三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
今回、ちょっとイヤンな部分が入っております。
申し訳ございません(土下座
さぁ、気を取り直して、いよいよ曹操との戦いの始まりですぞ!
曹操軍が、袁紹軍攻撃のために動く―――。
その報は、俺たち袁紹軍に激しい衝撃をもたらした。
もちろん、俺、袁紹も例外ではない。
何しろ曹操は、数か月前にあった董卓との決戦・虎牢関の戦いで、董卓を討ちとり、さらにその勢いをかっての進撃で、董卓からその勢力を奪い取った呂布を追って洛陽を奪取した、まさに日の出の勢いの勢力なのだ。そんな勢力に目をつけられたと聞いて、衝撃を受けない者がいるだろうか、いやいません。
……いや、いたな、一人だけ。
俺は、少しばかりすがるような気持ちを込めた視線を、その人物に送った。
「ふむ、これはちと困りましたな」
あの郭嘉が困っている!? 表情はちっとも困っているように見えないのだが。
「まさか、曹操殿が我らに対して進撃してくるとは。何しろ、曹操殿は今や許昌や洛陽を始め、ボク陽や汝南も治める太守。曹操殿も、将来後顧の憂いになるであろう我らを早いうちに排除しようと考えるほどの戦略の名手、そんな勢力に攻められるとは、いやはや……」
なんか、困っているというより、曹操のことをほめちぎってるように聞こえるのは気のせいだろうか?
「あのー、郭嘉さん? なんか曹操のことをほめているようにしか聞こえないんですが。まさか、ここにきて、曹操に寝返るなんて言い出しませんよね?」
そんなことをされたら、もう俺たちは終わりなのだが。いや、田豊のことを信頼してないわけではないんだけどな。
だが、郭嘉は首を横に振ってくれた。
「ご安心ください。完璧な曹操殿に仕えても仕えがいがないというもの。未だ発展途上の未熟な主君を盛り立ててこそ、仕えがいがある、というものです」
「それって、つまり、俺がまだ未熟だってことすか?」
「えー、さて、ご安心くだされ。ちゃんと曹操軍に対する策は考えてあります」
話題をそらした!?
と、そこで武官筆頭の顔良が、横から口をはさんできた。
「郭嘉。ことは一刻を争うのだ。茶番はいいから、その策とやらを教えてくれ」
「あぁ、これは失礼しました」
と、そこで郭嘉はとんでもないことを言い出した。
「白馬港を捨てましょう」
なんですと!?
「港を捨てるだと? 奴らが狙っている港を捨てることが、なぜ策になるのだ?」
顔良がそう首をかしげた。確かに顔良の言う通りだ。港を捨てるだなんて、ただの拠点放棄にしか見えない。顔良もそう考える、俺もそう考える。
だけど、郭嘉の策にはまだ先があった。彼は手にしていたうちわを口元に寄せて話をつづけた。
「奴らが城に攻めてくるのを待って籠城戦に持ち込む、という手もありますが、それでは相手が主導権を握ることになります。それはあまりよろしくありません。それよりは、守るに不利な港をあえてくれてやり、奴らが入ったと同時に、すぐさま出陣し、逆にこちらが攻略戦を仕掛けるのです。そうすればどうなるか、顔良殿ならおわかりになるかと」
郭嘉がそういうと、顔良は得心したようにうなずいた。
「なるほどな。港は狭く、自由に兵法を振るう余裕はない。しかも、港の守りは柵だけとあまりにもろい。そこを攻めれば、こちらは有利に、しかも被害少なく戦うことができ、相手はただやられるだけ、というわけか」
「なるほど! つまり、電子レンジにいれられたダイナマイトにするってわけだな!」
「は?」
その場にいる全員が、俺に冷たい目を向ける。つい思っていたことを口走ってしまっただけなんだ。お願いだから、みんなでそんな目をしないでくれ……。
「よ、よし、その手でいくとしよう! それではみんな、戦いに向けて準備をしてくれ」
『御意!』
かくして軍議は終わった。
こうして作戦は決まったものの、先に解決すべきことがあったことに、俺はこの時気づいていなかった……。
* * * * *
そしてその時は来た!
