三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件   作:ひいちゃ

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第八話『白馬の戦い・壱ノ幕~俺は覚醒袁紹なり!……多分』

 劉備軍が俺の領内に侵攻を開始した、との報を受け、ギョウにてただちに臨時の軍議が開かれた。

 ただし、顔良と文醜は先の敗戦を受け、南皮にて謹慎しているのでこの場にはいない。その代わりに武官代表として、二人に次ぐ地位を持つ許攸と淳于瓊の二人が軍議に参加している。

 

「みなも知っても通り、劉備軍が進撃してきた。彼らは勢力は小さいが侮れない奴らだ。どう対処すべきか、みんなの意見を聞きたい。俺としては、これまで通り港に奴らを誘い込むというこれまでのやり方がいいと思うが……」

「あいやしばらく」

 

 と、そこで待ったをかける声があった。言わずもがな、俺たちの軍の軍師、郭嘉先生だ。

 

「先ほど袁紹様もおっしゃった通り、劉備軍は強大。彼らを撃退するだけでは、完全に彼らの侵攻を止めることはできません。ここは、完全に彼らを叩き潰さなくてはなりません」

「……む、それはそうだが……」

「それに関して、私に秘策がございます。この地図をご覧ください」

 

 そして郭嘉は長机上に地図を広げて、作戦の説明を始めた。それと同時に、次席軍師の田豊、そして武官代表の許攸と淳于瓊からも感嘆の声が上がる。

 

「なるほど、これは見事な……」

「なんとも見事な作戦ですな。なるほど、このために顔良将軍と文醜将軍を南皮に謹慎させていたわけですか。さすが軍師殿。この許攸、感服いたしました」

「うむ、これなら……勝てる! 劉備軍に勝てるぞぉ!! この淳于瓊、久しぶりに感激したぞおおおお!!」

 

 彼らが感嘆するのも無理はない。この作戦は見事に決まれば、劉備軍は確実に消滅する。しかも、顔良と文醜の力量なら作戦の成功は決して難しくはない。

 

 さすがは郭嘉先生。劉備軍が攻めてくることも読んで、二人を南皮にうつしたのか。さすがだ。

 

 だが……。

 

「おや、どうされましたか袁紹様? 何か気が進まない様子ですが」

「い、いや……」

「この郭嘉に見抜けぬものはありませぬ。『好きな劉備と戦うのはもちろん、彼らを滅ぼすのは気が引ける。できれば戦いたくはないなー』と思ってらっしゃるのでしょう?」

「な、なんですとー!? なんでそこまで」

 

 俺が驚いてそう言うと、郭嘉はにやりと笑みを浮かべた。目は笑っていなかったけど。

 

「この郭嘉の目は魔眼。どんなことでも見抜きます……というのは冗談ですが。袁紹様の顔にそう書いてありました。主君のささやかな表情の変化、その裏に隠された心を見抜けぬようでは、軍師は務まりませぬからな」

「そ、そうか……」

「それはそうと、先ほども私が言った通り、劉備軍は強大です。しかも向こうから出陣してきた以上は、我が軍を潰すまで戦いをやめないのは必定。今回、港に誘い込む空港の計で撃退したとしても、彼らはどちらかが力尽きるまで攻めてくるでしょう」

「……」

 

 それはわかる。わかるのだが……。

 

「そして戦いは水物。今回それで勝てたからと言って、次も勝てるとは限りませぬ。次は策をもって立ち向かってくるかもしれません。それで負ければ我が国の民たちはどうなりましょう? 劉氏たち女の運命は?」

「……!」

 

 俺たちが負ければ、民は劉備軍に蹂躙され、若晴にも危険が及ぶ!

 そんなことをさせるわけにはいかない!

 

 ここは戦い、勝ち、そして劉備軍を倒さなければならない!!

 

「少し決心がついてきたようですな。もう一つ言いましょう。韓非子は言いました。『我が秦の力なら全国統一はたやすいこと。ですが今までは主君の気力が不足していて、全国統一の機会を逃すことになった』と」

「……」

「私は、袁紹様も、そしてこの国も、全国統一を為すのに十分なポテンシャルを持っていると思います。ならば、全国統一を為すのは袁紹様の責でしょう。それを放棄し、ただ自国を守るだけに専念するなら……」

 

 今の俺には郭嘉が言いたいことがわかる。これも、大切な者たちを守るために戦う覚悟を決めたからだろうか?

