東方宙探録 / Star Trek : The Mirage World 作:Rommel
アルファ・スカルプトリス第2惑星へ向かう途中、謎の宇宙船に遭遇したエンタープライズ。宇宙船と共に現れた謎の時空の裂け目に吸い込まれたエンタープライズは、遠くケプラー160星系へと移動させられてしまった。そんな中、謎の女が転送されてきたのである......
ブリッジに転送されてきた謎の女は、「上手く......行った...」と一言呟くとその場に倒れこんだ。即座にライカーとウォーフが駆け寄る。
「ピカードよりドクターへ。転送されてきた人物が倒れた。大至急来てくれ」「了解」
ピカードが通信バッジをタッチし、ドクター・クラッシャーを呼ぶ。
「
「艦長、患者は何処に?」
「ドクター、そこだ。今は仰向けに寝かせている」
ピカードとライカーが考え込んでいると、ドクターのクラッシャーがブリッジに到着した。着くや否や「少し失礼するわね」と医療用トリコーダーを謎の女に向ける。
「血中の酸素量は問題なし。内臓や脳にも傷は見られないわ。ただ......ちょっと待って」
突然、クラッシャーの表情が険しくなった。「どうした?」とピカード。
「神経ニューロンが疲弊しているわ。回路で言えば、無理な稼働で焼き切れそうになっている感じね」
謎の女をトリコーダーでスキャンしつつ、クラッシャーが返す。
「なるほど......原因は特定出来そうか?」
「今の段階では何とも。取り敢えず医務室で様子を診てみましょう」
ドクターが立ち上がった。すかさず「ウォーフ、患者を医務室まで運んでくれ」とピカードが指示する。患者を抱えたウォーフとクラッシャーは、ターボリフトで医務室へと向かっていった。
◇
『航星日誌、補足。エンタープライズは突如現れた時空の裂け目らしきものに飲み込まれ、2500光年先のケプラー160星系へと移動させられてしまった。原因はまだ不明だが、一つ疑わしい要因が見つかった。』
「それで......今回の現象の原因は把握出来そうか?」
ピカードが訊ねる。ここ観察ラウンジでは、今日も上級士官による作戦会議が開かれていた。
「いえ、艦長。はっきり言って現時点では不可能に近いかと思われます」とデータが答え、「やはり例の患者の回復を待つしかなさそうだ」とライカーが続ける。
「襲撃してくる敵がいないのが幸いです、艦長」
ウォーフも自身の意見を述べる。「しかし迂闊に警戒は解けないですね。また艦のシステムに何かあるかも分かりませんし」とラフォージ。
「とにかく、あの人物が何かしらの鍵を握っているとみて良いだろう」
思考を巡らしていたピカードが顔を上げ、士官たちを見回す。
ライカー、データ、ウォーフ、ラフォージ、トロイ────みな長年ともに試練を乗り越えてきた精鋭だ。今回の危機も乗り越えられるかもしれないが、宇宙に於いて油断は禁物......とピカードが考えていると、通信が入った。
「ドクターから艦長。患者が目を覚ましたわ」
「了解。すぐに向かう」
ピカードが立ち上がり、いつも通り制服の裾を直す。他の士官もそれに続けて立ち上がった。
◇
医療室に入ると、患者は既にベッドから起き上がっていた。入って来たピカードらに気付くやいなや、そっと一礼する。
「お目覚めのようですね。USSエンタープライズへようこそ、私は艦長のジャン=リュック・ピカードです。こちらは────」
「副長のライカー中佐、そして保安部長のウォーフ少佐、ですわね?」
「何故私の名前を......!?」ライカーが驚く。確かに、ピカードの名前はボーグを撃退した功績やこれまでの活躍の数々から連邦中に知られており、知っていたとしてもおかしくはない。しかし副長や保安部長といった他のクルーの名前まで知っているというのは、ピカードたちを驚かせるのに充分だった。
「失礼致しました。そういえばまだ名乗っていませんでしたね......私は
紫と名乗るその女は、含みを持たせた笑みを浮かべるとピカードに右手を差し出した。ピカードも同様に右手を差し出し、握手を交わす。
