三国志と劉備が好きな俺が三国時代に転生したけど、なぜか袁紹だったので、とりあえず袁家滅亡を防ぐために頑張ってみることにした件 作:ひいちゃ
今回は、最初から最後まで、戦いだらけですよ!
そしてそんな中、彼女のあんなところも?
どうぞお楽しみください!
港に入らず、ギョウのほうに進路を変えた劉備軍の本隊。その彼らを、俺たち袁紹軍は追撃していた。
ギョウにはさほど兵力は残していない。城壁を破られたらゲームオーバーだ。
ギョウを失っても、まだ城はあるからいいじゃないかという意見もあるだろうが、あそこには俺の妻の若晴もいるし、俺を慕ってくれている民衆もいる。彼らに危害が及んでほしくない。
それに何より、支城とはいえ支配下の城やそこに住む人々を守れずして、これからを戦い抜いていけるだろうか。マキャベリズム失格や武将失格と言いたければ言え。
とにかく今は、俺の想いを行動で貫くのみだ。
その想いを胸に俺は、軍を率いて劉備軍へと突き進む
* * * * *
ギョウへと急ぎに急ぐ俺の前に、劉備軍が見えてきた。
だが……なんということだ! 奴らはギョウを攻撃することはせずに、こちらを迎撃する態勢を整えていた! 奴ら、俺たちを野戦にひきずり出すことが目的だったのか!
……すまん、実は内心、劉備軍のことを少し甘く見ていた。
密偵からの報告では、劉備軍の軍師は関羽が務めていたとの情報がある。正直、俺としては関羽に脳筋とはいかずとも武闘派のイメージしかなかったから、巧妙な策はとってこないだろう、と思っていたんだ。
それがこんな作戦をとってくるとは……関羽のイメージを変える必要があるかもしれない。済まない、関羽。もしどちらかが捕虜になったら俺を殴ってくれていいぞ。できれば俺は捕まりたくない……いやいや、負けることを考えていてはダメだ俺!
何はともあれ、俺たちは劉備軍本隊との戦いを開始した。劉備軍は背後のギョウからの弓矢を浴びながらも、俺たちに激しく攻めかかってくる。
たちまち乱戦になった。俺の周囲でも、近衛兵たちが俺を守ろうと、奮戦している。
血が飛び散り、腕が、そして首が飛ぶ。まさに阿鼻叫喚。
何しろ、今までは軍の後方で指揮をとっていたり、投石器で遠距離攻撃をしてきたので、こんな白兵戦の真っただ中に出くわすのが今回がはじめてだ。
おっと、横から敵兵が槍を突き出してきた。俺は慌てて、剣でその槍を払う。近衛兵の一人が、その敵兵を後ろから切りつけて倒してくれた。ありがとな。
……さて。本当に阿鼻叫喚なありさまだ。体のベースが袁紹なおかげもあって、なんとも正気を保てているが、もしそうでなければ、この場で発狂していたに違いない。何しろ、精神は現代に生きる28才男性なんだから。正気を保てているものの、怖いものは怖い。剣を握る手も震えているくらいなんだ。
でも戦わなければ若晴を守れない、でも怖いのは仕方ない……。あー、どうすればいいんだー……。
と、そんなことを言っている場合ではなかった!
俺めがけて一本の矢が飛んできたのだ!
まずい、まずすぎる! これは明らかに、俺の脳天を貫くコースーーーーーーーーーー!!
カキンっ!!
と、そこに、一人の兵士が剣でその矢をはじいてくれた。ふぅ、助かった……。
「大丈夫でしたか、アキラ様?」
え、その声は? そして「アキラ」って呼び方、もしかして……。
その兵士が顔をあげると、その兵士はもしかしなくても若晴だった!!
ななな、なんで若晴がこんなところに!? こんな状況になって驚かない者がいるだろうかいやいません。
「る、若晴、どうしてここに?」
「アキラ様が、私の見ていないところで戦死されるなど我慢できませんので。もし戦死されるのなら、最後まで見届けるのが、私なりの愛でございます」
……そうだ、忘れてたよ。彼女、ヤンデレなんだもんな。
「そ、それにこの命に代えても、アキラ様をお助けしたいと……。それと、どうせ果てるなら、あなたと共に、と……」
そう言って赤くなってうつむく若晴。その様子を見て、俺も沈黙。きっと頬は赤くなってる。
そうしてる間にも、周囲では近衛兵たちが劉備軍の兵と戦ってるわけだが。
「そ、そうか。なんとかこの戦い切り抜けるから、若晴は城に戻れ……って言っても、この乱戦じゃ無理だな」
「……そうですね」
「仕方ない。俺のそばから離れるなよ。戦いながら、なんとか守ってやるから」
「わかりました。アキラ様こそ、私が守って差し上げますからご安心ください。もし瀕死で助からない場合は、私が介錯をして差し上げますので、そちらのほうもご安心を」
「お、おう……」
そして再び、共に背中を預けあって戦いを再開する。大切な者が傍にいるから、恐怖心はだいぶ薄れ、力が湧いてくる感じがした。
だが、そんな俺をさらに窮地に追い込む出来事が!!
「袁紹様、一大事です! 白馬港から劉備軍の別動隊が出陣! 我々を挟撃する態勢のようでございます!」
な、なんですとーーーーーーー!?
かくして、それまで劉備軍本隊を、俺の軍と城とで挟撃していたのが一変、逆に俺たちが劉備軍の本隊と別動隊に挟み撃ちにされる窮地に陥ってしまった!
さらに混迷する戦場。俺はもちろん、若晴も、そして兵たちも疲労困憊の中にあった。だが、生き残るには戦うしかない。
ズバッ!
「きゃあっ!!」
「若晴! このぉ!!」
若晴が、上腕を敵兵に切りつけられる。その腕から飛び散る赤い血を見て、逆上した俺は怒りのままに、その敵兵を一刀両断した。
「大丈夫か、若晴!?」
「は、はい、なんとか……つっ……」
とはいえ、若晴の上腕部の傷からはどくどくと血が流れ出ている。とりあえず、処置をしなければ……!
「ちょっと汚いけど、ごめんな」
そういうと俺は、鎧の下に着ている衣の袖口を破って包帯代わりにすると、上腕部に巻き付けて止血してやった。前世、会社で救命講座を受けていてよかったよ。
……その俺を見て、顔を赤くしている若晴がかわいかったりしたのは秘密だ。
でも、負傷した彼女を見ると、この戦いがどれだけすさまじいかがよくわかる。腕の傷だけでなく、服のあちこちが切り裂かれ、そこからかすり傷がのぞいている。さらに、鎧のあちこちには矢も突き刺さったままだ。ちょっと深く刺さっているのもあり、それはおそらく、鎧を貫き、体に刺さっているだろう。
本当に、彼女をこんな傷だらけになるまで戦わせて済まない気持ちでいっぱいだ。
さて、そんなこんなで戦いを続けるものも、北の本隊と南の別動隊で挟まれ、我が軍は大ピンチ真っただ中。もう、苦戦から壊滅へと、一歩どころか半歩で転落しそうだ。
と、そこへ、若晴が声をあげた。
「アキラ様、あれを!」
彼女が指さした先には、一筋ののろしが。
そう、それは顔良率いる別動隊が、劉備軍の本拠、平原を攻略したという証―――