけは一生忘れることはできないだろう。

 

 続いて、高幹が引き立てられてきた。彼はやはり見苦しく言い訳と命乞いをしてきた。

 

「わ、私はあくまで袁煕様にのせられたのです。ど、どうかお情けを……」

「先の降格のことに引き続いて言い訳か。見苦しいぞ。お前の主は潔く首を斬られた。お前も主を見習え」

「い、いやです。し、死にたくない。ど、どうか……うぎゃっ!!」

 

 こうして高幹は、その醜い一生を終えた。

 

 そして最後に引き立てられてきたのは……郭嘉。

 

「……」

「……」

 

 俺と彼の間に、重い沈黙が続いた。

 

* * * * *

 

 曹操との決戦前、郭嘉の宿舎でのこと。

 

「はい。この戦いの後の策について……」

 

 郭嘉の言葉に、俺と袁譚が、オウム返しに聞き返す。

 

「この戦いの」

「後?」

 

 郭嘉はうなずいた。

 

「はい。天下を統一した後、中国を永遠に平和にするための策です」

 

「ちょっと待て。天下を統一したら、もう平和になるのに、なんで策を弄する必要があるんだ? 策マニアかお前は?」

「まにあとは何かわかりませんが……それはともかく、天下を統一したら、それで平和になるというのは誤りです。まだ我が軍内には、袁紹様に不満を持つ不満分子がいます。特に高幹殿は、殿に激しい憎しみと、天下を狙う野心を持っている様子。彼らは今は大人しくしていますが、袁紹様が亡くなれば、彼らはあなたの血族の誰かをかついで、反乱を起こすことでしょう。そうなれば、平和など一日でたちまち崩れ落ちてしまいます」

「……なら、どうしろと……」

 

 郭嘉は少しの沈黙の後、口を開いた。

 

「私が高幹殿の元に走り、ともに叛旗を翻します。袁紹様はどうぞ我らを討伐してください」

「!!」

 

 忠臣である自分を討てという言葉に、俺も袁譚も袁煕も衝撃を受けた。でも郭嘉は続ける。

 

「高幹殿だけでは叛乱を起こすことはできないでしょう。ですが、袁煕様が高幹殿に担がれ、それに私が加われば、必ずや軍内の不満分子は彼の元へ集まり、蜂起いたしましょう。後は、これを討ち、不満分子を一網打尽にすれば、この大陸の平和は完璧なものとなるはずです」

「しかし、だからといって、お前や袁煕を逆賊にするのは……」

 

 しかしそこで。

 

「いえ、父上。私も父上の子です。父上の愛したこの国を、いえこの大陸を愛しています。その平和のためなら、この身を犠牲にすることも、汚名をかぶる覚悟もできています」

「袁煕……」

「それに私自身、試してみたい気もするのです。この私の力量で、父上に勝つことができるかどうか。その機会が与えられると思えば、どうということはありませぬ」

「……」

 

 いまだ迷っている俺。その俺に、郭嘉が声をかける。

 

「私は言ったはずです。どのような手を使っても、私の全てを使っても、あなたを覇者にしてみせると。これが私の最後のご奉公。どうか、我が策をお聞き入れください」

「……お前は……それでいいのか……?」

 

 俺の問いに、郭嘉はゆっくりと、そしてしっかりとうなずいた。

 その郭嘉のうなずきに、彼の覚悟と想いを感じ取った俺はうなずいた。

 

「わかった……」

 

 その俺の目から、涙が一筋流れ落ちた……。

 

* * * * *

 

「郭嘉……」

「陛下……遠慮することはありませぬ。私はただの逆賊でございます。どうぞ我が首を討ち、この下らぬ、しかし逃れぬことのできぬ戦いの幕としてくだされ」

「わかった……顔良、やってくれ」

「は……では……」

 

 顔良が刀を振るう。郭嘉の首は、血をまき散らしながら宙を舞い、とんだ。

 首を斬られる直前、その顔は役目を終えたかのようにやすらいでいた……。

 

(ありがとうな……郭嘉……あばよ……)

 

* * * * *

 

 戦いが終わった後、中国大陸に再び平和が訪れた。

 人々は笑顔を浮かべ、農業や商売に励み、明るさが少しずつ、この国に戻りつつある。

 

 そんな中……。

 

「父上、本当に行かれるのですか?」

 

 洛陽の門の前で、旅人の姿をした俺に、袁譚が言う。

 

「あぁ。俺の役目は、袁家を生き残らせ、戦乱を終わらせたことで終わった。この後、中国を栄えさせ、平和にし続けるのは、若い世代、お前たちの役目だ」

「父上……」

 

 そう。俺は、あの戦いの終結して一年後、袁譚に皇帝の位を譲り、こうして旅に出ることにしたのだ。俺のことは、戦いの中での無理がたたって、病死したということにしてもらおうと思ってる。

 

「楽しいこともあったけどさ。もうあんなつらいことや哀しいことはたくさんだ。これからはのんびりと穏やかに生きるとするよ。若晴もいるしな」

 

 そう。俺の傍らには、同じく旅人の姿をした若晴もいる。彼女も大奥を辞し、俺と旅路を共にすることにしたのだ。

 

「そうですか……」

「これからの中国がどうなるかはお前たち次第だぜ。どうかこのまま平和で幸せな中国を、俺たちに見せ続けてくれ。途中でまた戦乱の炎に包んだら、承知しないぜ?」

「……はい、肝に銘じておきます。父上、どうぞお気をつけて」

 

 そして俺と若晴は、袁譚に背を向けて、洛陽を後にした。気の向くまま風の吹くままの気楽な旅路。

 

 苦難に満ちた一つの旅は終わり、新たな旅が始まる。

 その旅の一歩を踏み出した俺たち夫婦の前には、どこまでも青い空が続いていた―――。

 

 

 

三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件・完

 




てんえん、これで完結となります!
ここまで読んでくれて、ありがとうございます!

ブラ公に引き続き、今回もUAや感想をくれて、とてもうれしいです!

次回作も、ぜひよろしくお願いします!

……ということで、次回作の予告編を。

* * * * *

一年戦争から7年後、宇宙世紀0087。
新たなる戦争の気配が迫る地球圏に、一つのイレギュラーが現れる。

「はぁ……なんでこんなことに……」

現れたことに戸惑うイレギュラーの少女。

「でも、俺なんだよなぁ……」

少女は、宇宙世紀にささやかなさざ波を立てていく……。

「わかったら、ほら彼に謝る。悪いことをしたときは素直に謝るのが、ナイスな男ってもんだよ」

果たして少女が進む先には、何が待つのか……?

『ティターンズのモブテストパイロットにTS転生したので、刻の涙を減らすべく頑張ってみます~機動戦士Zガンダムより』
第1話『赤いモビルスーツ』

2021/10/16 17:30
連載開始予定……

刻の涙は、止められるか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。