彼は紫の持つどこか超常的な雰囲気に、Qとラクサナ*2のそれを感じ取っていた。そしてこれまでと同様に、「これまた厄介なお客を乗せたものだ」と心の中で苦笑するのだった。
「さて、お疲れのこととは思いますが......」
「始めに謝っておきますわ。しかしこうするしか他に策が無かったのです」
紫が申し訳なさそうに話す。しかしその目には、
「では今回の現象はやはり貴女が────」
ライカーの問い詰めに、「ええ、理由は別の所で話しましょう。その前に......少しばかり何か頂いても?それにこの素晴らしい宇宙艦の中も見学してみたいですわ」と紫がピカードの方を向く。ピカードは仕方なく頷くと、ウォーフと共に紫を
「......とても素晴らしかったですわ。まさか和食まで取り揃えているとは思いませんでしたもの」
紫が上機嫌で話し、「これも全て人工物とは思えませんわ」と饅頭をまじまじと見る。ピカードは最大限の作り笑顔でそれに応えると、「そろそろ理由を」と切り出した。
既に3時間近く拘束されているとあって、彼は内心「いい加減に話してほしい」と感じていた。
「ええ、構いませんわ。案内して頂けますこと?」
ピカードの要請に、彼女が澄ました顔で答える。ピカードはウォーフに合図すると、観察ラウンジへ向かうべく紫と共に席を立った。
◇
ピカードとウォーフが紫を引き連れて観察ラウンジへと入ると、既に着席していた士官たちが立ち上がった。
「えーと、今回の現象の件ですわね」とライカーの向かいに紫が座る。
「その前に一つ、お訊ねしたいことが」
ピカードが真面目な表情で訊ねる。「構いませんわ」と紫。
「貴女はQではない?もしそうでないなら一体何者です?」
この場に居る全ての士官の疑問を、ピカードが紫にぶつける。
一瞬の沈黙の後、紫は語り始めた。士官の視線が一点に集まる。
「Q?聞いたことはありますが、詳しくは知りませんわ。それから私の正体は、言っても信じるか分かりませんが......妖怪なのです」
「妖怪?」
ピカードが訝しげに訊ねる。彼はその単語を何処かで聞いたような気がしたが、上手く思い出せなかった。
「艦長、妖怪とは日本特有の怪物のことです。科学が未発達だった時代に於いては、様々な自然現象が妖怪の仕業と考えられており、様々な物語を生んできました。こうした存在は他の星に住む種族でも見られ────」
「もう充分だ、データ」
「承知しました」
データの解説が長くなりそうだと察したピカードが途中で遮り、話は本題へと戻った。
「確かに宇宙には何かしらの能力を持つ種族が大勢暮らしているが、それに近いのか......」
「そうとも言えますわ」
ライカーの発言を受け、紫が頷く。「成る程......あれは能力の影響だったのね」とトロイ。
「しかしその能力を勝手に行使するのは関心出来ませんな、
ピカードが冷静に、だが不快感を示しながら諫める。
「ですから他に策が────」
「確かに貴女にもそれ相応の事情がおありでしょう。しかし私はこの艦と、クルーたちを守る責務がある。貴女はそれを分かっておいでか!」
のらりくらりとかわそうとする紫に対し、ピカードが語気を強める。
「友好的に参りましょう、
QでなくともQ並みに手強く厄介な相手だ。ピカードはそう考えると、より一層気を引き締めるのだった。
「では理由を教えて頂きましょう。それ相応の、
ピカードと紫。そのやり取りは、さながら達人同士のポーカー・ゲームのようであった。
「単刀直入に申しましょう。今回皆さんをこのような形で呼び寄せた理由は────ボーグです」
────ボーグ。彼女がその単語を口にした途端、士官たちの表情は一変した。
一日遅れの投稿となってしまいましたが、第2幕目はいかがでしたか?
謎の女は(読者の方は気付いていたかもですが)某スキマ妖怪でした。いや本当に紫様とQって共通点ばっかりなんですよね笑
もしかするとQもその内出てくるかも......?
感想やお気に入り等して頂けるとありがたいです!もしよろしければお願い致します!それでは次回へ......