 

「この戦いの世を長引かせ、戦いに苦しめられる人々を生み出し続け、それに目を背けることに他ならない、ということだな? そして、対決に躊躇するような心では、戦いに勝つことはおろか、天下統一などできず、それは自国防衛に専念しているのも同じだと」

「御意。おわかりくだされたようですな」

「あぁ。俺も、戦いに苦しめられたり、傷つけられる人々は見たくないからな。わかった。私情を捨てて、劉備を討つことにしよう。心配かけて済まなかったな、郭嘉」

 

 俺がそう言うと、郭嘉は苦笑を浮かべた。

 

「いえ。袁紹様ならわかってくれると信じていましたから。ダメだった場合は、せんの……いえなんでも」

「……」

 

 覚醒してよかったよ……。

 何はともあれ、俺は、せきばらいをして号令を発した。

 

「よし、それでは我が軍は、郭嘉が立案した策に従って、劉備軍撃破の作戦を行う。許攸、淳于瓊。ただちに軍の準備を進めてくれ。二人の力、頼りにしているぞ」

「ははっ! お任せくだされ!」

「お任せをヲヲヲヲヲヲヲ!!」

「郭嘉。ただちに田豊と二人で、中国統一に向けての戦略を立案してくれ。できれば、この戦いが終わるまでには頼む」

「御意。戦いが終わるまでどころか、一日で立案してみせましょう」

 

 郭嘉がうやうやしく一礼する。ここから俺たちの新しい戦いが始まるわけだな。

 言っておくが、『俺たちの戦いはこれからだ』ENDにはしないからな?

 

「よし、軍議を終える! みんな、中国に平和をもたらすため、一緒に頑張ろうじゃないか!」

『応!!』

 

* * * * *

 

 一方の劉備軍。馬上の劉備に、物見が報告をもたらす。

 

「劉備様。張飛将軍率いる先鋒隊が白馬港を攻略いたしました。また、それに応じて、袁紹軍がギョウの城から出陣して参りました」

 

 それを受けて劉備がうなずく。

 

「うむ、関羽の言う通りになったな。さすがは関羽だ」

 

 そして劉備も号令を発した!

 

「よし、全軍転進! 所定の作戦に従って動くのだ!」

「ははっ!」

 

* * * * *

 

「袁紹様。白馬港が劉備軍の先鋒に攻略されたと報告が入りました」

 

 ギョウの南、白馬港の近くの丘にて、俺は物見からの報告を受けていた。どうやら奴らは餌に食らいついたようだな。俺はうなずくと告げた。

 

「よし。全軍待機。劉備軍の本隊が港に入り次第攻撃をかける。気を引き締めろと伝えてくれ」

「ははっ」

 

 そして俺は、目の前の白馬港と劉備軍をにらみつける。本軍が入ったタイミングで攻撃を仕掛けなければ。

 もう緊張ガチガチだ。何しろ、今回は郭嘉先生がいないのだ。補佐をしてくれる人がおらず、指揮をほとんど俺一人でしなければならないのだ。いくら英傑として目覚めても、きついものはきつい。

 

 さらにそんな俺を危機に陥れることが起こった!

 

「え、袁紹様! 劉備軍が転進! ギョウに向かう進路を取りました!」

「な、なんと……」

 

 まさかそう来たか! いたって平静を保っているように装っているが、心の中は、いつも通り。

 はい皆さんご一緒に。

 

(な、なんですとーーーーーーーー!?)

 

 って感じだ。

 

 しかし、混乱してばかりもいられない。何しろ、今は主力はほとんど引き連れているので、ギョウにはさほどの戦力は残していない。城壁があるのでそう簡単には落ちないだろうが、門を破られたら終わりである。

 

 あそこには、俺を慕ってくれる民たち、そして何より、若晴がいる!

 

 俺は、後ろから先鋒に挟み撃ちされる危険性を覚悟のうえで言い放った。

 

「全軍転進! ギョウに戻るぞ! 我らの大切な城を、劉備軍に渡してはいけない!」

 

 ギョウに向かう劉備軍を追撃する俺たち。

 

 こうして、序盤最大の戦い、白馬の戦いの幕が上がった!!

 

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