東方宙探録 / Star Trek : The Mirage World   作:Rommel

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第1話「時空の切れ目から」第1幕

 一隻の宇宙船が、星々の成す大海を進んでいる。白く輝く円盤と長細いワープナセルとが流線形の美しいフォルムを構成し、躍動感を感じさせる。ソヴェリン級宇宙艦、USSエンタープライズ NCC-1701-E。惑星連邦宇宙艦隊の顔とも云えるこの艦の艦長室では、とある男が日誌を付けていた。

 

『航星日誌、宇宙暦53449.3。エンタープライズはアルファ・スカルプトリス第2惑星へ向かっている。連邦の入植地へ物資を届ける為だ。』

 

 「入れ」とドアチャイムに気付いた禿げ頭の艦長────ジャン=リュック・ピカード大佐が言う。

 「失礼します、艦長(キャプテン)」ガッチリとした体躯とあご髭がトレードマークの副長、ウィリアム・T・ライカー中佐が入室する。「副長(ナンバー・ワン)、どうした?」「艦長、前方に未確認船を発見しました」

 

 ピカードとライカーの二人がブリッジに向かうと、スクリーンには今までに見たことのない形をした宇宙船が映っていた。眼のような形をした()()は紫色をしており、見るからに異質な船だった。

 

「船籍不明か......データ、宇宙チャンネルオープン。呼び掛けてくれ」

 

 ピカードが腕組みをしながら指示する。「了解しました」とコンソールを操作するのは、アンドロイドのデータ少佐だ。

 

「艦長、応答しません。先程から様々な周波数で呼び掛けているのですが」

 

 「生命反応はどうだ?」とライカーが訊ねる。「生命反応は......種族は不明ですが1名感知しました。普通ならこちらの呼び掛けに気付く筈だ」データが首を少し傾けた。

 「気付いていないか、気付いていない......体を装っているのか」ピカードとライカーが顔を見合わせる。

 

「艦長、不明船に高エネルギー反応。何らかのエネルギー波を発射すると思われます」

 

 保安部長でクリンゴン人のウォーフ少佐が言った。スクリーンの不明船は、徐々に紫色の粒子の様なものを纏い始めている。

 

「ウォーフ、防御スクリーンを」

 

 ブリッジに緊迫した空気が流れる。ウォーフが戦術コンソールを操作しようとしたその瞬間、エンタープライズは不明船が放った粒子に覆われた。

 余りの眩しさに、ブリッジの一同が思わず目を瞑る。

 

   ◇

 

「艦長、これは......!」

 

 目を開け、スクリーンを見たライカーが驚きの声を上げる。クルーたちの視線の先には、先程の不明船とその後方に現れたワームホールらしき裂け目が映っていた。「あれは......目か?」とピカード。時空の裂け目のような()()は、多くの眼をこちらに覗かせている。

 

「随分とありますね、艦長。それにゆっくりと引き込まれるような感覚を覚えます」

 

 艦長席の左側に座るのは、カウンセラーのディアナ・トロイ中佐だ。ベタゾイド人と地球人のハーフである彼女は、テレパス能力を使うことが出来た。

 

「うむ。確かに私も引き込まれているように感じるな」

「艦長、実際に引き込まれているものと思われます」

 

 トロイとピカードの発言を受け、データが進言する。「トラクター・ビームは確認できないが?」ライカーがスクリーンを見ながら訊ねた。

 

「はい副長、恐らく原因は不明船ではなくワームホールらしき裂け目の方かと」

「成る程。正体が何であれ、あれに捕まるのは拙そうだな」

 

 ライカーとデータが会話を交わしている間にも、エンタープライズは徐々に裂け目の方へと引き寄せられていく。厄介なことに、その速度は徐々に加速しているようだった。

 

 「エンジンを反転させてみよう」ピカードが自身の通信バッジをタッチする。「ミスター・ラフォージ!」

 

「はい、こちらラフォージ。艦長、さっきの粒子は一体何です?」

 

 艦長からの呼び出しに、機関部長のジョーディ・ラフォージ少佐が応じる。

 

