三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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さぁ、いよいよ出陣ですぞ!

あと今回は、郭嘉さんの黒い部分がじわじわとw

そちらにも注目?

なお、公孫サン関係の人間関係についてミスがあったので、第3話を修正させていただきました。ご了承ください。


第四話『やっぱりアウトレンジっていいよね』

 公孫サンの重臣であり、また彼の同族である公孫越の謀反と独立。

 この事件は、公孫サンの勢力、そして何より公孫サンに大きな衝撃をもたらした。

 

 この時、彼がもらした

 

 『我一生只ベイ妻子(わしは一生、妻しか信じない)』

 

 という言葉は、彼の心情を強く物語るものとして有名である。

 

~令和〇年・高校世界史教科書『赤ちゃんでもわかる世界史』古代中国の章より抜粋

 

『……』

 

 軍議の席は沈黙に包まれていた。そして、その場にいる俺……袁紹……と、武官筆頭の顔良、猛将の文醜、そして次席軍師の田豊の四人が、一人の男……我が軍の首席軍師の郭嘉に半目で視線を送っている、というのがこの場の状況だ。

 

 我が軍の拠点、南皮の東にある公孫サンの勢力。公孫サンは先ほど、拠点である北平のさらに東にあるジョウ平を攻略して勢力を広げた。彼としては順調な一歩を踏み出せたといえるだろう。

 

 だがその彼をあまりにもタイミングが良すぎる凶報が襲う。

 

 ジョウ平を攻略し終えたその時、公孫サンの留守の北平を任せていた重臣の公孫越が、突然独立を宣言したのだ。公孫サンは新しい拠点を手に入れたと同時に、それまでの拠点を失ったのである。

 

 こうしてみると、こんな時代にはよくある謀反劇のようだが、はっきり言って怪しすぎる。

 何しろ、公孫越は、公孫サンの弟なのだ。しかも重臣だし、噂では公孫サンは公孫越をかなり深く信頼していたという。ジョウ平攻略に出陣するさいにも、公孫越に北平のすべてを預け、後顧の憂いなくして出陣していったそうだ。

 そんな彼が、こんなにあっさりと謀反を起こして独立したりするだろうか。これは絶対に何かある。そして、数日前に彼が言った「私に妙案が浮かびました。近いうちに、袁紹様は城を一つ手に入れることができましょう。早速そのための仕込みをしてまいりますので、これにて」という言葉。

 

 ……もう、こいつ……郭嘉が、公孫越に何かしたとしか思えない。

 

「……何か?」

「まさかお前、公孫越って奴に何か……」

「何をおっしゃいます。私は何もしておりませんよ。ほんのちょっと公孫越をせんnおっとなんでもありませんとも」

『………』

 

 この時、俺、顔良、文醜、田豊は考えが一致していたに違いない。

 

 ……こいつを敵に回したくはないな。勝てるわけがない(色々な意味で)。

 

「それはともあれ、公孫越とか言うものが公孫サンに叛旗を翻し独立して、我が連合に加盟していない勢力が誕生したのは事実。これはまさに我が軍が勢力を広げる好機でしょう」

「まぁ、それはそうだが……」

「それに、公孫越は、主君たる公孫サンの信頼を裏切り、刃を向け、独立した非道なる者。かの者を討つのに何のためらいがありましょうか。むしろ、民は非道なる裏切者を討った我らを賞賛することでしょう」

「……」

 

 彼を非道な者にしたのはお前だろ……という言葉(ツッコミ)は飲み込んでおく。

 

「確かにそうだが……一つだけ聞かせてくれ」

「なんです?」

「俺のためを思ってしたことだよな?」

「もちろんでございますとも。言ったではありませぬか。どのような手を使っても、あなたを中原の覇者にして見せる、と。そのためなら、どんな汚い手も使いますし、そのために地獄に落とされてもかまわぬ覚悟でございます」

 

 うん、その言葉に嘘はなさそうだ。表情からも目からも嘘の一分子も感じられなかった。

 まぁ……。

 

「……わかった。その忠誠の先が、俺ではなく勢力そのものにならないことを祈るよ」

「は?」

「いやなんでもない……」

 

 そこで俺は咳払いを一つ。

 

「それでは、我が軍はこの郭嘉の仕掛け……もとい、この天が与えた好機をものにすべく、郭嘉に洗脳……もとい、魔がさして血迷い、公孫サンに叛旗を翻した公孫越を討つべく、北平に出陣しようと思う。顔良も文醜も異論はないな?」

「ないわけではありませんが……異論はありませぬ」

 

 うん、顔良、わかるよその気持ち。俺もそうだもん。

 

「まぁ、俺は戦えれば文句はないですぞ。わっはっはっ!」

 

 文醜さん、あんた戦えれば、その過程はどうでもいいの?

 

「それではさっそく軍の準備を……の前に、一つ注文したいことがあるんだが」

「なんです?」

 

 そう聞いてきた顔良に、俺はダメ元で聞いてみた。

 

「北の劉虞、西の韓フクの動向も気になるんだ。できれば、我が軍の被害をなるべく少なくして勝ちたいんだが、いい手はあるだろうか?」

 

 そう聞くと、田豊が呆れた目をしてきた。だから、俺も虫がいいことを言ってる自覚はあるんだ。だから、そんな養豚場の豚を見るような目で見ないでくれ……。

 

「袁紹様、被害を少なくして勝ちたいなどと、そんな戦を知らぬ甘いことを……。大丈夫ですか? なんなら」

「いや、病とかそういうのじゃないから、医者を呼ぶ必要はないぞ」

 

 と、そこに。

 

「できますぞ」

「できるのっ!?」

 

 郭嘉がそんなことを言い出した。

 

「別に袁紹様がそんなことを言い出すと思って、というわけではないですが、城攻めが楽になるようにと、ひそかに秘密兵器を開発しておりました。どうぞこちらに」

 

* * * * *

 

 中庭にあったのは、超大型のよくわからない機械。巨大なアームの先にはヒモと籠が結わいつけてあって、その籠の中に大きな岩が入っている。

 郭嘉が、その機械のそばにいる、審配という男に命じて、機械を操作させると、機械はアームを振り下ろして、岩を遠く離れたところに飛ばした。すげぇ!!