「袁紹様、物見より報告です! 白馬港が曹操軍によって陥落したと!」
その報告を聞いて、俺は思わず立ち上がる。郭嘉の策に引っかかったとわかったからだ。
「よし、全軍に出陣命令を出せ! 奴らが港から出陣する前に叩くぞ!」
「ははっ!」
そして我が袁紹軍は出陣した。迅速、そして隠密に。幸いながらに、奴らは勝利に酔って気づかないのか、それとも顔良の指揮する隠密行軍が巧みなのか、白馬を奪った曹操軍は迎撃に出てくることはなかった。
そして、所定の位置についたところで、隣の郭嘉が俺に言う。
「それでは袁紹様、皆に号令をお願いします」
「うむ。それでは皆の者……かかれーっ!!」
俺の号令一下、我が軍随一の猛将・文醜率いる隊を先頭に、顔良の隊が白馬港に向けて突進していく。俺の隊は、その後方から投石器で援護。我が袁紹軍の定番の布陣である。
その戦いの開始を告げるのは、やはり先陣の文醜だった。彼の隊が騎馬から火矢の一斉射撃を放ち、物資を焼き、兵士を倒していく。
だが、先手を許したとはいえ、さすが曹操軍。かなりの名将が指揮しているのか、奇襲を受けながらも、すぐに迎撃態勢を取り、迎撃を開始してきた。柵の向こう側から矢が飛んできて、こちらの兵を打ち倒していく。
騎馬から降りた兵たちが必死に門を破壊しようと武器を振るい、その頭上から矢が襲い掛かる。
とはいえ、やはり港に籠っての防衛戦は不利なのか、戦いはやがてこちらの有利に傾いていく。そしてついに、俺の隊の投石器の岩が門を破壊し、顔良たちが港の中に突入していく。それで戦いは決まった。
俺たち袁紹軍は、郭嘉の策により、曹操軍との緒戦を快勝で飾ることができたのだった。
* * * * *
そして、その時はきた!(その2)
ギョウに帰還し、隊の指揮で疲れた俺は、寝所に戻って寝ようとした。その途中で聞こえてくる声。
宜園 章としての俺は知らないが、袁紹としての記憶には刻み込まれている。袁紹、つまり俺の妻、劉氏の声だ。
「……き、……い、……き、……い」
なんか不気味な劉の声が聞こえてくる。何をしているんだとのぞいてみると……。
「!?」
「好き……嫌い……好き……嫌い……」
なんと劉は、花占いをしていたのだ。だが、その様子が尋常ではない。彼女の足元には花びらを全てちぎられた花がたくさん、まるで敷き詰められているように落ちている。
「あら、殿、お帰りなさいませ」
「お、おう……何をしているんだ……?」
「はい。殿が他の側室たちにご執心のようでしたので、もしかしたら殿は私のことを嫌いになったのかと思い……」
そう言って、笑いながら泣き出す劉。確か彼女は嫉妬深い(史実でも、俺(袁紹)の死後、他の側室を皆殺しにした、という話が本に載っていた)とは聞いたが、これじゃ嫉妬深いというより、ヤンデレじゃねぇか……。
「殿、いかがなされました? やはり、私より他の女のほうが……。そうなら、他の女に殿をとられるくらいなら……殿を殺して私も死んでやるう!!」
「わぁ、ま、待て! そ、そんなことはないぞ、だからその短剣を降ろしてくれ!」
「いやですいやです、こんな思いをするくらいなら、殿と二人であの世に……!」
ああ、もうめちゃくちゃだ。もうどうしたらいいんだこれ。俺、こんな修羅場の経験なんかないぞ!
そんなこんなで彼女を止めようとしているうちに、彼女の想いが爆発したのか、彼女は俺を押し倒し、そして……
俺の口に唇を重ねてきた……!
ああ、もうどうにでもなれ……!
そしてよがあけた!
* * * * *
そして翌朝。
俺は寝台で、ほぼ半裸で寝ていた。かたわらには、半裸というより全裸の劉も寝ている。
ああ、そうか。昨日はヤンデレが炸裂した劉に押し倒されて、それから色々あったんだったな。女性経験皆無なのによくやったぞ俺。でも、もしこれで劉に史実にない子供ができたりしたら、歴史が変わっちゃったりするのか? いや、もうとっくに、董卓が曹操に討たれたり、その曹操と史実より早く俺たちが戦うことになり勝っちゃうとか、かなり歴史が変わっちゃってるから今更なんだけどさ。
……と、劉の奴も目が覚めたようだ。だが、彼女は起きるなりこう言った。
「そなたは誰です! 袁紹様ではありませんね!」
「え?」
「本当の袁紹様なら、その巧みな手の技で私を愛欲に溺れさせているはず! なのに、そなたにはその巧さが欠片を感じられません!」
ええええええ!?
俺が史実の袁紹ではないことがバレた!? しかも、こんなことから!?
さぁ、ついに正体がばれてしまった転生袁紹。
果たしてどうなるのか!?
こう、ご期待!……していただけると幸い。