「その件は後で説明する。エンジンの反転を頼む、全速後退だ」

「了解。エンジン反転させます」

 

 ラフォージの操作により、艦はゆっくりと後退を────始めることはなかった。「......艦長、脱出を試みましたが上手く行きませんね」ライカーが険しい表情を浮かべる。

 

 艦が大きく揺れ、ピカードや他のクルーがよろめいた。「何事だ?」体制を立て直し、制服の裾を直す。

 

「艦長、エンタープライズは急速に裂け目へ吸い寄せられています。私の計算によれば、本艦が飲み込まれるまであと15秒です」

 

 データがコンソールを見ながら言う。「非常警報!」ピカードが指令を出す。艦内の照明が暗くなり、電子的な警報音が鳴り響く。

 

「総員衝撃に備えろ。最大ワープで脱出を試みる」

 

 艦長席に座ったピカードが命じる。しかし機関室からは「艦長、ワープエンジンの制御がロックされています」という返答が返ってきた。

 「万事休すか......」ライカーが呟く。エンタープライズは、為す術もなく裂け目へと吸い込まれていった。

 

   ◇

 

「......長、艦長!」

 

 USSエンタープライズの艦長であるピカードは、気付くとブリッジの床に倒れていた。3人────ライカー、トロイ、そしてドクターのビバリー・クラッシャー中佐────が顔を覗き込んでいる。

 

 「ここは?」ピカードがゆっくり起き上がり、ライカーに訊ねる。彼が「座標によると、2500光年先のようです」と答えると、ピカードは驚きの表情を見せた。

 

「こうしちゃいられないな。副長、ワープによる艦への被害は?」

 

 「まだ安静にしていないと」というドクターの制止に「大丈夫だ」と返すと、ピカードは立ち上がって自身の任務を再開した。

 

「はい、第15デッキと第21デッキで複数名の負傷者が出ています。幸いにも死者はいません、艦長」

 

 ライカーの報告に、データが続ける。

 

「艦のシステムも全て正常です。ワープエンジンのロックも解除されています」

 

「となると問題は......連邦からの距離ということか」

 

 ピカードが乱れた制服の裾を直して言った。「データ、スクリーンに映っている惑星の詳細は分かるか?」「はい艦長。この惑星はケプラー160星系第4惑星のようです。酸素濃度、気温、水分ともに申し分のない環境です。生命反応も多数感じられます」

 

 「それは素晴らしいな」ピカードが皮肉っぽく頷く。

 

「艦長、先程の不明船が再び現れました」

 

 データがコンソールを操作しながら報告する。スクリーンには先程遭遇した奇妙な不明船が映っていた。

 

「謎の裂け目とあの船は何やら関係がありそうだな。呼び掛けてみよう」

「艦長、やはり応答ありません」

 

 データの隣でコンソールを操作するのは、オペレーション士官でトリル人のケル・ぺリム少尉だ。

 

 「友好的とは思えんな」とピカード。どうしたものかと考えていると、ウォーフが突然声を上げた。

 

「艦長、何者かが転送されてきます。発信元は......あの船です」

 

 「何だと!?」ブリッジに再び緊張が走る。

 

 独特の転送音が鳴り、ブリッジに一人の地球人らしき女が転送されてきた。即座にウォーフとライカーがフェイザーを構える。

 

「......上手く...行った」

 

 謎の女はそう呟くと、その場に倒れこんだ。

 




 遂に書いてしまいました。スタートレック×東方。作者はTNGから入ったトレッキー(自称)ですので、今回クロスオーバーものを書くにあたりこの時代にしてみました。
 昨年始まった新シリーズ「スタートレック:ピカード」は先日アマプラの方で見ましたが、ピカードやライカー、セブン・オブ・ナインといった懐かしの面々が出て来るとやはり感動しますね。シーズン2制作も決定している様なので、今後が楽しみです。

 さて、今回はスタートレック要素が殆どでしたが、次回からはいよいよ物語が本格的に動き始めます。謎の宇宙船、謎の裂け目、謎の女────
東方を知っている方なら何となくお気付きかとは思いますが......次回もご期待下さい!
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