 

「これが私と審配が開発していた『投石器』です。これがあれば、弓矢などの射程外から城を攻撃するのもたやすいでしょう」

「あぁ、本当にすごいぞ! よくやったな。郭嘉、それにしんぱ……い?」

「ハイ、アリガトウゴザイマス、エンショウサマ」

 

 その時、俺は気づいた。その審配の様子がめっちゃ変だということに。

 

「……」

「ドウカナサイマシタカ、エンショウサマ?」

「いや……大丈夫ですか、審配さん?」

「ハイ、モンダイアリマセン。一カ月前カラ今日マデ、食事モ睡眠モトラズに開発にイソシンデイタダケデス」

「……」

 

 俺は半目で、郭嘉に振り返った。

 

「どうかなさいましたか、袁紹様?」

「お前、審配に何かしなかったか? なんかこいつ、人間がしてはいけないような目と表情をしているんだが」

「悪いことはしておりませんとも。ただ、食事と睡眠が不要になるようにやばい薬を……いえ、なんでもありません」

「……味方に非道なことをするのはなるべく控えてくれよ」

 

 俺がそう釘を刺すと、郭嘉は深々と一礼した。なんかこいつ、目を離してると色々やばいことをやってそうなのは気のせいか?

 

 と、そこで顔良が渋い顔をして言った。

 

「確かに射程外から攻撃できるのは素晴らしいが、敵もそれを許すほど甘くはあるまい。もし城を出て攻めてきたらどうする? これを後退させるだけでも大変だと思うが」

 

 確かにそうだよな。俺も聞いて、確かにそうだと思った。しかし郭嘉にとって、それは想定内であるらしい。

 

「心配ありませぬ。密偵によれば、北平に詰めている公孫越軍は一万ほど。それぐらいであれば、おそらく城を出て攻めてくる必要はありますまい」

『本当に?』

 

 おっと、俺と顔良の声が重なってしまった。

 

「心配性ですな。もし心配なら、顔良殿も、1万ほど騎兵隊を率いてともに出撃すればよいでしょう。おそらく必要はないと思いますが」

 

 首をかしげながら、俺と顔良は軍の準備を始めた。

 

* * * * *

 

 そして北平の近く。俺は丘の上で、投石器の攻撃でボロボロになっていく北平の城を、郭嘉とみていた。北平の城の被害は甚大で、陥落もまもなくだろう、というのは俺でもわかるほどだ。

 

 しかし謎なのは、攻撃を開始してから今まで、公孫越軍は一度も出撃してこなかったことだ。ただ投石器から放たれた岩に、城壁を崩され、櫓を壊されるのを指をくわえて見ているだけだ。

 

「なぁ、郭嘉」

「なんです?」

「なんで奴らは城を出て、投石器を破壊しに来ないんだ? こんなやばい代物があるんだぞ? まさかお前……」

 

 公孫越だけではなく、城の中の兵士たちにもやばいことしたんじゃないのか?

 その俺の疑問に気づいたのか、郭嘉は不敵な笑みを浮かべると、横を首に降った。

 

「本当に何もしておりませんよ。さすがにそれには時間がたり……いえなんでも」

「……」

 

 時間があったらする、と?

 

「それはともかく、彼らにはうかつに城を出るわけにはいかない事情があるのです」

「それは?」

「はい。それではまず、この地図をごらんください」

 

 そういうと、郭嘉は、近くの切り株に地図を広げた。この中国大陸北部の地図だ。そこに、城の位置などが書き込まれている。

 

「ここが我らの南皮、そしてその東に今攻撃している北平。さらにその北に……」

「えーと、カラ……カラ……すまん。俺にはこの字が読めないんだ」

「……現実逃避しないでください。烏丸の拠点があります。烏丸の意図はわかりませんが、今の状況は、いわばこの烏丸が公孫越軍をけん制している形になっているのです」

「なるほど! うかつに出撃すれば北から烏丸がやってくるかもしれないから、うかつに出撃できない、ということか!」

 

 俺が感心したかのようにそう言うと、郭嘉はにっこりと、できのいい生徒を見ている先生のような笑みを浮かべた。

 

「そのとおりです。もし2万以上の兵があれば、1万ほどを向かわせることもできたでしょうが、奴らの兵は1万ほど。それでは迎撃しようにもできない、というもの。有効な対策を取ろうにも取れず、イチかバチか出ようという時にはごらんのありさま、というわけです」

「なるほどなー」

 

 なんというかすごいな。そういうことまで考えていたのか。色々と黒い部分はあるが、やはり郭嘉はたいした軍師だと思い知らされた気分だ。

 

 そしてしばらくして、公孫越軍から降伏の使者がやってきて、北平は陥落した。

 ……降伏する兵の中に混じっていた、人間がしてはいけない目をした公孫越は見ないことにしておく。

 

 うん、やっぱり郭嘉、あんたは黒いよ。

 

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